気象の変化を知ることでSDGsを考える勉強会
釜石ユネスコ協会(岩切久仁会長)は3日、SDGs(持続可能な開発目標)について理解を深める勉強会を釜石市大町の青葉ビルで開いた。昨年に続いて2回目で、今回はSDGsが掲げる17の項目のうち13番目にあたる「気候変動に具体的な対策を」に注目。気象予報士の佐々木道典さん(74)=甲子町=を講師に地域の気象の変化や特徴を学び、地球温暖化防止に向けできることを考えた。
講師の佐々木道典さん。釜石市内にいる気象予報士は2人だけ
佐々木さんは「地球温暖化で釜石は」と題して講話。世界の平均気温がこの100年で約1.09℃上昇しているというが、この1℃の変化は「地球全体では大きいこと。0℃で凍るが、1℃では凍らない。99℃で沸騰しないが、100℃では沸騰する。この違いを考えてみて」と促した。日本全体では1.3℃上昇。人的活動が活発な地域の変化はより大きく、東京3.2℃、名古屋2.9℃、大阪2.6℃、福岡3.9℃増となっている。
そのうえで、「釜石はどれくらい上がっている?」とクイズを出題。気温を測っている地域気象観測システム(アメダス)が設置された1976年以降の気象記録を示し、「平均気温が45年で2.5℃急上昇。釜石は最高気温で日本一となることもあり、もしかしたらもっと上がっているかも」とした。夏日(25℃以上)・真夏日(30℃以上)・猛暑日(35℃以上)・真冬日(0℃以下)の年別出現日数(最高気温)のグラフも見せ、「2011年以降は猛暑日が急増。1970年代に10日ほどあった真冬日は減り、2000年以降は1日あるかないか。温暖化の証明の一つ」とした。
未来の地域像を示して温暖化対策の必要性を訴えた
年間降水量、風速の変化に加え、海洋状況の変化も解説。海水温の上昇が異常気象を誘発する一つの要因だと考えられ、「次世代の暮らしを考えると恐ろしい。人類が生存不可能な地域にならないよう、本気で取り組まなければ」と指摘。対策を講じなかった場合の「〇年後の釜石」を想像し、「時すでに遅しとならないよう一人一人が行動を。関係機関に働きかけ続けるのも大事。最低でも今の状況を維持するため、みんなで力を合わせ、よい地球を残したい」と締めくくった。
同協会員や一般市民ら約30人が耳を傾けた。温暖化による気温上昇などを感じている人は多いが、グラフなど数字で示されて危機感を確かにした様子で、釜石の海抜と海水面上昇による災害や、アメダスの設置場所について質問。「地域を未来に残すため、私たちにできる対策は?」との問いかけに、佐々木さんは家庭での節電や公共交通の利用、リサイクル活動などを挙げた。
参加者は佐々木さんの話にじっくりと耳を傾けた
勉強会後に佐々木さん(奥右)を囲む岩切久仁会長(同左)ら
SDGsは2015年に国連で決めた世界の約束。30年までに先進国も発展途上国もより良い時代をつくろうと目標を掲げる。「今は15年間の真ん中あたり。日常の中でリサイクル、物を大事にする機運が少しずつ醸成されている。ささやかなことでも一人一人が勉強し、それに向かっていけば大きな力になる」と信じる岩切会長。視点を変えて勉強会を続ける考えだ。