伝統芸能の復興後押し〜国立民俗学博物館、道具や衣装の補修を助言
出展業者からさまざまなアドバイスを受ける来場者。一般の人が祭礼で使う道具を知る機会にもなった
東日本大震災で経験した郷土芸能団体の活動存続危機を教訓に、災害対策や助成情報などを共有する「郷土芸能復興支援メッセin釜石」が24、25の両日、釜石市大町の市民ホール「TETTO」で開かれた。震災後、被災団体の実態調査や活動再開へのサポートを行ってきた国立民族学博物館(吉田憲司館長)が実行委を組織し、同ホールで行われた市郷土芸能祭に合わせて開催した。
同ホールのロビーとギャラリーを会場に、10団体が出展。震災で被災した無形文化遺産(民俗芸能、祭礼など)の復興・支援情報の記録公開、各種助成制度とその申請手続きの案内・相談が行われたほか、芸能団体の道具や衣装製作を手がける業者が修理、日ごろの手入れ方法などについて相談に応じた。出展業者は浅野太鼓楽器店(石川県)、宮本卯之助商店(東京都)、伊藤染工場(花巻市)、京屋染物店(一関市)の老舗4社。太鼓や笛、衣装、関連する小道具などを展示しながら、来場者に情報提供した。
宮本卯之助商店は津波で流失した虎舞の頭や太鼓の製作など市内十数団体の復興に尽力。両石や片岸に代表される木彫りの虎頭の復元では、写真や団体メンバーの記憶を頼りに何度も調整を重ね、伝統の形を作り上げていったという。同社営業部の岡部達也課長は「道具に込められた神様への思いを強く感じ、私たちも勉強させてもらった」と貴重な経験を振り返り、今後の防災対策の一環として、使用中の道具類をデータ化し後世につないでいくことを薦めた。会場では無償で太鼓の締め直しも請け負った。
芸能祭出演後、締め太鼓の調整を依頼した平田青虎会の佐々木一永会長(36)は「プロにお願いしないとできない部分なので非常にありがたい。業者さんからアドバイスももらえて良かった」と喜んだ。同会は津波で道具や衣装、屋台を流失。新調した屋台の金具関係で同社の世話になったという。
市内沿岸部の郷土芸能団体は、震災の津波で多くの道具類を失い、活動再開に至るまで大変な苦労を伴った。県内外の支援団体の協力で現在は、被災団体の多くが最低限の道具をそろえ、地域の祭りや市内外の復興支援公演などで活躍。市民の心の支え、被災地の現状発信に大きな力を発揮している。
同博物館大規模災害復興支援委員会外部調査員で、本イベントの実行委員長を務めた笹山政幸さん(釜石市)は「芸能団体が災害時にいち早く立ち上がるには、平常時からの助成金に関する知識や関係業者とのつながりが必要。この機会が継承課題解決や次世代の不安解消の一助となり、モデルとして他の被災地でも生かされれば」と願った。
(復興釜石新聞 2018年2月28日発行 第668号より)
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