震災当時の避難行動を学ぶ担当者=恋の峠付近
企業向けの教育研修プログラムを提供する日本能率協会マネジメントセンター(JMAM、東京都)は、ワーケーションの要素を組み込んだ新プログラムを釜石市で実施するにあたり、事業担当者3人による現地視察を8月27日から29日まで行った。計画する2プログラムのうち、震災の教訓から学ぶ「復興まちづくり」をテーマとした研修を体験。首都圏を中心とした企業へのアピールポイントを検証した。
ワーケーションの要素組み込み
JMAMは今年5月、ワーケーション事業の実施に向けた包括連携協定を釜石市と締結。同市の「災害」と「製鉄」、2つの歴史に着目し、企業や組織に必要な学びを得る新たなプログラムを開発、実施する計画を進めている。
今回、視察の対象となった「復興まちづくり」のプログラムは来年、3泊4日で実施予定。困難を乗り越える力を育むことを狙いに▽震災当日の避難行動から学ぶマネジメント研修▽災害復旧工事の現場見学▽地域資源を活用した震災後の取り組み事例学習―などを主なメニューとし、まちに変革を与える人たちとの交流の場も設ける。新型コロナウイルス対策で普及が進むテレワークと組み合わせ、「地域に学ぶ」独自のワーケーションプログラムを目指す。
27日は、受け入れを担うかまいしDMCが「釜石の出来事」から学ぶ組織マネジメント研修を公開。震災当日の釜石東中生の避難行動から、強い組織力を生むための要素を読み取り、自分たちの組織に必要なことを考えてもらう4時間の研修の一部を事業担当者らが体験した。
最初の疑似体験ワークでは、震災発生時の東中の状況を机上で再現。限られた時間で正しい判断を下さなければ全員の命に関わるという緊迫した状況の中、職員室に寄せられる多くの情報を基に、どのような避難指示を出すべきか、学校責任者の立場になって考えた。
続いて震災時、東中2年だったDMC社員川崎杏樹さん(24)=いのちをつなぐ未来館勤務=の案内で、実際の避難ルートをたどった。学校があった現在の釜石鵜住居復興スタジアムから恋の峠まで、当時の避難行動を追体験。経験者の川崎さんの話を聞きながら、小中学生ら560人あまりが命をつないだ現場に想像をかき立てた。
JMAMの川村泰朗・新事業開発部長は「五感で感じる迫力、コンテンツの深さを実感。手応え十分」と、釜石のプログラムを高評価。「人材育成は企業の重要な業績。その創出貢献活動を地域でやるのが、私たちなりのワーケーション」とした上で、「釜石はU・Iターン者を含め、イノベーションマインドを持った人たちが多い。自分の成長のため、ビジネスのためと、何度も足を運びたくなるような流れができれば」と期待した。
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