大漁祈り するめっこ釣り〜尾崎白浜で小正月の伝統行事、子どもら元気に家々めぐる
顔の墨もりりしく、イカ釣りで安全と繁栄のお告げをする子ども
釜石市の尾崎白浜地区に伝わる小正月行事「するめっこ釣り」は15日、行われた。漁師に扮(ふん)した男の子16人が漁家17軒を巡り、イカ釣りのまね事をしながら家内安全、豊漁のお告げを伝えた。大漁のしるし「イカ墨」を満面に付けて行進する一団を、地域住民が笑顔で迎えた。
小正月は「浜の正月」とされ、漁を休み、船と乗組員の安全、大漁を祈る習慣がある。するめっこ釣りは、子どもたちが元気に成長している姿を示す“顔見せ”として行われる伝統行事。
参加したのは3歳から小学6年生。豆絞りの鉢巻きを締め、小さな疑似イカを糸先に結び付けた竹ざおを担いで尾崎神社本宮に参拝。このあと、招かれた家々を回った。
「するめっこ、釣らせてけだんせ」とあいさつし、家主から「釣れ、釣れ」と許可を得ると、玄関に並び、イカの鳴き声をまね、漁をする動きを続けた。
子どもらは「ひと、ふた、みー、よー…ここ(のつ)、とー」と釣り上げた数を確認。家主が「なんぼ釣った?」と問うと、「満船」(船いっぱいのイカ)と元気な声を上げた。
頑張った子どもに家主は駄賃を弾み、筆にたっぷりと墨を含ませ、子どもの顔に乗せた。毛筆の感触に「こっちょがしー(くすぐったい)」と身をよじる子ども、「でんび(ひたい)に書いて」とリクエストする上級生もいた。
リーダーの佐々木北斗君(平田小6年)は「小さな子は話を聞いてくれなくて」と、グループをまとめるのに四苦八苦。「今年は中学生になる。今はバウンドテニスをしているけど、部活はバドミントンを考えている」と春を待つ。
同地区の平田第3仮設住宅に住む漁業佐々木與一さん(80)、ナヲさん(74)夫妻も子どもたちを迎えた。遅れていた自宅再建は、仮設住宅から見える場所に2月の完成を見込む。「小さくても自分たちの家に住める。次男の家が隣にあり、安心だ。子どもたちがいっぱい来て、やっと小正月の気分になった。来年は新しい家に来てもらう」と楽しみにしている。
(復興釜石新聞 2019年1月19日発行 第758号より)
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