浜由来の植物を増やそうと根浜海岸で活動する釜石東中生
海岸の原風景を取り戻したい―。釜石市鵜住居町の根浜海岸で19日、地元の釜石東中(佃拓生校長、生徒83人)の2年生31人が、種から育てたハマエンドウやハマヒルガオ、ケカモノハシなどの苗約380株を植えた。東日本大震災の津波で多くの海浜植物が失われた海岸林の再生活動は今年で6年目。先輩たちからつながる取り組みは着実に根付いていて、「たくさんの植物が花咲くきれいな浜に」と願った。
震災後にこの活動を始めたのは、根浜海岸林再生実行委員会。地域に親しまれたかつての風景を取り戻そうと地元住民や行政が連携し、同海岸由来の植物を種から育て現地に植え戻してきた。
根浜海岸で進む植物再生活動を知らせる看板
同校は2018年から協力し、総合的な学習の一環として続ける。2年生が中心となって毎年春に同海岸について学ぶ座学と種まきを行い、夏には移植地の清掃など全校挙げて環境を整備。秋に育てた苗を植栽して締めくくりとなる。
今年は5月に種をまき、水やりや日光管理を行いながら成長を観察。6、7月に移植地の草取りをして準備してきた。
移植場所の草取りをする釜石東中の2年生
先輩たちが植えた苗を残して周辺を除草
旅館「宝来館」前にあるマツ林の海側に作られた再生スペースが活動場所。生徒たちは除草した後、しっかりと根を張るよう願いを込めながら1本ずつ植えていった。現3年生が昨年種まきし育てていたハマボウフウの苗も植栽。定植場所を囲むロープの張り替えも行った。
育苗ポットから取り出して植える準備
苗を手に願う「しっかり根付いて」
自分たちが育てた苗を丁寧に植え付け
生徒や地元住民らの力によって再生スペースは延長200メートルほどに。先輩たちの取り組みが着実に根を張る。「ここは海辺の植物がたくさんあった貴重な場所。震災前の風景が戻るよう、できることをしたい」と汗をぬぐったのは小笠原早紀さん。“猫じゃらし”のようなケカモノハシが気になっていて、「どんな花が咲くのか、楽しみ。大きくなって、どこを見ても植物でいっぱいなきれいな所になってほしい」と思い描いた。
植え方を説明する島田直明教授(左)
講師を務める県立大総合政策学部の島田直明教授(植生学、景観生態学)は「作業した場所がどうなっているか、時々見にきてもらえるとうれしい。みんなが手伝って生まれる海岸の風景は地域の人の癒やしになる」と東中生に呼びかけた。育成中の苗は残り、植え替えが継続的、効率的にできるような取り組みも進行。「完成はまだ先だが、一緒に経験値をつくっていきたい」と、学校ぐるみの息の長い活動に期待を込める。