唐丹中3年生に囲まれ、閉講を迎えた佐々木さん(前列中央)

唐丹中学校「学びの部屋」〜講師に感謝の色紙

唐丹中3年生に囲まれ、閉講を迎えた佐々木さん(前列中央)

唐丹中3年生に囲まれ、閉講を迎えた佐々木さん(前列中央)

 

 唐丹中(千葉伸一校長、生徒35人)の3年生10人を対象とする学習支援教室「学びの部屋」が6日、本年度の講座を終えた。生徒らは、学習支援相談員佐々木初太郎さん(70)に寄せ書きの色紙を贈って感謝した。生徒は全員が市内、県内の高校への進学を目指す。

 

 学びの部屋は、東日本大震災で被災した地域の学習支援活動を続ける一般社団法人子どものエンパワメントいわて(盛岡市、山本克彦代表理事)が主催する。元教員の佐々木さんは、昨年7月から唐丹中を担当した。

 

 同教室は毎週4日間、放課後に開設。3年生は任意で多目的ホールに集まった。受験を目前にした6日、最終講座の後、閉講式が行われた。

 

 千葉校長が感謝を述べ、生徒らは「教えてもらったことを今後に生かす」「温かく、すばらしい言葉を忘れず、高校生活もがんばる」と笑顔で話した。

 

 佐々木さんは戦後生まれて間もなく、旧満州(中国東北部)から父親の故郷大槌町金沢に引き揚げた。東京都で教べんをとり退職。震災に衝撃を受け、翌年帰郷。若者の生業支援を目指す活動を続ける。

 

 佐々木さんは「この生徒たちは小学校低学年で震災を体験し、苦労もしてきたはずだが、学校の先生や地域の人に見守られてすくすく育った。温かく接し、受け入れてくれた生徒に、私の方が感謝したい」と語った。

 

(復興釜石新聞 2018年3月10日発行 第671号より)

 

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「鉄のまち釜石」の礎を築いた先人の墓前で手を合わせる

「鉄都釜石の立役者」しのぶ、石応禅寺で高橋亦助百回忌法要〜郷土復興への決意新たに、顕彰会も近く正式に発足

「鉄のまち釜石」の礎を築いた先人の墓前で手を合わせる

「鉄のまち釜石」の礎を築いた先人の墓前で手を合わせる

 

 「鉄都釜石の立役者」とされる明治時代の製鉄技師、高橋亦助(1853~1918年)の百回忌と釜石製鉄所従業員の物故者法要が3日、釜石市大只越町の石応禅寺(都築利昭住職)で行われた。同寺と、近く正式に発足する高橋亦助顕彰会が共催。関係者50人が参列して郷土の先人の遺徳をしのび、「鉄のまち」としてさらなる発展を目指す決意を新たにした。

 

 法要は、釜石製鉄所の前身に当たる釜石鉱山田中製鉄所の初代所長横山久太郎(1856~1921年)の命日に合わせ、初めて行われた。

 

 冒頭で、発起人の野田武則釜石市長が経緯を報告。「昭和33(1958)年、薬師公園内に高橋亦助顕彰碑が建立されたが、その後はおろそかにされていた。反省している」とした上で、「高橋亦助の努力があって今日の釜石がある。不撓不屈(ふとうふくつ)の精神を与えてくれた偉業を共有し、さらなる発展を目指したい」と決意を述べた。

 

 参列者はこのあと横山久太郎、高橋亦助の墓前に足を運び、先人の功績をしのびながら手を合わせた。

 

百回忌法要で高橋亦助の偉業に思いをはせる参列者

百回忌法要で高橋亦助の偉業に思いをはせる参列者

 

 高橋亦助は1883(明治16)年に発生した釜石大火で焼失した石応禅寺が現在の場所に移転する際にも力を尽くした。都築住職(48)は「その恩にも報いたい」とした上で、「釜石で生まれた亦助の偉業を市民に広く知ってもらいたいと法要を行った。震災からの復興に向け、不撓不屈の精神を受け継いでいきたい」と思いを込める。

 

 近く正式発足する顕彰会のメンバーは10人程度を見込み、会長には米田寛新日鉄住金釜石製鉄所長を予定。今後は毎年この時期に法要を行うほか、高橋亦助の偉業を改めて市民に周知する活動にも取り組む。

 

 ■高橋亦助(たかはし・またすけ)
釜石村に生まれ、22歳の時に政府の工部省鉱山局釜石出張所の求人に応募し採用される。高炉操業主任として高炉での出銑に挑み、1886年、49回目で成功にこぎ着けた。製鉄所は1917(大正6)年、田中鉱山に改組。亦助は監査役、栗橋分工場長となるが、翌18年にまん延したインフルエンザにり患し、死去した。

 

(復興釜石新聞 2018年3月7日発行 第670号より)

 

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アイルランドの小旗を振って大使を歓迎する鵜住居小児童ら

アイルランド大使迎えCM発表〜鵜住居小児童、ワールドカップ成功への願い込め

アイルランドの小旗を振って大使を歓迎する鵜住居小児童ら

アイルランドの小旗を振って大使を歓迎する鵜住居小児童ら

 

 来年に迫ったラグビーワールドカップ(W杯)に向け、釜石市が地元の魅力を発信しようと、鵜住居小(中軽米利夫校長、児童142人)の6年生30人らの協力で取り組んできたCM作品が完成し、2日、大町の釜石情報交流センターPITでお披露目された。震災被災地の復旧状況やW杯開催に向けた取り組みを視察するため来釜したアイルランドのアン・バリントン駐日大使も来場。児童らと交流を楽しみ、「復興の進み具合を見てあらためて感動。あれほど大変な出来事があっても釜石、東北の人は強いと感じた。未来を担う子どもたちの頑張り、見守る地域の優しさ、いたわりも実感」と穏やかに話した。

 

 作品は約10分。旅館ではラグビーボールが風呂に浮かび、スーパーではラグビーボールがワゴンに山積みで販売されている。飲食店で出される飲み物はラグビーボールに入れて出され、バスや電車ではラグビーボールが切符代わり。かつて新日鉄釜石ラグビー部が日本選手権7連覇を果たした「ラグビーのまち」の歴史を振り返りながら、ラグビーが暮らしの中に満ちあふれた雰囲気をパロディー風の映像でユーモラスに表現した。

 

進め!ラグビー精神で We advance!With the spirit of Rugby. IWATE-KAMAISHI JAPAN UNO-SMILE CM TEAM

[企画・出演]UNO-SMILE CM TEAM、2017年度 岩手県釜石市立鵜住居小学校卒業生 [制作事務局]ヒーローズエデュテイメント(株) [制作・著作]釜石市総務企画部ラグビーワールドカップ2019推進室

 

 震災を含め幾多の災害を乗り越えてきた地域や復興に尽力する人の姿も紹介し、地域再生への思いを発信。震災時に幼稚園や保育園児だった児童たちの成長ぶり、震災前の学校の敷地で建設が進むW杯スタジアムを望みながらの学校生活も織り交ぜ、大会成功への願いを込めた。

 

 CM作りは大会の機運醸成、復興のPR、市のイメージアップによる釜石ファンの拡大、試合観戦や来訪の促進を図るとともに、児童の郷土に対する愛着と誇りの醸成、次代を担うものづくり人材育成の一助にと企画。児童は昨年11月から授業の一環でCM作りを始めた。製作担当のヒーローズエデュテイメント(東京都、長谷川英利社長)らの助言を受け、児童は古里の良さを考えながら撮影に挑んだ。

 

 完成お披露目会には児童、保護者、市関係者ら約120人が参加。試写を見た同校の三浦花音さん(6年)は「まちの良さがすごく表現されていた。思った以上の仕上がりで感動した」と笑顔を見せた。

 

 井上右望(うみ)君(同)はCM作りを楽しみながら、まちや震災について理解を深めた様子。母親の厚子さん(48)は子どもの成長ぶりに感激しつつ、「中学生になっても友達、人との輪を大事にして協力し合ってほしい。いろんなことにチャレンジして頑張れ」と見守った。

 

 W杯にはアイルランド代表も出場。9月28日に静岡県の小笠山総合運動公園エコパスタジアムで日本代表と対戦する。バリントン大使は「釜石での試合はないが、ラグビーを通じ復興を応援したい。アイルランドと釜石のつながりを深めたい」と望んだ。

 

 出迎えた野田武則市長は、W杯開催の意義や、市内企業とアイルランドのつながりなどを説明。「子どもたちもW杯を盛り上げようと頑張っている。CMを通し、支援への感謝や釜石の頑張りを世界に示したい。つながった絆を深めていきたい」と応じた。

 

(復興釜石新聞 2018年3月7日発行 第670号より)

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Welcome Home Scott Fardy!” 釜石ラグビータウンミーティング

Welcome Home Scott Fardy! 釜石ラグビータウンミーティング

Welcome Home Scott Fardy!” 釜石ラグビータウンミーティング

 

復興「ありがとう」ホストタウン事業~“Welcome Home Scott Fardy!” おかえりファーディー!釜石ラグビータウンミーティング

2009年から2011年まで釜石シーウェイブスRFCに所属し、オーストラリア代表としてラグビーワールドカップ2015イングランド大会に出場した、スコット・ファーディー選手と一緒に震災からこれまでの釜石市を振り返りながら、交流を深めるタウンミーティングを行います。来場者には素敵な記念品も差し上げます。

 

復興「ありがとう」ホストタウン事業~“Welcome Home Scott Fardy!” おかえりファーディー!釜石ラグビータウンミーティング

“Welcome Home Scott Fardy!” おかえりファーディー!釜石ラグビータウンミーティングチラシ

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開催日

平成30年3月12日(月)19:00~19:50

会場

チームスマイル・釜石PIT(釜石市大町1-10)

ゲスト

Scott Fardy
スコット・ファーディー氏
2009年~2011年 釜石シーウェイブスRFCに所属
2012年~オーストラリアに帰国。スーパーラグビーのブランビーズに加入。
2013年~2015年 ラグビーオーストラリア代表選手に選出され、2015年にはラグビーワールドカップ2015に出場。
2017年~ アイルランドで現役選手として活躍中

プログラム

18:30 開場・受付
19:00 オープニング
19:05 ゲスト・トークセッション1
19:10 ゲスト・トークセッション2
19:30 会場とのトークセッション
19:50 閉会

参加

入場無料(事前申し込みは必要ありません)
※定員は100名
※交通機関は、自家用車、自転車、徒歩、その他各種公共交通機関をご利用ください。
※施設駐車場には限りがありますので、公共交通機関のご利用、乗り合いによるご来場にご協力ください。

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 ラグビーワールドカップ2019推進室
〒026-0031 岩手県釜石市鈴子町22-1(シープラザ釜石内)
電話0193-27-8420 / FAX 0193-22-6040 / メール
元記事:
https://www.city.kamaishi.iwate.jp/shisei_joho/shokai/rugby_city/detail/1216896_3208.html
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新しいポンプ、積載車の配備を喜ぶ消防団第6分団第7部(左)、第8分団第6部の団員ら

“火消し”に大きな力、最新鋭のポンプ車配備〜釜石市消防団 6分団7部 8分団6部

新しいポンプ、積載車の配備を喜ぶ消防団第6分団第7部(左)、第8分団第6部の団員ら

新しいポンプ、積載車の配備を喜ぶ消防団第6分団第7部(左)、第8分団第6部の団員ら

 

 釜石市は2月28日、釜石市消防団の2部に小型動力ポンプと積載車両の1組を配備、引き渡した。鈴子町の釜石大槌地区行政事務組合消防本部庁舎で引き渡し式が行われ、山崎長栄団長が車検証やキーを各部に贈った。

 

 配備を受けたのは第6分団(佐々幸雄分団長)の第7部(片岸町室浜、佐々栄部長、部員8人)と、第8分団(千葉茂分団長)の第6部(唐丹町荒川、橋本信行部長、18人)。

 

 山崎団長は「旧装備は小型ポンプが37年、車両は27年を経過し更新した。部員全員が最新の装備の操作技術を習得し、訓練を重ねて災害の軽減につなげてほしい」と激励した。

 

 受領した2部は新車両で甲子川の河川敷に向かい、ポンプの能力を確認、操作や点検の要点を学んだ。

 

 車両はディーゼルエンジン搭載の4WD、オートマチック。密閉式の乗車定員は6人で、後部デッキも簡易フードで外気から守られ居住性に優れる。小型ポンプは軽量化され、揚水時間を短縮、揚水能力も向上した。

 

 第8分団第6部の橋本部長は「共に活動した旧車両には愛着がある。荒川地区には間もなく三陸沿岸道(インターチェンジ)が完成し、活動範囲も広がるだろう。高性能の新車両、ポンプを十分に活用したい」と喜んだ。

 

 第6分団の佐々分団長は「(大震災で全域が被災した)室浜地区は復興工事が続き、屯所が整備できない。新しい車両は当面、栗林町の仮屯所で保管、運用する」と厳しい現状を語った。

 

 積載車両と小型ポンプの購入価格は1組約1174万円。

 

(復興釜石新聞 2018年3月3日発行 第669号より)

 

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「てんでんこ」紙芝居で継承〜釜石高生 鵜住居小で講座、「逃げる力」の大切さ説く

紙芝居をスクリーンに映し、震災時の津波避難の経験を伝える佐野里奈さん(右)と永田杏里さん

 

 津波から自分の命を守れる人に――。東日本大震災を経験した釜石高の2年生5人が、当時の自分たちと同じ小学4年生にその教訓を伝えたいと、2月27日、鵜住居小(中軽米利夫校長、児童142人)で防災講座を開いた。手作りの紙芝居とクイズを通じ、4年生34人に自分の身は自分で守る“津波てんでんこ”の教えと防災知識を学んでもらった。

 

 釜高のクラスメートという佐野里奈さん(鵜住居小出身)、永田杏里さん(小佐野小同)、鈴木紅花さん(双葉小同)、岡本さくらさん(大槌北小同)、松田悠河君(甲子小同)が企画。紙芝居は、震災当時、釜石東中の生徒らといち早く高台に避難し津波の難を逃れた佐野さんの経験を基に製作した。

 

 主人公の小学生「ナナちゃん」は学校で大地震に見舞われ、校舎上階に向かうも、中学生が高台の避難場所を目指し走る姿を目撃。中学生の兄に手を引かれ、迫りくる津波から懸命に逃れる。トラックの荷台に乗り移動した避難所で、不安な一夜を過ごし、2日後、家族4人が無事、再会を果たす。佐野さんがナレーションを担当、永田さんが主人公の声を演じた。

 

「てんでんこ」紙芝居で継承

 

 鈴木さんら3人が考えた防災クイズは、○×で回答する10問。地震発生時の行動や日ごろの備え、津波の速さなどを、具体例を交えた問いで児童らに投げかけ、楽しみながら必要な知識を学べる機会とした。

 

 震災時は2、3歳で、詳細な記憶のない児童ら。親しみやすい紙芝居やクイズで、自分の命をつなぐすべを身に付けた。黒澤強優君(10)は当時、鵜住居保育園に在籍。「園で寝ている時、地震が発生した。その後のことはよく覚えていない」と話し、「高校生の話は分かりやすかった。次に津波がきても、このおかげで逃げられる気がする。学んだことを他の人にも伝えたい」と防災意識を持ち続けることを誓った。

 

 同講座の構想は、釜石で復興支援ボランティア活動を継続する聖学院大(埼玉県)が、地元高校生と釜石の今後を考える中で生まれた。昨夏、学生と高校生が企画合宿を行い、小学生への防災活動を発案。佐野さんの母校である鵜小に企画を持ち込み、中軽米校長のアドバイスを受け、出前授業に向けた準備を重ねてきた。

 

 「当時、東中2年だった兄に手を引かれ、無我夢中で逃げたことだけは鮮明に覚えている」と佐野さん(17)。震災の経験を大人より近い目線で伝える意義を感じ、「小学生が私たちの思いをしっかり受け止めてくれた。〝津波てんでんこ〟と防災知識を心に刻み、自分1人でも逃げられる力をつけてほしい」と願った。

 

 紙芝居の絵を描いた永田さん(17)は「ダイレクトすぎる表現にならないよう気を使った。思ったよりも、いい反応をもらえてうれしい」と笑顔。震災から間もなく7年を迎えるにあたり「思い出すのはつらいことだが、後の世代に教訓をつないでいく自覚を新たにしたい」と意を強くした。

 

 この日は釜高生をサポートしてきた聖学院大生3人も顔をそろえた。4年の由木加奈子さん(23)は「高校生が『自分たちだからこそできることがある』と当事者意識を高め、率先して取り組んだことが形になった。今回の経験は古里への愛着を生み、進学で一度まちを離れても、また戻ってくることにつながるのでは」と話した。

 

(復興釜石新聞 2018年3月3日発行 第669号より)

 

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出展業者からさまざまなアドバイスを受ける来場者。一般の人が祭礼で使う道具を知る機会にもなった

伝統芸能の復興後押し〜国立民俗学博物館、道具や衣装の補修を助言

出展業者からさまざまなアドバイスを受ける来場者。一般の人が祭礼で使う道具を知る機会にもなった

出展業者からさまざまなアドバイスを受ける来場者。一般の人が祭礼で使う道具を知る機会にもなった

 

 東日本大震災で経験した郷土芸能団体の活動存続危機を教訓に、災害対策や助成情報などを共有する「郷土芸能復興支援メッセin釜石」が24、25の両日、釜石市大町の市民ホール「TETTO」で開かれた。震災後、被災団体の実態調査や活動再開へのサポートを行ってきた国立民族学博物館(吉田憲司館長)が実行委を組織し、同ホールで行われた市郷土芸能祭に合わせて開催した。

 

 同ホールのロビーとギャラリーを会場に、10団体が出展。震災で被災した無形文化遺産(民俗芸能、祭礼など)の復興・支援情報の記録公開、各種助成制度とその申請手続きの案内・相談が行われたほか、芸能団体の道具や衣装製作を手がける業者が修理、日ごろの手入れ方法などについて相談に応じた。出展業者は浅野太鼓楽器店(石川県)、宮本卯之助商店(東京都)、伊藤染工場(花巻市)、京屋染物店(一関市)の老舗4社。太鼓や笛、衣装、関連する小道具などを展示しながら、来場者に情報提供した。

 

 宮本卯之助商店は津波で流失した虎舞の頭や太鼓の製作など市内十数団体の復興に尽力。両石や片岸に代表される木彫りの虎頭の復元では、写真や団体メンバーの記憶を頼りに何度も調整を重ね、伝統の形を作り上げていったという。同社営業部の岡部達也課長は「道具に込められた神様への思いを強く感じ、私たちも勉強させてもらった」と貴重な経験を振り返り、今後の防災対策の一環として、使用中の道具類をデータ化し後世につないでいくことを薦めた。会場では無償で太鼓の締め直しも請け負った。

 

 芸能祭出演後、締め太鼓の調整を依頼した平田青虎会の佐々木一永会長(36)は「プロにお願いしないとできない部分なので非常にありがたい。業者さんからアドバイスももらえて良かった」と喜んだ。同会は津波で道具や衣装、屋台を流失。新調した屋台の金具関係で同社の世話になったという。

 

 市内沿岸部の郷土芸能団体は、震災の津波で多くの道具類を失い、活動再開に至るまで大変な苦労を伴った。県内外の支援団体の協力で現在は、被災団体の多くが最低限の道具をそろえ、地域の祭りや市内外の復興支援公演などで活躍。市民の心の支え、被災地の現状発信に大きな力を発揮している。

 

 同博物館大規模災害復興支援委員会外部調査員で、本イベントの実行委員長を務めた笹山政幸さん(釜石市)は「芸能団体が災害時にいち早く立ち上がるには、平常時からの助成金に関する知識や関係業者とのつながりが必要。この機会が継承課題解決や次世代の不安解消の一助となり、モデルとして他の被災地でも生かされれば」と願った。

 

(復興釜石新聞 2018年2月28日発行 第668号より)

 

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鵜住居の懐かしい映像に見入る来場者

にぎわい復活 願い込め、鵜住居みらいシアター〜40年前の記憶よみがえる、祭りや運動会の映像上映

衣装も時代を感じさせる鵜住居保育園の運動会映像

衣装も時代を感じさせる鵜住居保育園の運動会映像

 

 震災前の映像や写真などで地域の良さを再認識し、復興への力とする「第3回鵜住居みらいシアター」(同実行委主催)が25日、釜石市の鵜住居公民館で開かれた。今回は「みらいに伝えたい、マイうのすまい」をテーマとし、過去の映像のほかに今を生きる住民の声を集めたショートムービーを上映。約50人が楽しみ、地域への愛着心を共有した。

 

 ショートムービーには、小学生から高齢者まで約20人が出演。鵜住居の好きなところ、思い出の場所、未来への希望などを聞き、リレー形式でつづった。好きなところとして世代を問わず挙がったのは豊かな自然、住民の人柄や絆の深さ。小学生は学校で取り組む虎舞やあいさつを自慢とし、大人は震災で途絶えたラーメン店の味や孫と遊んだ公園などを思い出に挙げた。「津波がきても頑張っていることを伝えたい」「たくさんの人が戻り笑顔で暮らせるまちに」と、それぞれが描く未来に思いを込めた。実行委は今後も撮影を続け“100人のマイうのすまい”を目指すという。

 

 懐かしい映像は1976(昭51)年の鵜住居保育園運動会と96(平8年)年の鵜住神社例大祭。同保育園は当時、長内橋近くの国道45号沿いにあった。映像には園児の徒競走や踊り、園庭を囲む大勢の家族らが写し出されており、約40年前の光景に来場者がさまざまな記憶をよみがえらせた。

 

鵜住居の懐かしい映像に見入る来場者

鵜住居の懐かしい映像に見入る来場者

 

 69年から同園に勤務した元保育士の佐藤千佳子さん(75)は「園児が多かった時代。運動会で使う道具は手作りし、振り付けも先生たち自ら考えた」と懐古。震災の津波で同町成ケ沢地区の自宅を流され、長年書きためた保育の記録を失った。この日は、がれきの中から奇跡的に見つかった同園の記念写真2枚を持参。偶然、映像と同じ年のもので「縁を感じる」と佐藤さん。元の場所に自宅を再建し、間もなく仮設住宅から移る予定で、7年ぶりの帰還を心待ちにした。

 

 今回の映像2本は町内の復興住宅に暮らす田中健悦さん(76)が提供した。新川原地区にあった自宅2階で津波の浸水を免れたものだという。撮影したのは、ビデオ撮影を趣味にしていた義父の姉帯保蔵さん(故人)。長年にわたり市内の行事などを記録したテープが多数遺(のこ)されていたが、1階にあったものは津波で流されてしまった。田中さんは「思いがけず皆さんに見てもらう機会に恵まれた。父もあの世で自慢しているのでは。復興に向け地元住民も一生懸命。早く映像のようなにぎやかなまちになってほしい」と願った。

 

 会場では鵜住居に残る「屋号」を紹介した展示もあった。商売や出身地、先祖の名前にちなんだものなど、その数64。「○○どん」「○○屋」のほか、ユニークな由来や響きを持つものがあり、鵜住居虎舞が伝承する手踊りの歌詞に出てくる屋号も。この日は新たな情報も寄せられ、住民からは「さらに聞き取りを進め、後世に確実に伝承されるよう記録として残してほしい」との声が上がった。

 

(復興釜石新聞 2018年2月28日発行 第668号より)

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野田市長に受賞の喜びを伝えた「釜石○○会議実行委員会」メンバーら

「新しい東北 復興・創生顕彰」受賞〜釜石◯◯会議 被災地の可能性育む、世代を超え 夢を形に

野田市長に受賞の喜びを伝えた「釜石○○会議実行委員会」メンバーら

野田市長に受賞の喜びを伝えた「釜石○○会議実行委員会」メンバーら

 

 震災被災地で支援活動などを展開し、復興後の「新しい東北」の実現に貢献している個人・団体をたたえる復興庁の「新しい東北 復興・創生顕彰」に、「釜石○○(まるまる)会議実行委員会」が選ばれた。よりよいまちづくりについて市民が語り合う場を提供するといった活動が被災地の可能性を育むと評価。20日、同実行委の柏﨑未来実行委員長(32)、幹事の常陸奈緒子さん(33)と古賀郁美さん(26)が野田武則市長を訪ね、受賞を報告した。

 

 同顕彰は、震災から5年が経過し復興・創生期間に入ったことを機に、現在被災地で進む「新しい東北」の実現に向けた取り組みを広く情報発信し、被災地内外への普及・展開を促進するのを目的に昨年度から実施。本年度は全国から228件の応募があり、直近1年間の活動を評価する同顕彰に同実行委など1個人9団体が選ばれた。県内ではほかに1個人1団体が受賞。顕彰式は18日に仙台市で行われた。

 

 同実行委は、2014年に開催された釜石百人会議の後継として、市民有志や市職員らが中心となって15年に設立された。地域、立場、世代を超えてさまざまな人が集まり、出会い、語り合い、釜石を楽しく魅力あるまちにするためのアクションを生み出す場としてワークショップ(WS)を開催。さまざまなテーマや課題を「○○」に当てはめて市民活動を進めている。

 

自由な発想で釜石の未来を語り合う「釜石○○会議」

自由な発想で釜石の未来を語り合う「釜石○○会議」

 

 これまで4期にわたって開かれ、市内外から延べ930人が参加。昨年度までの1、2期では15のチームが結成され、釜石大観音仲見世のリノベーション、さまざまな趣味をテーマにした飲み会を企画するチームなどが活動を続けている。

 

 本年度は3、4期を実施。前半は参加者同士の交流を主にし、後半に共通の「やってみたい」ことを持つ人らでチームを結成。目標の実現に向け、10チームが動き始めているという。今回の特徴は、小中学生、育児中の母親ら、これまで見られなかった層の参加。多様な市民がまちづくりに関わるきっかけ、幅広い層がつながる場となっている。

 

 受賞報告では、顕彰式に出席した常陸さんが「他地域でも展開できるモデルになり得ると評価された」と説明した。会議の参加者から運営する側になった古賀さんは「釜石をもっと好きになるきっかけ、交流を深める場になっている」と意義を強調。柏﨑実行委員長は「(受賞は)参加者のおかげ。市民のやりたいこと、趣味の延長でまちに関わりたいとの思いを形にするという、小さいことをたくさん積み上げた結果。つながったものを大事に、楽しいまちを一緒につくっていきたい」と喜びを語った。

 

 野田市長は「多様な人材が集い、自由な発想でまちづくりを語り合い、主体的な活動が展開されることで、まちが発展することを願う」と継続に期待を寄せた。

 

(復興釜石新聞 2018年2月24日発行 第667号より)

復興釜石新聞

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広報かまいし2018年3月1日号(No.1683)

広報かまいし2018年3月1日号(No.1683)

広報かまいし2018年3月1日号(No.1683)

 

広報かまいし2018年3月1日号(No.1683)

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【目次】
表紙:東日本大震災犠牲者追悼式開催のご案内
P02:東日本大震災犠牲者追悼施設の名称を「釜石祈りのパーク」とすることについてご意見をお寄せください
P03:東日本大震災犠牲者の芳名を記すことについてご遺族に確認しています、釜石市が定住自立圏構想の中心市宣言をしました
P04:市営住宅などの入居者を募集します
P05:各計画案の意見を募集します
P06:今月のインフォメーション
P08:釜石地区被災者相談支援センターをご利用ください など

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/shisei_joho/koho/backnumber/detail/1216641_2596.html
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