写真愛好者らの集いの場になる「フォトライフ写真展」
合言葉は「楽しく撮影、楽しく展示」―。フォトライフを楽しむ人たちが「見てもらいたい」作品を並べる写真展が9日まで、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。25回目の記念展には撮影者が出合い、心動かされた「日常」がずらり。市内外の20人が80点を出品し、身近な四季折々の風景や動植物、旅の思い出、家族のスナップ、商業写真…などで多彩な視点を見せた。
写真を通じて日常を楽しんでもらおうと、フォトライフ写真展実行委員会(多田國雄代表)が主催。独自に撮影を楽しんでいる写真愛好者らが展示を通じ交流を深める場となっている。地元の写真家、故浅野幸悦さんが中心になって1997年からスタート。浅野さんの亡き後、遺志を継いだ多田代表らが回を重ねてきた。新型コロナウイルス感染症の影響で2年間自粛。昨年から再開した。
写真は6ツ切サイズが基本形。台紙は手作りとこだわりも
作品は6ツ切サイズに統一しているが、展示は気軽な自由参加が基本。浜町の石田登茂子さん(74)は、和歌山県・南紀白浜を巡る旅の思い出や“あこがれの大スター”パンダの愛らしい姿を写した作品を出品した。近所の散歩コースで捉えた作品「華やぐ春」ではシダレザクラとツバキの競演を狙った。「好きな所に行って、好きなものを撮る。健康でいないとね」といたずらっぽく笑った。
来場者に撮影秘話などを伝える石田登茂子さん(右)
甲子町の菊池弘さん(86)は、フィルム写真にこだわりを持って活動している。「自覚はない」が、最高齢の出品者。好みの被写体は自然風景や躍動的な郷土芸能などだが、年齢を重ね、最近はカメラを携えて遠出する機会は減った。今回は数年前に撮った「憧れの山(アルプス)」「聖火が釜石に来た!!」など3点を紹介。「現像した時に思い通りの画が写し出された喜び」や独特の風合いを楽しんでもらった。
特別企画として、「ありがとう!! SL銀河」コーナーを設置。6月に運行を終えた観光列車を10数年追いかけた愛好者ら10人が20点余りを並べた。勾配のある釜石線を力強く走行する場面、疾走感あふれる車輪、機関士との交流など、さまざまな表情が来場者の目を引いた。
SL銀河の写真を並べた企画コーナーでは会話が弾む
撮りたいもの発見!展示会場でカメラを構える多田代表(右)
淡々と四半世紀-。多田代表(80)はつぶやいた。2011年3月の東日本大震災で仕事場(看板業)も自宅も失ったが、同年11月には新たな作業場で同展示会を実行。「負けないぞ」というよりは、「(津波は)いつか来ると思っていたから、たいしたことない…そんな感じだった」。手元に残った携帯電話のカメラで撮影した作品などを仲間と共に並べた。
写真を通じて日常を楽しんでいる出品者たち
記念展を彩った創設者・故浅野幸悦さんの作品(左)
記念展には浅野さんの作品1点、スタート時から使い続ける案内パネルも持ち込んだ。過去に浅野さんの子どもたちが出展したことがあったといい、「親の背中を見ていたのかな。そうやってこの写真展が続いていくのだろうと、印象深い出来事だった」と多田代表。「節目のとなる展示に役割を果たした」と肩の力を抜いた。