2011年3月11日に発生した東日本大震災津波から7年の月日が経ちました。深く大きな傷を負った地域の風景は、再び笑顔が集う街の姿を目指し、日々変わり続けています。
未曾有の災害により甚大な被害を受けた故郷の姿を、写真や映像に撮り続けている活動があります。その名は「復興カメラ」。釜石市のNPO団体 @リアスNPOサポートセンターのスタッフが撮影を行っています。
その中の一人、事務局長の川原康信さんに、これまでの活動と3月13日から釜石市民ホールのギャラリーで開催されている写真展についてお聞きして来ました
被災地の今を記録に残すこと
ーー地元での写真展の開催はこれまでありましたでしょうか?
川原さん:
お隣の大槌町では数回開催していましたが、実は、「写真展」という形態での開催は、釜石ではほぼ初めてになります。
ーー活動のきっかけは…?
川原さん:
2011年の7月、神戸へ行くご縁を頂いた際、【人と防災未来センター】を見学させて頂きました。その時、案内してくれた神戸の皆さんが“記録を残すこと”の重要性について話してくれました。「今、この時の写真は今しか撮れない」。当たり前のことですが、過去にさかのぼって撮る事は出来ないわけです。
釜石へ戻り、「自分たちに出来る事は何か?」と話し、「記録の為に写真を撮影しよう」という事になりました。
始めたばかりの頃は、「どこをどんな風に撮影すれば良いのか?」という基本的な事を悩みながらのスタートで、意見を出し合いながら試行錯誤して来ました。そして何より、自分たちの故郷の瓦礫だらけの風景を撮影する事に心が痛み、苦しい思いをしました。色々な意味で難しい作業でした。
活動の広がり~全国各地での「写真展」開催~
Photo by @リアスNPOサポートセンター
ーー撮影した写真の活用についてはどのように考えていらっしゃったのでしょうか?
川原さん:
そうですね、目的は「記録」でしたから、“撮影した写真を活用して何かをする”という事を初めから考えていたわけではありませんでした。ただ、ホームページやFacebookに写真を掲載し始めたのは、外部へ向けて発信する為で、「ここから支援の輪が広がる事に繋がってくれたら」という想いからでした。そこから次第に“風化”の声が聞こえ始めると、少しでも現状をお伝えすることが出来ればと、時間の経過と共に想いや写真の活用も変化していきました。
ーー写真展の開催についてはどうだったのでしょう。
川原さん:
一番最初は外部の方にお声掛け頂いて開催したのですが、その時に「写真展」という形を取り“復興カメラ”の活動を観て頂く、知って頂くことが選択肢としてあるのだなと認識しました。
これまで全国各地で開催させて頂きましたが、特に、東京、神戸、大阪の皆さんにはたくさんお呼び頂きました。これまでのトータルでも、自分達の主催で実施した写真展の方が回数は少ないですね。
ーー各地で写真展を開催していて感じた事、記憶に残っているエピソードなどあれば…。
川原さん:
地域によって本当に様々です。例えば、写真の見方一つをとってもそうです。神戸の皆さんは、一枚一枚の写真を特に丁寧に見て下さいました。
また、東京では歩いている人の目に入るように外へ向けて写真を展示した所、一度通り過ぎた方が戻って来て、「私、岩手の出身です」と話しかけてくれたこともありました。
釜石市民ホールでの写真展の様子
それから、先ほどお話しした大槌町での開催は、お盆時期にショッピングセンターの一角での展示でした。その時の反応も本当に様々でした。写真展の内容に気づき、目をそらしながら足早に通り過ぎる方、写真を見ながら帰省した孫や子供に説明するおじいさん、おばあさん。写真の前で泣きながら話をしている方を見た時には、「ここで開催して良かったのだろうか…」と自問し、色々と悩んだ事もありました。
ーー地域によって様々というお話しでしたが、展示する写真の内容もそれぞれの場所によって違うのでしょうか?
川原さん:
そうですね、毎回同じ内容で展示しているわけではありません。「どこで、誰に向けて、どう見てもらうのか」という事を大切にしています。この想いは主催して下さる方々にも丁寧に説明し、同じ想いを共有して頂きながら行っています。時には、残念ながらその想いを理解してもらえずにすれ違ってしまう場合もありますが…。
今回は釜石市民ホールから声を掛けて頂き開催が決まりましたが、地元での開催は少し慎重になっていましたので、すぐにはお返事出来ませんでした。ただ、市民ホールの中なら、写真展が目的ではない不特定多数の方々の目に不意に入ってしまうという事もある程度は避けられるだろうと考えました。さらに、目の前が歩道のロケーションですので、外へ向けて展示する写真は、未来へ繋がるような“希望”を感じて頂けるような写真にしました。
釜石市民ホールでの写真展の様子
そして、写真はパネルにして展示しているのですが、実はその土台のパネルにもストーリーがあります。写真に合わせてパネルについての説明も加えていますので、ぜひ会場でご覧ください。“この場所で展示する事の意味”を考え、スタッフが厳選した約50点を展示しましたので、ゆっくりとご覧頂きたいです。
“復興カメラ”という表現の形
ーーとても細やかな配慮をしながら開催されているのですね。活動の“これから”についてはいかがでしょうか?
川原さん:
私たち自身もこの活動をどのようにしていくのかについては、悩んでいる所です。一旦、今年度で区切りを付けようか…という話をしています。撮影自体はこれからも続けていくとは思いますが、これが最後の写真展になるかもしれません。
それから、この「復興カメラ」の活動が被災地の記録を残す方法として、“定型”になってくれたら、という想いがあります。この先、50年、100年後に「どこからスタートしたかは定かではない。どうやら東北らしいけど…」と、記録してきた写真と共に受け継がれていれば…、そんな風に思っています。
東日本大震災 復興の記録 写真展 復興カメラ~岩手 釜石・大槌 (TETTOプレオープンイベント Vol.12)
開催期間 2018年3月13日(火)~4月1日(日)
時間 9:00~21:00
場所 釜石市民ホールTETTO ギャラリー
入場無料
【復興カメラ】
特定非営利活動法人@リアスNPOサポートセンターのスタッフ数名で活動がスタート。その後、国や県の制度を活用し、多い時は十数人のスタッフで撮影を行う。
これまで撮影した写真の枚数は2017年9月時点で、155,182枚に上る。(撮影場所は主に釜石・大槌。その他三陸沿岸の被災地も)。また写真展は主催・共催合わせてこれまで22回開催(パネルのみの貸し出しは除く)されている。
復興カメラFacebookページ
https://www.facebook.com/fukkocamera
復興カメラ公式サイト
https://kickoff-rias.com/fukkocamera/
かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんす
縁とらんす編集部による記事です。
問い合わせ:0193-22-3607 〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内