初開催の「うのたみ食堂」で食事を楽しむ参加者
釜石市の鵜住居地区民生委員児童委員協議会(小澤修会長)は24日、同市鵜住居町の鵜住居公民館で子ども食堂を開いた。食事はもちろん、遊びや防災グッズの工作を楽しんだ参加者。学校が長期休みに入ったこともあり、「夏を目いっぱい楽しむぞー」と元気だ。子ども食堂は市内の他地区で取り組みが先行しているが、同地区では初開催。運営方法や行事内容、食事の献立、食材の調達など手探りながらの“お試しプレ企画”だったが、地元企業が食材を提供したり地域連携の機会として可能性を広げた。
鵜住居小の夏休み合わせて企画し、児童約40人が公民館に集まった。お楽しみ会として用意された遊びはパラスポーツのボッチャ。協力団体として参加する地域会議や公民館職員、市社会福祉協議会の関係者らも加わり、学年や世代を超え、歓声を上げながら競技に熱中した。
ボッチャに挑戦する子どもたち。「あれれー」
明暗分かれる…真剣勝負には子どもも大人もなし
東日本大震災や防災を学ぶ時間も。同地区の主任児童委員市川淳子さん(60)が、地域のお盆恒例行事の復活を描いた絵本「ぼんやきゅう」(ポプラ社、文/指田和、絵/長谷川義史)を読み聞かせした。箱崎白浜地区に住み、被災や避難所生活の経験を伝え、紙皿を使った、こまづくりも紹介。ペットボトルのキャップとストローを使った遊び、新聞紙でつくる即席スリッパを見せながら、「大変な時でも楽しいことを見つけられるんだよ」と子どもたちに語りかけた。
市川淳子さん(右)による絵本の読み聞かせを楽しむ児童
昼食は、協議会の会員や公民館で活動する男の手料理教室のメンバーらが手作りした冷やしうどん、サケフレークなどを混ぜ込んだおにぎりを無料で提供した。麺のトッピングとして用意されたワカメは地産地消の箱崎白浜産。米は協議会員の知人から寄せられた熊本県産を使った。
おいしいものを味わってもらおうと住民が協力して調理
「はい、どうぞ」。高学年の児童が料理運びをお手伝い
添えられた唐揚げは子どもたちに大人気。1人2個としていたが、澤本大吾さん(1年)は追加を希望して「おいしい」とうれしそうに頬張った。佐々木萌彩(めいあ)さん(6年)は「みんなとワイワイご飯を食べたりできてうれしい。ボッチャでボロ負けしたからリベンジしたい。夏休みの行事はまだあるし、目いっぱい楽しみたい」と笑顔を見せた。
口を大きく開けてパクリ。唐揚げを頬張る子ども
ずらりと並んだ唐揚げ。おいしさに子どもたちの箸も出る
唐揚げを提供したのは、栗林町に養鶏農場がある鶏肉生産加工販売業オヤマ(本社・一関市)。「からあげグランプリ」で最高賞を複数回獲得する自慢の味わいを知ってもらおうと、「室根からあげ」を200個(100人分)用意した。
この日は、同社の小山達也常務取締役(48)が足を運んで、児童らと交流。岩手県内の自社農場で鶏を育て生産者の顔が見えること、食材のおいしさを上乗せする味付けの秘密などを教えたりした。たくさんの喜ぶ顔に感激した様子で、「釜石には水産だけでなく、畜産もあると知ってもらえたら。次回は、地元の食材とコラボした釜石産ブランド『釜から』を持ってくるよ」と約束。養鶏を通した町おこし、食育への意欲も口にした。後日、平田地区と小佐野地区で開かれた子ども食堂でも唐揚げを振る舞った。
「からあげー、イエーイ!」と喜ぶ児童と小山達也常務
鵜住居地区は震災後、新たに建った学校を中心に地域交流を進めてきたが、新型コロナウイルス禍で行事参加が見送られたことで、「顔つなぎ」の機会が減っていた。昨年から他地区で子ども食堂が開かれ、鵜住居でも同協議会の会員間で機運が高まり事業を計画。今回は低予算で継続できる形をつかむための試行だったが、小澤会長(74)は「うまく手分けしてできたと思う。子どもたちに大人たちの顔を覚えてもらう機会にし、声をかけ合える地域づくりにつながればいい」と会場を見回した。
子どもたちの笑顔に小澤修会長も頬を緩ませる
鵜住居地区の子ども食堂は「うのたみ食堂」と銘打つ。集う“鵜住居の民”と主催する“鵜住居の民生委員”から文字をとった。来年度は、子どもだけでなく地域住民を対象にして世代間交流の場として実施する予定だ。