「あの日を忘れない」と思い込め、青空に希望の風船放つ〜高台移転の根浜地区住民
古里「根浜」の再興を願い、色とりどりの風船を空に放つ住民ら=11日、午後2時50分
津波で壊滅的な被害を受けた鵜住居町根浜地区では11日、高台造成地に整備された復興団地の住民ら約40人が震災発生時刻に合わせ、眼下に広がる海に黙とうをささげた。
根浜親交会(前川昭七会長)が昨年4月、団地内の公園に建立した「津波記念碑」の前で追悼行事。同地区で犠牲になった15人と共に、津波で尊い命を奪われた全ての犠牲者を思い、午後2時46分に黙とう。白菊と線香を手向け、穏やかな海に鎮魂や安寧の祈りをささげた。「がんばれ」「海がにぎわう根浜へ」など復興を鼓舞するメッセージを記した風船もリリース。青空に未来への希望を託した。
同団地に父と暮らす佐々木理紗子さん(24)は、津波で母、祖父母、伯母を亡くした。7度目の命日に「こっちも頑張っているので、見守って下さい」と伝え、4人の冥福を祈った。母純子さん(当時53)は「ユーモアがあり、気遣いの細やかな人」だったという。「あの日のことは決して忘れることはない」が、歳月の経過で記憶が薄れていく不安も口にし、複雑な胸の内をのぞかせた。
震災前、67世帯約180人が暮らした根浜地区。最大18メートルの津波が襲ったが、「海の見えない生活は不安」という住民の要望で、防潮堤は震災前と同じ5・6メートルの高さを維持。海抜20メートルの高台造成地に自力再建用地と戸建て復興住宅、集会所などが整備され、現在、33世帯約50人が暮らす。
住民らは震災後、各地の仮設住宅で生活していたが、毎月1回のお茶会でつながりを持ち続けた。3月11日の追悼も形を変えながら毎年継続。今年は、記念碑に刻んだ同地区に伝わる津波の教訓をかみしめながら、後世への伝承を誓い合った。
前川会長は「みんなで力を合わせ、住み良いまちにしていきたい。今までの苦しみ、悲しみ以上に、残された人生を有意義に過ごしていければ。楽しく生きることが(犠牲者の)供養にもなると思う」と前を向いた。
(復興釜石新聞 2018年3月14日発行 第672号より)
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