「かまいしの第九」ファイナルへ― メンバー高齢化などで実行委苦渋の決断 45年の歴史に幕


2023/07/25
釜石新聞NewS #地域

2023「かまいし第九の会」発会式=22日

2023「かまいし第九の会」発会式=22日

 
 釜石の音楽文化の象徴、師走のベートーベン第九演奏会が本年の公演をもって終了する。1978(昭和53)年の初演から45年―。東日本大震災、新型コロナウイルス禍などさまざまな困難に直面しながらも歴史を重ねてきた同演奏会だが、主催する「かまいし第九」実行委員会(川向修一会長)はメンバーの高齢化などで事業継続が困難と判断。今年の演奏会で幕を閉じることを決めた。12月17日の最終公演に向け、7月22日、合唱メンバーの練習が始まった。
 
 中妻公民館で行われた今年の発会式には市内外から33人が集まった。川向会長(71)は「主力としてやってきたメンバーが減っていく中、この大きな事業を支えるだけの“体力”を維持できなくなった。今後10年、20年と続けていける展望が開けず、実行委としては今回で一旦区切りをつけるという判断に至った。最後の演奏会をいい形で締めくくりたい」と理解を求めた。
 
集まった合唱参加者を前に実行委の川向修一会長(右下)が公演の終了について説明した

集まった合唱参加者を前に実行委の川向修一会長(右下)が公演の終了について説明した

 
 この日は長年、継続参加するメンバーのほか、数年ぶりに参加を決めたメンバーも顔をそろえた。自己紹介後、合唱練習を開始。親と子の合唱団ノイホフ・クワィアーの指揮者などを務める小澤一郎さん(46)の指導で、ベートーベン交響曲第9番の13コーラスの前半部と、第1部で歌う「明日を」の練習に取り組んだ。
 
7カ月ぶりに歌声を響かせるソプラノメンバー

7カ月ぶりに歌声を響かせるソプラノメンバー

 
合唱指導者から注意点を教わりながら練習に励む

合唱指導者から注意点を教わりながら練習に励む

 
 平田の猪又春香さん(26)は高校2年時以来10年ぶり2回目の参加。昨年の演奏会を聞き、「もう一度自分も」と望んでいた矢先の“最後”の知らせ。 残念さをにじませつつも「記念の年になると思うので、できるだけ練習に参加し、最後にふさわしい盛大な舞台になるよう精いっぱい頑張りたい」と意欲を見せた。
 
 大槌町の菊池征毅さん(81)は釜石の第九演奏会を立ち上げた発足メンバー6人のひとり。釜石の“合唱の父”渡邊顕麿さん(故人)の提案、指導で始まった第九演奏に深い思い入れを持つ。当時、渡邊さんは「20年、30年後の子どもたちに伝わるような活動をしなければ」と話していたという。その言葉を胸に継続へ力を尽くしてきた菊池さん。「40年を越すことができた。今の状況を見れば(渡邊)先生も許してくれるだろう…」。第九は自身のライフワークだった。最後の公演に向け、「自分にとっても総まとめという気持ちで臨みたい」と気を引き締める。
 
自己紹介で釜石の第九演奏会への思いを述べる発足メンバーの菊池征毅さん

自己紹介で釜石の第九演奏会への思いを述べる発足メンバーの菊池征毅さん

 
小澤一郎さん(左)の熱心な指導で約2時間の練習が行われた

小澤一郎さん(左)の熱心な指導で約2時間の練習が行われた

 
 指導にあたる小澤さんは練習初日の歌声に、「みんな歌い込んでいるだけあってパワーが伝わってきた。最後の公演へ気合いが感じられる」。昨年はコロナ感染拡大防止を考慮し、合唱出演者は県内在住者に制限したが、今年は県外からの参加も広く呼び掛ける。「昨年よりも多くの参加を得て、より感動的な演奏会にできれば。ぜひ大勢の方々に聞いてほしい」と期待を込める。
 
 演奏会は2部構成。1部では、震災関連ソング「明日を」、「群青」の2曲を合唱。2部でベートーベン交響曲第9番(1~4楽章)を演奏する。指揮は釜石出身で、東京で音楽活動を続ける瓦田尚さん(40)=ムジカ・プロムナード主宰=が、昨年に続き務める。釜石市民ホールTETTOで、午後1時半の開演を予定する。
 
コロナ禍を経て3年ぶりに開かれた昨年の演奏会

コロナ禍を経て3年ぶりに開かれた昨年の演奏会

 
12月17日の本番に向けて今年も合唱練習が続く

12月17日の本番に向けて今年も合唱練習が続く

 
 実行委では8月26日まで合唱メンバーを募集する。対象は第九を歌った経験があり、練習(毎週土曜日午後3時半~午後5時半)に参加できる人。問い合わせ、申し込みは実行委(電話090・6780・0434、FAX0193・23・8344、E-mail:kamaishinodaiku@yahoo.co.jp)へ。

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