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住民の絆つなぐライトアップ花見会 栗林町砂子畑で4年目の開催 “笑顔”も咲く

地元が誇る桜のもとで花見会を楽しむ栗林町砂子畑地区の住民ら=19日夕方

地元が誇る桜のもとで花見会を楽しむ栗林町砂子畑地区の住民ら=19日夕方

 
 釜石市内の桜前線が市街地から山間地域に移る中、同市栗林町砂子畑地区では19日夜、ライトアップした桜を愛でる花見会が開かれた。地元町内会「砂子畑共正会」(栗澤陽一会長、113世帯)が主催する地域交流行事の一環。今年で4年目の開催で、約30人が飲食を共にしながら、楽しい時間を過ごした。
 
 ライトアップされたのは、市指定文化財(天然記念物)の巨木「明神かつら」からほど近い、鵜住居川沿いの私有地に生えるソメイヨシノ。土地所有者の藤原信孝さん(76)の弟啓二さん(故人)が1985年ごろに植えたもので、根本から7本に分かれて幹を伸ばす姿が独特の樹形を生み出している。背後の藤原さん宅の庭には、同時期に濃桃色の花を咲かせるハナモモの木などがあり、開花時期には3色の花が競演。川をはさんだ対岸を走る県道釜石遠野線からも目に付く春の光景となっている。
 
植樹から約40年が経過した藤原信孝さん方のソメイヨシノ

植樹から約40年が経過した藤原信孝さん方のソメイヨシノ

 
ライトに照らされ、夕闇に美しい桜景色を広げる。写真右側に流れるのが鵜住居川

ライトに照らされ、夕闇に美しい桜景色を広げる。写真右側に流れるのが鵜住居川

 
 藤原さんによると、今年の桜の開花は例年より2~3日遅かった。当初、花見会を予定した12日時点では2~3分咲きだったため、1週間延期してこの日の開催となった。その間に風雨に見舞われる日もあり、花は満開のピークを若干過ぎていたが、ライトに照らされた桜は例年通りの存在感を放った。
 
 参加者はビールやお茶を飲みながら、おでんや焼きそば、ホルモン焼きなどを食した。近所に住む女性(78)はライトアップされた桜を眺め、「すてきだよね~。見ると気持ちが浮き浮きする」とにっこり。「こうしてみんなと話をするのも好き。いろいろな情報も入るので。他にも行事をやってほしい」と望んだ。
 
アルコールも入って気分上々。会話も弾む花見会

アルコールも入って気分上々。会話も弾む花見会

 
町内会単位の花見会は今では数少ない光景。住民同士をつなぐ

町内会単位の花見会は今では数少ない光景。住民同士をつなぐ

 
 桜のライトアップは栗澤会長(65)が発案。新型コロナウイルス禍で2年ほど町内会行事ができなかったこともあり、感染拡大が収束に向かった2022年に初めて試験的に実施した。夜桜を見ながらの飲食も解禁。以来、町内会行事として継続している。栗澤会長は「今年は開花時期が読めなくて、周知がうまくいかなかったところもあるが、開催できて何より。会は世代間交流の場にもなっている。少子化などで人口減は避けられないが、そうした中だからこそ大切な機会。ぜひ、これからも続けていきたい」と話した。
 
河川敷につながる土手にはカラフルなイルミネーションも設置(写真左)。年に1回のお楽しみ!

河川敷につながる土手にはカラフルなイルミネーションも設置(写真左)。年に1回のお楽しみ!

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初のTETTO開催 浜千鳥のすべてを楽しむ会 ファン100人25銘柄味わい尽くす

奥村康太郎杜氏(右)から各銘柄の特徴などを聞き、酒の試飲を楽しむ参加者

奥村康太郎杜氏(右)から各銘柄の特徴などを聞き、酒の試飲を楽しむ参加者

 
 釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は18日、浜千鳥のすべてを楽しむ会を大町の市民ホールTETTOで開いた。春恒例の催しは今年で33回目。市内外から約100人が参加し、今季醸造の酒など全25銘柄を飲み比べながら、その味わいを堪能した。昨年12月、日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されたことで、その価値にも注目が集まる日本酒。同社はさらなる消費拡大、認知度向上に期待を寄せる。
 
 この催しは1989年にスタート。当時、あまり認知されていなかった同社醸造の酒の種類(純米酒、本醸造、純米吟醸…など)を広く知ってもらおうと企画された。以来、冬から春にかけての酒造りを締めくくる催しとして多くの浜千鳥ファンに親しまれている。開会にあたり新里社長は、2003年から始まった大槌町での酒米生産を機に、より地域資源にこだわった酒造りが進んでいることを明かし、「地酒メーカーとして歩み続ける当社の特徴ある酒を楽しんでほしい」と呼び掛けた。
 
TETTOホールBを初めて会場にした「浜千鳥のすべてを楽しむ会」

TETTOホールBを初めて会場にした「浜千鳥のすべてを楽しむ会」

 
参加者全員で乾杯! おいしい酒に笑顔がこぼれる

参加者全員で乾杯! おいしい酒に笑顔がこぼれる

 
 全員で乾杯した後は、同社の全銘柄を味わえるパーティー。各テーブルには大槌町源水地区の湧水で仕込んだ限定醸造の「源水純米吟醸」、釜石鉱山の仙人秘水で仕込んだ「仙人郷純米酒」などが並んだほか、試飲コーナーには吟醸酒、純米酒、米焼酎、梅酒とさまざまなラインナップがずらり。中には1991年、2001年醸造の30年、20年ものの古酒もあった。参加者は同社社員らの話を聞きながら、気になった銘柄を飲み比べ。味や香りの違いを楽しみ、日本酒への理解を深めた。
 
おつまみは料亭幸楼の仕出し料理(写真左上)。試飲コーナーには古酒(同右上)を含む浜千鳥のさまざまな酒が並んだ。

おつまみは料亭幸楼の仕出し料理(写真左上)。試飲コーナーには古酒(同右上)を含む浜千鳥のさまざまな酒が並んだ。

 
 5種の酒を判別する利き酒コーナーも人気。多くの人が挑戦した。初チャレンジという山田町の三田地千絋さん(32)は「飲めば飲むほど分からなくなった。甘口と辛口ぐらいは分かるが、どれとどれが同じかは…??」と笑い、結果発表を楽しみに。華やかな香りとすっきりとした味わいが特徴とされる吟醸酒が好みといい、「移住してから沿岸の蔵元の酒をよく飲むようになった。浜千鳥さんの梅酒も大好き」と地域が育む味をお試し中。杜氏の多い本県の酒造り文化にも興味が湧いているという。
 
お楽しみの利き酒コーナー。成績優秀者には認定書と賞品のプレゼントが…

お楽しみの利き酒コーナー。成績優秀者には認定書と賞品のプレゼントが…

 
 会には東京など県外からの参加者の姿もあった。秋田県から夫婦で足を運んだのは佐藤一徳さん(60)。地元店舗のオープン記念でもらった「仙人郷」を飲んだのがきっかけで、浜千鳥の蔵元見学や酒造り体験塾参加を重ね、今回、念願の“楽しむ会”に初参加。「定年で時間的余裕ができたこともあり、やっと来られた。今まで飲んだことがない味もあってとても楽しめた。地元の仕込み水と杜氏さんの技術が相まって非常に魅力的な酒に仕上がっている印象。これからも機会あるごとに足を運びたい」と顔をほころばせた。
 
 会では、奥村康太郎杜氏(44)がユネスコの無形文化遺産に登録された日本の「伝統的酒造り」について、その歴史や技術、評価されたポイントなどを解説。こうじ菌を使った酒造りは日本の気候風土に適し、その技術は清酒のみならず焼酎や泡盛などにも応用され、祭礼や年中行事に欠かせない文化として発展を遂げてきたことを紹介した。新里社長は同登録を「日本酒を見直すきっかけになったと思う」と歓迎。本県沿岸に足を延ばす訪日外国人観光客の増加にも期待し、「酒蔵見学などで日本酒を正しく理解してもらうのはもちろん、ぜひ、地元食材を使った料理と一緒に味わってほしい」と望んだ。
 
浜千鳥の新里進社長(中)と「はい、ポーズ!」

浜千鳥の新里進社長(中)と「はい、ポーズ!」

 
客の好みに合う酒を社員らが提案(写真左)。日本酒にはやっぱり和食。飲んで食べて参加者同士の交流も(同右)

客の好みに合う酒を社員らが提案(写真左)。日本酒にはやっぱり和食。飲んで食べて参加者同士の交流も(同右)

 
 この催しをTETTOで開くのは初めて。市中心部で100人規模の宴会などを開催できる場所がなくなったため、同ホールに相談。ホールBを会場とし、仕出し料理を持ち込んでのパーティーが実現した。新里社長は「当社の場合はこれまでも従業員が飲料提供のサービスをしてきたこともあり、違和感なく運営できた。会場内にはあらかじめ、ごみ箱を設置。皆さんにもご協力いただく形にした」とし、同所利用の新たな可能性を示した。

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ジャガイモに願い込め 釜石・甲東こども園、種イモ植え 心の成長と伝統つなぐ食育活動

豊作を願いながら種イモを植える甲東こども園の園児たち

豊作を願いながら種イモを植える甲東こども園の園児たち

 
 釜石市野田町の甲東こども園(野田摩理子園長、園児85人)が開設する「ちびっこ農園」で10日、食育の一環として、年長児20人がジャガイモの植え付けを行った。「大きくなーれ!」「おいしくなーれ!」。豊かな実りに期待を込めてパワーを送った。
 
 「カレーで食べたい。大きく、おいしくなってほしい」。横沢彩人君(5)は、そんな願いを持って作業したという。畑に入って保育教諭らから教わりながら、種イモ(品種はメークイン)を植え付け。30センチ間隔に付けられた印の上に種イモを置いて、“土のおふとん”をそっとかけた。そして、作業した場所に手をかざし、パワーを注入。「はやく、葉っぱ、出てこないかな」と楽しみにしていた。
 
「わくわく」。種イモを手に持って畑に入った園児たち

「わくわく」。種イモを手に持って畑に入った園児たち

 
保育教諭(右)の実演をじっと見つめる子どもたち

保育教諭(右)の実演をじっと見つめる子どもたち

 
畑に付けられた印の上に種イモをセット!慎重に

畑に付けられた印の上に種イモをセット!慎重に

 
種イモに土をかぶせる作業のポイントは「そっと」

種イモに土をかぶせる作業のポイントは「そっと」

 
 同園では、身近にある自然環境を保育に取り入れ、子どもたちが植物を育てる経験の場として1955年に農園を開設。昨年、より日当たりのよい場所に移設し、ジャガイモ栽培を続け今年で70年目となった。
 
 自然に触れ、楽しそうに活動する子どもたちを見守る野田園長。「年長児の活動を小さな子どもたちが興味を持って見ていたり、楽しさを伝え合っているよう。そうして代々つながっていくから、毎年、春になると『やってみたい』という気持ちが自然と芽生えるみたい」と目を細めた。
 
「大きくなれー」とパワー注入。自然との触れ合いを楽しむ

「大きくなれー」とパワー注入。自然との触れ合いを楽しむ

 
 今後、年長児は畑の草取りを手伝いながら成長を観察したりする。7月に収穫し、園行事のお泊り会や給食の食材として活用。全園児で収穫の喜びを味わうという。

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サクラ、きれい!春の便りに笑顔咲く 釜石の“定番”お花見スポットをめぐってみた

釜石市内でも桜が開花。甲子町松倉の川沿いの並木道では見ごろに

釜石市内でも桜が開花。甲子町松倉の川沿いの並木道では見ごろに

 
 桜の便りは釜石市にも届き、お花見スポットとされる各所では花姿を確認した人たちが春の訪れを実感している。4月に入り、日中の気温が15度前後の日が続いたが、風に冷気が混じっていたため、市内に多い桜(ソメイヨシノ)の開花具合はまちまち。それでも早咲き種とともに見ごろを迎えた木もあり、青空が顔をのぞかせた12日に定番スポットを巡ってみた。
 
 桜と言えば並木道。エドヒガン、ソメイヨシノ、シダレザクラなどが混在する甲子町松倉の甲子川沿いでは、市民や花見客らが約800メートルにわたり連なる花をめでながら散策を楽しむ。
 
甲子町の“桜ロード”では鈴なりに開花する木も

甲子町の“桜ロード”では鈴なりに開花する木も

 
 桜木町と小川町の小川川流域は両岸のソメイヨシノの枝が川に垂れる人気のスポット。花に手が届くほど間近で見られる場所もあり、多くの人がカメラやスマートフォンを向け、花姿を収めた。釜石製鉄所山神社を囲むように桜並木が広がる場所でもあって、ゆっくりと散策する人も。近くの多目的広場では折り畳み式のテーブルや椅子などのレジャーグッズを広げたグループが飲食も楽しんでいた。
 
晴れ間を狙って花見客が訪れる小川川沿いの桜並木

晴れ間を狙って花見客が訪れる小川川沿いの桜並木

 
 大槌町吉里吉里の岡谷暖空(ひなた)さん(6)は、父親の悦洋さん(42)に肩車され小川での花見を満喫。「きれい」と弾かせた笑顔を、母親の幸子さん(43)がスマホカメラに残した。桜の時期に毎年訪れて家族写真を撮るのが恒例行事。家族6人のうち、就職や進学で3人の姉が離れて暮らし、今春は3人で思い出をつくった。「桜は5分咲きくらいかな。天気もちょっと…カラッと晴れていたら」と幸子さん。開花と同じ頃に小学校に入学した愛息を見つめ、「自分らしさを忘れず、このまま真っすぐ育ってほしい」と願った。
 
子どもの成長と桜の花姿を楽しみにする岡谷さん一家

子どもの成長と桜の花姿を楽しみにする岡谷さん一家

 
 上中島町の公園では薄桃色の桜並木が市道沿いに連なる。栗林町の宍戸美佐子さん(44)は、歩き始めの陽咲(ひなた)ちゃん(2)とお散歩。「あっちのさくらー」と促す孫の後をゆっくりとした足取りで追う、ちやさん(74)は「春は気持ちがいい。いろんな出発の季節だからね。週1回のデイサービスが楽しみ。誰かと会えるし、何より会話が楽しい」と顔をほころばせた。
 
「きれいだね」。上中島町の公園でくつろぐ宍戸さん家族

「きれいだね」。上中島町の公園でくつろぐ宍戸さん家族

 
 野田町の野田中央公園は住宅地側の早咲き種のヤマザクラが満開で、風が吹くと花びらがちらちらと舞う。甲子川側のソメイヨシノは少し遅れて咲き誇る。環境を整えようと率先して活動する住民らの姿があり、「今年は、より色がいいな」とうれしそうな声が聞こえてきた。保育施設への入園式を終えた親子が記念に写真を撮る光景も見られた。
 
野田中央公園では色彩のコントラストも楽しめる

野田中央公園では色彩のコントラストも楽しめる

 
 大渡町の大渡橋たもと、橋詰広場には1本だけ泰然と立っている。趣のある樹形が目を引く桜は、ほぼ満開。甲子川をはさんだ対岸の三陸鉄道の線路沿いの木々と合わせ、美しい花姿を楽しめる。
 
きれいに咲き誇る大渡町の一本桜を“借景”に撮影を楽しむ

きれいに咲き誇る大渡町の一本桜を“借景”に撮影を楽しむ

 
 市内ではこのほか、定内町の定内公園も見ごろ。川をはさんだ小佐野町のせいてつ記念病院敷地の桜とのコラボを楽しめる散歩コースになっていて、道行く住民の目線は上を向いている。“桜のトンネル”を形成する唐丹町本郷の桜は咲き始め。橋野町の世界遺産「橋野鉄鉱山」周辺はつぼみ状態で開花はこれから。春気分を味わうシーズンはまだ続きそうだ。
 
いつもの道でも散策すると春との出合いが待っているかも

いつもの道でも散策すると春との出合いが待っているかも

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鵜住居観音堂で14年目の“復光”祈願法要 震災犠牲者鎮魂、本尊守り地域の力に

東日本大震災物故者鎮魂 被災地第14回復光祈願法要=6日、鵜住居観音堂

東日本大震災物故者鎮魂 被災地第14回復光祈願法要=6日、鵜住居観音堂

 
 釜石市鵜住居町の鵜住居観音堂(小山士別当)で6日、東日本大震災犠牲者の鎮魂と地域再生を祈る復光祈願法要が行われた。津波による被害を受けながら、本尊「十一面観音立像」(2012年県有形文化財指定)の修復、お堂の再建を果たし、地域住民の心のよりどころとなっている同観音堂。参列者は14年の時の経過にそれぞれの思いを重ね、犠牲者の冥福、まちの明るい未来を願った。
 
 法要は当初、3月9日に予定されていたが、大船渡市の大規模山林火災発生を考慮し1カ月延期された。この日は地域住民のほか、本尊修復や観音堂再建に協力してきた関係者が東京や盛岡から駆け付けた。震災後、同観音堂に関わる法要を担ってきた平泉町、医王山毛越寺の藤里明久貫主ら僧侶3人が読経。参列者約30人が焼香し、祈りをささげた。
 
本尊「十一面観音立像」の模刻・身代わり観音像の前で読経する毛越寺の藤里明久貫主

本尊「十一面観音立像」の模刻・身代わり観音像の前で読経する毛越寺の藤里明久貫主

 
 藤里貫主は「災害は決して忘れることのできないものとして皆さんの心の中に刻まれる。傷を癒やしながら、しっかり生きていってほしい。亡くなられた方もそう願っているのではないか」と話し、被災者の心情に寄り添った。
 
 町内の自宅を津波で失い、復興住宅に暮らす女性(77)は「鵜住居に住んで54年。観音様にずっと見守っていただいている思い。周りの皆さんにも支えてもらい、今、毎日を過ごせている」と感謝。大船渡市の山林火災など各地で頻発する自然災害の被災者の身も案じながら、観音様に手を合わせた。
 
手を合わせ、震災犠牲者の冥福などを祈る参列者

手を合わせ、震災犠牲者の冥福などを祈る参列者

 
 現在地にほど近い低地にあった前観音堂は2011年の震災津波で全壊。33年に一度の御開帳を守り続けてきた本尊の観音像は、破損しながらも原形をとどめて発見された。同像の調査を続けていた故大矢邦宣さん(震災当時、盛岡大教授)らの尽力で修復の道が開かれ、京都の技師らが作業を引き受けた。大矢さんの発案で14年に模刻の身代わり観音像が制作され、仮の小観音堂に安置。本設再建までの間、同所で犠牲者の供養が続けられた。現観音堂は被災住民の自宅再建が進んだ22年に建立。23年には観音堂の説明看板が市によって設置された。24年には「観音様を守る会」も発足した。
 
2022年、高台に再建された鵜住居観音堂 写真左下:23年に市が設置した説明看板

2022年、高台に再建された鵜住居観音堂 写真左下:23年に市が設置した説明看板

 
模刻像や津波被害から救出された諸仏が並ぶ堂内。法要は今後も続けられる

模刻像や津波被害から救出された諸仏が並ぶ堂内。法要は今後も続けられる

 
 別当の小山士さん(81)は「観音像の救出、修復からお堂の再建に至るまで、大矢先生はじめ尽力してくれた多くの関係者のおかげで今がある。法要を続けられている毛越寺の方々、集まってくれる地域住民…。お世話になっている皆さんには感謝しかない。その思いをしっかり受け止め、地域の宝である貴重な文化財を後世に引き継いでいきたい」と意を強くする。法要では、能登半島地震で被災した文化財の修復のため、関係者から「鵜住居の事例を参考にしたい」との問い合わせがあったことも明かした。

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明かりに包まれる桜の名所 釜石・薬師公園ライトアップ 住民の思いとともに花開く

花見シーズンを盛り上げるライトアップが始まった薬師公園

花見シーズンを盛り上げるライトアップが始まった薬師公園

 
 釜石市の中心市街地の高台にあるサクラの名所「薬師公園」でライトアップが始まり、花見を盛り上げている。濃いピンク色の早咲き種が遊歩道を彩り、淡い色彩の点描もちらほらと加わる。20日までの日没から午後9時、明かりに照らされたサクラなど春の花の“きょうえん”を楽しめる。
 
 公園入り口に飾り門を設置し、頂上広場まで続く坂道の遊歩道をちょうちん150個で彩る恒例の「桜まつり」。きれいな環境で花見を楽しんでもらおうと、まつりがスタートする6日の朝には地域住民が清掃活動を行った。
 
桜まつりの開始を前に住民らが協力して行った清掃活動

桜まつりの開始を前に住民らが協力して行った清掃活動

 
 みなとかまいし地区会議(事務局・釜石地区生活応援センター)が主催し、サクラの開花時期に合わせて続ける取り組み。大町、大渡町の住民ら約30人がスコップやほうき、大きめのビニール袋を手に、冬期間にたまった大量の落ち葉を中心に回収。約1時間の作業で約50袋をいっぱいにした。
 
落ち葉をかき集め回収。近隣の住民たちが力を合わせた

落ち葉をかき集め回収。近隣の住民たちが力を合わせた

 
 枯れ葉を掃いたり集めたり、下を向いての作業が多かったが、目線を上げると春の花が開いていて「きれいだね」と、ひと息いれて作業の力にする人もいた。すっきりとした景観が戻り、佐々木陽子さん(75)は「気持ちいい」とすがすがしい表情を見せた。子どもが幼い頃に毎年花見に訪れた思い出の場所でもあり、「みんなが気持ちよくサクラを見て、癒やされたらいい」と期待。「春が一番いい。冬から目覚めて花が咲き、葉物も芽を出す、生き生きとした季節」と目を細めた。
 
 本年度着任した同センターの藤井充彦所長は「多くの方に清掃に協力してもらい感謝。市内外から訪れる人たちをよりよい環境で迎える準備が整った。マナーを守って楽しんでもらえたら」と話した。
 
頂上広場へと続く坂道の遊歩道に設置されたちょうちん

頂上広場へと続く坂道の遊歩道に設置されたちょうちん

 
ライトアップされた花と市街地の夜景を楽しめる桜まつり

ライトアップされた花と市街地の夜景を楽しめる桜まつり

 
 7日夜、ソメイヨシノの枝先ではつぼみが赤らみ、間もなく花姿も…。やわらかな明かりでライトアップされた高台からは市街地が一望でき、近くに住む人らが夜の街並み、静けさのあるサクラを楽しんでいた。
 
春の花たちの「競演」、明かりとの「共演」、シカとの遭遇「驚演」も⁉

春の花たちの「競演」、明かりとの「共演」、シカとの遭遇「驚演」も⁉

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海への流出防げ! 甲子川河川敷(上中島~岩井町)でごみ拾い 想像以上の量に市民ら「残念」 

甲子川沿い(上中島町~岩井町)で行われたクリーンアップ活動。たくさんのごみが回収された=5日

甲子川沿い(上中島町~岩井町)で行われたクリーンアップ活動。たくさんのごみが回収された=5日

 
 釜石市上中島町から岩井町にかけての甲子川河川敷で5日、市民らによるごみ拾いが行われた。市民グループ「かまいし環境ネットワーク」(加藤直子代表、31人)が、地域の水辺環境を守るとともに、海洋環境汚染につながるごみ流出を防ごうと企画した。同所での活動は2022年11月以来2回目となる。呼び掛けに応えた65人が約1時間にわたって作業。想像以上のごみの量に心を痛め、「不法投棄は絶対やめて。責任を持って適切な処理を」と願った。
 
 市内外から幅広い世代が参加。中妻地区生活応援センター駐車場で、加藤代表が活動目的、注意点などを説明した後、ごみ袋やトングを手に河川敷に向かった。路肩斜面、草地、川砂利と広範囲に散らばり、落ちているごみを拾い集めた。
 
開始にあたり、活動目的などを説明するかまいし環境ネットワークの加藤直子代表(写真右上)=中妻地区生活応援センター駐車場

開始にあたり、活動目的などを説明するかまいし環境ネットワークの加藤直子代表(写真右上)=中妻地区生活応援センター駐車場

 
河川敷にはさまざまなごみが…。今回は粗大ごみ以外のものを拾い集めた

河川敷にはさまざまなごみが…。今回は粗大ごみ以外のものを拾い集めた

 
 河川敷には古くに農作物を栽培していたとみられる畑跡が複数あり、野生動物よけのネットなど風化した資材が残る場所も。人目に付きにくい箇所には不法投棄とみられるごみの散乱もあった。“ポイ捨て”の空き缶や瓶、ペットボトル、たばこの吸い殻、発砲スチロールや容器包装ビニールなどの廃プラスチック、廃金属…。多種多様なごみが見つかり、参加者を驚かせた。ごみ袋はすぐにいっぱいになり、2枚目、3枚目と袋を開け、可能な限り拾い集めた。
 
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農業用資材とみられるごみも。土に埋もれかけていたネットや袋を引っ張り出す

 
釜石海上保安部職員も“海ごみゼロ”を願って精力的に活動

釜石海上保安部職員も“海ごみゼロ”を願って精力的に活動

 
真左:手製の木枠にごみ袋を取り付け効率よく作業する参加者も 写真右:追加の袋を開けさらにごみを集める

写真左:手製の木枠にごみ袋を取り付け効率よく作業する参加者も 写真右:追加の袋を開けさらにごみを集める

 
 “海宝漬”の製造販売でおなじみの同市鈴子町の中村家(島村隆代表取締役社長)からは、社員ら約10人が初めて参加した。同社は記録的不漁のサケの資源維持を目指し、サケ・イクラ使用商品の売り上げの一部を稚魚放流に役立てる「#シャケノベイビー運動」を昨年から開始。その一環として、海につながる河川環境を守りたいと同活動に賛同した。業務部の佐々木智也課長(46)、営業部の坂本直樹次長(43)は「思った以上に大きなごみが多い。古びた自転車とかもあった。量も想像以上」と驚いた様子。前回の活動の様子をネット記事で見ていたが、変わらない現状に「残念な気持ち。環境を守るにはやはり市民一人一人の心がけが大事」とごみの適切処理を願う。社員らは今年、サケの稚魚放流活動にも参加する予定だという。
 
 この日、回収されたごみは約300キロ。前回活動時の約2倍の量で、軽トラック2台分にも及んだ。活動エリアの川沿いは工場などが建ち並ぶ地域で、地元住民の目が届きにくい。地域清掃もなく、いわば手付かずの状態。特に五の橋に近いエリアでごみが多い状況にある。
 
道路脇の斜面から広がる草地に足を踏み入れ、ごみを探す参加者

道路脇の斜面から広がる草地に足を踏み入れ、ごみを探す参加者

 
 加藤代表は「こんなにひどいとは。ここは散歩する人も通るが、ごみを見ながらというのもねぇ…」とがっかり。プラスチックごみの多さも指摘し、海に流れ出たプラごみを海洋生物が飲み込んでしまい死に至るケース、紫外線による劣化でメタンなどの温室効果ガスが発生し、地球温暖化の要因となっていることも懸念。「今日は参加者の皆さんが必死になって拾ってくれたが、まずは『自然界にごみを捨てない』ことが大前提。近年は温暖化が影響しているとされる豪雨災害も各地で頻発。未来を生きる子どもたちが大変な思いをしないよう、環境教育にももっと力を入れてほしい」と願った。
 
市内外からごみ拾いに参加した皆さん「おつかれさまでした!」

市内外からごみ拾いに参加した皆さん「おつかれさまでした!」

 
 環境ネットワークは、5月末から6月初旬にかけての「春の海ごみゼロウィーク」(環境省、日本財団主催)に合わせた活動も計画中で、多くの市民の参加を期待する。

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世界遺産「橋野鉄鉱山」7月で登録10周年 インフォセンターが冬季明け開館/青紀土木は清掃奉仕

冬季休館が終わり4月1日から開館した「橋野鉄鉱山インフォメーションセンター」

冬季休館が終わり4月1日から開館した「橋野鉄鉱山インフォメーションセンター」

 
 釜石市橋野町青ノ木の「橋野鉄鉱山」は7月5日で、世界文化遺産登録から10周年を迎える。日本の近代化の礎を築いた“鉄のまち釜石”を象徴する同史跡は、「明治日本の産業革命遺産」(8県11市23資産)の構成資産の一つとして2015年、世界遺産に登録された。節目の年となる今年は、各種記念行事が予定される。情報発信を担う「橋野鉄鉱山インフォメーションセンター」は冬季休館期間が明け、4月1日から開館。さらなる認知と見学者増を目指し、関係者は受け入れ態勢を整える。
 
 同市北西部に位置する橋野鉄鉱山は積雪のため、12月上旬から3月末まで同センターを冬季休館としている。開館日の1日は、見学エリアの高炉場跡の積雪も解消。センターでは、市から委託を受けている橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)のスタッフが業務を再開した。本年度は7人が毎日交代(2人体制)で、来館者の応対や施設の清掃、見学エリアのパトロールなどにあたる。
 
施設入り口にのぼり旗を設置するスタッフ。見学者の受け入れ準備も整った

施設入り口にのぼり旗を設置するスタッフ。見学者の受け入れ準備も整った

 
 また、釜石観光ガイド会(瀬戸元会長、32人)は同日から現地ガイドの派遣を開始した。会員約10人でシフトを組み、センター開館時間内に1人が常駐。ガイドを希望する見学者を案内する。藤原信孝副会長は「登録10周年の節目でもあり、ガイド会としても期待に応えたい。訪れた人たちに興味を持ってもらえるような説明ができれば」と気持ちを高める。
 
世界遺産登録10周年の今年、来訪者増に期待する釜石観光ガイド会の藤原信孝副会長

世界遺産登録10周年の今年、来訪者増に期待する釜石観光ガイド会の藤原信孝副会長

 
橋野鉄鉱山周辺は桜の名所でもある。例年4月下旬からさまざまな種類が咲き始める。今年も期待!=資料写真(2019、23年撮影)

橋野鉄鉱山周辺は桜の名所でもある。例年4月下旬からさまざまな種類が咲き始める。今年も期待!=資料写真(2019、23年撮影)

 
 市教委文化財課世界遺産室によると、登録10周年記念行事は5月からスタート。登録日の7月5日には「明治日本の産業革命遺産」全体のシンポジウムが東京で行われる。同12日には釜石市で式典、講演会、パネルトーク、翌13日には現地でマルシェ(キッチンカー出店、音楽会などを予定。ラベンダーまつりと共催)が開かれる。10月11、12日には県内3世界遺産持ち回りで開催されている「いわて世界遺産まつり」(県主催)が市民ホールTETTOを会場に開かれる。スタンプラリーやARアプリ用カードの配布なども予定する。
 
 例年実施しているイベントは登録10周年記念の冠をつけて開催する。本年度は見学路整備に伴う発掘調査(水路跡周辺)が予定されていて、計画的に進める内容確認調査の発掘と合わせ、その成果が注目される。子どもが楽しめる企画も検討中。12月の「鉄の記念日、週間」行事は、橋野鉄鉱山世界遺産登録10年の軌跡にスポットを当てる。
 
 橋野鉄鉱山(高炉跡)の来訪者数は世界遺産登録前は年間500人ほどだったが、登録に向けた取り組みが進むにつれ見学者が増加。登録された2015年は43316人(センター入館カウント)を記録した。16年に台風による豪雨被害、20年から3年間は新型コロナ禍、24年はアクセス路の笛吹峠の通行止めと、度重なる困難を乗り越えながらの10年。24年の来訪は5982人(同)だった。
 
 森一欽世界遺産室長は「遺産価値の周知の面では、この10年でそれなりの成果はあったと思う。製鉄体験や出前講座などで小中学生の理解も深まっている」と実感。課題は経済活動への効果。「“鉄”だけで人を呼び込むのは難しい。三陸ジオパーク、みちのく潮風トレイルなどと組み合わせ、当市の魅力を発信する形ができれば。県内3遺産、世界遺産地域連携会議とのつながりも生かしたい」と森室長。10周年を「今後の10年に向けスタートを切るための年」と位置付け、「市民の皆さんにも積極的に関わってもらい、一緒に盛り上げていきたい」と話す。
 
 なお、近代製鉄発祥の地「釜石鉱山」の資料を公開する甲子町大橋の展示室「Teson」(旧釜石鉱山事務所)も冬季休館が明け、3日から開館している。
 

地元業者「青紀土木」が地域貢献 社員ら総出で橋野鉄鉱山見学エリア、アクセス路を清掃

 
橋野鉄鉱山の見学エリアで清掃奉仕に励む青紀土木の社員ら=1日午前

橋野鉄鉱山の見学エリアで清掃奉仕に励む青紀土木の社員ら=1日午前

 
 釜石市鵜住居町の建設業、青紀土木(青木健一代表取締役社長、従業員35人)は1日、地域貢献として、世界遺産「橋野鉄鉱山」とアクセス路となる県道の清掃活動を行った。青木社長以下30人余りが参加。日ごろ世話になっている地域への感謝を込めて、環境美化に尽力した。
 
 インフォメーションセンターに集合した同社社員らは午前9時、2班に分かれて作業を開始した。見学エリアの高炉場跡には、冬期間に積雪や強風で倒れた木や折れて落下した枝などが散乱。大きいものは切断したりして、一輪車で運び出した。細かいものは袋に集めた。この日は市から要望のあった山神社付近を中心に清掃。協力し合って、見学者が歩きやすい環境、きれいな景観を取り戻した。
 
倒れた木や折れて落下した枝などを回収し、見学者の安全を確保

倒れた木や折れて落下した枝などを回収し、見学者の安全を確保

 
約2時間の作業でエリア内はすっきりとした印象に…

約2時間の作業でエリア内はすっきりとした印象に…

 
 同鉄鉱山へのアクセス「県道釜石遠野線」では、遠野市側に向かって坂道を上りながら、ごみを拾い集めた。同社は県から委託を受け、同路線の路面、側溝清掃など道路維持管理業務を行っているが、この日は通常業務の範囲外の路肩に目を向け、落ちているごみを拾った。ビンや缶、その他に分別しながら袋に集めた。
 
県道釜石遠野線では路肩の草地に目を凝らし、落ちているごみを拾った

県道釜石遠野線では路肩の草地に目を凝らし、落ちているごみを拾った

 
ごみは車からポイ捨てされたとみられる空き缶、ビン、ペットボトルなどが目立った

ごみは車からポイ捨てされたとみられる空き缶、ビン、ペットボトルなどが目立った

 
 同社は新年度がスタートする毎年4月1日に、全従業員と関係企業の出席のもと安全衛生大会を開いている。午後からの大会の前に地域に奉仕する活動を行うのが恒例。日ごろの業務の中で気付いた箇所を選定し、清掃している。昨年は三陸鉄道鵜住居、両石2駅の草刈りなどを実施。市役所近くの高台避難道路、市道箱崎半島線のガードレール清掃を行ったことも。橋野鉄鉱山関連では、世界遺産登録された2015年に県道清掃を行っている。同奉仕活動は20年近くに及ぶ。
 
みんなで声を掛け合いながら作業。新年度のスタートにあたり、仕事への意欲も高めた

みんなで声を掛け合いながら作業。新年度のスタートにあたり、仕事への意欲も高めた

 
 青木社長は同活動について「地域への感謝の気持ちを持って1年働こう、頑張ろうという誓いの場にしたい。道路建設に携わっている身として、自分たちの仕事が社会の役に立っていることを再認識する機会にもなれば」と期待。普段は各現場に分かれて仕事をしている仲間が年に1回全員集まり、結束を強める場にもなっているという。

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「釜石呑ん兵衛横丁」写真集出版記念トークイベント 地元出身の写真家と元店主、記憶伝える

写真集「釜石呑ん兵衛横丁」の出版を記念して行われたトークイベント

写真集「釜石呑ん兵衛横丁」の出版を記念して行われたトークイベント

 
 写真家の佐々木貴範さん(58)=埼玉県所沢市=は3月29日、釜石市の歓楽街「呑ん兵衛(のんべえ)横丁」を記録した写真集の出版を記念して古里・釜石でトークイベントに参加した。「横丁の歴史を一冊で分かるようにして、消えていく釜石の文化を記録しようと思った」。市民ら約30人を前に、制作の裏側や込めた思いを語った。横丁で営業していた店主2人も加わり、歴史を振り返りつつ記憶を共有した。
 
 横丁は戦後の焦土から立ち上がった屋台を起源とする。1957年ごろ、市中心部・大町の長屋に30店舗以上が軒を連ね、製鉄業で活気づく街の夜を照らす名所として親しまれた。2011年の東日本大震災の津波で建物は全壊。鈴子町の仮設店舗に移って営業を続けながら横丁の再建を模索したものの、仮設廃止に伴い、18年に約60年の歴史に幕を下ろした。その後の店主らは独立したり廃業したり、それぞれの道を歩んだ。
 
 イベントは大町の桑畑書店が主催。現在は大町の親富幸通りで居酒屋「お恵」を営む菊池悠子さん(86)、鈴子町のサン・フィッシュ釜石内に店を構える「とんぼ」店主の高橋津江子さん(83)とトークを繰り広げ、消えてしまった横丁への思いを紡いだ。佐々木さんの親戚で、横丁の常連客でもあった大久保孝信さん(66)が進行役を務めた。
 
写真集に込めた古里への思いを語る佐々木貴範さん

写真集に込めた古里への思いを語る佐々木貴範さん

 
 写真集「釜石呑ん兵衛横丁 東日本大震災で消滅した飲み屋街の記録と歴史」(無明舎出版)は震災の2年前の横丁の店頭に立つ店主たちと、震災後の姿を写している。店主も客も笑顔。楽しそうな雰囲気が伝わってくるカットが満載の一冊だ。横丁の歴史についても詳しく記述しているが、「苦労した」と佐々木さん。横丁には運営の母体となるような組合はなく、あくまで任意的な集合体で、店主らの頭の中に残る「記憶」が頼り。市内の図書館で横丁に関する記事を手繰り、つなぎ合わせ、記録としてまとめた。
 
横丁にまつわるトークでは話し手も自然と笑顔になる

横丁にまつわるトークでは話し手も自然と笑顔になる

 
 店主2人は「よくここまで調べてくれた」と感謝した。菊池さんは、作家井上ひさしさんの母マスさん(1991年死去)の店と隣り合わせだったことから、思い出話を交えて紹介。「毎日が本当に楽しかった。仮設の時も同じ。お客さんに教えられることもたくさん」と笑った。高橋さんは「苦労…ない。嫌なことがあっても、去れば忘れる。あの頃の苦労のおかげで、今でも商売ができる」と受け流す。一方で、いい思い出が多いからこそ、「横丁を残せなかったのが悔しい。次につなげようと頑張ってきたのに…」と視線を落とした。
 
横丁での記憶をつなぎ合わせる菊池悠子さん(右)と高橋津江子さん

横丁での記憶をつなぎ合わせる菊池悠子さん(右)と高橋津江子さん

 
会場には横丁で営業していたママさんたちの姿も。思いをポロリ

会場には横丁で営業していたママさんたちの姿も。思いをポロリ

 
 釜石で生まれて4歳まで育った佐々木さんは、大人になって帰郷のたびに街の様子を撮るようになった。「戦後の復興に貢献し、釜石の名物だった横丁。それは街の個性であり、文化だった」。そう感じてきたものは消えてしまったが、「釜石生まれの写真家として、記録をつなぐ役目がある」と取り組んだ。写真集を見て「懐かしんでもらえたら」と期待をするが、「文化とは何か。祭りや伝統行事、たくさんある。もし、消えそうな状況になったら、どう残すか」と問いかけもする。「あって当たり前と思ってはいけない。危うさに気づいた人が声を発信していくしかない」と見解を示した。
 
サイン会で参加者と交流する佐々木さん。古里をテーマに撮影を続ける

サイン会で参加者と交流する佐々木さん。古里をテーマに撮影を続ける

 
 サイン会では「故郷礼賛」と記した佐々木さん。「何があっても、いとおしい。古里だから」と思いを込めた。釜石応援ふるさと大使を務めており、これからも「釜石」をテーマでカメラのシャッターを切り続ける考え。「震災20年の時に写真展をやりたい」と思い描く。

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2025年度がスタート 釜石大槌の若き消防士6人「地域守る」 決意胸に新たな一歩

制服、制帽を身に着け、気を引き締める新採用の消防士

制服、制帽を身に着け、気を引き締める新採用の消防士

 
 新年度がスタートした1日、釜石大槌地区行政事務組合消防本部では新採用の消防士6人に辞令が交付された。駒林博之消防長からの激励に応え、ビシッと敬礼。「災害から地域を守っていく」との決意を胸に、新たな一歩を踏み出した。
 
 釜石市鈴子町の同本部・釜石消防署で辞令交付式があり、駒林消防長が訓示。2月に発生した大船渡市の大規模山林火災で、同本部は岩手県内の相互応援隊として隊員を派遣し、連日、各地の隊員と力を合わせ消火活動に当たった。「消防の業務は集団行動。訓練を通じて知識や技術を習得しながら仲間との結束力も高め、実際の現場で動けるよう取り組んでほしい」と背中を押した。
 
釜石大槌地区行政事務組合消防本部で行われた辞令交付式

釜石大槌地区行政事務組合消防本部で行われた辞令交付式

 
新規採用を含めた職員らを前に訓示する駒林博之消防長

新規採用を含めた職員らを前に訓示する駒林博之消防長

 
 新職員を代表して岩間雄史さん(22)が宣誓書を読み上げ、「消防の目的や任務を深く自覚し、全体の奉仕者として誠実かつ公正に職務の遂行に当たります」と決意を込めた。
 
新採用職員を代表して宣誓書を読み上げる岩間雄史さん(手前)

新採用職員を代表して宣誓書を読み上げる岩間雄史さん(手前)

 
 岩間さんは浜町出身。小学2年生の頃に経験した東日本大震災をきっかけに「地域の文化や自然を災害から守りたい」と消防士を志した。大船渡の山林火災で全国の消防士と連携して広範囲の消火活動に当たった先輩たちの姿に、素直に「かっこいい」と憧れを抱く。「現場は大変なこともあると思うが、自分もしっかり活動できるよう努力し、地域に貢献したい」と背筋を伸ばした。
 
「地域のために」。辞令を手に前を向く若き消防士たち

「地域のために」。辞令を手に前を向く若き消防士たち

 
 6人は、釜石、大槌ゆかりの18~22歳。震災の経験や身近にいる消防士の存在が、この道につながった。4月7日に県消防学校(矢巾町)に入校。半年間、初任教育を受け、人命と地域の暮らしを守るための訓練に励む。その後、10月から消防署などで実際に勤務する。

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広報かまいし2025年4月1日号(No.1853)

広報かまいし2025年4月1日号(No.1853)
 

広報かまいし2025年4月1日号(No.1853)

広報かまいし2025年4月1日号(No.1853)

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【P1】
学校給食費の無償化対象者を拡充します

【P2-3】
かまいしの自然環境を活用した遊びの提供にかかる費用を補助します
高齢者の補聴器購入費用を一部助成します 他

【P4-5】
市職員の給与などを公表します 他

【P6-7】
まちのお知らせ

【P8】
サプライヤーパーク・プレオープンマッチ

 

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 オープンシティ・プロモーション室
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8463 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2025032900010/
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能登の新入学児童に祝福とエール 通学のお守りに! 釜石から「トラキーホルダー」プレゼント

大地震で被災した能登地方の新入学児童に贈るトラキーホルダー。釜石トラ作りの会が制作

大地震で被災した能登地方の新入学児童に贈るトラキーホルダー。釜石トラ作りの会が制作

 
 石川県北部、奥能登地域を中心に甚大な被害をもたらした能登半島地震から、今日で1年3カ月―。復旧復興が続く同地域の小学校に今春、入学する新1年生を応援したいと、東日本大震災で被災した釜石市の市民グループが手作りのお祝い品を贈った。贈り主は同市平田を拠点に活動する、釜石トラ作りの会(前川かな代表、会員10人)。同市の郷土芸能“虎舞”をモチーフに制作したキーホルダーが入学祝いの品だ。「虎は千里行って千里帰る」という故事から、漁師らの無事帰還を願って古くから踊られてきた虎舞。キーホルダーには新入学児童が安全に通学し、無事に帰宅してほしいとの願いが込められる。
 
 トラキーホルダーは、能登町の宇出津小など5校と輪島市の門前東小など3校、計65人の新1年生に贈られる。黄色のクラフトテープを編んで一つ一つ手作業で仕上げたキーホルダーには、「入学おめでとう 交通安全に気をつけてね!」というメッセージカードが添えられる。会の活動と寄贈に込めた思いを記した手紙も各学校に届けてもらう。
 
釜石市の平田公民館で活動する「釜石トラ作りの会」=3月9日

釜石市の平田公民館で活動する「釜石トラ作りの会」=3月9日

 
新入学児童に贈るキーホルダーを箱に詰める前川かな代表

新入学児童に贈るキーホルダーを箱に詰める前川かな代表

 
トラ作りの会からキーホルダーを託される伊藤聡さん(左)。各校には手紙(右上)も一緒に届けてもらう

トラ作りの会からキーホルダーを託される伊藤聡さん(左)。各校には手紙(右上)も一緒に届けてもらう

 
 キーホルダーは3月27日、両市町に届けられた。輪島市を拠点とする民間のボランティアセンター「RQ能登」で昨年2月からコーディネーターとして活動する釜石市出身の伊藤聡さん(45)=さんつな代表=が、会から託された祝い品を担当者に直接手渡した。両担当者は予想以上の出来栄えに驚いた様子だったという。能登町教育委員会事務局の喜多隆志主幹は「大地震による被災で子どもたちは大変な思いをしたが、全国から温かい励ましやさまざまな支援をいただき、学校生活を送れている。皆さまからの応援は子どもたちにとって大きな力となっている」と、感謝の言葉を口にしたという。
 
伊藤さんからトラキーホルダーを受け取った輪島市支援調整窓口スタッフの澤田かをりさん(右)=写真提供:伊藤さん

伊藤さんからトラキーホルダーを受け取った輪島市支援調整窓口スタッフの澤田かをりさん(右)=写真提供:伊藤さん

 
トラキーホルダーを手にする能登町教委の喜多隆志さん(右)=写真提供:同

トラキーホルダーを手にする能登町教委の喜多隆志さん(右)=写真提供:同

 
 釜石トラ作りの会は、震災で被災した同市平田地区の住民が立ち上げた。仮設住宅入居時に行われたサロン活動でクラフトテープを使った物づくりを覚え、6年ほど前からは虎舞をモチーフにしたキーホルダーを作り、地元小学校の新入学児童に贈っている。メンバーのほとんどが同震災の津波で自宅を失うなどした被災者。全国で頻発する自然災害のニュースを目にするたび心を痛め、被害にあわれた人たちを案じてきた。会の活動が軌道に乗ってきたこともあり、「自分たちのできることで被災地の子どもたちを励ましたい」と、今回初めて能登地方の新入学児童へのキーホルダー贈呈を発案した。
 
 仲介役を担った伊藤さんは3月上旬、会のメンバーが制作活動を行う平田公民館を訪問。前川代表(60)からこれまでの活動の経緯などを聞くとともに、発災から1年が経過した能登の現状を伝えた。伊藤さんによると、現地は倒壊した家屋の公費解体がやっと進んできたところ。地震被害がまちの全域に及び、9月には豪雨災害もあったため復旧復興の遅れが顕著で、被災者の多くは今も仮設住宅などでの避難生活を余儀なくされているという。
 
 同会の活動のきっかけを聞いた伊藤さんは「向こうの仮設(住宅)にも手仕事の上手なお母さん方がいる。こういう活動があれば住民が集まる場もでき、孤立防止にも役立つ」とコミュニティー維持のヒントも得た様子。14年前の大震災被災の当事者でもあることから、「今回のような支援は気持ちと気持ちがつながるもの。もらった小学生は成長する過程でその意義を感じるようになるのではないか」と話した。
 
キーホルダーを受け取りに訪れた伊藤さんに会の活動経緯を伝えるメンバー

キーホルダーを受け取りに訪れた伊藤さんに会の活動経緯を伝えるメンバー

 
伊藤さんも平田出身。地元ならではの話題も出て会話が弾む

伊藤さんも平田出身。地元ならではの話題も出て会話が弾む

 
 「私たちも全国の人たちから支援を受けて今がある。一人ではできなくても、みんなでやればできることもある」と前川代表。子どもへの支援を考えた背景には14年前の実体験がある。「子どもが元気だと大人も元気になれる。子どもたちの姿に親や祖父母は頑張る力をもらい、生活再建やまちの復興を成し遂げてきた。今回の贈り物が能登の子どもたちの笑顔につながれば…」。トラキーホルダーが揺れるランドセル姿の新1年生を思い浮かべながら、メンバーらは制作活動を続ける。