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橋野・菜の花畑でごゆるりと… 花、山、空 五感で楽しむ自然空間で心身ともにリフレッシュ

1日限定で一般開放された菜の花畑=11日、橋野町太田林

1日限定で一般開放された菜の花畑=11日、橋野町太田林

 
 釜石市橋野町の一般社団法人ユナイテッドグリーン(山田周生代表理事)が開設する菜の花畑が11日、一般開放された。園内では自然農法や植物性素材にこだわった菓子や弁当の販売、指圧マッサージ、ピエロの絵本の読み聞かせなども実施。訪れた人たちは山あいの景色に癒やされながら、ゆったりとした時間を堪能した。
 
 菜種油の生産を手がける同法人は、花が咲く毎年5月に畑を一般開放している。今季は約50アールに作付けしたが、シカの侵入で全体の4分の1ほどが食害にあってしまったことや春先の高温で開花が早まったことで、開放日当日は例年より花が少ない状態に。それでも鮮やかな黄色の花と周辺の新緑の山々、澄み渡る青空がこの時期ならではの色彩の競演を見せ、来園者を魅了した。
 
 子どもたちを喜ばせたのは、くらうん・しゅがー(ピエロ)の絵本ライブ。マジックを交えた楽しいパフォーマンスを繰り広げ、菜の花畑の中に夢空間を広げた。指圧マッサージや野だてのコーナーも。花に囲まれながら癒やしのひとときを提供した。
 
くらうん・しゅがーの絵本ライブ。バルーンアートのプレゼント

くらうん・しゅがーの絵本ライブ。バルーンアートのプレゼントも

 
写真左:野だて席(宙右庵)や指圧マッサージ(めぐり堂)のコーナーも。同右:菜の花畑でシャボン玉も楽しいよ!

写真左:野だて席(宙右庵)や指圧マッサージ(めぐり堂)のコーナーも。同右:菜の花畑でシャボン玉も楽しいよ!

 
 開放当初から協力する、おやさい食堂カラコマ(盛岡市)は大豆唐揚げ、豆乳アイスなどを販売。やえはた自然農園(花巻市)は農薬や肥料を使わずに栽培した小麦や玄米、同畑の菜種油を使った手作り菓子を販売した。太陽光発電で生み出した電力で豆をひき、コーヒーを提供したのは盛岡市の日野雄策さん(66)。有機農業や環境、音楽など多彩な分野で活躍する日野さんは、釜石市の根浜海岸で昨年開かれたオーガニックフェスタが縁で初出店。一芸を披露するとコーヒーが無料になるというユニークな企画で来園者を楽しませた。「お客さんとの会話も弾む。客として来るより出店するほうが楽しいかも。いろいろな人とつながり、交流できる場は貴重」と喜んだ。
 
やえはた自然農園は自家栽培の玄米粉などを使った菓子を販売

やえはた自然農園は自家栽培の玄米粉などを使った菓子を販売

 
歌ったり演奏したり…「一芸」披露でコーヒー1杯をサービス!

歌ったり演奏したり…「一芸」披露でコーヒー1杯をサービス!

 
 盛岡市の50代男性は「山が好き。橋野鉄鉱山にも来てみたかった」と笛吹峠を通って初めて来園。「花だけでなく山の緑や風もいいし、全体の空気感が素晴らしい場所。気持ちがゆるやかになりリフレッシュできる」と心地良い空間を満喫。栗林町の鈴木勇さん(37)は家族4人で2年ぶりに訪れ、「いいロケーション。家族みんな花が好き。子どもたちも楽しそう」と笑顔。大型連休には関東から親戚が来て県内を案内。「岩手の豊かな自然は喜ばれる」とその価値を実感した。
 
子どもたちは背丈以上の菜の花に囲まれて記念の一枚

子どもたちは背丈以上の菜の花に囲まれて記念の一枚

 
来園者は菜の花畑で思い思いの休日を楽しんだ

来園者は菜の花畑で思い思いの休日を楽しんだ

 
 同法人の山田代表は東日本大震災の復興支援活動の一環で、沿岸各地の津波被災農地や耕作放棄地に菜の花を植えるプロジェクトを展開。塩分吸収率の高い菜の花で土壌を浄化、被災者雇用で菜種油の販売を行ってきた。拠点とする橋野の畑では、2013年から開花時期1日限定の「菜の花青空レストラン」を開設。コロナ禍の3年間は「菜の花パーク」として、期間を設けて園内を開放してきた。
 
花が散った後は種を取り、搾油して商品(左上写真)として販売する

花が散った後は種を取り、搾油して商品(左上写真)として販売する

 
 近年はシカの食害が課題。22年に畑の全周に鉄柵を施し一時改善されたものの、今年はつなぎ目の針金の劣化により柵を壊して侵入するケースがあり、「柵設置後もメンテナンスが必要」と実感。同所は環境教育や企業研修の場としても利用され、山田代表の講演と現場作業で、環境への理解を深める活動も行われている。今回の公開日の前には、北上市の工場の新入社員研修で約100人が訪れ、柵のペンキ塗り、周辺の草刈り作業などを行った。
 
 山田代表は「連作を避けるため、来年は別のエリアに植える。畑をいい状態に保ちながら長く栽培を続けたい。来園者も出店者もゆったりと過ごせる時間をこれからも提供していければ」と話した。

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根浜の“原風景”復活に期待! 新設「ビオトープ」で市民らが生き物のすみかづくり 

根浜ビオトープに生き物のすみかを作り、今後に期待する参加者=6日

根浜ビオトープに生き物のすみかを作り、今後に期待する参加者=6日

 
 4月下旬に整備が完了した釜石市鵜住居町の根浜シーサイド内のビオトープ(生物生息空間)。大型連休最終日の6日、同所のお披露目を兼ね、市民らが生き物のすみかを作る体験イベントが開かれた。参加者は池にすみ始めたオタマジャクシやイモリに大興奮。環境省の準絶滅危惧種「トウホクサンショウウオ」の卵から幼生がふ化する様子も見られ、驚きの声が上がった。
 
 ビオトープは東日本大震災の津波で失われた生態系を取り戻そうと、根浜シーサイドの市指定管理者かまいしDMC(河東英宜代表取締役)が、市民団体かまいし環境ネットワーク(加藤直子代表)との協働により整備した。市の土地を借用し、釜石東ロータリークラブ(佐藤猛夫会長)から資金提供を受け実現させた。
 
 背後に山林が広がるこの場所には震災前、山から流れ出る沢水を引き込んだ田んぼがあり、カエルやドジョウ、ホタルなど水辺に集う生き物が数多く見られた。しかし、震災の津波で環境は一変。広い水辺が失われたことで、生き物の数も激減していた。同所で観察を続けてきた加藤代表は「もう一度、たくさんの生き物がすめる環境を」と、ビオトープの整備を発案。同様の考えがあった同DMCとの協働事業に至った。
 
根浜シーサイド内に整備されたビオトープ。水辺にすむ生き物が集まる場所に…

根浜シーサイド内に整備されたビオトープ。水辺にすむ生き物が集まる場所に…

 
池の中の生き物を探す子どもら(写真上:かまいしDMC提供)。イベントには幅広い年代が参加(写真下:かまいし環境ネットワーク提供)

池の中の生き物を探す子どもら(写真上:かまいしDMC提供)。イベントには幅広い年代が参加(写真下:かまいし環境ネットワーク提供)

 
 6日のイベントには市民ら約40人が参加。山側の池の縁の一部に木の枝や笹を差し込み、生き物のすみかを作った。作業の前には生き物の観察も。池の工事から間もないながら、水中にはオタマジャクシやアカハライモリ、水面にはアメンボの姿が見られ、子どもたちが歓声を上げた。参加者の目をくぎ付けにしたのはトウホクサンショウウオの卵。池への沢水の流入口で見つかり、卵のうの中にふ化した幼生の姿が確認できた。観察中に卵のうから飛び出す個体も。
 
池の縁の一部に木の枝や笹を差し、生き物が隠れられる場所を作った

池の縁の一部に木の枝や笹を差し、生き物が隠れられる場所を作った

 
池の中にはオタマジャクシやアメンボの姿が…

池の中にはオタマジャクシやアメンボの姿が…

 
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写真右上:トウホクサンショウウオの卵。白丸はふ化した幼生。同右下:アカハライモリ(かまいしDMC提供)

 
 同市の佐藤灯君(7)は「いろいろな生き物が見られて楽しかった。イモリは初めて見た。ここを、きれいで生き物たちにとっていい暮らしができる池にしたい」。父広明さん(37)は「自分が子どものころは自然で遊ぶ機会がいっぱいあったが、今はそういう場所も少なくなっている。こういう体験が将来にいい影響を与えれば」と話した。
 
 「最近は(身近で)カエルの鳴き声を聞くこともなくなった」と話す根浜親交会の佐々木雄治事務局長。今回のビオトープ整備で根浜の原風景が戻ることを期待し、「鳴き声で自然を感じられるという側面もあると思う。多くの親子に来てもらい、昔ながらの根浜の生き物に触れて自然を体感してもらえたら」と願う。
 
さまざまな生き物に興味津々の子ども(写真:かまいしDMC提供)

さまざまな生き物に興味津々の子ども(写真:かまいしDMC提供)

 
 この日は、NPO法人日本ビオトープ協会主席アドバイザーで相談役の野澤日出夫さんも駆け付け、「命を育み、生き物が心地良く生きられる場所がビオトープ。自然の豊かさをどう守るかが大事」と参加者に説明。津波で失われた自然を復元しようという取り組みに「自然に元の状態に戻すことが一番だが、これからは子どもたちの環境教育の場としての利用も大切な要素。人が入らないエリアと観察エリアに分け、より元の自然に近い形にしていければいいのでは」とアドバイスした。
 
 発案者の加藤代表は「第一歩を始めることができ、安心とうれしさでいっぱい。生き物の種類、数がさらに増えていくといい」。大好きなシュレーゲルアオガエルの鳴き声も耳にしながら、数年後の風景を楽しみにした。
 
入り口にある立て看板。注意事項を守り、安全に観察を!

入り口にある立て看板。注意事項を守り、安全に観察を!

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いいよ!釜石の海 ウニむき、漁船クルーズで“みりょく”体感 GW限定企画に満足

ゴールデンウイークを彩った釜石の海の魅力を発信する催し

ゴールデンウイークを彩った釜石の海の魅力を発信する催し

 
 ウニむき体験に、漁船クルーズ-。海の魅力を体感してもらう催しがゴールデンウイーク(GW)期間中の3日間、釜石市魚河岸の魚河岸テラスを拠点に展開された。施設を管理運営する観光地域づくり法人かまいしDMC(河東英宜代表取締役)が企画。この時期ならではの食や景色を味わい、もてなす漁師らとの触れ合いを楽しんだ人たちは釜石が発信する“みりょく”に満足げだった。
 
 ウニむき体験は3、4日に実施。畜養事業に取り組む唐丹町漁協の協力を得て、キタムラサキウニ約150キロを用意した。挑戦者たちはキッチンバサミやピンセットを使って「口開け」。殻を割って海藻などを丁寧に取り除き、スプーンで身をすくって味わった。「甘い」「濃厚」「うまい」「いつも食べているのと違う」と感想はさまざま。神奈川県大和市の小学生松村海里君(11)は「触ったのも、むきたてを食べるのも初めて。おいしいし、米が欲しくなる」と頬を緩めた。
 
魚河岸テラスで開かれたウニむき体験を楽しむ家族連れ=3日

魚河岸テラスで開かれたウニむき体験を楽しむ家族連れ=3日

 
黙々と。子どもも大人も真剣な表情で作業に集中した

黙々と。子どもも大人も真剣な表情で作業に集中した

 
 提供された畜養ウニは、海藻が少なくなる「磯やけ」やエサの減少によるやせたウニの増加といった漁業が直面する厳しさを改善させる手段として漁業者が育てた。その取り組みを岩手大学釜石キャンパス特任専門職員の齋藤孝信さん(62)が解説。エサとして漁協の加工場で出る塩蔵ワカメの端材などを与えていて、「価値のないものや捨てるもの、そんなマイナスを組み合わせてプラスに持っていきたいという漁業者の思いが込もっている」と伝えた。
 
齋藤孝信さんの手ほどきを受け、ウニむき体験を楽しむ親子

齋藤孝信さんの手ほどきを受け、ウニむき体験を楽しむ親子

 
「口、とった」「うまーい」。いい表情を見せる子どもたち

「口、とった」「うまーい」。いい表情を見せる子どもたち

 
 愛知県名古屋市の井上峰行さん(41)、由里恵さん(43)夫妻は、東日本大震災のことを考える“三陸めぐり旅”の途中で立ち寄った。「海と断絶された高い壁のような防潮堤」が印象的だったというが、海という資源に対する地域の思いやSDGsという視点に触れる機会にもなった。ウニむき作業は浜の人たちの手にかかると3分ほどというが、2人が要した時間は約20分。細やかで手間のかかる作業を日々繰り返している漁業者の仕事ぶりに思いを巡らせながら、そのひとすくいの「味力(みりょく)」をかみしめた。
 
絶好のクルーズ日和。水面や景色の近さを楽しむのは漁船ならでは=5日

絶好のクルーズ日和。水面や景色の近さを楽しむのは漁船ならでは=5日

 
 釜石湾内の漁船クルーズは5日限定で「定期便」を運航した。魚河岸テラス前を発着に、波が比較的穏やかな湾口防波堤の内側を巡る約1時間の船旅。通常は事前予約(乗船希望日の2日前まで)が必要だが、この日は出港時間を決めて6便航行した。
 
 乗客は涼しげな潮風を受けながら、釜石港周辺の産業中心地や尾崎半島にかけての大自然を堪能。海上から見上げるガントリークレーンの迫力、正面から望む釜石大観音など、普段見られない視点からの光景に「観力(みりょく)」を感じた様子だった。
 
産業中心地の風景を間近で眺め、普段とは違った角度に面白さを感じたり

産業中心地の風景を間近で眺め、普段とは違った角度に面白さを感じたり

 
 このクルーズの魅力は、漁師の船長がガイドを務めていること。第1便は釜石湾漁協に所属する平田の佐々木剛さん(71)が乗客をもてなした。漁船内の魚槽や魚群を探知する機器などを見せながら、「今、この辺にはサバの群れがいるってことです」などと解説。カキやサクラマスなど湾内で行われている養殖、2011年の東日本大震災や2017年の林野火災の被害と再生の取り組みにも触れた。
 
ガイドとして乗客をもてなす漁師の佐々木剛さん(写真中央)

ガイドとして乗客をもてなす漁師の佐々木剛さん(写真中央)

 
釜石湾内で行われているサーモン養殖のいけすに興味津々

釜石湾内で行われているサーモン養殖のいけすに興味津々

 
 福島県須賀川市から訪れた阿部仁一さん(47)、志帆さん(46)夫妻は「水面が近く、風も感じられてリフレッシュした。台本通りではないガイドが素朴で味があったし、いけすを見られたのもよかった」と笑顔を重ねた。鵜住居町の根浜海岸ではオートキャンプを満喫。宿泊サイトは満杯だったものの静かで快適な時間を過ごしたといい、釜石の海レジャーに好感触を残した。
 
 GW後半は天候に恵まれ、釜石港の岸壁では釣り客も多かった。水中に糸をたらし、寄ってきた小魚を網ですくい取る子ども、サバなどをバケツいっぱいに釣り上げた人もいた。「釣りをやってみたい」という子どもらの希望を受けてやってきた盛岡市の40代男性は「道路がつながって三陸が近くなった。年に数回、平田で釣りをしていて、釜石の海にいいイメージを持っている。子どもたちも楽しんでいる」と目を細めた。
 
魚市場近くの岸壁では釣りを楽しむ人の姿も多く見られた=5日

魚市場近くの岸壁では釣りを楽しむ人の姿も多く見られた=5日

 
「とったー」。魚を釣り上げてピースサインをつくる子ども

「とったー」。魚を釣り上げてピースサインをつくる子ども

 
 ウニむき体験は、畜養しても活用方法や販路の確保を模索していた漁協を後押ししようと、昨年のGWに続いて2回目の実施。漁船クルーズは海を生かした持続可能な観光振興を目指し取り組む。どちらも反響は上々で、イベントを担当するかまいしDMCの佐々木和江さん(46)は「魚食、遊び、人との関わりなど多様な要素を取り入れた企画で、臨海部ならではの魅力を発信していきたい」と先を見据えた。

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大型連休 久しぶりのにぎわい 釜石駅前の春まつり 観光客ら海の幸、市内外の味覚堪能

天候にも恵まれ、市内外から客が訪れた「かまいし春まつり」=4日

天候にも恵まれ、市内外から客が訪れた「かまいし春まつり」=4日

 
 新型コロナウイルス感染症の5類移行後、初めて迎えた春の大型連休。釜石市内は連休後半、晴天が続き、絶好の行楽日和となった。鈴子町の釜石駅前が会場となる恒例の「かまいし春まつり」は4日、シープラザ釜石、サン・フィッシュ釜石の両施設で行われた。来場者は市内外の出店者によるさまざまな味覚やステージイベントを楽しみ、釜石の春を満喫した。
 
 同まつりはこれまで駅前広場を主会場としていたが、今回初めて、駅に隣接する観光物産施設シープラザ釜石の西側駐車場に出店ブースを設けた。市内外からキッチンカーを含む19店舗が出店。地元釜石からは各事業者がホタテ焼きやジェラート、海宝漬、ラスクなどを販売。釜石湾漁協釜石女性部はワカメやメカブの加工品を販売し、地元ならではの味をアピールした。
 
釜石湾漁協釜石女性部はワカメやメカブの加工品を販売。ご飯のお供、おつまみに…

釜石湾漁協釜石女性部はワカメやメカブの加工品を販売。ご飯のお供、おつまみに…

 
釜石の春を盛り上げようと市外からの出店も多数

釜石の春を盛り上げようと市外からの出店も多数

 
 ラグビー「日本製鉄釜石シーウェイブス」の試合会場となる釜石鵜住居復興スタジアムでの出店が縁で、本まつりに出店した市外の事業者も。宮城県気仙沼市の大島から来たのは、飲食店&ゲストハウス「大漁丸」を経営する菊地幸江さん(63)。別店舗「GO-HEI」を構える娘夫婦と菓子などを販売した。三陸沿岸道路の開通で釜石までは車で約1時間。「つながりができてうれしい。地元以外の出店は新たな出会いがあって楽しい」と喜ぶ。13年前の震災津波、直近のコロナ禍で大島の観光、飲食業者も大きな打撃を受けた。「釜石も気仙沼も素晴らしい海が魅力。再び多くの人が訪れるようになるといい」と今夏に期待を寄せた。
 
気仙沼市・大島から出店した菊地幸江さん(左)家族。釜石との縁を喜ぶ

気仙沼市・大島から出店した菊地幸江さん(左)家族。釜石との縁を喜ぶ

 
塩蔵ワカメの詰め放題企画。子どもたちは丸めて入れたり工夫も

塩蔵ワカメの詰め放題企画。子どもたちは丸めて入れたり工夫も

 
正午のメカブ汁のお振る舞いには長い列ができた

正午のメカブ汁のお振る舞いには長い列ができた

 
 会場内では塩蔵ワカメの詰め放題企画、昼には先着200人限定のメカブ汁のお振る舞いもあり、人気を集めた。シープラザの建物内ではステージイベントも。釜石市出身の民謡歌手佐野よりこさんや同市の柳家細川流舞踊などが出演し、来場者を楽しませた。
 
 宮城県石巻市から親族4人で訪れた佐藤美智子さん(65)は新聞広告で同まつりを知り、初めて釜石市に足を延ばした。「ホタテやツブ、途中の道の駅ではホヤもいただき、海鮮づくしの一日。どれもおいしかった」と満足そう。今の三陸沿岸の景色に「(被災後の整備で)まちそのものはきれいになったが、家屋が少なくなったのはちょっと寂しい」。新型コロナの制限がない久しぶりの大型連休に「明日は孫、子どもたちとバーベキューです」と声を弾ませた。
 
シープラザ釜石では民謡や舞踊のステージイベントも

シープラザ釜石では民謡や舞踊のステージイベントも

 
肉の串焼きやかき氷はボリューム満点(左)。好みのものを買い求め飲食を楽しんだ

肉の串焼きやかき氷はボリューム満点(左)。好みのものを買い求め飲食を楽しんだ

 
 駅前橋上市場サン・フィッシュ釜石は3~5日まで、三陸の海産物を堪能できる企画を用意。各店で購入した好みの魚介の刺し身でオリジナル丼を楽しめる「のっけ丼」、貝類やエビ、イカなどをその場で焼いて食べられる「浜焼き」を提供した。隣のシープラザでイベントがあった4日は午前10時ごろをピークに大勢の客が訪れた。
 
 神奈川県横浜市の高橋広也さん(49)は家族3人で花巻市の実家に帰省。めい2人、母と連れ立って同まつりに足を運んだ。「新鮮な海産物のおいしさは格別」とのっけ丼、浜焼きを堪能。時間も場所もゆったりと食事を楽しんだ。三陸名物の“牛乳瓶入り”ウニを目当てに来たが、この日はあいにく水揚げがなく「後日、注文します」と楽しみは先延ばしに。コロナ禍でかなわなかった帰省は昨年から解禁。「子どもの顔を見せられるし、親族で集まれるのはすごく幸せ」と笑顔を輝かせた。
 
サン・フィッシュ釜石でのっけ丼や浜焼きを楽しむ家族ら

サン・フィッシュ釜石でのっけ丼や浜焼きを楽しむ家族ら

 
 サン・フィッシュ会場では、かまいしDMCが開発した「うにしゃぶ」鍋スープをお試しサイズ(2~3人前)で味わえる企画も。スープ、ワカメ、ご飯をセットにして、3日間限定20食を販売した。

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唐丹の誇り「大名行列」6年ぶりに 天照御祖神社式年大祭(釜石さくら祭り)で活気付く地域

天照御祖神社式年大祭(釜石さくら祭り)=4月28日、唐丹町

天照御祖神社式年大祭(釜石さくら祭り)=4月28日、唐丹町

 
 釜石市唐丹町の春を彩る、天照御祖神社(河東直江宮司)の式年大祭「釜石さくら祭り」は4月28日に行われた。3年に一度の祭りは新型コロナウイルス感染症の影響で、前回2021年の渡御は見送られており、今回は18年以来6年ぶりの開催。町内3神社のみこしが江戸時代から受け継がれる“大名行列”とともに地域を練り歩き、震災や戦災を乗り越え、まちを守る住民らにさらなる力を与えた。郷土芸能団体も随行する祭り行列には、町内7地区から約600人が参加。沿道では地域住民のほか、市内外から訪れた見物客が行列を出迎えた。
 
 同町片岸の高台にある天照御祖神社で神事を行った後、行列が繰り出した。神社下の一帯は13年前の震災津波で被害を受けた場所。住宅はないが、近隣の住民や観光客などが沿道に集まり行列を見守った。
 
神社からみこし渡御の行列が出発。子どもから大人までさまざまな役割を担う

神社からみこし渡御の行列が出発。子どもから大人までさまざまな役割を担う

 
東日本大震災の津波で被災した片岸地区を行列が進む

東日本大震災の津波で被災した片岸地区を行列が進む

 
 みこしを先導する大名行列は江戸時代の参勤交代の行列に由来するもので、同神社の氏子がみこしに無礼な行いをさせないように刀、鉄砲、やり、弓などを持ち、警護しながらお供したことが始まり。当時の伊達藩唐丹村本郷の番所に駐屯していた伊達藩士に行列の仕方を教わり、みこし渡御に取り入れたとされる。地区ごとに8つの役割を担い、今に受け継ぐ。今回は本郷の「御徒組」「杖供組」「杖引組」に続き、小白浜の「御道具組」、荒川の「御並槍組」がお供。伝統の所作でゆっくりと歩みを進める各組に、沿道で迎える人たちが盛んな拍手を送った。
 
 柏直樹さん(45)、壮太さん(12)親子は「御徒組」「杖供組」にそれぞれ初参加。唯一の中学生、壮太さんは「振り付けを覚えるのに苦労したが、伝統の祭りに参加できて楽しい。また出たい」。直樹さんは「無事に務められて何より。いい思い出になった。若い子に参画してもらい、伝統がつながっていけば」と期待を込めた。
 
写真上:伝統の所作で進むやっこ姿の「御徒組」。同左下:「杖供組」に初めて参加した柏壮太さん。同右下:「御徒組」に参加した父直樹さん(右)と

写真上:伝統の所作で進むやっこ姿の「御徒組」。同左下:「杖供組」に初めて参加した柏壮太さん。同右下:「御徒組」に参加した父直樹さん(右)と

 
 「いよぉー。いよぉー」「あれはよいとこなー」。独特の掛け声と口上で進む「御道具組」には17人が参加。前回から先導の声を担当する長助澤正也さん(42)は「決まり文句は2種類だが、その他にも祭りを盛り上げるようなセリフが伝統。殿様の道具持ちながら、祭りでは花形」と胸を張る。子どものころ、地元唐丹小の120周年記念行事でこれをやった。「大人になったらやってみたいと思っていた。念願かなった」と心弾ませ、見物客に精いっぱいサービスした。
 
さまざまな文句で見物客の期待に応える「御道具組」の長助澤正也さん(右上)。見守る人たちは笑顔と拍手で応援(右下)

さまざまな文句で見物客の期待に応える「御道具組」の長助澤正也さん(右上)。見守る人たちは笑顔と拍手で応援(右下)

 
公民館などが建つ小白浜地区の通りを進む「杖引組」

公民館などが建つ小白浜地区の通りを進む「杖引組」

 
荒川地区の住民が担当する「御並槍組」。江戸時代の大名行列の風情を醸す

荒川地区の住民が担当する「御並槍組」。江戸時代の大名行列の風情を醸す

 
 行列は片岸から小白浜へ。住宅や商店、公民館などが建ち並ぶ町中心エリアをにぎやかに進んだ。大杉神社(本郷)、西宮神社(小白浜)のみこしが天照御祖神社のみこしを各地区に案内する形で渡御。大杉、西宮両社のみこしは住民の前を勢いよく回り、威勢を放った。大杉神社のみこしを担ぐ倉又一平さん(35)は6年ぶりの祭りに「地元の血が騒ぐ。ここで育ち、今は離れて暮らす人たちも祭りには帰ってくる。若い世代が頑張って受け継いでいかなければ」と思いを強くする。
 
 行列を見守る人たちは青空の下で繰り広げられる華やかな行列に大興奮。小白浜の千田律子さん(76)は「自分も若いころ祭りに出た。やっぱり思い出しますね。踊りたくなる」と高揚し、「地元以外にも大勢の人たちが見にきてくれて感謝です」と顔をほころばせた。
 
地元小白浜地区で威勢を放つ西宮神社のみこし

地元小白浜地区で威勢を放つ西宮神社のみこし

 
大杉、西宮両神社みこしに続いて唐丹公民館前に到着した天照御祖神社のみこし

大杉、西宮両神社みこしに続いて唐丹公民館前に到着した天照御祖神社のみこし

 
 行列は唐丹の名所“本郷の桜並木”へ。かつては祭りと桜の咲く時期が重なっていたが、近年は地球温暖化の影響で開花は4月上旬に早まっている。この日は葉桜に変わった並木の下で行列が繰り広げられた。御道具組の長助澤さんは「葉桜がきれいだなー」などと言葉を発し行列を鼓舞。唐丹の大名行列“発祥の地”を盛り上げた。
 
地元本郷の桜並木の下を勢いよく駆ける大杉神社のみこし。迫力満点!

地元本郷の桜並木の下を勢いよく駆ける大杉神社のみこし。迫力満点!

 
伝統の舞を披露する荒川熊野権現御神楽。子どもたちも練習の成果を発揮

伝統の舞を披露する荒川熊野権現御神楽。子どもたちも練習の成果を発揮

 
市指定文化財の常龍山御神楽。天照御祖神社と共に歴史を重ねる

市指定文化財の常龍山御神楽。天照御祖神社と共に歴史を重ねる

 
 約4キロの往路の最終地点、本郷海岸ふかさ広場の御旅所では、3基のみこしの前で神事が行われた後、参加した郷土芸能全団体が演舞を披露した。唐丹町の各地区には神楽、虎舞、太鼓が継承され、同祭りには手踊りも加わる。各団体は久しぶりの祭りに躍動し、地域の元気を発信した。
 
 大石虎舞の小踊で同祭りに初めて参加した川村向葵さん(12)は「みんなで踊るのは楽しい。今日はお客さんがいっぱいで少し緊張した。今後は太鼓もやってみたい」と意欲をかきたてられた様子。同虎舞は震災後、郷土芸能をやりたいという唐丹中生の要望を受け、継続的に教えている。成果は文化祭で披露。大石町内会の畠山一信会長(76)は「指導が縁で、祭りの時には習った生徒らが応援メンバーとして駆け付けてくれる」と、地域を越えたつながりを喜ぶ。
 
気仙地方の系統をくむ大石虎舞。大きな頭と長い尾が特徴

気仙地方の系統をくむ大石虎舞。大きな頭と長い尾が特徴

 
 花露辺手踊り連は地元の花露辺海頭荒神太鼓とともに35人で参加。太鼓ばやしに合わせ2曲を踊った。今回は小学1年、幼児の参加が増えた。佐々木宏実代表(32)は「今の小学生は前回の祭りを知らない。一から教えるのが大変だったが、みんな頑張ってくれた」と喜ぶ。自身は結婚で移住。「学校も全面協力し、地域みんなでつくり上げる祭りはなかなかない。今日は唐丹町民全員がいるんじゃないかと思うぐらいの人出」と驚いた。
 
花露辺の手踊りは「花露辺海頭荒神太鼓」と一緒に参加。音楽にお囃子を乗せて2曲を踊った

花露辺の手踊りは「花露辺海頭荒神太鼓」と一緒に参加。音楽にお囃子を乗せて2曲を踊った

 
小白浜地区に伝わる「伊勢太神楽」。おかめの面を付けた女舞も

小白浜地区に伝わる「伊勢太神楽」。おかめの面を付けた女舞も

 
本郷の手踊りは内外にその名を知られる「桜舞太鼓」と。桜模様の長ばんてんで春満開

本郷の手踊りは内外にその名を知られる「桜舞太鼓」と。桜模様の長ばんてんで春満開

 
 川原清文大祭執行委員長(80)は「いざやろうとなれば、みんな一生懸命協力してくれる。祭りや伝統芸能は住民の絆、明日への希望にもつながっている」と意義を実感。一方で、少子高齢化、人口減少などで人員確保が難しくなっている側面もある。今回は、大名行列の2組、郷土芸能3団体が参加を見送った。「時代が変化する中、同じようにやろうとしても無理がある。多少、変化しながらでも継続していければ」と末永い継承を願った。
 
老若男女、幅広い世代が6年ぶりの祭りを楽しんだ

老若男女、幅広い世代が6年ぶりの祭りを楽しんだ

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足慣らし、行こうよ! 岩手・三陸沿岸最高峰「五葉山」山開き 春の芽吹き、爽やか

五葉山が山開き。シーズン到来に笑顔を見せる登山者

五葉山が山開き。シーズン到来に笑顔を見せる登山者

 
 釜石、大船渡、住田の3市町にまたがる三陸沿岸最高峰・五葉山(標高1351メートル)は4月29日、山開きした。リアス海岸や奥州山系の山並みなど山頂から望む雄大な景色、原生林や花々の群落など標高によって異なる表情を見せる豊かな自然が魅力。待ちわびた登山者はこの時期ならではの眺望や芽吹きを楽しみながら爽やかな汗を流している。
 
 両市境の赤坂峠登山口で安全祈願祭があり、五葉山神社の奥山行正宮司が登山道を清めて無事故を祈った。3市町村で組織する五葉山自然保護協議会長の渕上清大船渡市長が「皆さんに快適に登山してもらえるよう、登山道の適切な維持管理や自然の保全保護などを行っていく」とあいさつ。山頂を目指して歩き出した登山客に「安全第一で楽しんでください」と声をかけた。
 
多くの登山者が待つ赤坂峠登山口で安全祈願祭が行われた

多くの登山者が待つ赤坂峠登山口で安全祈願祭が行われた

 
五葉山神社の宮司が登山道を清めて無事故を願った

五葉山神社の宮司が登山道を清めて無事故を願った

 
 間隔を確保しながら列を作って、思い思いのペースで山歩き。ツツジやシャクナゲの新芽、新緑を眺めたり、自然を楽しむ姿も見られた。登山仲間と訪れた釜石市の青柳あや子さん(73)は「水場や避難小屋があって安心で、登りやすい山。花はまだだろうから、風や空気、おしゃべりを楽しみながらゆっくり行く」とにっこり。山田町の佐々木千恵さん(73)、宮古市の畠山亮子さん(69)と顔を合わせ、「そちこちの山に遠征するから、きょうは足慣らしだね」と元気だった。
 
ぐんぐん力強い足取りで頂上を目指す登山者

ぐんぐん力強い足取りで頂上を目指す登山者

 
「きょうは足慣らしです」。元気な“山レディー”たち

「きょうは足慣らしです」。元気な“山レディー”たち

 
「山、登りたい!」と宮城県から足を運んだ小学生グループ

「山、登りたい!」と宮城県から足を運んだ小学生グループ

 
 五葉山は山頂まで比較的緩やかな道が続き、家族連れや年配者、初心者でも登りやすい。山開き前に楽しんだ人もいて、「上の方に雪が残っていた」「雪はないけど、ぬかるんでいた」と情報交換したり。近年は雪が少ない傾向で、季節の進み具合も感覚的に早まっている。
 
 この日も例年の服装では汗ばむ陽気に。暑さを感じて袖をまくったり、半袖姿の人もいた。そうは言っても、天気の急変など何が起こるか分からないのが自然。山岳関係者は「装備はしっかりと。自分の体力に合わせて登ってほしい。山のマナーも忘れずに」と呼びかける。
 
半袖や袖をまくったりする姿も。そんな暖かさにツツジも反応?

半袖や袖をまくったりする姿も。そんな暖かさにツツジも反応?

 
春の行楽シーズン到来に登山客の顔も自然とほころぶ

春の行楽シーズン到来に登山客の顔も自然とほころぶ

 
山頂へ向かう登山者。新緑の中をゆっくり進んでいく

山頂へ向かう登山者。新緑の中をゆっくり進んでいく

 
 5月のゴールデンウィーク(GW)期間のほか、ツツジやシャクナゲが咲く5~7月にかけてもにぎわいが予想される。

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広報かまいし2024年5月1日号(No.1831)

広報かまいし2024年5月1日号(No.1831)
 

広報かまいし2024年5月1日号(No.1831)

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【P1】
表紙

【P2-3】
犬の登録と狂犬病予防注射 他

【P4-5】
新たな障がい福祉サービス事業所 他

【P6-7】
まちのお知らせ

【P8】
スターダスト☆レビューうのすた☆スペシャルライブ 他

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2024050100013/
釜石市

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釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
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馬との触れ合いで人づくり 釜石・黍原豊さん(三陸駒舎) アウトドア・リーダーズ大賞

馬の背に乗ってはしゃぐ子どもたちと同じ笑顔の黍原豊さん(右から2人目)=4月25日

馬の背に乗ってはしゃぐ子どもたちと同じ笑顔の黍原豊さん(右から2人目)=4月25日

 
 釜石市橋野町の一般社団法人「三陸駒舎」(寄田勝彦代表理事)は築100年を超える古民家を拠点に、馬と共に暮らす地域文化の再生やホースセラピーによる心のケアなどに取り組む。そこで生活しながら事業を担う理事の黍原豊さん(47)が、野外活動を通して人材育成に取り組むリーダーを表彰する「ジャパン・アウトドア・リーダーズ・アワード(JOLA)2024」で、最高位となる大賞に輝いた。馬や自然との関わりを手法とした地域づくりの実践や「人間の土台作りに軸を置いている姿勢や考え方」が評価された。大賞の受賞は東北地方では初めて。
 
 黍原さんは愛知県瀬戸市出身で岩手大農学部卒。岩手県葛巻町の廃校を利用したエコスクールでの活動を経て、東日本大震災後の2013年に妻の故郷・釜石に移った。復興まちづくりを手助けする「釜援隊」として活動。子どもたちの居場所づくりに取り組む中、各地で教育牧場を経営する寄田代表と出会って馬に興味を持つようになった。
 
 仮設住宅などで馬との触れ合い体験などを行ってみた黍原さんは、子どもたちの生き生きした様子や、馬との生活を懐かしむ年配者の言葉に「ピンときた」。動物や自然との触れ合いによる心のケア、地域再生の可能性を見いだし、15年4月に寄田代表と同法人を立ち上げた。馬屋と母屋が一体の曲がり家を改修し、家族3人で定住。16年春に馬がやってくると、トレッキングなどエコツーリズム事業を開始し、17年から本格的にホースセラピーに乗り出した。
 
豊かな自然に囲まれた三陸駒舎の拠点。曲がり家で馬とともに暮らす

豊かな自然に囲まれた三陸駒舎の拠点。曲がり家で馬とともに暮らす

 
 「乗せてくれてありがとう」。雌のドサンコ(北海道和種)「アサツキ」(14歳)をなでる子どもたちの表情は柔らかい。気持ちが高ぶった子が馬の背をたたくと、「ダメだよ、痛がるから。驚くでしょ」と別の子が声をかける。「そうだね、ごめん」。そんなやりとりを黍原さんが静かに見守る。
 
 いつもの“さんこま”の風景。放課後の子どもたちがやって来てアサツキのほか、同じ雌のドサンコ「ピーナッツ」(10歳)、雌のポニー「笑馬(えま)」(11歳)と触れ合ったり、馬屋の掃除や餌の計量など世話のお手伝いをしたりする。すぐそばにある森や川といった自然環境を生かした遊びにくり出す子たちがいれば、室内で絵を描いたり、おやつを作り始める子もいる。
 
雌馬の「アサツキ」の背に乗る子どもたちを見守る黍原さん(左)

雌馬の「アサツキ」の背に乗る子どもたちを見守る黍原さん(左)

 
アサツキと触れ合う子を見つめる黍原さんの表情はあたたかい

アサツキと触れ合う子を見つめる黍原さんの表情はあたたかい

 
 利用するのは小中学生が中心。今では月に延べ200人が市内外から訪れる。中には発達障害を抱えていたり、不登校だったりする子もいる。常勤スタッフ5人、非常勤2人で見守る。ここでは「まず、やりたいことをやってもらうのが決まり」と黍原さん。その中で、苦手なことや課題を見つけて挑戦してもらうよう提案する。そうすると、「子どもたちは意欲を持って頑張り、できることを増やしていく」という。
 
 コミュニケーションが苦手だった自閉症の小学生の男子は馬との関わりから体験活動を広げていき、黍原さんいわく「もともと持っていたエネルギーをいい方向に出せるようになった」ことで、友達と遊べるようになった。馬の世話で「命をつなぐこと」を体感した子どもの様子から「自分も役立っていると自己有用感が増している」と感知。言葉という仕切りで世界を分けない動物や自然との触れ合いは「差別や偏見をとかす」と受け止める。こうした福祉と野外活動を絡めた点が今回の受賞につながったと独自に分析する。
 
母屋と馬屋が一体の曲がり家は遊びや学びの要素が散らばる

母屋と馬屋が一体の曲がり家は遊びや学びの要素が散らばる

 
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子どもたちは思い思いの遊びを見つけて自由に過ごす

 
 表彰は国内外のアウトドア関連企業や活動家、研究者らでつくるJOLA運営委員会(東京都)が主催。2017年から行われ、コロナ禍で21年は中止された。7回目の今年は全国から51人の応募があり、審査を経て、黍原さんを含む優秀賞6人、奨励賞2人を選出。3月13日に都内で行われた表彰式当日に、優秀賞の中から大賞と特別賞が発表された。団体や組織ではなく、個人に焦点を当てているのが特徴で、今回を含めこれまでに全国の60人が受賞している。
 
賞状を手に笑顔を見せる黍原さん

賞状を手に笑顔を見せる黍原さん

 
子どもたちの笑顔と元気を引き出す活動を続けていく

子どもたちの笑顔と元気を引き出す活動を続けていく

 
 大賞受賞は「僕なんだ」と意外だったという黍原さんだが、「家族や地域住民、関わってくれている人たちの力を含めた評価」と喜ぶ。団体の活動を振り返り、自身の成長を改めて実感する機会になったと感謝も口にする。一方で課題が見えてきたといい、「苦しい立場の子どもたちも来ているが、馬のおかげでできていることがある。そのノウハウや経験を伝えていきたい。保護者向けの勉強会など家庭に対する支援をセットにした取り組みにしていければ」と展望した。

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戻れ!震災前の生き物たち 釜石・根浜にビオトープ整備 GWには体験イベントも

根浜シーサイド内に整備されたビオトープ(生物生息空間)

根浜シーサイド内に整備されたビオトープ(生物生息空間)

 
 釜石市鵜住居町の根浜海岸観光施設「根浜シーサイド」内に、多様な生き物が生息できる「ビオトープ」が整備された。東日本大震災の津波で失われた水辺環境を復元することで本来の生態系を取り戻し、自然との触れ合いや環境教育に役立てる狙い。同所の市指定管理者かまいしDMC(河東英宜代表取締役)が、市民団体かまいし環境ネットワーク(加藤直子代表)と協働で取り組んだ。大型連休最終日5月6日には、生き物のすみかづくりなどを行うお披露目イベントも予定される。
 
 ビオトープは多目的広場(運動場)の西側、山林が隣接する約80平方メートルの土地を市から借用して整備した。山から流れ出る沢水を引き込んだ大型の池を造成。池の縁の土留めにはスギの丸太材や花こう岩の割栗石を用い、より自然に近い景観にした。池の水深は約30センチ。排水路を施し、水の循環を可能にした。甲子町の佐野建設が施工。釜石東ロータリークラブ(RC、佐藤猛夫会長、会員28人)が60周年記念事業として同所の環境整備のために拠出した寄付金を活用し、実現させた。
 
水辺にすむ生き物が集えるように大型の池を配置

水辺にすむ生き物が集えるように大型の池を配置

 
19日は排水路などの仕上げ作業が行われた。池の真ん中には石を配した小島も(左下)。小鳥やカエルの休息風景も見られるかも?

19日は排水路などの仕上げ作業が行われた。池の真ん中には石を配した小島も(左下)。小鳥やカエルの休息風景も見られるかも?

 
 根浜シーサイドの敷地には震災前、同地区の集落があった。ビオトープの整備地一帯は元々田んぼで、トウホクサンショウウオ、シュレーゲルアオガエル、ニホンアマガエル、ドジョウなど多様な生き物が生息していた。震災の津波は集落全体を飲み込み、住民らは復興事業で新たに造成された高台住宅地に集団移転。跡地にはキャンプ場や多目的広場などを備えた同観光施設が整備された。
 
 震災前から同所の環境に注目していた同ネットワークの加藤代表は、被災後も山からの沢水が見られるこの場所に「もう一度、生き物が住める環境を作れないか」と思案。同DMCにも同様の考えがあり、このたびの釜石東RCの支援を機に事業実現にこぎ着けた。
 
 整備に先立ち、3月初旬に設けた近くの実験池にはトウホクサンショウウオがさっそく産卵。イモリの姿も確認されており、同所が生息環境に適していることを裏付けた。新設池が周辺の自然になじんでくれば、カエルやトンボなど水辺に集まる生き物が見られるようになるのではと期待される。
 
水に落ちたスギ枝に産み付けられたトウホクサンショウウオの卵(左下拡大)。ふ化に期待する加藤代表(右)とかまいしDMCの佐藤奏子さん

水に落ちたスギ枝に産み付けられたトウホクサンショウウオの卵(左下拡大)。ふ化に期待する加藤代表(右)とかまいしDMCの佐藤奏子さん

 
池の背後には広葉樹が茂り、四季折々の景色も楽しめそう

池の背後には広葉樹が茂り、四季折々の景色も楽しめそう

 
 県環境アドバイザーなども歴任する加藤代表はビオトープの概念が浸透する前から、その重要性に着目。これまでに日向ダム(1997年)、甲子町松倉(2005年)、片岸町(07年)につくり、多種多様な生き物が見られる空間を再現。子どもたちの環境教育などに役立ててきた。3年越しの構想が実を結んだ“根浜ビオトープ”に、「本来の生き物が戻るには2~3年はかかるだろうが、自然にすみつくのを待ちたい。近年は自然環境の変化や安全管理の面から、身近に生き物を観察できる場が少なくなった。ここが自然との触れ合い空間になるとともに、地元の方が昔を懐かしむ憩いの場になれば」と願う。
 
 同DMCは5月6日午後1時半から、ビオトープのお披露目を兼ねて、生き物のすみかづくりの体験イベントを予定している。
 
竹を渡した部分に生き物のすみかを作る体験イベントを大型連休中に開催予定

竹を渡した部分に生き物のすみかを作る体験イベントを大型連休最終日に開催予定

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振り返り備える…事前防災へ 釜石市、スマホで避難行動分析 訓練で実証実験、結果を報告

スマホの位置情報を活用し人流を解析する実証実験の結果説明会

スマホの位置情報を活用し人流を解析する実証実験の結果説明会

 
 釜石市は19日、3月の地震・津波避難訓練で行ったスマートフォンの位置情報データを活用して避難行動を分析する実証実験の結果説明会を市役所で開いた。リアルタイムな動きを可視化することで人が集まった場所を確認でき、想定されていなかった新たな経路を発見するなど情報収集ツールとして有用性も認識。市はデータをホームページで公開するほか、行動の振り返りで活用するといった「事前防災」に役立てることを視野に導入について検討を進める。
 
 実証実験は3月3日の避難訓練に合わせて実施した。ソフトバンク子会社で位置情報を活用したビッグデータ事業を手掛ける「Agoop(アグープ)」(東京)が協力。同社が提供する歩数計測アプリをスマホにインストールした約200人の行動データを分析した。
 
実証実験の概要や結果を説明する加藤有祐取締役兼CTO

実証実験の概要や結果を説明する加藤有祐取締役兼CTO

 
 説明会には市幹部職員、小中学校の校長、市議ら約50人が参加。同社の加藤有祐取締役兼最高技術責任者(CTO)が、リアルタイムの人流に岩手県が公表した最大クラスの津波浸水想定のシミュレーションを重ねた動画などをモニターに表示しながら説明した。
 
 人流データをモニタリングしたのは市内の4エリア。スマホの衛星利用測位システム(GPS)を活用したもので、最短3分前の行動を可視化、1分ごとに情報が更新される。ほとんどの人は警報発令の1~3分後に避難行動を開始し、10分ほどで避難が完了。素早く適切に行動できていることを確かめることができた。
 
釜石市内4エリアの人流データに津波シミュレーションを重ねて表示

釜石市内4エリアの人流データに津波シミュレーションを重ねて表示

 
 実験では「市が想定していなかった新たな経路を見つけられた」と報告もあった。避難は短距離ルートで-と考えていたが、唐丹地区では「遠回り」の動きが見られた。現地の様子を確認すると、勾配はあってもより早く浸水想定域を抜けることができ、加藤取締役は「素早く高台に避難するという教育が基になった行動では」と分析。訓練後に可視化データを見て振り返ることで、「危機意識や訓練への参加意識の醸成につながるのでは。平時からの利用が大事で、データ分析を活用してほしい」と強調した。
 
想定外ルートの発見につながった事例などを示しながら解説した

想定外ルートの発見につながった事例などを示しながら解説した

 
 市防災危機管理課の川崎浩二課長は「避難時に行動や場所をどう見いだしているか、可視化したことで知ることができた」と手応えを得る。避難訓練ではAI(人工知能)搭載のカメラを使って避難者の属性などを把握する実験も行っていて、こうした技術を組み合わせ、事前防災に役立てたい考え。行動の見える化で「訓練参加のモチベーションにつながれば」と期待する。
 
 ただ、県公表の浸水想定域には約1万1000人が暮らすが、最終的な訓練参加者は約2400人で、いかに増やすかが課題として残る。また、分析の鍵となるのはデータ量で、訓練の周知と合わせアプリのインストールも呼びかけたが、想定より少なかった。協力者を増やす取り組みも課題として挙がった一方で「下校時の避難訓練で活用したい」との声もあり、市は防災教育や地域防災の場での活用を検討していく。
 
 位置情報を用いた人流データは1月の能登半島地震でも活用された。同社が提携企業から収集した位置情報を基に通行実績マップを作成し、災害派遣医療チームや支援団体などに提供。救援ルート、物資供給の優先度の検討に役立てられたという。釜石の訓練では避難者がいる場所が自動で検知され、避難所に集まった人数がランキング形式で表示された。市の猪又博史危機管理監は「人の流れが自動的に目に見えれば、次の対応につながる。想定外の避難場所を見つけるのにも使えるのではないか。導入に向け、庁内で協議を重ねたい」とした。

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地酒「浜千鳥」お気に入りは? 春恒例・すべてを楽しむパーティーで飲み比べ 28銘柄堪能

今年で32回目! 浜千鳥のすべてを楽しむパーティー=16日夜
 

今年で32回目! 浜千鳥のすべてを楽しむパーティー=16日夜

 
 釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は16日、第32回浜千鳥のすべてを楽しむパーティーを大町のホテルクラウンヒルズ釜石で開いた。市内外から約120人が参加。同社が掲げる“地産地消”の酒を心行くまで味わい、蔵人の技と地元の米、水で生まれる日本酒のうまさを体感した。ミニトーク、利き酒挑戦会などもあり、楽しい夜のひとときを過ごした。
 
 開会にあたり新里社長は、昨年創業100年を迎えた同社の歴史を紹介。製鉄所の繁栄によるまちの酒需要増加を受け、遠野の造り酒屋がルーツの新里家と釜石の有力者の出資で同社がスタートしたことを明かした。「会場にはそれぞれ特徴のある酒が並ぶ。“酒ときどき水”で、いろいろな銘柄を少しずつ試してほしい」と呼び掛けた。
 
 1部は「100年企業の地域ブランドつくり」と題したミニトーク。1902(明治35)年創業のみそ、しょうゆ製造販売業、藤勇醸造(大渡町)の小山和宏専務取締役と23(大正12)年創業の浜千鳥の奥村康太郎杜氏(醸造部長)が話した。小山専務によると、初代藤井勇助氏は釜石鉱山田中製鉄所の横山久太郎所長の命で、資金的バックアップを受けて同社を創業。市民に親しまれる甘口のしょうゆは九州地方に由来するもので、官営八幡製鉄所の操業(1901年)時、釜石の技術者が同地へ指導に行ったことが関係しているという。
 
写真上:藤勇醸造の小山和宏専務(中)、浜千鳥の奥村康太郎杜氏(右)によるミニトーク 同下:両社の歴史を感じながら聞き入る参加者

写真上:藤勇醸造の小山和宏専務(中)、浜千鳥の奥村康太郎杜氏(右)によるミニトーク 同下:両社の歴史を感じながら聞き入る参加者

 
 津波や艦砲射撃を乗り越え100年以上の歴史を刻む両社。時代の変遷とともに新たな挑戦も行いながら、地元の味を創り上げてきた。奥村杜氏は大槌産酒米や湧水を使った酒造り、小山専務はこうじを活用した甘酒や化粧水などの新商品、カフェバーの開店について説明。地域に根差した企業として、今後も発展させていくことを誓い合った。
 
 2部は参加者お待ちかねのパーティー。乾杯後、さまざまな酒と料理を楽しんだ。各テーブルには3月の県新酒鑑評会で金賞を受賞した「純米大吟醸結の香」、大槌産酒米と湧水で仕込んだ「源水」、岩手大生が中心となったi-Sake(あいさけ)プロジェクトとの共同企画「Rondo Iwate(ろんどいわて) 2024」など5銘柄が用意された。料理では地元食材や藤勇醸造のみそ、しょうゆ、浜千鳥の酒かすを使ったメニューも提供された。
 
テーブルに並んだ酒でまずは乾杯!この後を楽しみに…

テーブルに並んだ酒でまずは乾杯!この後を楽しみに…

 
おいしい酒に笑顔を広げ、パーティーを満喫

おいしい酒に笑顔を広げ、パーティーを満喫

 
 毎回人気の試飲コーナーには吟醸酒、純米酒、にごり酒、無ろ過生酒、米焼酎など23種の酒が並んだ。中には1991年醸造の30年ものの古酒も。参加者は興味を持った酒を飲み比べ、香りや味の違いを楽しんだ。
 
 盛岡市の伊勢美里さん(38)、本堂満智子さん(43)、成田麻由さん(30)は古酒、本醸造、純米酒を飲み比べ。「香りが強い」「甘いけどすっきり」などと感想を言い合い、「違いが分かり面白い」とにっこり。飲食業の伊勢さんは「店でも浜千鳥は好まれる。最近は“源水”押し。『すっきりしておいしい』と好評」と話す。ずらりと並んだ浜千鳥商品に「これだけの種類があるとワクワクする」と堪能した。
 
さまざまな銘柄を試飲できるコーナー。目移りしそう

さまざまな銘柄を試飲できるコーナー。目移りしそう

 
浜千鳥自慢の酒28種がずらり。1991年醸造の「仙人郷」(右下写真)は参加者も興味津々

浜千鳥自慢の酒28種がずらり。1991年醸造の「仙人郷」(右下写真)は参加者も興味津々

 
同じものはどれとどれ? 5種の酒を判別する利き酒コーナー

同じものはどれとどれ? 5種の酒を判別する利き酒コーナー

 
 同社に酒米「吟ぎんか」を供給する大槌酒米研究会の佐々木重吾会長によると、昨年は猛暑の影響で米作りには大きな苦労が伴ったという。浜千鳥の奥村杜氏も「これまでに経験したことがない気候。米が溶けにくく吸水などで難しさがあった」と振り返った。その中、県新酒鑑評会では純米大吟醸結の香の金賞に加え、県酒造好適米(吟ぎんが、ぎんおとめ)を使った部門で吟醸酒が7年連続の全農岩手県本部長賞を受賞している。
 
 職場の仲間で参加した釜石市の柏﨑勇希さん(23)は「こんなに種類があるとは驚き。いろいろな酒を気軽に飲めていいですね。好みに合うものも見つかりそう」。同パーティーへの参加は初めてで、「酒好きな人たちからいろいろな話も聞けて面白い」と交流も楽しんだ。
 
 春を迎え、来季の酒造りに向けた稲作準備も始まる。同社の酒造りの一連の工程を学べる一般向け体験塾は5月26日の田植えからスタートする。
 
参加者と談笑する浜千鳥の新里進社長(左)

参加者と談笑する浜千鳥の新里進社長(左)

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春告げる「松倉神社祭典」 神楽、虎舞で子どもら躍動 地域の伝統を末永く後世に

松倉神社例祭。地域に伝わる神楽と虎舞が神社に奉納された=13日夕方

松倉神社例祭。地域に伝わる神楽と虎舞が神社に奉納された=13日夕方

 
 釜石市甲子町の松倉神社(宮司=須藤寛人・正福寺住職)の例祭は13、14の両日行われた。祭事は松倉町内会(佐野賢治会長、約600世帯)が主催。同町内会芸能部(小久保謙治部長)が受け継ぐ「松倉太神楽」と「松倉虎舞」が神社や地区内で披露され、満開の桜と相まって春の訪れを華やかに彩った。
 
 松倉神社は釜石高校南側の地区内を見下ろす高台にあり、火伏せの神を祭る。本来の縁日(祭りが行われる日)は17日だが、近年は同日に近い土・日曜日に日程を組んで祭りを開催する。13日は宵宮を前に、地区東側の新興住宅地内の店舗3軒を回り門打ち。住民や芸能部の子どもらの希望で実現させた。夕方には同神社で祈祷と踊りの奉納が行われた。
 
宵宮祭で行われた祈祷(写真左)。神社は甲子町松倉の高台、大木の林の中にある(写真右)

宵宮祭で行われた祈祷(写真左)。神社は甲子町松倉の高台、大木の林の中にある(写真右)

 
神前で手を合わせ、今年1年の地区の平穏などを祈る祭り参加者

神前で手を合わせ、今年1年の地区の平穏などを祈る祭り参加者

 
 現甲子町松倉地区は江戸時代、内陸と沿岸を結ぶ交易の要衝“宿場町”として栄え、両芸能はともに江戸前~中期(諸説あり)に伝えられたとされる。松倉太神楽は盛岡の七軒丁(現盛岡市仙北町)から訪れた芸能者によってもたらされたといわれる。昭和10年代までは祭りや婚礼で披露され、地域の祝い事に欠かせないものとなっていたが、戦後は衰退。昭和50年代に町内会が中心となって復活に乗り出し、後継者育成を図りながら現在に至る。
 
江戸時代から今に受け継がれる「松倉太神楽」

江戸時代から今に受け継がれる「松倉太神楽」

 
松倉太神楽は2月に行われた市郷土芸能祭にも出演。後継者も育成中

松倉太神楽は2月に行われた市郷土芸能祭にも出演。後継者も育成中

 
 松倉虎舞は現山田町大沢から伝わったとされる。三陸随一の豪商だった前川(吉里吉里)善兵衛の千石船が航海で大嵐に見舞われ、流れ着いた島で、船方衆がそこに伝わる虎舞を習い覚えて持ち帰ったのが大沢虎舞とされ、釜石大槌地域の虎舞の多くは大沢から広まったと考えられている。松倉は“和藤内の虎退治”を描いた演目を継承する。
 
神社周辺は桜が満開!天候にも恵まれ、絶好の祭り日和の中、躍動する「松倉虎舞」

神社周辺は桜が満開!天候にも恵まれ、絶好の祭り日和の中、躍動する「松倉虎舞」

 
 例祭での両芸能披露は新型コロナウイルス禍で3年休止後、昨年から再開。今年は小中高生を中心に約60人が参加し、3月から週2回の練習を重ねてきた。昨年から虎舞の踊りに参加する森奏心さん(甲子小2年)は「練習は大変だけど、みんなで跳ねて踊るのは楽しい。ちょっと間違ったけど最後までできた」。虎の舞い手、横田楽さん(甲子中3年)は友人に誘われて参加し2年目。「踊りは自分なりには80点ぐらい。地域の皆さんに見てもらえるのがうれしい」と話す。横田さんを誘った佐藤健太さん(同)は虎舞をやっていた祖父に憧れ、幼稚園年中から親しむ。市内最古ともいわれる同虎舞に誇りを感じ、「大人になっても続けたい。下の世代にももっと広まり、自分たちを超えるぐらいうまくなってほしい」と期待する。
 
各演目で練習の成果を発揮。将来が楽しみな小学生ら

各演目で練習の成果を発揮。将来が楽しみな小学生ら

 
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やりや刀を手に虎を追い込む役は子どもらが担う

 
 虎舞には松倉地区以外からも子どもたちが参加。小久保芸能部長(51)は「これだけ集まってくれるのはありがたい。伝統も大事にしながら、子どもたちのやりたい形を実現していきたい」と、部長就任初年にあたり継承への思いを新たにする。両芸能は4月27日に行われる道の駅釜石仙人峠の9周年祭でも披露する予定。「もっと踊りたい」という子どもたちの希望をかなえるべく、「声がかかれば他地域にも出向きたい。外との交流は子どもたちの刺激にもなるはず」と小久保部長。
 
虎舞の終盤演目「笹喰(ば)み」は虎の荒々しい姿を表現

虎舞の終盤演目「笹喰(ば)み」は虎の荒々しい姿を表現

 
最後は“和藤内”が虎を仕留める。威勢のいい口上も

最後は“和藤内”が虎を仕留める。威勢のいい口上も

 
 佐野町内会長は「祭りの思い出がいつまでも心に残り、大きくなって釜石を離れても戻ってきてくれる。そんな地域のつながりを大事にしていきたい。祭りは絶やしてはいけない」と意を強くする。同地区には東日本大震災後、被災地域から移住し新たに自宅を構えた人も多く、町内会加入世帯はこの10~15年の間に100世帯近く増えている。「町内会のモットーは親睦第一。新規移住者も巻き込んで町内会活動を活発化させたい。次世代への引き継ぎも確実に進めていければ」と地域の未来を見据える。