第97回全国高校野球選手権岩手大会第2日の11日は釜石勢の2校が2回戦から登場し、いずれも花巻市の花巻球場で初戦を突破した。釜石は、昨秋3位の宮古商と接戦を演じ、2―1で競り勝った。一方、伊保内と対戦した釜石商工は序盤から打線が爆発。五回、三浦潤太主将(3年)の3点本塁打で10―0とし、劇的なコールド勝ちを決めた。両校の3回戦はいずれも15日。釜石は花巻球場で久慈工と、釜石商工は金ケ崎町の森山総合公園球場で福岡工と対戦する。
釜石 宮古商に競り勝つ、主戦完投 春の悔しさ晴らす
強敵の宮古商に競り勝ち、喜びを爆発させる釜石ナイン
▽2回戦(花巻球場)
宮古商
0000100001
00011000×2
釜 石
(宮)熊谷、森谷―柳沢
(釡)佐々木瑞―西沢
▽三塁打 佐々木瑞(釡)
▽二塁打 熊谷(宮)奥村、石崎(釡)
釜石は昨年秋、県大会でベスト8まで進んだものの、今春は地区予選で敗退。その悔しさを強敵宮古商との初戦にぶつけた。
四回、1死一塁から4番佐々木瑞貴(3年)の右中間三塁打で先制。同点とされた五回には、バント安打の岡道雄斗(2年)を犠打で進め、岩間大(2年)の中前打で勝ち越し。主戦の佐々木瑞は要所を締め、大振りが目立つ宮商打線を4安打1点に抑え、完投勝利で初戦突破を決めた。
「競ったら、勝つ。その通りになった」。この4月に就任したばかりの佐々木偉彦監督(31)は、思い描いた通りの試合展開に満足顔。監督として夏の大会初勝利の喜びをかみしめた。
佐々木監督は釜石高OBで、震災前の3年間は野球部の副部長としてチームを支えた。この春、母校に戻り理科の教壇に立つ。選手には常に「練習は試合だ」と言い続けてきた。どんな場面でも試合を想定し、集中力を途切れさせない。その意識が浸透し、接戦で生かされた。
勝ち越しの殊勲打を放った岩間大は「接戦になっても負ける気がしなかった」。インコース低めのカーブを冷静に中前に運んだ。昨季の主将を務めた兄、岩間仁さんの「思い切っていけ」というアドバイスも背中を押した。
先制点をもたらした佐々木瑞は直球に狙いを絞り、思い切り強振した。昨夏もマウンドを踏み、昨秋は県大会でベスト8まで勝ち進んだ。だが今春は県大会に進めず、「慢心があったかもしれない」と反省。気持ちを切り替え、二枚看板として切磋琢磨(せっさたくま)してきた前川柊哉(3年)と共にひたすら走り込み、足腰を鍛えた。
初戦突破に沸く釜石高応援スタンド
初戦の投球内容は「80点ぐらい」と自己採点。得意のチェンジアップがいま一つ決まらなかったところに不満が残る。球数が増えた中盤には連打を浴び失点する場面もあったが、マスクをかぶった西沢和哉主将は「調子は悪くなかったし、いいピッチングをしてくれた。完投するスタミナもある。次の試合はもっとやってくれるはず」とエースの肩に期待する。
釜石商工 伊保内にコールド勝ち、三浦主将 攻守で盛り上げる
会心の勝利。応援スタンドに駆け寄る釜石商工ナイン
▽2回戦(花巻球場)
伊保内
00000 0
30403x 10
釜石商工
(五回コールド)
(伊)目黒―古舘
(釡)中村、松下―菊池健
▽本塁打 三浦(釡)
▽三塁打 菅原(釡)
釜石商工の猛打爆発。五回2死一、二塁から三浦潤太主将(3年)が右翼スタンドへ3点本塁打を放ち、あっけなく試合を決めた。「あわや場外」と思わせる、目の覚めるようなホームラン。三浦主将は「打って当たり前」とでも言うかのように、涼しい顔で “サヨナラ” のベースを駆け抜けた。
内角高めの直球を思い切り振り抜いた。練習試合を含め高校通算22本目の本塁打。公式戦では3本目となる一発が初戦突破を決めた。遊撃手としても、難しい打球を難なく処理する華麗な守備を披露。「攻守でチームを盛り上げよう」と臨んだ言葉通りの活躍を見せた。
2年前の夏に、奮起の原点がある。現在は大学で活躍する兄、三浦雄馬さんが立役者となってベスト8まで進んだ一関学院戦。遊ゴロをトンネルしたエラーが悔しい敗戦につながった。
昨夏も初戦で先制2点本塁打を放ったものの、3回戦で敗退。「大振りが負けにつながった」と反省し、「チームのために」とコンパクトな打撃を心掛けてきた。「今日は、つなぐ意識で打席に入った」と力を込める。「下手くそだった」という守備も、「二遊間コンビでナンバーワン」を目指して磨きをかけた。
三浦主将の攻守にわたる奮闘に引っ張られるように打線が爆発。初回に菅原昌也(3年)の2点右中間三塁打などで3点を先制。三回には敵失に四球などを絡め4点を追加した。投げては、中村竜斗(2年)、松下奏斗(3年)の継投で五回ながら完封した。
圧勝の初戦突破を喜ぶ釜石商工応援スタンド
しかし、この春から指揮を執る久保田達也監督(36)は「まだまだ、全然。意味のないバッティングが多かった」と、勝って兜(かぶと)の緒を締める。試合終了後、すぐに選手を集めてミーティング。「修正しなくてはだめ。大会に入ってからも成長を続けるぞ」と呼びかけた。「投手もバッターも、もっと成長する可能性がある」と手応えを感じているからだ。
「目標は甲子園。優勝して釜石を元気にしたい」。三浦主将はきっぱりと、そう言い切る。久保田監督も「登る山は、はっきりしている。選手と一緒に頂点を目指したい」と思いを膨らませる。
(復興釜石新聞 2015年7月15日発行 第402号より)
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