釜石の歴史に触れる鉄の学習発表会
釜石市の児童・生徒による鉄の学習発表会(鉄のふるさと釜石創造事業実行委員会主催)は11月25日、大町の釜石PITで開かれ、2校が史跡見学や鉄づくり体験で得た学びを紹介した。市では「鉄の記念日」(12月1日)の前後1週間を「鉄の週間」として各種イベントを催しており、発表会もその一つ。関係者は「子どもだけでなく、大人も地域の歴史に触れ、学び続けるまちに」と願う。
鉄の記念日は、近代製鉄の始まりを記念する日。盛岡藩士の大島高任が安政4(1857)年12月1日、釜石市甲子町大橋に建設した洋式高炉で日本初の連続出銑を成功させたことにちなむ。
学びから得た地域の魅力を伝える双葉小児童
双葉小は4年生の代表5人が発表。近代製鉄発祥の地・大橋地区にある釜石鉱山の坑道見学や旧釜石鉱山事務所での鉱石採取体験などを通して「鉄の街釜石」に触れた。驚いたこととして挙げたのは、大橋地区に学校があったこと。多い時には1200人の子どもたちが通ったといい、「双葉小の9倍くらい。ここだけで生活ができた」と思いをはせた。
鉱石の標本づくりにも挑戦。石の種類、鉄鉱石ができる仕組みなどを学び、「釜石を発展させた鉱石たちを宝物として大切にしたい」とまとめた。現在の釜石鉱山で製造されるナチュラルミネラルウォーター「仙人秘水」が印象に残ったのは磯﨑雄太君。坑道の中の岩盤を40年かけてつたってくるこの湧き水は「僕らが生まれる前のもの。魅力的。いろんな良いところをもっと伝えたい」と胸を張った。
「仙人秘水は常温の方がおいしいそうです」と豆知識も
釜石東中の1年生20人は、同事務所で行った「たたら製鉄」実習の様子を寸劇で紹介した。大島高任は西洋の高炉設計図を頼りに釜石で製鉄を進めたといい、生徒たちも同様の手法で悪戦苦闘しながら築炉。木炭の小割作業など準備の大変さ、火入れの熱さ、鉄の混合物(ケラ)を得られるかといった不安も見せた。この活動で学んだのは、先人たちの偉大さや仲間と協力する大切さ。「失敗を恐れず、いろんなことにチャレンジし続ける」と声をそろえた。鈴木星愛(せな)さんは「この経験を生かして部活を頑張りたい」とうなずいた。
釜石東中の生徒は鉄づくり体験の様子を再現
子どもたちの学びにじっと耳を傾けた市民ら
高橋勝教育長が「堂々とした発表に驚いた。当時の人たちの苦労や思いを知り、自分たちに置き換え、考えることが学びになる。知る楽しさ、感動、気づきを大切にしてほしい」と講評。自身も今回の発表で発見があったと明かし、「大人も学んでいかなければ」と子どもたちからの刺激を歓迎した。
同事務所が国登録有形文化財(建造物)になってから今年で10周年となるのを記念し企画したフォトコンテストの結果発表もあった。釜石鉱山をテーマに7月中旬から10月末まで募集し、鉄鉱石や銅鉱石の選鉱場跡、不要な砕石を積んだ堆積場、釜石線の線路などを写した30作品が寄せられた。最優秀賞に選ばれたのは、選鉱場と自然風景を一体的に捉えた「栄えた跡と秋空」。撮影した藤原信孝さん(75)は「世界遺産になるべき場所であり、多くの人に足を運んでほしいと思いを込めた。この地で、子どもたちの鉄づくり学習が行われているのも意義深い」と熱く語った。
釜石鉱山をテーマにしたフォトコンテスト最優秀作品
撮影者の藤原信孝さんに賞状と記念品が贈られた
このほかにも鉄の週間行事はめじろ押し。1日は市鉄の歴史館や同事務所が無料公開され、夜には知る人ぞ知る「鉄の検定」がある。2日には歴史館で名誉館長講演会(午前10時~・テーマ「イギリスの産業革命―日本との差異」)のほか、県指定文化財「紙本両鉄鉱山御山内並高炉之図」(幕末の高炉操業の絵巻)も公開。企画展「餅鐵の刃」は18日まで催される。
同事務所の企画展「いわての国登録有形文化財展」、橋野鉄鉱山インフォメーションセンターの「橋野高炉跡発掘調査速報展」は8日まで。市立図書館では3日午後1時半~、市民教養講座・鉄の町かまいし歴史講座「釜石鉄道の道―番号で呼ばれる橋」を予定し、鉄の記念日にちなんだ図書展を14日まで開く。市郷土資料館では企画展「かまいしの古き良き時代 ザ・昭和~鐵と共に」が開催中で、来年1月14日まで楽しめる。