160種のバラが彩るオアシス空間にうっとり… 釜石甲子「陽子の庭」10日まで一般公開


2024/06/06
釜石新聞NewS #地域

バラの開花に合わせ一般公開されている「陽子の庭」=甲子町洞泉

バラの開花に合わせ一般公開されている「陽子の庭」=甲子町洞泉

 
 釜石市甲子町洞泉の高台傾斜地に広がる私設ガーデン「陽子の庭」の一般公開が1日から始まり、市内外から訪れる人たちを魅了している。公開は今年で9年目。菊池秀明さん(76)、陽子さん(77)夫妻が自宅敷地に手作りした庭園には160種のバラが植えられていて、目にも鮮やかな花風景に驚きと感動の声が上がっている。一般公開は10日まで。週末の8、9両日には市内のバンドによる演奏も予定される。
 
 広さ約700坪の庭園は、菊池さん夫妻が16年ほど前から少しずつ造り上げてきたもの。自宅周辺の山の斜面を造成し、自然石のほか東日本大震災の被災者から託された庭石などを用いて、エリアごとに和洋の異なる趣を醸す空間を実現した。日本庭園、イングリッシュガーデン、ロックガーデン…。多種多様な草木が植えられた園内は、季節ごとにさまざまな花が咲き誇る。4年前にはバラ専用エリアも設けられた。
 
山の斜面を使って造成された庭園。さまざまな植物が植えられている

山の斜面を使って造成された庭園。さまざまな植物が植えられている

 
被災者から提供された庭石を組んだ「ロックガーデン」。雨に濡れた石が味わい深い光景を見せる

被災者から提供された庭石を組んだ「ロックガーデン」。雨に濡れた石が味わい深い光景を見せる

 
4年前に新設された“バラ専用”のスペース。色や形、香りもさまざまな品種が並ぶ

4年前に新設された“バラ専用”のスペース。色や形、香りもさまざまな品種が並ぶ

 
 5~6月は多くのバラが開花する時期。陽子さんが植え始め、年々規模を拡大してきたバラは、夫妻の丹精込めた世話で株も大きく成長。ボリューム感を増している。秀明さんによると、毎年1月中旬から2月にかけての約1カ月間はせん定作業に追われる。中でも60本あるという“つるバラ”は「塔や棚にきれいに巻いてやらないと、つるが密集しすぎたり全体のバランスが崩れてしまう。時には全部ほどいてやり直すことも」。その後も、根や葉を食べる虫を寄せ付けないよう対策したり、年間を通した管理によって美しい花姿が保たれている。
 
(左上から時計回りに)ウルメールムンスター、ゴールデンボーダー、チャイコスキー、朝雲

(左上から時計回りに)ウルメールムンスター、ゴールデンボーダー、チャイコスキー、朝雲

 
つるバラの「春風」。花がきれいに見えるよう這わせるのが難しい。はみ出た茎はせん定

つるバラの「春風」。花がきれいに見えるよう這わせるのが難しい。はみ出た茎はせん定

 
 近年は地球温暖化の影響も顕著。早咲き種は開花がこれまでより早まり、今年は1週間ほど早い5月15日ごろに咲き始めた。1~2月が暖かったため、花芽が出るのも早かった。「3月にはかなり芽が出始め、膨らみも見られた」という。一方で遅咲き種は例年並みの開花で、「花の見られる時期が広がっている印象」と秀明さん。2日現在でまだつぼみが残っている種もあり、天気が回復する公開期間後半はさらに開花が進みそう。
 
 公開初日から3日間は雨に見舞われたが、1、2の両日はイベントもあり、多くの人が訪れた。同市の佐々木保之さん(52)は、めいの佐々木碧依さん(7)を連れて観賞。約3年ぶりに訪れた保之さんは「毎回思うけど(行き届いた管理)すごいよね。おかげで楽しませてもらっている」と感謝。初めて訪れた碧依さんは「きれいなバラがいっぱいでうれしい。写真も撮った。お母さんとおばあちゃんに見せてあげる」とにっこり。保之さんは“入場無料、ご自由にどうぞ”という心遣いにも感激し、「まだ知る人ぞ知るみたいなところもあるので、ぜひ多くの人に訪れてほしい」と薦めた。
 
2日はあいにくの雨模様。しっとりと濡れた花を傘を差して見学

2日はあいにくの雨模様。しっとりと濡れた花を傘を差して見学

 
ファジョン合唱と甲子歌う会のコラボ。子守歌の「HELLO MY SHINE」という曲で歌声を重ねた

ファジョン合唱と甲子歌う会のコラボ。子守歌の「HELLO MY SHINE」という曲で歌声を重ねた

 
 公開初日のイベントは合唱。昨年5月に同所で母の日ミニコンサートを開いた東京のファジョン合唱(飯田夏代主宰)が、地元の甲子歌う会(坂本慶子会長)とコラボ。2021年から釜石を訪れるメンバーが同園での出会いを機に、新たな交流の輪を広げた。会員約30人で共演した同会の坂本会長は「庭を見に来ていて、いつかここで歌いたいと思っていた。実現してうれしい。来年は公開10年目になるので、ぜひ私たちも歌で盛り上げたい」と望んだ。
 
東京から駆け付けたファジョン合唱のメンバーの歌を来園者が楽しんだ

東京から駆け付けたファジョン合唱のメンバーの歌を来園者が楽しんだ

 
甲子歌う会は花にちなんだ2曲も歌った

甲子歌う会は花にちなんだ2曲も歌った

 
 菊池さん夫妻の愛情あふれる庭園は観賞の楽しみとともに、そこに集う人たちの新たなつながり、交流を生み、心温まる空間を広げている。陽子さんは「花がきれいに咲いてくれるとそれまでの苦労が報われ、気持ちも晴れる。また、毎年見にきてくれる方、ボランティアで演奏してくれる方など多くの人たちとの触れ合いも励みになっている」と継続の原動力を明かす。来年迎える10年という節目に「後は体力の問題だけだね。来年まではやりたいが、それ以降持つかどうか…」と秀明さん。せん定講習なども考えながら、その後の方向性を模索する。
 
毎年庭を公開している菊池秀明さん(右)、陽子さん夫妻。2人の愛情を受けて育つ花々が来園者を出迎える

毎年庭を公開している菊池秀明さん(右)、陽子さん夫妻。2人の愛情を受けて育つ花々が来園者を出迎える

 
 「陽子の庭」の一般公開は10日まで(午前9時~午後4時)。8日は午前11時からと午後1時からの2回、エレキバンド「釜石ベンチャーズ」の演奏、9日は午前11時から「MiA&リアスバンド」によるシャンソン、ジャズ演奏が予定される。場所は、市街地から向かう場合は国道283号を釜石鉱山方面に西進。内陸からは釜石自動車道を釜石仙人峠インターチェンジで降り、同方向へ。道の駅釜石仙人峠を過ぎて少し行くと右手に誘導看板が見える。

釜石新聞NewS

釜石新聞NewS

復興釜石新聞を前身とするWeb版釜石新聞です。専属記者2名が地域の出来事や暮らしに関する様々なNEWSをお届けします。

取材に関する情報提供など: 担当直通電話 090-5233-1373/FAX 0193-27-8331/問い合わせフォーム

釜石のイチ押し商品

商品一覧へ

釜石の注目トピックス