ごみクレーンの動きに興味津々の来場者=岩手沿岸南部クリーンセンター施設見学会
釜石市平田の「岩手沿岸南部クリーンセンター」は26日、一般向けの施設見学会を開いた。釜石、大船渡、陸前高田、大槌、住田3市2町のごみを「ガス化溶融炉」で処理する同施設。来場者は普段見ることのない工場棟を見学し、収集されたごみが再資源化されるまでの処理過程に理解を深めた。この日は同見学会としては過去最多の167人が訪れた。
来場者はDVDで施設概要について学んだ後、職員の案内で工場棟に向かった。同施設には、ごみを高温で溶かして処理する溶融炉が2炉ある。炉の内部は1800度にも達し、溶融物は各種処理を経て、「スラグ」と「メタル」という資源物に再生される。1日に147トン(73.5トン×2炉)のごみ処理が可能で、73.5トンの処理からスラグ約6トン、メタル約2トンができる。黒っぽい砂状のスラグは道路などの舗装用材として活用。小石状の鉄の塊メタルは建設機械後部の重しや製鉄所などで有効利用される。これにより、最終処分場での埋め立て量を減らすことができる。
ガス化溶融炉や排ガス処理設備、蒸気タービン発電機などを窓越しに見学
施設では、溶融処理で発生するガスの熱エネルギーを利用した発電も行っている。熱で作った蒸気の力で発電機を動かす「蒸気タービン発電機」を備え、作られた電気は場内の設備の稼働、照明、暖房などに利用される。余った電気は電力会社に売電。余熱を利用して湯も沸かし、浴場として平日に無料で一般開放している。溶融炉で発生したガスはダイオキシン類などの有害成分を分解し、薬品やフィルター処理を施した後、クリーンな状態で建屋の煙突から排出される。
来場者は365日24時間体制でプラントを監視する中央制御室、クレーンでごみを撹拌(かくはん)し溶融炉に投入するごみピットなどを見学。クレーンは一度に約700キロのごみをつかんで、15分間隔で炉頂から入れることも聞き、驚きの声を上げた。
中央操作室、ごみクレーン運転室にはさまざまなコンピューター機器が並ぶ
ごみを撹拌(かくはん)し、溶融炉に投入する作業について技術担当者が説明
同市の佐々木久美子さん(70)は浴場の利用やごみの持ち込みで施設を訪れたことはあるが、内部の見学は初めて。「ごみ処理のしくみがよく分かった。普段からごみの分別には気を付けていて、4月から始まったプラごみ分別も頑張っている。収集業者さんに迷惑をかけないよう協力していければ」と意識をさらに高めた。地元平田地区の女性(54)は「処理過程をモニターで見たりするとより理解が深まる。たくさんの熱が生まれているのにも驚き。もっと有効活用が図られれば」と今後に期待した。
この日は施設見学ツアーのほか、県環境学習交流センター(盛岡市)による出張学習会が開かれた。手回し発電体験やエコチェック、自然素材の工作コーナーなどがあり、幅広い世代が楽しんだ。浴場も特別開放した。
県環境学習交流センター(盛岡市)が出張。環境に関わる各種体験コーナーを設けた
手回し発電機やうちわで発電体験(写真左)。クリーンセンターをモニターで学ぶ機器も(同右)
同施設は沿岸南部5市町が共同で建設した。稼働開始を予定していた2011年4月を前に東日本大震災が発生。施設は津波による大きな被害は免れ、電気設備の復旧後に本格稼働した。14年8月までは被災4市町の災害廃棄物処理も行った。近年は人口減や資源物の分別収集などで、ごみ処理量は減少傾向にある。2024年度の処理量は約2万5100トン(前年度比約1300トン減)。
施設へのごみの直接持ち込みは現在、平日に限り受け入れているが、生活スタイルの多様化や社会情勢の変化に伴い、休日受け入れについても検討するため、試験的に9月まで月1回(第3土曜日)の受け入れを実施している。対象は釜石市と大槌町の住民。(詳細は市のホームページを参照)