水辺に集う野鳥に子どもら大喜び! 鵜住居川河口周辺で観察会 飛ぶ、泳ぐ、ついばむ-多彩な姿に感激


2025/01/29
釜石新聞NewS #地域

片岸公園内の沼地に着水するオオハクチョウ=25日

片岸公園内の沼地に着水するオオハクチョウ=25日

 
 釜石市の鵜住居川河口周辺で25日、冬季恒例の水辺の鳥観察会(市生活環境課主催)が開かれた。同所には今年も冬の使者・オオハクチョウが飛来。その優雅な姿で訪れる人を楽しませている。観察会の参加者は釜石野鳥の会(臼澤良一会長、7人)の会員に見つけた鳥の名前や特徴を教わりながら観察。色彩豊かな体色や羽を広げて滑空する姿に感動の声を上げた。
 
 同観察会は市民の環境保全意識の醸成などを目的に1977年から続けられる。今年はボーイスカウト釜石第2団が行う観察会との同時開催。子どもから大人まで45人が集まった。
 
 観察は東日本大震災後に整備された片岸公園からスタート。沼地を囲む遊歩道を進んでいくとオオハクチョウの群れが参加者を出迎えた。羽が灰色の幼鳥を含め20羽以上を確認。参加者は間近で見る体の大きさ、くちばしを含む顔の形状、羽の質感などをじっくりと観察した。野鳥の会の会員は「ハクチョウは冬の寒さをしのぐため日本より北の方からやってきます。ここには2月ごろまでいて、再び北に帰ります」などと説明。人の近くに寄って来るが、野生の鳥なので決して餌を与えないよう教えた。鵜住居川周辺では今季、約40羽の飛来が確認されているという。
 
片岸公園の遊歩道から野鳥を探す観察会の参加者

片岸公園の遊歩道から野鳥を探す観察会の参加者

 
オオハクチョウの群れを間近で観察。独特な鳴き声も聞こえる

オオハクチョウの群れを間近で観察。独特な鳴き声も聞こえる

 
幼鳥は灰色の羽が特徴。成鳥になるにつれ真っ白に…

幼鳥は灰色の羽が特徴。成鳥になるにつれ真っ白に…

 
公園内の広場で餌をついばむ姿も。水上では見られない足の形状も分かる

公園内の広場で餌をついばむ姿も。水上では見られない足の形状も分かる

 
 さらに進み、鵜片橋のたもとから川の中州に目をやるとアオサギの群れがいた。フィールドスコープや双眼鏡で見ると青っぽい羽の色や独特の立ち姿が確認できた。橋の上からはヒドリガモやマガモなど複数種のカモを確認。潜水が得意なカイツブリやオオハムも見られた。
 
写真左上から時計周りにオカヨシガモ(雄)、ホオジロガモ、ホシハジロ(雌)、オオバン

写真左上から時計周りにオカヨシガモ(雄)、ホオジロガモ、ホシハジロ(雌)、オオバン

 
ヒドリガモが群れで飛ぶ姿も圧巻。この日は人の頭上近くも通った。水辺でも多くの個体が確認された

ヒドリガモが群れで飛ぶ姿も圧巻。この日は人の頭上近くも通った。水辺でも多くの個体が確認された

 
 長内川と鵜住居川の合流地点、鎧坂橋付近では、鮮やかな体色で“飛ぶ宝石”と称されるカワセミが見られた。土手に横穴を掘って巣を作る習性があり、周辺ではふんで白くなった土が確認されている。営巣に適した環境があることで、ここ数年、毎年見られている。観察会では先行した人たちだけが運良く目にすることができた。
 
釜石鵜住居復興スタジアム前の鎧坂橋付近では毎年カワセミが見られる。左下のカワセミ写真は釜石野鳥の会の菊地利明さんが以前に撮影

釜石鵜住居復興スタジアム前の鎧坂橋付近では毎年カワセミが見られる。左下のカワセミ写真は釜石野鳥の会の菊地利明さんが以前に撮影

 
 約1時間の観察後、出発地点に戻り、見られた鳥の種類を集計した。結果は31種類。この日は風のない穏やかな天候だったためか、風に乗って滑空するオオワシやハヤブサなどの大型猛きん類は確認できなかったが、あまり見られないハシビロガモやシロエリオオハムを見ることができた。
 
ハシビロガモはくるくる回りながら採餌。個体の周りには水の渦ができる。平たいくちばしも特徴

ハシビロガモはくるくる回りながら採餌。個体の周りには水の渦ができる。平たいくちばしも特徴

 
観察会では確認できなかったベニマシコ(雄)を写真で紹介。顔や腹部の赤みが特徴。今の時期に見られる

観察会では確認できなかったベニマシコ(雄)を写真で紹介。顔や腹部の赤みが特徴。今の時期に見られる

 
 同市の麻生茜さん(33)、伊織ちゃん(5)親子は観察会に初めて参加。「いろいろな鳥をいっぱい見た。羽根も見つけたよ。青い鳥が好き」と伊織ちゃん。母茜さんは「今まで鳥は風景の一部として見るだけだったが、今日は雄と雌の模様の違いや生態などを詳しく知ることができてすごく面白かった」と大満足。昨春、同市に越してきた。「岩手釜石に来たからには自然のことをもっと知って、いろいろな気付きを得られれば」と子どもの成長の一助になることも期待する。
 
 ボーイスカウト団員の伊藤颯秀さん(小6)は車で同所を通りかかって鳥を見たことはあったが、じっくり観察したのは今回が初めて。「かわいい鳥もいたし、群れでいたオオハクチョウが印象に残った。釜石にこんなに鳥がいるのはすごい。今度は空を高く飛ぶワシとかタカを見てみたい」と声を弾ませた。
 
 2011年の震災による津波で同所一帯は大きな被害を受け、野鳥の隠れ家となるヨシ原など草木は全て流された。震災後の整備事業で沼地を設けた新たな自然公園が完成し、周辺の植生が徐々に戻るにつれ、激減した野鳥も少しずつ増えてきた。震災前の50種前後には及ばないものの、直近の過去3年は30種前後で推移している。昨年11月の野鳥の会による詳細調査では約40種が確認された。
 
震災後、水門が整備された鵜住居川河口周辺(写真上)、堤防内側の片岸公園(写真下)は草地が再生してきたが、鳥が営巣できる樹木はまだ少ない

震災後、水門が整備された鵜住居川河口周辺(写真上)、堤防内側の片岸公園(写真下)は草地が再生してきたが、鳥が営巣できる樹木はまだ少ない

 
 釜石野鳥の会の臼澤会長は「被災直後に比べ種類は多くなったが、個体数が減っている印象。身近だったスズメもあまり見かけなくなった。地球温暖化などさまざまな環境の変化が影響しているのかも」と懸念。被災から10年以上かけて復活してきた野鳥の生息環境を次世代につなぐため、「観察会をきっかけに自然保護に関心を持つ人が増えてくれるといい。私たちはそのお手伝いを続けていきたい」と話した。
 
参加した子どもたちは双眼鏡やフィールドスコープでさまざまな野鳥を観察。楽しい時間を過ごした

参加した子どもたちは双眼鏡やフィールドスコープでさまざまな野鳥を観察。楽しい時間を過ごした
 
「これは何の羽根?」釜石野鳥の会の臼澤会長(左)に質問も…

「これは何の羽根?」釜石野鳥の会の臼澤会長(左)に質問も…

釜石新聞NewS

釜石新聞NewS

復興釜石新聞を前身とするWeb版釜石新聞です。専属記者2名が地域の出来事や暮らしに関する様々なNEWSをお届けします。

取材に関する情報提供など: 担当直通電話 090-5233-1373/FAX 0193-27-8331/問い合わせフォーム


釜石のイベント情報

もっと見る

釜石のイチ押し商品

商品一覧へ

釜石の注目トピックス