笑顔生む「釜石よいさ」4年ぶり開催 街を活気づける新たな形 継承へ手応え
「よいさ!」。かけ声に合わせて舞うよいさ小町
第32回「釜石よいさ」(同実行委員会主催)は23日、釜石市鵜住居町の釜石鵜住居復興スタジアムで開かれた。新型コロナウイルス感染症の影響で中止が続き、屋外での通常開催は4年ぶり。「笑顔を生み出す場」を心待ちにしていた15団体約550人が熱い群舞を繰り広げ、見守る市民らにも“はっちゃけた笑顔”が連鎖した。
よいさは釜石製鉄所の高炉休止を受け、街に活気を取り戻そうと1987年に始まった。東日本大震災で中断したが、2013年に再開。コロナ禍で再び中止され、オンラインで踊りを発信するなど代替企画を催し伝統をつないできた。
近年は経費や交通規制、運営人員不足など課題もあり、継続の形を模索。今回は、会場を市中心部から交通規制のない場所に移した。夏の風物詩として定着していたが、開催時期も猛暑を避けて8月から9月に変更。社会情勢の変化に対応すべく、新たな形を試験的に取り入れた。
多くの人でにぎわう釜石鵜住居復興スタジアム
「さぁさ、よいやっさー」。午後1時、開会が宣言されると、おはやし隊の笛や太鼓に合わせ威勢のいいかけ声が響いた。13人の「よいさ小町」があでやかに前ばやしを披露し、本番がスタート。企業や団体、学校などが趣向を凝らしたスタイルで踊りの輪を広げた。
企業や学校、団体が笑顔を添えて踊りまくる
おはやし隊が威勢のいいかけ声と音色で盛り上げる
かわいらしい踊り手ばかりの「こどもよいさ」
保育施設の子どもたちによる「こどもよいさ」は元気いっぱいにかわいらしい踊りを披露。双葉小6年生(29人)は保護者らを含め総勢約50人で輪に加わった。宮川友梨香さんは「ソーランの半被と鳴子の音を楽しんでもらえたらうれしい。踊るのはきついけど楽しい。いい思い出になる」とはにかんだ。
ソーランの半被、鳴子を手に元気に踊る双葉小6年生
複数の団体が入り混じってパレードの輪をつくった
特別養護老人ホーム仙人の里(甲子町)を利用する久保昭三さん(95)は「人がいっぱいでいい感じ。祭り、好きだ」とにこにこ顔。コロナ禍、施設では厳重な感染対策が求められ地域交流は難しかった。5類移行を受け、明るく頑張る姿を発信しようと初参加。生活相談員の佐藤啓祐さん(38)は「たまったものを発散できた。リフレッシュして、これからの力に」と表情は明るかった。
「明るく頑張ってます」。にぎやかな仙人の里チーム
よいさの熱演に観客は拍手を送ったり、まねしたり
山田町の石山健二さん(83)、三恵さん(78)夫妻は、小町として舞う孫3人の姿に「かわいかった。自慢だ」と目じりを下げた。よいさ観賞は初めてで、「踊りが流れているようで面白い。ゆっくり見ることができて良かった」と喜んだ。
市中心部に会場を移し行われた「アフターよいさ」
もう一つの試みが、大町の市民ホールTETTO前広場で行われた“アフターよいさ”。地元出身のフリーアナウンサー・民謡歌手の佐野よりこさんが「釜石小唄」を歌って盛り上げ、うのスタに行けなかった人らが踊りの輪をつくって楽しんだ。
水産加工技能実習生のゴ・ティ・グェットさん(27)は「ベトナムにはないお祭り。みんなで一緒に踊って楽しい」とほほ笑んだ。コロナ禍前に参加したことのあるホアン・ティ・トゥイさん(26)は「待ってたー」と、うのスタもアフターも満喫。広く開放的なうのスタの印象もよく、「来年も踊りたい」と望んだ。
餅まきも大盛況。笑顔あふれる「よいさ」が復活
実行委によると、うのスタとアフターを合わせた来場者は約4300人。実行委員長の一人、宍戸文彦さん(48)は多くの笑顔に触れ、「地域に祭りは必要だ」と実感した。会場の集約で救護や警備などに効率の良さも感じた様子で、「さらに手法を考え、改善していけば、もっと良くなる」と未来を見据えた。
「はっちゃけた笑顔がたくさん。来年もよいさで会いましょう」
釜石新聞NewS
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