日本ラグビー最高峰のトップリーグ昇格を目指し、一つ下のカテゴリー『ジャパンラグビートップチャレンジリーグ(TCL)』に参戦している「釜石シーウェイブス(SW)」。
先日、今季の公式戦の全てを終え、成績は昨シーズンと同じ7位(8チーム中)という悔しい結果に。
今季、GM兼監督としてチームを率いたのは桜庭吉彦さん。
「すべてが勉強になる1年でした」という桜庭さんに、2018年シーズンを振り返って頂きました。
インタビュー:2019年1月10日 / 釜石情報交流センター ラウンジ
企画・編集:釜石まちづくり株式会社
取材・文:市川香織(釜石まちづくり株式会社)
写真:西条佳泰(Grafica/LiFESTYLE Lab.)
ーーまずは、先日(1月5日)に行われたTCL残留をかけた入替戦について。下部リーグチーム(中部電力)と対戦し、勝利しました。
チームの規律をしっかり守る、流れが悪い時にでもそこに立ち返るという所がしっかり出来、試合前に想定した“相手に対する自分達の強み”を体現してくれた試合だったと思います。
ーー最終戦を地元で戦うというシーズンもなかなか無い事だったと思うのですが・・・。
そうですね、今まで無かったですね。今年は地元で勝てなかったので、鵜住居復興スタジアムでの初勝利を挙げ、来季に繋げる試合が出来たというのは非常に大きかったです。
自分達も良い試合内容でしたし、中部電力さんも良い試合をして下さったと思うんです。
8月のこけら落としのヤマハ戦とは違って地に足のついた試合だったと思いますし、寒い中あんなに多くの皆さんに足を運んで頂き“釜石ラグビー”を想う皆さんの気持ちが伝わって来て、会場に一体感がありました。
今後もぜひ、こういう試合が常に出来るようにして行きたいですね。
ーー試合前に選手に伝えた事は?
セカンドステージ最終節のマツダ戦でしっかりと自分達のやるべき事が出来て勝利し、ある程度自信も持っていましたから、その試合とやるべき事は一緒で大きく変わってはいませんでした。
TCL残留をかけた入替戦という絶対勝たなければいけない試合で、もちろん大きなプレッシャーもありましたが、“リラックスして行って来い!”という話はしました。
ーーあまり意気込まずに臨め、という感じでしょうか?
やっぱり、勝負ってなかなか難しいと思いましたね。意気込ませて良い時もありますけど、逆にそれで固くなってしまって力を発揮できなくなる時もありました・・・。
特に栗田工業戦はまさにそういう状態だったと思います。何が何でも勝たなくてはいけない!という意気込みが固さに繋がり、自分達のプレーが出来なかったです。
ただ、リラックスし過ぎるのも問題で(笑)。その辺りはさじ加減が必要ですね。
ーー今季、FWを大幅に強化してスタート。目指したチームの形は?
プレースタイルとしては、“アタックのみならずプレーを継続する”という所をテーマにやってきました。
その為には、プレーのスキルなどの大事な要素がたくさんあり、そこを春から積み上げて来ました。
しかし、今振り返ってみると、コミュニケーションや試合の中での規律がベースに無いと、なかなかその部分が機能して行かなかったんじゃないかと感じます。
ーー目指した地点への達成度について。
チーム力は上がったと思います。ただ、苦しい場面でどう立て直すかとか、あるいはどう仲間を信頼し、自分たちがやるべき事を信じて力を発揮して行くか・・・という所までは到達出来なかったと思います。
そこは事前の準備が足りなかったという反省がありますね。
ーー鵜住居復興スタジアムこけら落としが8月に。チームの意識も普段とは違うものでしたでしょうか?
特別な試合を迎えるにあたり、今までの釜石ラグビーの歴史、鵜住居復興スタジアムが建設されたあの場所のこと、地域の皆さんがどういう想いを持ってこの日を迎えるのかなどを、チーム内で改めて共有しました。
東日本大震災を経験した選手・スタッフも少なくなって来ている中で、この試合をきっかけにして改めて振り返る事が出来たのは、チームにとって非常に大きな事でした。
結果、勝利する事は出来ませんでしたが、ヤマハさん相手に手応えを得て、さらに“未来に繋がる”試合が出来た事が良かったと思います。
ーーそのこけら落とし試合の盛り上がりから臨んだ、2年目のTCL。
初戦の三菱重工相模原戦は、“良い試合を”というよりは“勝つ試合を!”と臨みました。点差はつきましたが悲観するような内容ではなく、ある程度の手応えを掴めるものでしたし、自信を持って試合をすることが出来たと思います。
結果として負けたのはちょっとした事の差なんですが、それが勝負の難しさで、ああいう試合を多く経験している三菱重工さんの方が一枚上でした。
その点、次のマツダ戦の方が難しく、三菱重工戦である程度の手応えを掴んだ中で“自分たちがいかに試合毎に力を向上させて行くか”というテーマだったんですが、三菱重工戦が“自信”ではなくて“過信”になってしまったまま、試合を迎えさせてしまった所がありました。
ゲームの中の規律の面でもマツダ戦は反省が多かったですし、そういう部分の大切さを学び、次のステップへの課題を与えてくれた試合でした。
ーーその後の試合は、九州電力と中国電力に勝利、NTTドコモと近鉄には敗れましたが、両チームから「今季初めてここまで苦しめられた。SWもTOP4に入るチーム」というようなコメントが出ていました。
マツダ戦が終わってから、九州電力戦まで比較的時間があった中で、チームの規律について、トレーニングからもう一度見つめ直して取り組みました。それが九州電力戦の勝利に繋がり、それ以降は、もちろんそれぞれの試合ごとに様々な反省がありつつも、1試合ごとに力を付けて行くような試合が出来たと思います。
ーー参戦するTCLはレベルがまた上がっているように感じます。
そうですね、そこはファーストステージで勝ったチームにセカンドステージで負けたりした事が、力が拮抗している事を表していると思います。
また、今季はNTTドコモさんと三菱重工さんがトップリーグに昇格したという事実からも、このTCLの中で切磋琢磨する事が、着実なレベルアップに繋がると確信します。
ーー来季はRWCが秋に開催され、リーグ開催時期等イレギュラーなシーズンになりそうですね。
公式発表はまだされていませんが、そうなりそうですね。ですので、準備についてもいつものシーズンとは違うものになりそうですが、チームとしては新たな成長が出来るシーズンになると思います。
ーーサポーター、ファン、市民の皆さんへ。
まず、1月5日の入替戦では、新年早々の寒い中、たくさんの方が鵜住居復興スタジアムに来て応援して下さった事、本当に感謝しています。お陰様で何とか勝利し、次のシーズンに繋げる事ができました。
今年はラグビーワールドカップイヤーでもありますので、地域の皆さん、そして全国の皆さんへ“釜石ラグビー”をどんどん発信する年にしたいと思っております。
ぜひ、引き続き釜石SWをよろしくお願いいたします。