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創造する楽しさを!北上機械鉄工業協、「夢のような」ものづくり体験 釜石にお届け

多彩な創作体験に笑顔を見せる子どもたち

多彩な創作体験に笑顔を見せる子どもたち

 
 子どもたちに創造する楽しさを体感してもらう「エコ・ものづくり体験まつり」(北上機械鉄工業協同組合主催)は3月28日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。家族連れらが訪れ、さまざまなジャンルの工作にチャレンジ。思い描いたものを形にしたり、好きなものを組み合わせたり、自分なりのアレンジを加えた“一点もの”を作り出す時間に夢中になった。
 
 同組合は、北上市の自動車整備、板金・鋳物加工など11社(正・賛助会員含む)でつくる組織。ものづくりが好きな子どもを育てようと、北上で同様のイベントを実施しており、これまで12回を数える。釜石での開催は2024年以来、2回目。幼少期から地域のものづくりに触れて魅力を知ってもらうとともに、東日本大震災後に人口流出が課題となる岩手県沿岸部への企業誘致につながるきっかけになればとの復興応援の目的もある。
 
多彩なものづくりを体験できるコーナーがお目見えした

多彩なものづくりを体験できるコーナーがお目見えした

 
 体験コーナーは全部で24あり、キーホルダーやストラップ、壁掛け、小物入れづくりなどさまざま。素材もビーズやビー玉、リボン、木材など質感の異なるものを使った。講師は北上市のほか、県沿岸部からも参加。共催する大槌町の「おおつちおばちゃんくらぶ」が声がけに協力した。
 
 会場では子どもたちが思い思いに工作を楽しむのはもちろん、趣味仲間で訪れた大人たちも普段とは違った手芸、作品づくりに熱中。ドライフラワーなどをガラス容器に入れて専用のオイルに浸して長期間保存するハーバリウムやリースづくりが人気だった。
 
小さなおもちゃのお弁当作りを楽しむ子どもら

小さなおもちゃのお弁当作りを楽しむ子どもら

 
皿回し、割り箸鉄砲など昔遊びは子どもたちに人気

皿回し、割り箸鉄砲など昔遊びは子どもたちに人気

 
身近にあるものを使ったものづくりに大人も夢中

身近にあるものを使ったものづくりに大人も夢中

 
 馬をかたどった木製玩具の色塗り体験に取り組んだ菊地駿伍さん(13)は、カラフルに仕上げた作品を手に「かっこいいのができた」と満足げに笑った。中学校が春休みのため、栃木県那須塩原市から父親の実家がある釜石に帰省中。「自分で考えられる」ものづくりに関心があり、多様な体験ができるイベントを歓迎。一番好きなのは絵を描くことだというが、ビー玉を使ったストラップづくりに挑戦したり、「やったことのない体験もできて楽しい」と、新たな出合いに刺激を受けた様子だった。
 
馬の人形に色を塗る作業に熱中する参加者

馬の人形に色を塗る作業に熱中する参加者

 
 大好きな工作を目いっぱい満喫したのは、地元の久保夢空瑠さん(9)。家庭で肩たたき、食器の片付けなどのお手伝いをし、その対価のお小遣いで体験コーナーをめぐった。11個目の体験として選んだのは、ビーズのチャーム(小さな飾り)づくり。「だんだんと形になっていくところがいい。達成感がある」と目を輝かせた。この後も、さらに探求活動を続行。母親の康子さん(47)は「いろいろなものに触れられ、子どもの脳にもいいと思う。やりたいことがあって、できることを頑張ったから、きょうは好きなことを存分に楽しんでほしい」と見守った。
 
作業を見守りながら参加者との触れ合いを楽しむ講師(左)

作業を見守りながら参加者との触れ合いを楽しむ講師(左)

 
 体験を提供した講師らとの交流も魅力の一つで、それは講師にとっても同じ。久保さんら子どもたちと接した北上市の主婦、藤田稲子さん(68)は「手を使うものづくりは脳を活性化させるし、創造する力も出てくる。子どもたちのアレンジ力は面白く、刺激になった」とほほ笑んだ。幼少期から編み物、裁縫などに親しみ、今回は「今、ハマっている」ビーズアクセサリーづくりを紹介。「自分が作ったものを褒められた記憶が今の手仕事につながっている」と話し、そうしたうれしさを誰かにつなぐ活動をこれからも続けていく。
 
子どもも大人も、来場者も講師も思い思いに楽しむ

子どもも大人も、来場者も講師も思い思いに楽しむ

 
使用済みの油を使ったせっけんづくりに取り組む参加者

使用済みの油を使ったせっけんづくりに取り組む参加者

 
 北上市の川辺商会代表取締役の川邉公雄さん(68)は、廃油を再利用した「EMせっけん」づくりを通じ身近にあるものの活用や、不要になったものでも無駄にせず有効活用する方法を伝えた。使用済みのサラダ油に、乳酸菌や酵母などの微生物を培養させたEM発酵液などを混ぜ、1カ月保存すると完成。「時間はかかるが、実際に使ってみると、汚れ落ちは抜群」とPR。「自然に優しいものづくりを喜んでもらえたら」と期待した。
 
 同組合がある北上市は県内有数の工業都市。同組合の斎藤一雄理事長=斎藤鉄工代表取締役社長=は「県内で最も早くできた工業団地は、65年以上の歴史がある」と強調し、まつりで「ものづくりのまち」の底力を見せた。まちの魅力として「口内鬼剣舞」も紹介。勇壮な舞に見物人から大きな拍手が沸いた。餅まき、菓子のつかみ取り、はずれなしの抽選会などもあった。
 
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勇壮な舞で来場者を楽しませた口内鬼剣舞

 
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「こっちにもー」。餅まきを楽しむ来場者

 
 この体験まつりは、子ども未来支援財団・子どもサポート基金の助成金を活用。同組合事務局の昆野清一さん(68)は「未就学児から小中学生を中心にものづくりのイメージを与えられたら。夢のようなイベントを楽しんでいる姿を見られるのがとてもうれしい」と穏やかに話した。

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釜石の2チーム 昭和新山国際雪合戦大会でダブル優勝! クラブ設立10周年の快挙に歓喜

第37回昭和新山国際雪合戦大会で優勝した「ウル虎ジュニア釜石」「ウル虎セブン」のメンバーと監督ら

第37回昭和新山国際雪合戦大会で優勝した「ウル虎ジュニア釜石」「ウル虎セブン」のメンバーと監督ら

 
 釜石大槌雪合戦クラブ(佐久間定樹代表、30人)の2チームが2月21、22の両日、北海道壮瞥町で開かれた第37回昭和新山国際雪合戦大会(同実行委主催)で優勝した。ジュニア交流戦(小学生男女)に出場したウル虎ジュニア釜石が2年ぶり2回目、レディースの部(中学生以上の女性)に出場したウル虎セブンが初の頂点に輝いた。今年、設立10周年を迎える同クラブ。雪の少ない地域でスポーツ雪合戦競技の普及から始まった活動は、メンバーの地道な努力の積み重ねで、全国トップレベルのチームを輩出するまでに成長。地元スポーツ界に新たな活力をもたらしている。
 
 今月23日、優勝した2チームの選手と監督ら14人が市役所を訪れ、小野共市長に大会結果を報告した。優勝チームに贈られるゴールデンビブスを身に着けた選手らは、これまで支えてくれた地元企業・団体、応援してくれた学校の同級生らに感謝の気持ちを表し、優勝の喜びを伝えた。小野市長は「さまざまな作戦を立て、みんなで努力した結果。自信を持って、今後もいろいろなことにチャレンジしてほしい」と話した。
 
釜石大槌雪合戦クラブの佐久間定樹代表が大会結果を報告=23日、釜石市役所市長室

釜石大槌雪合戦クラブの佐久間定樹代表が大会結果を報告=23日、釜石市役所市長室

 
レディース、ジュニア両チームの選手が優勝の感想などを述べた

レディース、ジュニア両チームの選手が優勝の感想などを述べた

 
 大会には5部門に全国から計118チームが参加した。6チームが出場したジュニア交流戦で、ウル虎ジュニア釜石は予選リーグを2勝0敗で突破。決勝では本県の強豪、西和賀町のKING BULLを2-0(3セットマッチ、2セット先取で勝利)で下し、2回目の優勝を果たした。ウル虎ジュニア釜石は2023年に結成。同大会への出場は3回目で、今大会には釜石、大槌の小学2~6年生7人で挑んだ。小林賢生主将(双葉小6年)は「玉送りの声のかけ合いとかチームワークの良さが勝因」とし、後輩に連覇を託した。「窮地に立っても逆転できたり、最後までどっちが勝つか分からないところが面白い」と競技の魅力を語り、「中学生になっても続けたい」と望んだ。
 
ウル虎ジュニア釜石の小林賢生主将は「練習した成果を発揮して優勝できたので良かった。来年のメンバーにも頑張ってほしい」と話した

ウル虎ジュニア釜石の小林賢生主将は「練習した成果を発揮して優勝できたので良かった。来年のメンバーにも頑張ってほしい」と話した

 
 レディースの部には12チームが出場。ウル虎セブンは2勝0敗で予選リーグを1位通過し、8チームで争う決勝トーナメントに進んだ。1回戦で北海道日高支部代表のNAT、準決勝で本県代表のめしべ(紫波町)を破り、決勝では北海道オホーツク支部代表のRYU☆KOHAと対戦。3セット中、2勝1分けで初めての栄冠を手にした。ウル虎セブンはチームを結成した2018年に同大会に初出場したが、以降はコロナ禍による3年間の大会中止、地区予選の敗退などで出場機会を逃していた。昨年は準優勝まで進み、チーム結成9年目の今年、念願の頂点に立った。
 
昨年の悔しさをばねに念願の初優勝を果たしたレディースチーム「ウル虎セブン」。中学生メンバーが活躍

昨年の悔しさをばねに念願の初優勝を果たしたレディースチーム「ウル虎セブン」。中学生メンバーが活躍

 
 今季のチームは中学生5人、社会人3人で構成。競技歴7年目の柏崎楓主将(29)は「目標としていた優勝をやっと果たせた」と万感の表情。「とにかく攻めるプレー」がチームの強みで、「それが存分に発揮できた結果」と喜ぶ。雪の少ない地域ながら、ここまで力を付けてきた要因として挙げるのは、年間を通した活動。体育館で室内練習球を使った練習を週1回続けていて、「少しずつ個々のレベルアップが図られているのが大きい」という。柏崎主将は今大会の最優秀選手賞にも選ばれた。次に目指すは連覇だが、「そこにとらわれ過ぎず、自分たちが納得のいく試合をできれば」と話す。
 
ウル虎セブンの柏崎楓主将は、ジュニアから上がってきた中学生とチームを組んでの優勝に喜びを表した

ウル虎セブンの柏崎楓主将は、ジュニアから上がってきた中学生とチームを組んでの優勝に喜びを表した

 
 今大会には、68チームが参加した一般の部に同クラブから男子のタイガーセブンも出場。予選リーグを1位通過し、準決勝リーグに進んだが、決勝トーナメント進出はならなかった。
 
 同クラブは2016年秋に社会人の男子チームからスタート。2年後に女子チームが結成された。コロナ禍で運動の機会が減った中、小学生向けの雪合戦教室を開始。23年には小学生チームが誕生した。クラブ立ち上げメンバーの一人、佐久間定樹代表(43)は「小学生に教えるようになって、練習時の雰囲気もいい形に変わった。小学生で始めた子が中学生になり、大人と一緒に活動しているのもうれしいこと」と喜ぶ。年間を通した活動は競技を長く続けることにもつながっている。同クラブは毎週月曜日午後7時から中妻体育館で活動中。「やってみたい方はぜひ!」と新たな仲間の加入を呼びかける。

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日本製鉄釜石シーウェイブス パブリックビューイング in 釜石PIT Supported by J SPORTS vol.4 花園近鉄ライナーズ戦

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対象試合

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26 ディビジョン2 第9節
vs. 花園近鉄ライナーズ ビジター戦 
https://kamaishi-seawaves.com/news/game/29780/

 

日本製鉄釜石シーウェイブスを見るならJ SPORTS!
J SPORTSオンデマンドではジャパンラグビー リーグワンDiv.1~3の全試合を徹底配信

日時

2026年3月28日(土) 12:00 キックオフ(開場 11:30開場)

場所

釜石PIT(岩手県釜石市大町1-1-10)

 

【駐車場について】
・斜向かいにある釜石大町駐車場または周辺の有料駐車場をご利用ください。
・自転車およびバイクは、釜石PITに隣接する駐輪駐車スペースをご利用ください。

 

■入場無料
■来場者全員にスタンプカードを進呈…来場するほどお得!スタンプカードをためて特典GET!
■飲食・飲料の持込可。(アルコールは不可) 

主催

一般社団法人釜石市―ウェイブスRFC
協力:釜石ラグビー応援団/釜石まちづくり株式会社

フェリアス釜石

釜石まちづくり株式会社

釜石まちづくり株式会社(愛称 フェリアス釜石)による投稿記事です。

問い合わせ:0193-22-3607
〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内 公式サイト

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釜石唐丹「星座石、測量之碑」日本天文遺産に 伊能忠敬の足跡残した地元の葛西昌丕は住民の誇り

「星座石と陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」の日本天文遺産認定を喜ぶ本郷文化財愛護少年団育成会の小池直太郎会長

「星座石と陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」の日本天文遺産認定を喜ぶ本郷文化財愛護少年団育成会の小池直太郎会長

 
 釜石市唐丹町本郷で200年以上にわたって受け継がれる「星座石」と「陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」が、公益社団法人日本天文学会(太田耕司会長)が選ぶ日本天文遺産に認定された。これらの石碑は、江戸時代に全国を歩いて測量し、初の実測日本地図作成に至った伊能忠敬(1745-1818)が唐丹村(当時)で天体測量したことを示しており、伊能の業績を同時代に顕彰したものとしては全国唯一とされる。認定にあたっては地元の長年にわたる保全活動が高く評価された。
 
 日本天文遺産の認定は、歴史的に貴重な天文学・暦学関連遺産の価値を広め、保全、活用を図るのが目的。唐丹の両石碑は2025年度(第8回)の選考委員会で選ばれ、本年1月の代議員総会で認定が決まった。3月5日に京都府で行われた授賞式には、保全活動に尽力する本郷文化財愛護少年団育成会の小池直太郎会長(79)が出席。学会から認定証と認定パネルを贈られた。
 
5日に京都府で行われた授賞式に出席した小池会長(中)。日本天文学会・日本天文遺産選考委員会の松尾厚委員長(左)、亀谷收委員(右)と(写真提供:釜石市教委文化財課)

5日に京都府で行われた授賞式に出席した小池会長(中)。日本天文学会・日本天文遺産選考委員会の松尾厚委員長(左)、亀谷收委員(右)と(写真提供:釜石市教委文化財課)

 
 伊能忠敬は測量の際、北極星などの高度から緯度を算出する天文測量を行っていた。その業績を示すのが、唐丹町本郷の高台に保存されている両石碑。伊能と同時代を生き、天文学を習得していた地元の知識人、葛西昌丕(1765-1836)によって作られたものだ。測量之碑は1814(文化11)年建立。星座石も同時期のものと推定される。
 
 測量之碑には、伊能が1801(享和元)年9月24日に唐丹村で測量し、天体観測で「北緯39度12分」の値を得たことが記されている。葛西は伊能の業績をたたえるとともに、この緯度が「時間がたっても不変なのか、あるいは西洋の学説にあるような地球の微動により変動するのかを後世の人々に解明してほしい」というメッセージを刻んでいる。“地球微動”の意味は明確ではないが、「章動や極運動のことと考えられ、19世紀初期の西洋天文学が日本の地方にまで伝わっていたことを示す重要な遺産」とされる。星座石は中央に「北緯39度12分」を意味する文字が刻まれていて、周囲には星座を示す黄道十二宮、季節を示す十二次が交互に刻まれている。
 
陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑(左、写真提供:釜石市教委文化財課)。測量之碑の前に星座石が置かれている(写真右手前)

陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑(左、写真提供:釜石市教委文化財課)。測量之碑の前に星座石が置かれている(写真右手前)

 
星座石。中央に「北極 出地弎 拾九度 十弐分」と刻まれている。「北極出地」は北緯を意味する用語で、「北緯39度12分」を意味している(写真提供:釜石市教委文化財課)

星座石。中央に「北極 出地弎 拾九度 十弐分」と刻まれている。「北極出地」は北緯を意味する用語で、「北緯39度12分」を意味している(写真提供:釜石市教委文化財課)

 
 両石碑は当初、設置された場所から移動されていて、正確な原位置は不明だが、▽伊能が唐丹村で緯度観測を行った歴史的証拠の一つ▽葛西が緯度変化(地球微動の有無)の証明を後世の天文学者たちに託そうとした努力の痕跡▽地元で2世紀以上にわたって受け継がれ、市民団体や同市によって管理、保全されている―などで、同遺産に認定された。
 

唐丹本郷の宝「日本天文遺産」認定に地元住民ら「名誉なこと」と歓迎

 
日本天文遺産に認定されたことを示すパネル。認定証とともに贈呈された

日本天文遺産に認定されたことを示すパネル。認定証とともに贈呈された

 
 「星座石」と「陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」は1985(昭和60)年に県指定有形文化財(歴史資料)となるなど、歴史的価値が評価されてきた。これまで複数の大学教授らの調査も行われてきたが、今回、天文学の観点から再評価を受けたことは地元にとっても大きな喜び。本郷文化財愛護少年団育成会の小池直太郎会長(79)は本郷町内会長でもあり、町内会総会で地区住民にこの朗報を報告。住民らは「名誉なこと」と歓迎したという。
 
 石碑で伊能忠敬の業績を後世に残した葛西昌丕は、唐丹村本郷の生まれ。五十集(いさば=水産加工)業を営む地元の名家で育ち、若くして仙台に出て天文地理学や国学を学んだ。歴史や文学にも精通。天保の大飢饉の際には新道開削などで貧民救済にも尽力した。現在、両石碑がある場所には、葛西の没後に門弟らが建てた遺愛碑(1836年建立)も並ぶ(1978年、市指定文化財)。博識で人格者―。「本郷の住民は地元の天文学者として尊敬してきた。郷土の偉人が残した2つの石碑は地域の宝」と小池会長。
 
測量之碑は高さ133センチ、幅71~76センチ。覆屋の中に設置されている

測量之碑は高さ133センチ、幅71~76センチ。覆屋の中に設置されている

 
星座石の副碑。碑文の損耗が著しく、やがて滅失することを憂慮し、2001年に建立された

星座石の副碑。碑文の損耗が著しく、やがて滅失することを憂慮し、2001年に建立された

 
 これら文化財の保全活動にあたってきたのが同愛護少年団。本郷地区の小学4~6年生が団員で、春と秋に育成会とともに石碑とその周辺、葛西が隠居後に暮らした仏ヶ崎(半島)中央部南岸の屋敷「奇巖(きがん)亭」跡地の清掃を続けてきた。少年団は東日本大震災後、活動を休止しているが、育成会が清掃を継続する。小池会長は「認定の趣旨からすると、今回の授賞は少年団、育成会の長年にわたる保護、保全活動の実績が認められたことによるもの」と自負。地域で文化財愛護の精神、先人を敬う心が自然と育まれ、次世代への継承につながっているとみられる。「今後も市と連携しながら守っていきたい」と小池会長。
 
唐丹町本郷の高台にある石碑群の設置場所。測量之碑の左隣に葛西昌丕の門弟が建てた遺愛碑がある。覆屋の外には星座石、遺愛碑の副碑も

唐丹町本郷の高台にある石碑群の設置場所。測量之碑の左隣に葛西昌丕の門弟が建てた遺愛碑がある。覆屋の外には星座石、遺愛碑の副碑も

 
 伊能忠敬に関する顕彰碑は明治以降のものはあるが、伊能が生存中に建立され現存しているのはここだけとされる。当時、伊能の偉業に注目し、後世に残さねばと考えられたのは、葛西昌丕にそれだけ天文学の知識があったということ。残念ながら、明治の大津波やその後の大火で地元には葛西に関する資料はほとんど残っておらず、伊能と葛西の面識の有無や両石碑の原位置、移動された経緯など判明していない部分も多い。星座石は、小池会長が小学生の頃には唐丹小の玄関前にあったという。今後の謎の解明にも期待が高まる。

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釜石から発信!新たな才能 タレント養成所C-Zeroアカデミー 1期生、修了発表会で輝き放つ

C-Zeroアカデミーの修了発表会で朗読劇を披露する生徒たち

C-Zeroアカデミーの修了発表会で朗読劇を披露する生徒たち

 
 釜石市のタレント養成所「C-Zero(シーゼロ)アカデミー」(菊池由美子校長)の基礎科第1期生の修了発表会は22日、同市大町の釜石PITで開かれた。2025年4月に開校して初めて迎えた、レッスンの成果を見せる集大成の舞台。演技や歌、ダンスなど表現する力を1年間磨いてきた生徒19人は、それぞれが持つ輝きをステージ上から放った。発表会の後には修了式も実施。夢への扉をこじ開けた生徒たちは実現に向け、そして新たに見いだした目標に向かって進み続ける。
 
 基礎科1期生は8~77歳と幅広い年齢層が所属する。「俳優や歌手など芸能界を目指している生徒もいるが、趣味の幅を広げるためだったり、自分の殻を破りたいという目的で入ってきた人もいる」と菊池校長(58)。生徒たちは専門家の指導を受けながらレッスンを重ね、多彩な力を蓄えてきた。
 
岩手県ゆかりの民謡で声を合わせる1期生

岩手県ゆかりの民謡で声を合わせる1期生

 
 発表会は、民謡で幕開け。「人前で歌うことで自信につながり、強みにもなる」と取り組んできたもので、「チャグチャグ馬コ」と「外山節」を全員で歌った。ほとんどの生徒が、なじみのなかった民謡。始めた頃は声が小さかったというが、本番ではふるさと岩手の情景を思い浮かべてもらえるよう、透明感を加え伸びやかに歌い上げた。
 
 朗読劇「セロ弾きのゴーシュ」は2チームに分かれて上演。主人公のゴーシュが、カッコウや子ダヌキ、ネズミの親子ら動物たちとの交流を通じて音楽家、そして人間として成長していく物語を、それぞれの役になり切り、仲間と呼吸を合わせながら堂々と演じた。
 
声で伝え、体で表現。「セロ弾きのゴーシュ」を演じる生徒たち

声で伝え、体で表現。「セロ弾きのゴーシュ」を演じる生徒たち

 
 アカデミーがコミュニティーFM「きたかみE&Be(いいあんべ)エフエム」(北上市)と組んで制作したラジオドラマ「しいの町ふしぎ通りゼロ丁目」のテーマ曲を、作詞作曲を担当した生徒2人がノリノリのパフォーマンスで披露。体と心をめいっぱい使ったダンスもあり、7人の生徒が踊る楽しさを表現した。
 
作詞作曲した歌で会場を盛り上げた生徒たち

作詞作曲した歌で会場を盛り上げた生徒たち

 
笑顔を弾かせながらダンスパフォーマンス

笑顔を弾かせながらダンスパフォーマンス

 
 生徒4人が出演した短編映画「シグナルとシグナレス」(15分)を上映。作品は信号機同士の恋愛を描いた宮沢賢治の同名童話をモチーフに、進路が分かれる卒業間近の高校生4人の不安と希望を描く。ロケ地となったのは、遠野市の田園地帯。黄金色の稲穂、美しい夕景の中に溶け込んだ女子高生たちのみずみずしさ、そうした環境が身近にあるという豊かさを感じられる一作だ。
 
上映された短編映画「シグナルとシグナレス」

上映された短編映画「シグナルとシグナレス」

 
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今関あきよし監督(左)と出演した4人による舞台あいさつ。右上の写真は映画の一場面

 
 メガホンを取った今関あきよし監督を交えた舞台あいさつもあった。製作のきっかけは、アカデミーが昨年夏に実施した今関監督らによる演技ワークショップ。人、景色などいくつもの“出合い”が重なって生み出された作品のようで、今関監督は「キラキラした、今しか取れない瞬間を切り取り、残してあげたい。これから未来を生きる人たちへの後押しのような気持ちもあった」と振り返った。
 
 出演したのは高校生の森美惠さんと前見琉綺亜さん(ともに今春、大学へ進学)、市内在住の会社員佐藤愛莉さんとパート佐々木瑠奈さん。撮影時のエピソードを紹介しながら、演じる楽しさや新たな一面を発見したこと、一つの夢をかなえた感謝の気持ちなどを明かした。最後に、今関監督は「短編でもいろんなストーリーが入っていることを感じてもらえたのでは。独特な方言、釜石弁もいい味を出している。時間がたてばたつほど、この作品の面白さに気づくと思うので、4人の応援という意味でぜひ映画館で観てほしい」とPRした。
 
修了式で感謝の気持ちや決意を伝えた矢浦望羽さん(手前)

修了式で感謝の気持ちや決意を伝えた矢浦望羽さん(手前)

 
 発表会に続いて行われた修了式で、ケーブルテレビリポーターの矢浦望羽さん(20)が修了生を代表しあいさつ。演技をすることに情熱を持ち、飛び込んだアカデミーではチャンスをつかみ取れず、悔しさや悲しさに思い悩んだり、苦しい時期もあったというが、「そこで感じた気持ちを正直にぶつけたことが成長につながった」と顔を上げた。そして、「私の夢は今も変わらず俳優です」ときっぱり。研究科に進級し、「もっとキラキラした表現を目指し、私らしく、ひたむきに努力していきたい」と力を込めた。
 
1年間の成果を出し切り笑顔を見せる生徒たち

1年間の成果を出し切り笑顔を見せる生徒たち

 
 1期生の半数以上は矢浦さんと同じく、より実践的なレッスンに取り組む研究科に進む。朗読劇で三毛猫を演じた北上市の中村美海さん(15)は「アカデミーは好きなことをできる居場所になった。ずっと続けてきたダンスだけでなく、歌や演技にも挑戦できた。夢を持つ仲間がいたから楽しくできた」と充実感をにじませた。この春、県内の高校通信制課程へ進学。釜石へ通う日々はこれからも続き、「興味がないではなく、何でもできることを頑張りたい」と意欲を示した。
 
 最年少で小学生の鈴木綾誠さん(8)は「発表会は緊張したけど、練習の時より大きな声でみんなに聞こえるようにできた」と満足そうに話した。演技が好きでレッスンは楽しく続けられたというが、「歌は苦手だ」と小さな声でつぶやく。それでも研究科での学び、経験を待ち望み、「はっきりした夢はまだ分からないけど、自分がやることでみんなを笑わせて元気にしたい」と、目標となるものを芽吹かせた。
 
笑顔がキラリ。菊池由美子校長(中央)を囲む1期生

笑顔がキラリ。菊池由美子校長(中央)を囲む1期生

 
 菊池校長は、生き生きとした生徒たちの姿を見つめ、「みんな成長した」と実感を込めた。1期生を送り出し「ほっとした」気持ちに入りまじり、さみしさも感じている様子だが、アカデミーが目指す「エンターテインメントでまちを盛り上げる」という道のりはまだ始まったばかり。開校1年目にして、ドラマ(テレビやラジオ)、映画、CMなどへの出演オファーを受け、少しずつ実績を積み上げている。子どもや若手だけでなく、シニア世代も「チャンスがある」と強調し、「これからも生徒の夢に合わせた指導を行い、共に夢をかなえていきたい」と熱い思いで先をゆく。
 
 アカデミーでは31日まで第2期生を募集している。この日が県内初公開となった「シグナルとシグナレス」は、4月3~9日に盛岡ルミエール(盛岡市)でも上映される。

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不法投棄はダメ!片岸海岸に「バスターズ」出動 地元釜石の環境団体 初企画の清掃活動

投げ捨てられていたとみられるごみ袋を回収する参加者

投げ捨てられていたとみられるごみ袋を回収する参加者

 
 釜石市片岸町の片岸海岸で3月16日、約70人が参加する清掃活動「不法投棄バスターズ」があった。2月下旬に一般ごみの不法投棄現場を発見した「かまいし環境ネットワーク」(加藤直子代表)が「広く現状を知ってほしい」と初めて企画した。「どうして、こんなものを…」と言葉をなくす参加者たち。海辺の景観を守る取り組みを通じ環境問題を考える機会にした。
 
 活動の場は、大槌湾を臨む県道231号沿いの斜面。自然保護活動に取り組む同団体のメンバーが付近を通った際に大量のごみが投げ捨てられているのを見つけた。市指定のごみ袋に入った家庭ごみ、バーベキューの残骸、ペットボトルや空き缶なども散乱。事前に確認した加藤代表(79)によると、付近では常習的にポイ捨てが行われているもようだが、「あまりにもひどい。悪質」と憤る。
 
片岸海岸に向かう県道231号沿いに捨てられたごみ

片岸海岸に向かう県道231号沿いに捨てられたごみ

 
県道を歩いて活動場所に向かう参加者。左下には白い物体が散乱

県道を歩いて活動場所に向かう参加者。左下には白い物体が散乱

 
 同団体は年に数回、「海ごみゼロウィーク」(環境省、日本財団主催)の全国一斉清掃キャンペーンなどに合わせて活動している。加藤代表は「自分たちで片づけてしまうこともできるが、それでは啓発にならない。ごみを捨てていいと思われないよう、たくさんの人に現状を見てもらいたい」と、今回のバスターズを計画。新聞紙面などで広く参加を呼びかけたところ、普段の3倍以上の“人の手”を得た。
 
中学生、高校生、地域住民が協力してごみ拾い

中学生、高校生、地域住民が協力してごみ拾い

 
プラスチック片など細かなごみもできる限り拾い集めた

プラスチック片など細かなごみもできる限り拾い集めた

 
 初参加の市民、市や県の環境関係課の職員らに交じり、中高生の姿も。力を合わせ、海岸一帯で約1時間にわたり、ごみを拾い集めた。2月の発見時とほぼ変わらない状態の道路脇の斜面には飲食料容器などが詰め込まれたビニール袋、衣料品、キャンプ・アウトドア用品などが放散。クッションや敷布団、塗料がはげた置物、大型のものでは洗濯機の洗濯槽などもあった。集められたごみの量は約250キロにもなった。
 
片岸海岸付近に不法投棄されたごみ。総重量は200キロ超

片岸海岸付近に不法投棄されたごみ。総重量は200キロ超

 
集められたごみを軽トラックに積み込む釜石市の職員ら

集められたごみを軽トラックに積み込む釜石市の職員ら

 
 「自分が住む地域にこんなにゴミがあるなんて、悲しい」と話したのは、釜石東中2年の岩洞涼星さん。この海岸を利用する機会はあまりなかったが、釣りやサーフィンなどを楽しむ人もいることを聞き、「ポイ捨てが多いと、地域外から来た人たちが悪い印象を受けるかもしれない。いい思い出を持ち帰ってもらえるようにしたい」と、作業に励んだ。目立ったのは、たばこの吸い殻と空き箱。「ごみを捨てるのを見かけたら声をかけるのが大切だと思う」と受け止めた。
 
 東中では新聞記事を見た教員らが働きかけ、それに応えた1、2年の生徒有志約20人が活動に協力。ごみを拾い、きれいになった海岸を見渡し、「きもちいい」とすがすがしさを共有した。
 
片岸海岸で行われた「不法投棄バスターズ」の参加者

片岸海岸で行われた「不法投棄バスターズ」の参加者

 
 釜石商工高機械科1年の鈴木蒼さんも掲載された記事を読み「現状を見たい」と、同級生の望月翔太さんを誘って参加した。市南部の平田地区で暮らし、通学路に落ちたごみを拾うなど環境保全の意識は高い。今回の参加を機に、同団体の活動や不法投棄についてさらに理解を深めた様子。「身の回りのどこにでも、ごみは出てくる。正しく廃棄し、処理することが大事。自分にできることを考え、行動したい」と刺激を受けた。
 
身近にある海辺の環境を守ろうと企画された清掃活動

身近にある海辺の環境を守ろうと企画された清掃活動

 
ごみの不法投棄がもたらす環境への影響を訴える加藤直子代表(手前)

ごみの不法投棄がもたらす環境への影響を訴える加藤直子代表(手前)

 
 加藤代表は、若い年代の参加を歓迎。「地域の人たちが大事にしている海岸。ごみが一つでもあると、捨ててもいいと思う気持ちが膨れ上がる。道行く人がごみを捨てる地域って、どう思う?…自分たちが暮らすまちにもっと目を向けて生活してほしい」と願った。

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防災、伝承と小泉八雲の関わりは!? 釜石市郷土資料館で特別展 「明治三陸大津波130年」にちなみ

「明治三陸大津波130年」にちなみ開催中の特別展

「明治三陸大津波130年」にちなみ開催中の特別展

 
 東日本大震災から15年。そして今年は、1896(明治29)年の三陸大津波から130年となる。釜石を含む三陸地域は津波被害を幾度となく体験。「地震津波はいつか必ずあるものだ」と心に留め、備えることを考えてもらおうと、「明治三陸大海嘯(かいしょう)130年」と題した特別展が釜石市鈴子町の市郷土資料館で開かれている。テーマは「稲むらの火と小泉八雲、そして釜石」。防災教材として知られる物語、明治の文豪との関わりから、地域の歴史を振り返ることができる。
 
 特別展は同館津波・震災展示室(常設展示139点)の一角に開設。明治三陸大津波発生当時の英字新聞ジャパン・ガゼット社の記者が釜石を中心に被災状況をリポートしたリーフレット「日本の大災害(The Great Disaster in Japan)」(複製)、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン/1850~1904年)との関わりを紹介する解説パネル、「稲むらの火」が掲載された昭和初期の教科書「尋常科用 小學國語讀本 巻十」などを並べる。
 
津波・震災展示室の一角(左)に設けられた特別展コーナー

津波・震災展示室の一角(左)に設けられた特別展コーナー

 
外国人による明治三陸大津波に関するリポートの文面

外国人による明治三陸大津波に関するリポートの文面

 
 津波発生は1896年6月15日。現在の釜石市にあたる区域での死者・行方不明者は6400人余り、海岸近くの家屋や漁具、漁船などの大部分が失われる大被害を受けた。同社の記者ら2人は21日に横浜を発ち、花巻から人力車、荷馬車を乗り継ぎ遠野に宿泊。22日には仙人峠を越え釜石に入った。当時の釜石町を歩き、インタビュー。23日には海路、南の集落を取材、途中の海上で遺体を収容した。同夜、横浜へ戻るため釜石をあとにした。
 
 このリーフレットは2011年4月、富山大学附属図書館にある小泉八雲の蔵書「ヘルン文庫」から発見された。八雲研究、顕彰を目的とする八雲会会員の中川智視さんが訳出。取材した被災地が釜石であることから、中川さんが複製した資料、抄訳、独自の解説文を郷土資料館に提供した。展示ではファイル資料として英文、和訳が用意され、手に取ることができる。
 
ファイル資料としてリポートの和訳が展示されている

ファイル資料としてリポートの和訳が展示されている

 
防災教材や釜石と小泉八雲の関わりを示すパネルが並ぶ

防災教材や釜石と小泉八雲の関わりを示すパネルが並ぶ

 
 小泉八雲は、1897年に「仏の畑の落穂」という随筆集を米国の出版社から出した。この中に、江戸時代の1854年に起きた安政南海地震津波で多くの人命を救ったとされる和歌山県広村(現広川町)の逸話を元にした「A Living God」(生き神)という物語がある。ここに「Tsunami」(津波)という言葉が出てきて、世界に知られるきっかけになった。やがて、物語に感銘を受けた小学校の教員が「稲むらの火」として普及し、小学校の教科書に収録された。
 
「稲むらの火」が掲載され尋常小学校で使われた国語の教科書

「稲むらの火」が掲載され尋常小学校で使われた国語の教科書

 
 「八雲は96年に起きた明治の大津波に衝撃を受け、のちに『稲むらの火』と知られることになる『生き神』という物語を書いたのではないか」。そう考察するのは、この特別展を企画した同館職員の川畑郁美さん。NHK連続テレビ小説(通称・朝ドラ)「ばけばけ」で注目された小泉八雲が「防災教育につながる物語を書いたのはなぜか」と思ったのをきっかけに、同館所蔵の資料から答えにつながるヒントを探った。
 
 そして形にしたのがこの特別展。「日本の大災害」の中には、「釜石の悲劇と苦難を細かく語るには…重い精神的負担となることだろう」などとつづられている。目を通した川畑さんも「生々しい惨状を伝えている」と胸を突かれた。
 
 このレポートを「八雲は目にしたはず」と、川畑さんは推察する。「津波のこと、逃げること、命を守ることを伝えたかったのではないか。見知ったことを伝え、語り継ぐために、明治とは時代は異なるが、和歌山のエピソードを世に出した。その伝えたい思いにつながるものの一つに釜石の出来事もあったのでは。そう考えると、とても興味深い」と想像を膨らませている。
 
三陸を襲った地震津波の被害状況を伝える常設展示のパネル

三陸を襲った地震津波の被害状況を伝える常設展示のパネル

 
130年前の津波被害や人々の様子をとらえた写真パネル

130年前の津波被害や人々の様子をとらえた写真パネル

 
 関連展示として、明治三陸大津波が発生した後の釜石市内を捉えた写真パネル12点も並べる。陸に打ち上げられた大型船、全壊した家屋、ぼう然とする人々…。東京都在住の古写真収集家、石黒敬章さんが保存していたもので、同館では10年ぶりに公開する。
 
 特別展は6月21日まで開かれている。開館時間は午前9時半~午後4時半(最終入館は午後4時)。火曜日休館。

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津波・火災…逆境下で立て直した森林組合の軌跡 手塚さや香さん(釜石)、自書寄贈

本を手にする著者の手塚さや香さん(右)と釜石地方森林組合の高橋幸男参事

本を手にする著者の手塚さや香さん(右)と釜石地方森林組合の高橋幸男参事

 
 東日本大震災の被災地、釜石市の森林をめぐる再生と挑戦の物語を一冊の本にまとめ出版した同市在住のライター兼キャリアコンサルタントの手塚さや香さん(46)は9日、自著「つなぐ森林業 海のまちの森林組合、復興からその先へ」を同市に20冊寄贈した。逆境のなかでも果敢に挑戦し、まちをたて直した組織の活動に迫った本に「伝えることが役目。希望を感じてもらえるといい」と思いを込める。
 
 同書は、2011年の震災と17年の大規模林野火災を経験した釜石地方森林組合(野田武則組合長)の復興の軌跡を記す。同組合は、釜石市と大槌町の森林所有者が参加する組織。震災の津波で事務所が全壊し、役職員5人が犠牲になった。組合存続の危機に立たされたが、国内外の企業の支援を受けながら事業を再生。将来に向けた持続可能な林業のため、異業種のアドバイスも受け、課題克服へのアイデアを形にしてきた。
 
釜石地方森林組合の再生の軌跡を記した本「つなぐ森林業」

釜石地方森林組合の再生の軌跡を記した本「つなぐ森林業」

 
 復興の途上で発生した尾崎半島の大規模林野火災では約413ヘクタールを焼失。山林経営の継続に苦慮する個人所有者の意識が前向きに変わるよう、負担なく再生できる仕組みを考え、熱心に働きかけをした。火災の被災木の活用も積極的に展開。19年のラグビーワールドカップ会場となった「釜石鵜住居復興スタジアム」の客席シートや諸室の壁材などに使われ、木質化の良さを全国に発信する。
 
 手塚さんは元毎日新聞記者。記者を辞めて釜石リージョナルコーディネーター(復興支援員、通称・釜援隊)となって派遣された森林組合で6年間働き、奮闘を目の当たりにした。2年ほど前に「組織の歩みをきちんと記録して残すべき」といった声が上がり、発起。ちょうど同じ頃、組合再生に向け現場指揮を執ってきた高橋幸男参事(61)が「当時のことを話せるようになった」と話していたのを耳にし、「今がその時」と背中を押され、約20人の関係者にインタビューを重ねて書き上げた。
 
 書籍はPHP研究所刊、四六判280ページ、税抜き1900円。▽海のまちの森林組合▽3月11日のこと▽錯綜(さくそう)する情報と絶望▽森林組合再生に向けて▽バークレイズ林業スクール開講▽地元の木材を復興に使うという悲願▽何度でも逆境を乗り越える-の7章構成。2月27日に発売開始となっている。
 
「子どもたちに林業の仕事を伝えてほしい」と小野共市長(左)に本を託した

「子どもたちに林業の仕事を伝えてほしい」と小野共市長(左)に本を託した

 
 3月9日に市役所で書籍贈呈式があり、手塚さんと高橋参事が出席。応対した小野共市長は「どんなつらい思いをして、そのまちをつくってきたのかが書かれている。災害が多発する中、全国各地で通りうる道なのではないか。全国の災害復旧の教科書のようになれば」と期待した。
 
 市では市内の全小中学校(14校)、市立図書館などに配布する。手塚さんは「小学生が読むのは難しいところもあると思うが、先生方に読んでもらい、一次産業のある地域の豊かさ、林業という仕事を伝えてほしい」と願った。
 
市役所を訪れて本の説明をする手塚さんと高橋参事

市役所を訪れて本の説明をする手塚さんと高橋参事

 
本をじっくりと見入る釜石市の関係者(右)

本をじっくりと見入る釜石市の関係者(右)

 
 高橋参事は取材に応じた心情に触れながら、「逃げ出したいと思ったこともあったが、立場上、弱音をはけなかった。本心とのギャップがつらく、悩み続けてきた15年。2年前かな、当時のこと、つらさを本当の意味でさらけ出せるようになった。記録として残ることで気持ち的に少し楽になった」と明かした。
 
 続けて、「災害は多分どこでも起こる。想像できないものも出てくるだろう」と指摘。「その時、確かに絶望感はあると思うが、落ち着いて足元を見て、できることを確実にやっていく。そして周りの力を借りて一つずつこなしていく。特別なことではなく、普通のことで誰にでもできる。それを伝えられたらいい。少しでも希望を見いだせるように」と望みを語った。
 
 本出版に合わせ、クラウドファンディング(CF)を3月末まで行っている。詳しくはCFプロジェクトページ(『つなぐ森林業 ~海のまちの森林組合、復興からその先へ』を多くの人に届けたい – CAMPFIRE (キャンプファイヤー))へ。

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釜石SW 大阪に競り負け 24-28 スクラム安定欠く/SMC 3年目のマッチデースポンサーで盛り上げ

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リーグワン2部第8節 日本製鉄釜石シーウェイブス(赤)vsレッドハリケーンズ大阪=15日、釜石鵜住居復興スタジアム

 

 NTTジャパンラグビーリーグワン2部の日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)は15日、釜石鵜住居復興スタジアムで行われた第8節でレッドハリケーンズ大阪と対戦し、24-28(前半14-15)で敗れた。ここまで7試合を終え、3勝4敗の勝ち点16で6位。次節は22日、2月に雪の影響で中止となったNECグリーンロケッツ東葛戦(第5節)を柏の葉公園総合競技場(千葉県柏市)で行う。

 

 首位の花園近鉄ライナーズを破った激戦から1週間。スタンドでは試合前から、釜石のリーグワン初連勝を願う「釜石コール」が響いた。相手は2月に14-15の1点差で敗れている大阪。雪辱を期したい釜石は前半4分、FW陣がモールで5メートルライン内に攻め込むと、じりじりとトライラインに迫り、最後はロック、ベンジャミン・ニーニーが先制トライ(ゴール成功、7-0)。大阪に反撃の1トライを食らうも、10分には、釜石キックのボールが相手に当たりこぼれたところをフルバック落和史が拾い前へ。ハーフウェイライン付近でオフロードパスを受けたCTBトンガ モセセが快走し、サポートしていたフランカー、アンガス・フレッチャー、ナンバー8サム・ヘンウッドと素早くつなぎ、2本目のトライ(ゴール成功、14-5)を奪った。その後、大阪のPG、トライで14-15と逆転され、前半を折り返した。

 

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前半4分、トライライン前の攻防からロック、ベンジャミン・ニーニーが飛び込み先制トライ

 

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前半10分、CTBトンガ モセセ(右)から受けたパスをフランカー、アンガス・フレッチャーがすぐさまナンバー8サム・ヘンウッド(左)へつなぐ。ヘンウッドが相手を寄せ付けずトライ

 

 迎えた後半。再リードを狙う釜石は7分、SOミッチェル・ハントがPGをきっちり決め、17-15とした。が…。釜石が波に乗るのを阻止するかのように2分後には大阪が再逆転のトライ。5点差をつけられた。点の取り合いが続く中、釜石に再びのチャンス。21分、釜石ボールのスクラムから出したボールを速い攻撃でつなぎ、最後はヘンウッドがこの日2本目のトライ。難しい角度のゴールキックをハントが見事に決め、24-22とした。しかし、終盤で大阪に2本のPGを許してしまい、24-28で競り負けた。

 

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後半、フルバック阿部竜二のオフロードパスを受けるフランカー河野良太。この後、SH村上陽平からサム・ヘンウッドへつなぐ

 

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後半21分、サム・ヘンウッドが右斜め前方に走り込み、この日2本目のトライ

 

 試合後、釜石のトウタイ・ケフヘッドコーチは「相手のほうがプレーに熱意があった。釜石は元気がなく、気の抜けたような印象」と指摘。反則やエラーが多く、敵陣深くに攻め込んでも得点まで持ち込めない場面があった。勝つために必要という“一貫性”のあるプレー。「前回は良かったが、今回は良くないではいけない」。技術面、メンタル面(マインドセット)ともに「チームに落とし込めるようにしていきたい」と話した。

 

 「悔しい結果になってしまった」と河野良太主将。前回の大阪戦の反省を修正しようと臨んだが、うまくいかなかった。次節に向け、「ディシプリン(規律、自制心)とセットプレーが非常に重要になってくる。エラーを少なくし、自分たちがボールを持つ時間を長くする。アタックの遂行力を上げれば試合も優位に進められる」と改善点を見据えた。

 

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第8節で公式戦通算50キャップを達成したCTBヘルダス・ファンデルヴォルト選手(写真左側)とプロップ山田裕介選手(同右側)

 

釜石、遠野に工場「SMC」 マッチデースポンサー3年目に 出展ブース 今年も大にぎわい

 

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楽しいアトラクションがいっぱい!SMCの出展ブースは今年も大人気

 

 釜石SWの第8節はチームスポンサーのSMC(髙田芳樹代表取締役社長、本社:東京都中央区)がマッチデースポンサーとなり、自社ブースの出展などで試合会場を盛り上げた。今年で3年目の取り組み。同社は釜石市と遠野市に工場があり、地元雇用の拡大にも貢献。同社にはSWのWTB阿部竜二選手が勤務する。

 

 同社は空気圧制御機器製造で世界首位を誇り、国内6カ所の生産拠点のほか海外にも工場を持つ。空気圧制御機器は圧縮空気の力を使って動く、環境にやさしい機械。自動車をはじめ、さまざまな製品を作る工場生産ラインの自動化に欠かせないものだが、一般の人が目にする機会はほとんどない。会場では同社の機材や製品を応用した楽しいアトラクションが用意され、長蛇の列ができるなど終始にぎわった。

 

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工場で製造する空気圧制御機器を応用した動く輪投げやジャンケンマシンなどを楽しむ来場者

 

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仮設ハウスの中は大勢の人であふれた

 

 昨年、遠野工場の隣接地に完成した同社に各種部品を供給する企業の集積地「遠野サプライヤーパーク」(18社)からは8社が出展。さまざまな技術、製品などを紹介しながら来場者と交流を深めた。釜石市出身の佐々木吏さん(66)は「さすが大企業。SMCの釜石SWに対する応援はチームにとっても心強いと思う。試合会場も盛り上がっていい」と、これから始まる試合を楽しみにした。同社総務部事務課の菅野聖さんは「広く一般の方に向けたイベント出展はあまりないので、当社のことを知ってもらう良い機会。社員にとっても地元チームを盛り上げるとともに、多くの皆さんと交流できてうれしい」と話した。

 

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フォトスポットにはSMCに勤務する阿部竜二選手の等身大パネルも。スティック型応援バルーンもプレゼント

 

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オリジナルデザインのマグボトルは先着1000人にプレゼント

 

釜石高「夢団」2週連続で震災伝承活動 “語り部”デビューの1年生も

 

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この日が語り部デビューとなった菊池眞暖さん(釜石高1年)

 

 釜石高の有志でつくる「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」は前節に続き、震災の教訓や防災について伝える語り部活動を行った。1、2年生3人が経験や聞き取りを基に、自身が伝えたいことを3分で語った。

 

 菊池眞暖さん(1年)はラグビー部と“二足のわらじ”で夢団の活動に参加。この日が語り部デビューとなった。震災時、自身は0歳。公務員の両親はしばらく互いの安否が分からぬまま仕事を全う。3週間後、叔母の夫が津波で命を落としたことを知った。記憶がない菊池さんは震災をどこか遠い国の出来事のように感じていたが、「知っておかねば」と思うように。まだ知識不足のため、自分が今言えることとして、「気持ちを言葉にして相手に伝える」「今ある幸せを大切にする」よう呼びかけた。人は当たり前の“明日”がないかもしれないので…。

 

 中学3年時に活動した特設ラグビー部で競技に一目ぼれ。高校入学後、本格的に始めた。2つの活動を結びつける同スタジアムで、卒業まで悔いのない活動を誓う。

 

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SW応援団の吉田有希さん、恒川舞さん(写真左上)、東北応援アイドルグループ「けっぱって東北」(同下)もスタジアムを盛り上げた

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釜石から能登へ― 安全に通学を! 新入学児童にトラキーホルダー トラ作りの会が2年目の贈呈

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能登半島地震被災地の新入学児童に虎舞を模したキーホルダーを贈った「釜石トラ作りの会」。平田公民館で活動中

 

 能登半島地震発生から間もなく2年3カ月。東日本大震災で被災した釜石市平田の市民グループ、釜石トラ作りの会(前川かな代表、7人)は、同地震被災地の新入学児童の交通安全を願い、郷土芸能“虎舞”をモチーフにした手作りキーホルダーを3市町の小学校に贈った。「復興を進める大人たちの力の源は子どもたちの笑顔。元気に学校に通ってほしい―」。15年前の震災を経験したメンバーらが能登の早期復興への思いを届ける。

 

 黄色のクラフトテープを編んで作るトラキーホルダーは、同会メンバーが考案したオリジナルデザイン。モチーフの虎舞は、「虎は千里行って千里帰る」という故事にあやかり、漁業が盛んな三陸地方で漁師らの無事帰還を願って踊り継がれてきた芸能で、同震災後は復興に向かう市民に大きな力を与えてきた。黄色は交通安全のシンボルカラーでもあり、新入学児童が安全に通学し、無事に帰宅してほしいとの願いを込める。

 

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交通安全のお守りにと、会員が考案した「トラキーホルダー」

 

 能登半島地震の被災小学校への寄贈は昨年に続き2回目。今年は輪島市、能登町に加え、珠洲市への贈呈が決まり、3市町の14校に今春入学する児童95人分のキーホルダーを贈ることになった。キーホルダーには「入学おめでとう 交通安全に気をつけてね!」というメッセージカードが添えられている。

 

 会の意向をくみ能登との橋渡しをしたのは、被災地の民間ボランティアセンターでコーディネーターとして活動してきた釜石市の伊藤聡さん(46)=さんつな代表=。今月2日、会から託されたキーホルダーを3市町の教委や学校に届けた。被災の影響で中学校の校舎を間借りして学校生活を送ってきた輪島市の門前東小、門前西小両校は、新年度から小中一貫校「門前学園」としてスタートする。両校の宮本久美子校長は「同じ被災を受けた釜石からの支援は心強い。子どもたちは全国から応援をいただき、今度は自分たちから何か行動しようという気持ちが芽生えるだろう」と感謝。同学園の新1年生は15人。「いただいた交通安全の思いを受け止め、気をつけて通学してほしい」と願った。

 

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輪島市の門前東、門前西小(新年度から門前学園)にキーホルダーを届けた伊藤聡さん(左)。両校の宮本久美子校長(右)が受け取った=写真提供:伊藤さん

 

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初の贈呈となる珠洲市の8校31人分は同市教委にお届け。河﨑裕子学校教育係長(右)は「新1年生の安全を願う気持ち、釜石とのご縁をいただき、大変ありがたい」と感謝した=写真提供:伊藤さん

 

 釜石トラ作りの会は、震災で被災した同市平田地区の住民が立ち上げた。仮設住宅入居時に集会所のサロン活動でクラフトテープによるものづくりを覚え、7年ほど前から“トラキーホルダー”の制作を開始。近隣小学校の新入学児童に贈ってきた。今年は初めて市立小全9校(入学児童111人)への贈呈も実現した。初期メンバーの一人、松坂康子さん(87)は「自分たちが作ったものを子どもたちが持ってくれるのはうれしい。地域貢献や被災地支援にもつながっているのは最高の喜び」と声を弾ませる。

 

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釜石トラ作りの会の前川かな代表(中)は目標だった釜石市の全小学校への寄贈実現に「夢がかなった。みんなの頑張りのおかげ」

 

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キーホルダーにはお祝いのメッセージカードが添えられる

 

 2年目となった能登支援について前川代表(61)は「私たちもいろいろな支援に助けられ、ここまでくることができた。何かの形で恩返しできればとの思いから始めた活動。現地に行くのは難しいが、せめてこういうものに思いを乗せてお礼の気持ちを伝えられたら」と話す。会は現在、平田公民館で活動するが、参加は同地区住民に限らず、誰でも歓迎。仲間を増やし、贈呈活動も継続していきたい考えで、「一人ではできなくても、みんなでやればできることもある。興味のある方はぜひ」と呼びかける。

 

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昨年1年間で、新入学児童への寄贈用に約250個を制作した

 

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ものづくりの楽しさを味わえる活動。地域貢献もメンバーの生きがいにつながっている

 

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平田出身の伊藤さんは会のメンバーとも顔なじみ。被災から立ち上がり、活動を続ける住民らの今を共に喜ぶ

 

 発災1カ月後から現地で活動を続ける伊藤さんは、能登の現状について「これから災害公営住宅が建ち始めるところだが、被災家屋の撤去もまだ残っている。住民は独居の高齢者が多く、仮設住宅を出た後の生活に不安を抱えている」とし、継続的な支援の必要性を実感。住民の引きこもり防止も課題で、トラ作りの会の前身のようなコミュニティーにつながる活動が求められるという。

 

 釜石と能登をつなぐトラキーホルダー。会のメンバーは子どもたちの喜ぶ姿を想像しながら、今後も楽しく活動を続けていく。

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釜石市国際外語大学校で初の卒業式 1期生18人巣立つ それぞれ新たな道へ

及川源太校長(手前)から卒業証書を受け取る卒業生

及川源太校長(手前)から卒業証書を受け取る卒業生

 
 釜石市国際外語大学校(及川源太校長)の卒業式が13日、同市大町の釜石市民ホールTETTOで行われた。2024年4月の開校後、初めての卒業式。日本語学科のネパール人留学生16人、外語観光学科の日本人学生2人が卒業証書を手に、新たな一歩を踏み出した。
 
在校生や教職員、保護者らに見守られ入場する卒業生

在校生や教職員、保護者らに見守られ入場する卒業生

 
サリーなど華やかな民族衣装をまとって卒業式に臨む

サリーなど華やかな民族衣装をまとって卒業式に臨む

 
 及川校長が一人一人に卒業証書を手渡し、「釜石の風、精神を肌で感じてきた皆さんの心の中には、困難に負けない意志の強さ、優しさがしっかりと根付いているはず。1期生としての誇りを胸に、広い世界へ羽ばたいてほしい」と激励した。
 
卒業証書を掲げて笑顔を見せる1期生

卒業証書を掲げて笑顔を見せる1期生

 
卒業生にはなむけの言葉を送る及川校長

卒業生にはなむけの言葉を送る及川校長

 
 在校生を代表し、外語観光学科の成田彩華さん(19)、日本語学科のスワル ロチャンさん(20)が送辞。学業に取り組む姿勢や地域との向き合い方に刺激を受け新たな目標を見いだせたこと、慣れない場所での生活に助言をしたり助けてくれたことなど、1期生との思い出に触れながら感謝を伝えた。
 
在校生が送辞。卒業生(手前)に感謝を伝える

在校生が送辞。卒業生(手前)に感謝を伝える

 
答辞で将来への決意を語るラマ ビサルさん

答辞で将来への決意を語るラマ ビサルさん

 
 日本語学科の卒業生を代表して答辞を述べたラマ ビサルさん(23)は「言葉だけでなく、日本の文化、ルールも教えてもらった。釜石で学んだことを生かしたい」と決意を示した。このあと、岩手県外の専門学校に進み、貿易などを学ぶ。将来の夢は「会社を作りたい。貿易で日本とネパールをつなげたい」と思い描く。
 
 答辞を述べた外語観光学科の1期生は「同じ目標を持つ仲間と出会い、励まし合いながら過ごした2年間は、あっという間だった。多くの人が挑戦を後押しし、見守ってもらったおかげで貴重な体験ができた。挑戦することを恐れず、一日ずつ積み重ねて」と、在校生にメッセージを送った。
 
学校での思い出や将来への思いを胸に式に臨む卒業生

学校での思い出や将来への思いを胸に式に臨む卒業生

 
 皆勤賞の表彰もあり、日本語学科の11人に賞状が贈られた。ブダトキ ルパさん(20)は「日本に来た時はさみしかった」と明かすも、同郷の仲間と励まし合いながら学び、生活する中で釜石にいい印象を持った。なかでも、介護のアルバイトでは高齢者との触れ合いが楽しく、「介護福祉士になる」という夢につながった。盛岡市の医療福祉系の専門学校に進学。資格を取り、「釜石に戻ります」と笑顔を見せた。
 
卒業式の後に開かれたサンクスパーティー

卒業式の後に開かれたサンクスパーティー

 
抱き合って別れを惜しむ卒業生と地域住民

抱き合って別れを惜しむ卒業生と地域住民

 
 式の後には、学校の授業の協力者やアルバイトの受け入れ先企業の関係者らを招いたサンクスパーティーを開いた。地域に溶け込んだ1期生の晴れやかな顔を見つめた同校の松島理香子副校長は「先輩がいない中、1期生と一緒に学校づくりをしてきた。彼らのひたむきさ、向上心を感じた地域の方々が愛情深く迎え入れ、育ててくれた。学生に恵まれた。頑張った学生を心から尊敬している」と感慨深げに話した。
 
 外語観光学科の卒業生は県内外の企業に就職。日本語学科の卒業生は県内外の専門学校などに進学し、ビジネスマネジメントや介護などをさらに学ぶ。

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東日本大震災15年 「あの日」を思い過ごす一日 捜索、伝承、祈り… それぞれの願いを胸に

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 東日本大震災発生から15年となった今年の「3.11」。釜石市内では、津波犠牲者の遺族、被災住民、震災後、同市に通い続ける支援者らが各所に集い、さまざまな形で追悼の気持ちを表した。同市の被災21地区で最多の犠牲者が出た鵜住居町では、根浜海岸や釜石祈りのパークなどで犠牲者に思いを寄せる姿が見られたほか、教訓を伝える活動も行われた。
 

「何とか手掛かりを」 警察、海上保安部職員が行方不明者捜索 遺族に寄り添う活動継続

 
釜石警察署署員による震災津波の行方不明者捜索=11日午後、根浜海岸

釜石警察署署員による震災津波の行方不明者捜索=11日午後、根浜海岸

 
 釜石警察署(松本一夫署長)は11日、根浜海岸で、震災津波による行方不明者の捜索を行った。同署と釜石海上保安部(尾野村研吾部長)から32人、県内の嘱託警察犬と指導手6頭6人が参加。午前と午後の約3時間半にわたり、450メートルの砂浜を掘り起こし、行方不明者の手掛かりを探した。
 
 地域課の小袖雛子巡査(20)は同捜索活動2回目。「今も見つかっていない多くの方々がいる。ご遺族のためにちょっとでも手掛かりになるものを見つけたい」と熱心にレーキを動かした。震災時は5歳で、久慈市に暮らしていた。当時の記憶はあまりないが、小、中学生になって震災を学ぶ機会があり、「自分たちが置かれた境遇を知って改めて考えることができた」という。被災者に寄り添う警察官の姿を見て「自分もそういう存在に」と志した。「(捜索は)これからも続けていかねば…」と意識を高める。
 
 3歳のジャーマンシェパードを連れた大槌町の警察犬指導手、関谷健汰さん(32)は、昨年12月に試験に合格。候補犬として今回が初めての捜索活動となった。震災では地元大槌町でも多くの犠牲者が出た。「犬とともに地域の活動に貢献できるのはうれしい。訓練を続け、今後も頑張っていきたい」と意気込む。この日は“相棒”とともに砂浜や松林を歩き、手掛かりを探した。
 
捜索活動には釜石海上保安部の職員13人も参加。行方不明者につながるものを探した

捜索活動には釜石海上保安部の職員13人も参加。行方不明者につながるものを探した

 
s県警嘱託警察犬指導手会のメンバー6人も訓練を重ねる犬と捜索に協力した

県警嘱託警察犬指導手会のメンバー6人も訓練を重ねる犬と捜索に協力した

 
 同署は毎年、海上保安部や消防と連携し、管内の海岸で同捜索を継続。根浜海岸では2021年3月以来の活動となった。同署管内では17年3月に大槌川河川敷で名前入り会員カードが見つかり、遺族に引き渡されたのを最後に、行方不明者につながる情報は見つかっていない。しかし、昨年9月には宮城県気仙沼市で発見された遺骨が当時、山田町に住んでいた女児(当時6)のものと判明した事例もあり、可能性は閉ざされていない。
 
地震発生時刻の午後2時46分、海に向かって黙とう。犠牲者の冥福、行方不明者の手掛かり発見を願い、祈りをささげた

地震発生時刻の午後2時46分、海に向かって黙とう。犠牲者の冥福、行方不明者の手掛かり発見を願い、祈りをささげた

 

「命をつないだ宿」宝来館で追悼、伝承、未来へつなぐメッセージ 教訓を後世に

 
震災時、根浜地区住民らが避難した宝来館で行われた追悼と伝承の催し=11日夕方

震災時、根浜地区住民らが避難した宝来館で行われた追悼と伝承の催し=11日夕方

 
 3.11祈りと絆「白菊」実行委(岩崎昭子委員長)は、宝来館で追悼と伝承への思いを込めた催しを行った。同実行委はこの日夜、根浜海岸で犠牲者を追悼する花火「白菊」の打ち上げを予定していたが、空気の乾燥など気象状況による火災リスクを回避するため、7月に延期することを事前に決定。この日は花火玉に貼り付ける予定だった「追悼と未来への希望のメッセージ」、地元鵜住居の小中学生の津波避難を題材にした絵本「はしれ、上へ! つなみてんでんこ」の朗読会を開いた。
 
 同メッセージは例年、市内の小中学生から募集。6年目の今年は鵜住居小、釜石東中、唐丹中の児童生徒計85人が寄せた。亡くなった方を思う気持ち、未来の命を守る決意、世界平和を願うものなど、さまざまなメッセージが届いた。この日は、その一部を鵜住居小6年の佐々木智桜さんが朗読した。
 
市内小中学生のメッセージを同市最年少震災語り部、佐々木智桜さん(鵜住居小6年)が朗読した(写真右)

市内小中学生のメッセージを同市最年少震災語り部、佐々木智桜さん(鵜住居小6年)が朗読した(写真右)

 
 「私のおじいちゃん、天国で見守っていてね」「亡くなった方の思いを受け継いで強く生きていく」「3.11のようにたくさんの人の命が失われないように、自分たちの力で守れるよう努力していこう」「津波の記憶を忘れずに引き継いでいく」「争いのない平和な世界になりますように」・・・子どもたちの願いが込められた“空への手紙”に、集まった人たちが共感しながら聞き入った。智桜さんは弟と一緒に、津波避難を体で覚える「てんでんこダンス」も披露した。
 
智桜さんは弟智琉さんと津波避難を表した「てんでんこダンス」も披露

智桜さんは弟智琉さんと津波避難を表した「てんでんこダンス」も披露

 
 絵本は作者である指田和さん(埼玉県在住)が朗読した。児童文学作家の指田さんは釜石に住むいとこが被災。「少しでも自分ができることを」と釜石に通うようになった。発災時、いち早い避難行動で津波から逃れた鵜住居小、釜石東中の児童生徒らと交流を重ね、2013年2月に同絵本を出版。子どもたちへの教訓の伝承に一役買っている。この日は、第71回青少年読書感想文全国コンクール(公益社団法人全国学校図書館協議会、毎日新聞社主催)で、同絵本の感想文が内閣総理大臣賞を受賞した静岡県焼津市立小川小3年の北村那捺さんの感想文も紹介した。
 
当時の鵜住居小・釜石東中の津波避難を題材にした絵本「はしれ、上へ!」の作者、指田和さん(写真右上)が作品を朗読した

当時の鵜住居小・釜石東中の津波避難を題材にした絵本「はしれ、上へ!」の作者、指田和さん(写真右上)が作品を朗読した

 
 「この絵本を通じていろいろな世代の子どもたちにちゃんと伝わったのが何よりうれしい。これからも災害の大変さ、どう復興していくかを伝える本を書いていきたい」と指田さん。今後も釜石市民とのつながりを大事にしながら、記憶の伝承に励む。
 
 愛知県名古屋市から足を運ぶ67歳女性は阪神・淡路大震災で実家が被災した。「現地に出向き、お金を落とすのが一番の支援」と考え、東日本大震災はじめ各地の大規模災害被災地を訪問し、各種活動を応援している。15年という時を重ねてきた東北被災地の人たちのことを考えると、「言葉では言い表せない感情が込み上げる。震災を風化させまいと取り組む子どもらの姿も心に響く。“津波てんでんこ”など、ここで教わったことは孫にもしっかり伝えていきたい」と話した。
 

釜石祈りのパークで竹灯籠供養 夕闇に浮かぶ「忘れない」の文字 亡き人の魂 明かりに重ね

 
釜石祈りのパークで行われた竹灯籠供養。芳名板の前に「忘れない」の文字が浮かび上がった=11日夜

釜石祈りのパークで行われた竹灯籠供養。芳名板の前に「忘れない」の文字が浮かび上がった=11日夜

 
 日中から遺族らが慰霊に訪れた釜石祈りのパーク。夕方には犠牲者の芳名板の前で竹灯籠供養が行われた。1153本の灯籠で「忘れない」の文字をつくり、市内と東京、千葉から駆け付けた僧侶4人が読経。訪れた人たちが焼香し、祈りをささげた。
 
 小川町の及川千恵子さん(34)は家族と訪れ、祖父生田正彰さん(当時71)の芳名板の前で献花し、静かに手を合わせた。当時、只越町で一緒に暮らしていた祖父は高校生だった及川さんの妹と一緒に逃げる際、津波にのまれた。妹は助かったが、祖父は帰らぬ人に。「あの時、こうしていたら…」。悔やむ気持ちはあるが、思い出すのは「孫に甘く、優しいじいちゃん」との思い出。自身は震災後、結婚し新しい家族ができた。「息子たちをじいちゃんに会わせてあげたかった」。ひ孫を溺愛する姿も想像する。生かされた自分たちがすべきは「毎日を大事に生きること。大切な人がいつ、いなくなるかも分からない」。家族への感謝とともに日々、歩んでいくことを誓う。
 
訪れた人たちが焼香。花を手向け、手を合わせて故人に思いを伝えた

訪れた人たちが焼香。花を手向け、手を合わせて故人に思いを伝えた

 
 同供養を続ける仙寿院(大只越町)の芝﨑恵応住職は「あの時のような亡くなり方は二度と見たくない。この場所が慰霊とともに教訓がきちんと伝わる場所となるよう、施設の改善など市にも努力してほしい」と願う。