タグ別アーカイブ: 地域

nebamabiotope01

戻れ!震災前の生き物たち 釜石・根浜にビオトープ整備 GWには体験イベントも

根浜シーサイド内に整備されたビオトープ(生物生息空間)

根浜シーサイド内に整備されたビオトープ(生物生息空間)

 
 釜石市鵜住居町の根浜海岸観光施設「根浜シーサイド」内に、多様な生き物が生息できる「ビオトープ」が整備された。東日本大震災の津波で失われた水辺環境を復元することで本来の生態系を取り戻し、自然との触れ合いや環境教育に役立てる狙い。同所の市指定管理者かまいしDMC(河東英宜代表取締役)が、市民団体かまいし環境ネットワーク(加藤直子代表)と協働で取り組んだ。大型連休最終日5月6日には、生き物のすみかづくりなどを行うお披露目イベントも予定される。
 
 ビオトープは多目的広場(運動場)の西側、山林が隣接する約80平方メートルの土地を市から借用して整備した。山から流れ出る沢水を引き込んだ大型の池を造成。池の縁の土留めにはスギの丸太材や花こう岩の割栗石を用い、より自然に近い景観にした。池の水深は約30センチ。排水路を施し、水の循環を可能にした。甲子町の佐野建設が施工。釜石東ロータリークラブ(RC、佐藤猛夫会長、会員28人)が60周年記念事業として同所の環境整備のために拠出した寄付金を活用し、実現させた。
 
水辺にすむ生き物が集えるように大型の池を配置

水辺にすむ生き物が集えるように大型の池を配置

 
19日は排水路などの仕上げ作業が行われた。池の真ん中には石を配した小島も(左下)。小鳥やカエルの休息風景も見られるかも?

19日は排水路などの仕上げ作業が行われた。池の真ん中には石を配した小島も(左下)。小鳥やカエルの休息風景も見られるかも?

 
 根浜シーサイドの敷地には震災前、同地区の集落があった。ビオトープの整備地一帯は元々田んぼで、トウホクサンショウウオ、シュレーゲルアオガエル、ニホンアマガエル、ドジョウなど多様な生き物が生息していた。震災の津波は集落全体を飲み込み、住民らは復興事業で新たに造成された高台住宅地に集団移転。跡地にはキャンプ場や多目的広場などを備えた同観光施設が整備された。
 
 震災前から同所の環境に注目していた同ネットワークの加藤代表は、被災後も山からの沢水が見られるこの場所に「もう一度、生き物が住める環境を作れないか」と思案。同DMCにも同様の考えがあり、このたびの釜石東RCの支援を機に事業実現にこぎ着けた。
 
 整備に先立ち、3月初旬に設けた近くの実験池にはトウホクサンショウウオがさっそく産卵。イモリの姿も確認されており、同所が生息環境に適していることを裏付けた。新設池が周辺の自然になじんでくれば、カエルやトンボなど水辺に集まる生き物が見られるようになるのではと期待される。
 
水に落ちたスギ枝に産み付けられたトウホクサンショウウオの卵(左下拡大)。ふ化に期待する加藤代表(右)とかまいしDMCの佐藤奏子さん

水に落ちたスギ枝に産み付けられたトウホクサンショウウオの卵(左下拡大)。ふ化に期待する加藤代表(右)とかまいしDMCの佐藤奏子さん

 
池の背後には広葉樹が茂り、四季折々の景色も楽しめそう

池の背後には広葉樹が茂り、四季折々の景色も楽しめそう

 
 県環境アドバイザーなども歴任する加藤代表はビオトープの概念が浸透する前から、その重要性に着目。これまでに日向ダム(1997年)、甲子町松倉(2005年)、片岸町(07年)につくり、多種多様な生き物が見られる空間を再現。子どもたちの環境教育などに役立ててきた。3年越しの構想が実を結んだ“根浜ビオトープ”に、「本来の生き物が戻るには2~3年はかかるだろうが、自然にすみつくのを待ちたい。近年は自然環境の変化や安全管理の面から、身近に生き物を観察できる場が少なくなった。ここが自然との触れ合い空間になるとともに、地元の方が昔を懐かしむ憩いの場になれば」と願う。
 
 同DMCは5月6日午後1時半から、ビオトープのお披露目を兼ねて、生き物のすみかづくりの体験イベントを予定している。
 
竹を渡した部分に生き物のすみかを作る体験イベントを大型連休中に開催予定

竹を渡した部分に生き物のすみかを作る体験イベントを大型連休最終日に開催予定

hinankunrenkekka01

振り返り備える…事前防災へ 釜石市、スマホで避難行動分析 訓練で実証実験、結果を報告

スマホの位置情報を活用し人流を解析する実証実験の結果説明会

スマホの位置情報を活用し人流を解析する実証実験の結果説明会

 
 釜石市は19日、3月の地震・津波避難訓練で行ったスマートフォンの位置情報データを活用して避難行動を分析する実証実験の結果説明会を市役所で開いた。リアルタイムな動きを可視化することで人が集まった場所を確認でき、想定されていなかった新たな経路を発見するなど情報収集ツールとして有用性も認識。市はデータをホームページで公開するほか、行動の振り返りで活用するといった「事前防災」に役立てることを視野に導入について検討を進める。
 
 実証実験は3月3日の避難訓練に合わせて実施した。ソフトバンク子会社で位置情報を活用したビッグデータ事業を手掛ける「Agoop(アグープ)」(東京)が協力。同社が提供する歩数計測アプリをスマホにインストールした約200人の行動データを分析した。
 
実証実験の概要や結果を説明する加藤有祐取締役兼CTO

実証実験の概要や結果を説明する加藤有祐取締役兼CTO

 
 説明会には市幹部職員、小中学校の校長、市議ら約50人が参加。同社の加藤有祐取締役兼最高技術責任者(CTO)が、リアルタイムの人流に岩手県が公表した最大クラスの津波浸水想定のシミュレーションを重ねた動画などをモニターに表示しながら説明した。
 
 人流データをモニタリングしたのは市内の4エリア。スマホの衛星利用測位システム(GPS)を活用したもので、最短3分前の行動を可視化、1分ごとに情報が更新される。ほとんどの人は警報発令の1~3分後に避難行動を開始し、10分ほどで避難が完了。素早く適切に行動できていることを確かめることができた。
 
釜石市内4エリアの人流データに津波シミュレーションを重ねて表示

釜石市内4エリアの人流データに津波シミュレーションを重ねて表示

 
 実験では「市が想定していなかった新たな経路を見つけられた」と報告もあった。避難は短距離ルートで-と考えていたが、唐丹地区では「遠回り」の動きが見られた。現地の様子を確認すると、勾配はあってもより早く浸水想定域を抜けることができ、加藤取締役は「素早く高台に避難するという教育が基になった行動では」と分析。訓練後に可視化データを見て振り返ることで、「危機意識や訓練への参加意識の醸成につながるのでは。平時からの利用が大事で、データ分析を活用してほしい」と強調した。
 
想定外ルートの発見につながった事例などを示しながら解説した

想定外ルートの発見につながった事例などを示しながら解説した

 
 市防災危機管理課の川崎浩二課長は「避難時に行動や場所をどう見いだしているか、可視化したことで知ることができた」と手応えを得る。避難訓練ではAI(人工知能)搭載のカメラを使って避難者の属性などを把握する実験も行っていて、こうした技術を組み合わせ、事前防災に役立てたい考え。行動の見える化で「訓練参加のモチベーションにつながれば」と期待する。
 
 ただ、県公表の浸水想定域には約1万1000人が暮らすが、最終的な訓練参加者は約2400人で、いかに増やすかが課題として残る。また、分析の鍵となるのはデータ量で、訓練の周知と合わせアプリのインストールも呼びかけたが、想定より少なかった。協力者を増やす取り組みも課題として挙がった一方で「下校時の避難訓練で活用したい」との声もあり、市は防災教育や地域防災の場での活用を検討していく。
 
 位置情報を用いた人流データは1月の能登半島地震でも活用された。同社が提携企業から収集した位置情報を基に通行実績マップを作成し、災害派遣医療チームや支援団体などに提供。救援ルート、物資供給の優先度の検討に役立てられたという。釜石の訓練では避難者がいる場所が自動で検知され、避難所に集まった人数がランキング形式で表示された。市の猪又博史危機管理監は「人の流れが自動的に目に見えれば、次の対応につながる。想定外の避難場所を見つけるのにも使えるのではないか。導入に向け、庁内で協議を重ねたい」とした。

hamachidori01

地酒「浜千鳥」お気に入りは? 春恒例・すべてを楽しむパーティーで飲み比べ 28銘柄堪能

今年で32回目! 浜千鳥のすべてを楽しむパーティー=16日夜
 

今年で32回目! 浜千鳥のすべてを楽しむパーティー=16日夜

 
 釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は16日、第32回浜千鳥のすべてを楽しむパーティーを大町のホテルクラウンヒルズ釜石で開いた。市内外から約120人が参加。同社が掲げる“地産地消”の酒を心行くまで味わい、蔵人の技と地元の米、水で生まれる日本酒のうまさを体感した。ミニトーク、利き酒挑戦会などもあり、楽しい夜のひとときを過ごした。
 
 開会にあたり新里社長は、昨年創業100年を迎えた同社の歴史を紹介。製鉄所の繁栄によるまちの酒需要増加を受け、遠野の造り酒屋がルーツの新里家と釜石の有力者の出資で同社がスタートしたことを明かした。「会場にはそれぞれ特徴のある酒が並ぶ。“酒ときどき水”で、いろいろな銘柄を少しずつ試してほしい」と呼び掛けた。
 
 1部は「100年企業の地域ブランドつくり」と題したミニトーク。1902(明治35)年創業のみそ、しょうゆ製造販売業、藤勇醸造(大渡町)の小山和宏専務取締役と23(大正12)年創業の浜千鳥の奥村康太郎杜氏(醸造部長)が話した。小山専務によると、初代藤井勇助氏は釜石鉱山田中製鉄所の横山久太郎所長の命で、資金的バックアップを受けて同社を創業。市民に親しまれる甘口のしょうゆは九州地方に由来するもので、官営八幡製鉄所の操業(1901年)時、釜石の技術者が同地へ指導に行ったことが関係しているという。
 
写真上:藤勇醸造の小山和宏専務(中)、浜千鳥の奥村康太郎杜氏(右)によるミニトーク 同下:両社の歴史を感じながら聞き入る参加者

写真上:藤勇醸造の小山和宏専務(中)、浜千鳥の奥村康太郎杜氏(右)によるミニトーク 同下:両社の歴史を感じながら聞き入る参加者

 
 津波や艦砲射撃を乗り越え100年以上の歴史を刻む両社。時代の変遷とともに新たな挑戦も行いながら、地元の味を創り上げてきた。奥村杜氏は大槌産酒米や湧水を使った酒造り、小山専務はこうじを活用した甘酒や化粧水などの新商品、カフェバーの開店について説明。地域に根差した企業として、今後も発展させていくことを誓い合った。
 
 2部は参加者お待ちかねのパーティー。乾杯後、さまざまな酒と料理を楽しんだ。各テーブルには3月の県新酒鑑評会で金賞を受賞した「純米大吟醸結の香」、大槌産酒米と湧水で仕込んだ「源水」、岩手大生が中心となったi-Sake(あいさけ)プロジェクトとの共同企画「Rondo Iwate(ろんどいわて) 2024」など5銘柄が用意された。料理では地元食材や藤勇醸造のみそ、しょうゆ、浜千鳥の酒かすを使ったメニューも提供された。
 
テーブルに並んだ酒でまずは乾杯!この後を楽しみに…

テーブルに並んだ酒でまずは乾杯!この後を楽しみに…

 
おいしい酒に笑顔を広げ、パーティーを満喫

おいしい酒に笑顔を広げ、パーティーを満喫

 
 毎回人気の試飲コーナーには吟醸酒、純米酒、にごり酒、無ろ過生酒、米焼酎など23種の酒が並んだ。中には1991年醸造の30年ものの古酒も。参加者は興味を持った酒を飲み比べ、香りや味の違いを楽しんだ。
 
 盛岡市の伊勢美里さん(38)、本堂満智子さん(43)、成田麻由さん(30)は古酒、本醸造、純米酒を飲み比べ。「香りが強い」「甘いけどすっきり」などと感想を言い合い、「違いが分かり面白い」とにっこり。飲食業の伊勢さんは「店でも浜千鳥は好まれる。最近は“源水”押し。『すっきりしておいしい』と好評」と話す。ずらりと並んだ浜千鳥商品に「これだけの種類があるとワクワクする」と堪能した。
 
さまざまな銘柄を試飲できるコーナー。目移りしそう

さまざまな銘柄を試飲できるコーナー。目移りしそう

 
浜千鳥自慢の酒28種がずらり。1991年醸造の「仙人郷」(右下写真)は参加者も興味津々

浜千鳥自慢の酒28種がずらり。1991年醸造の「仙人郷」(右下写真)は参加者も興味津々

 
同じものはどれとどれ? 5種の酒を判別する利き酒コーナー

同じものはどれとどれ? 5種の酒を判別する利き酒コーナー

 
 同社に酒米「吟ぎんか」を供給する大槌酒米研究会の佐々木重吾会長によると、昨年は猛暑の影響で米作りには大きな苦労が伴ったという。浜千鳥の奥村杜氏も「これまでに経験したことがない気候。米が溶けにくく吸水などで難しさがあった」と振り返った。その中、県新酒鑑評会では純米大吟醸結の香の金賞に加え、県酒造好適米(吟ぎんが、ぎんおとめ)を使った部門で吟醸酒が7年連続の全農岩手県本部長賞を受賞している。
 
 職場の仲間で参加した釜石市の柏﨑勇希さん(23)は「こんなに種類があるとは驚き。いろいろな酒を気軽に飲めていいですね。好みに合うものも見つかりそう」。同パーティーへの参加は初めてで、「酒好きな人たちからいろいろな話も聞けて面白い」と交流も楽しんだ。
 
 春を迎え、来季の酒造りに向けた稲作準備も始まる。同社の酒造りの一連の工程を学べる一般向け体験塾は5月26日の田植えからスタートする。
 
参加者と談笑する浜千鳥の新里進社長(左)

参加者と談笑する浜千鳥の新里進社長(左)

matsukura01

春告げる「松倉神社祭典」 神楽、虎舞で子どもら躍動 地域の伝統を末永く後世に

松倉神社例祭。地域に伝わる神楽と虎舞が神社に奉納された=13日夕方

松倉神社例祭。地域に伝わる神楽と虎舞が神社に奉納された=13日夕方

 
 釜石市甲子町の松倉神社(宮司=須藤寛人・正福寺住職)の例祭は13、14の両日行われた。祭事は松倉町内会(佐野賢治会長、約600世帯)が主催。同町内会芸能部(小久保謙治部長)が受け継ぐ「松倉太神楽」と「松倉虎舞」が神社や地区内で披露され、満開の桜と相まって春の訪れを華やかに彩った。
 
 松倉神社は釜石高校南側の地区内を見下ろす高台にあり、火伏せの神を祭る。本来の縁日(祭りが行われる日)は17日だが、近年は同日に近い土・日曜日に日程を組んで祭りを開催する。13日は宵宮を前に、地区東側の新興住宅地内の店舗3軒を回り門打ち。住民や芸能部の子どもらの希望で実現させた。夕方には同神社で祈祷と踊りの奉納が行われた。
 
宵宮祭で行われた祈祷(写真左)。神社は甲子町松倉の高台、大木の林の中にある(写真右)

宵宮祭で行われた祈祷(写真左)。神社は甲子町松倉の高台、大木の林の中にある(写真右)

 
神前で手を合わせ、今年1年の地区の平穏などを祈る祭り参加者

神前で手を合わせ、今年1年の地区の平穏などを祈る祭り参加者

 
 現甲子町松倉地区は江戸時代、内陸と沿岸を結ぶ交易の要衝“宿場町”として栄え、両芸能はともに江戸前~中期(諸説あり)に伝えられたとされる。松倉太神楽は盛岡の七軒丁(現盛岡市仙北町)から訪れた芸能者によってもたらされたといわれる。昭和10年代までは祭りや婚礼で披露され、地域の祝い事に欠かせないものとなっていたが、戦後は衰退。昭和50年代に町内会が中心となって復活に乗り出し、後継者育成を図りながら現在に至る。
 
江戸時代から今に受け継がれる「松倉太神楽」

江戸時代から今に受け継がれる「松倉太神楽」

 
松倉太神楽は2月に行われた市郷土芸能祭にも出演。後継者も育成中

松倉太神楽は2月に行われた市郷土芸能祭にも出演。後継者も育成中

 
 松倉虎舞は現山田町大沢から伝わったとされる。三陸随一の豪商だった前川(吉里吉里)善兵衛の千石船が航海で大嵐に見舞われ、流れ着いた島で、船方衆がそこに伝わる虎舞を習い覚えて持ち帰ったのが大沢虎舞とされ、釜石大槌地域の虎舞の多くは大沢から広まったと考えられている。松倉は“和藤内の虎退治”を描いた演目を継承する。
 
神社周辺は桜が満開!天候にも恵まれ、絶好の祭り日和の中、躍動する「松倉虎舞」

神社周辺は桜が満開!天候にも恵まれ、絶好の祭り日和の中、躍動する「松倉虎舞」

 
 例祭での両芸能披露は新型コロナウイルス禍で3年休止後、昨年から再開。今年は小中高生を中心に約60人が参加し、3月から週2回の練習を重ねてきた。昨年から虎舞の踊りに参加する森奏心さん(甲子小2年)は「練習は大変だけど、みんなで跳ねて踊るのは楽しい。ちょっと間違ったけど最後までできた」。虎の舞い手、横田楽さん(甲子中3年)は友人に誘われて参加し2年目。「踊りは自分なりには80点ぐらい。地域の皆さんに見てもらえるのがうれしい」と話す。横田さんを誘った佐藤健太さん(同)は虎舞をやっていた祖父に憧れ、幼稚園年中から親しむ。市内最古ともいわれる同虎舞に誇りを感じ、「大人になっても続けたい。下の世代にももっと広まり、自分たちを超えるぐらいうまくなってほしい」と期待する。
 
各演目で練習の成果を発揮。将来が楽しみな小学生ら

各演目で練習の成果を発揮。将来が楽しみな小学生ら

 
matsukura08

やりや刀を手に虎を追い込む役は子どもらが担う

 
 虎舞には松倉地区以外からも子どもたちが参加。小久保芸能部長(51)は「これだけ集まってくれるのはありがたい。伝統も大事にしながら、子どもたちのやりたい形を実現していきたい」と、部長就任初年にあたり継承への思いを新たにする。両芸能は4月27日に行われる道の駅釜石仙人峠の9周年祭でも披露する予定。「もっと踊りたい」という子どもたちの希望をかなえるべく、「声がかかれば他地域にも出向きたい。外との交流は子どもたちの刺激にもなるはず」と小久保部長。
 
虎舞の終盤演目「笹喰(ば)み」は虎の荒々しい姿を表現

虎舞の終盤演目「笹喰(ば)み」は虎の荒々しい姿を表現

 
最後は“和藤内”が虎を仕留める。威勢のいい口上も

最後は“和藤内”が虎を仕留める。威勢のいい口上も

 
 佐野町内会長は「祭りの思い出がいつまでも心に残り、大きくなって釜石を離れても戻ってきてくれる。そんな地域のつながりを大事にしていきたい。祭りは絶やしてはいけない」と意を強くする。同地区には東日本大震災後、被災地域から移住し新たに自宅を構えた人も多く、町内会加入世帯はこの10~15年の間に100世帯近く増えている。「町内会のモットーは親睦第一。新規移住者も巻き込んで町内会活動を活発化させたい。次世代への引き継ぎも確実に進めていければ」と地域の未来を見据える。

koho1830thum

広報かまいし2024年4月15日号(No.1830)

広報かまいし2024年4月15日号(No.1830)
 

広報かまいし2024年4月15日号(No.1830)

広報かまいし2024年4月15日号(No.1830)

ファイル形式: PDFファイル
データ容量: 4.22MB
ダウンロード


 

【P1】
表紙

【P2-7】
施政方針・当初予算

【P8-9】
ディーニュ・レ・バン姉妹都市提携30周年

【P10-11】
台湾東部沖地震救援金 他

【P12-13】
まちの話題

【P14-17】
保険案内板・まちのお知らせ

【P18-19】
かまいし春まつり・釜石さくら祭り 他

【P20】
市民百景

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2024040900029/
釜石市

釜石市

釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
sakuramankai202405

桜の宝庫・釜石 各所で*満開* 昼も夜も花見客繰り出す 写真、ピクニック…春の楽しみ存分に

満開の桜の下で花見を楽しむ親子=13日、上中島町

満開の桜の下で花見を楽しむ親子=13日、上中島町

 
 釜石市内の桜は13日までに多くの場所で満開となり、天候に恵まれた13、14の両日は各地で花見を楽しむ人たちの姿が見られた。新型コロナウイルス感染症の5類移行後、初の花見シーズンを迎え、桜の木の下で弁当などを広げ飲食を楽しむ光景も戻ってきた。桜とともにツバキやモクレン、レンギョウなどが見られる場所もあり、花色の競演も春の風景を一層引き立てている。山あいの地域ではこれから満開となる桜もあり、釜石の桜シーズンはまだまだ続く。
 
 上中島町の日本製鉄多目的グラウンド広場の桜は薄桃色の花が美しい並木が市道沿いに連なる。13日は家族連れが訪れ、レジャーシートを広げて昼食を楽しんだり、ボール遊びをする姿が見られた。妹、母と鈴子広場(公園)で遊んだ後、昼食を食べようと同所に立ち寄った甲子町の佐藤愛奈ちゃん(5)は「桜はお花がきれいだから大好き。(見られて)うれしい」とにっこり。母手製の弁当を頬張り、春の休日を楽しんだ。
 
青空とのコントラストも美しい桜並木=日本製鉄多目的グラウンド広場

青空とのコントラストも美しい桜並木=日本製鉄多目的グラウンド広場

 
「さくら、きれい。お弁当もおいしいよ!」笑顔も満開の子どもたち

「さくら、きれい。お弁当もおいしいよ!」笑顔も満開の子どもたち

 
 11、12日で一気に咲き進み、満開となった小川川下流域の桜並木。13日は見ごろを逃すまいと多くの人が足を運んだ。両岸に木が並ぶ一帯は2つの橋を渡って周回できる絶好の散歩コース。親和橋のたもとでは花を間近で見ることができ、至近距離で撮影する人たちも。近くの多目的広場では子どもたちや若者グループが遊びに興じ、歓声が響いた。
 
今年もボリューム満点の花を咲かせる小川川沿いの桜並木=13日

今年もボリューム満点の花を咲かせる小川川沿いの桜並木=13日

 
 野田町の佐々木彩加さんは4世代家族8人で訪れた。同所には毎年足を運んでいて、「遠くに行かなくても桜を楽しめる場所があるのはとてもいい」と笑顔。長男(3)は今春、こども園に入園したばかり。「今年も無事に家族みんなで桜を見られた。毎年ここで撮っている写真を見ると、子どもたちの成長を実感する」と幸せいっぱいの表情を浮かべた。
 
 東日本大震災後、小川川に隣接する桜木町は当時あった旧市民体育館が被災者の避難所となり、多目的広場には仮設住宅が建ち並んだ。毎年変わらず花を咲かせる同所の桜は被災者の傷ついた心を癒やしてきた。日本製鉄釜石山神社や市民弓道場近くの桜は2014年から昨年まで運行したSL銀河の撮影スポットにもなり、多くの鉄道ファンでにぎわった。同所には毎年、市内の老人福祉施設の利用者らも訪れており、13日も職員らと花見を楽しむ姿が見られた。
 
美しい桜風景に癒やされながら川沿いを散策。桜木町は一日中、花見客でにぎわった

美しい桜風景に癒やされながら川沿いを散策。桜木町は一日中、花見客でにぎわった

 
多目的広場で遊んだり、木の下で飲食を楽しんだりするグループも

多目的広場で遊んだり、木の下で飲食を楽しんだりするグループも

 
 桜が咲くこの時期は鉄道写真愛好家にとっても心躍る季節。鈴子町、釜石駅近くの線路沿いの桜並木は今年も美しい花を咲かせ、JR東日本、三陸鉄道の車両を出迎える。13日は開業40周年を迎えた三陸鉄道が発売した「400円で全線乗り降り自由」の記念切符の利用日。乗客らは沿線の桜風景とともに鉄道旅を満喫した。
 
 山田町の及川祥さん(31)は同切符を利用し、宮古から釜石へ。釜石駅で下車し、昼ごろ、桜並木の下で同駅を発着する2社の車両撮影にいそしんだ。「元々、家の前をJR山田線(現三陸鉄道リアス線)が通っていて、鉄道には昔からなじみがあった。列車の写真を撮り始めたのは10年ぐらい前から。1年の中でも桜の季節は撮影が楽しい」と顔をほころばせる。「この後、ひなび(JR新観光列車)も撮って帰ります。今年は三鉄40周年の企画が目白押しなので期待している」と話した。
 
満開の桜がお出迎え!釜石駅に到着するJR車両

満開の桜がお出迎え!釜石駅に到着するJR車両

 
開業40周年の三陸鉄道は13日限定、400円で乗り放題切符を事前販売。乗客は車窓から見る桜も満喫

開業40周年の三陸鉄道は13日限定、400円で乗り放題切符を事前販売。乗客は車窓から見る桜も満喫

 
 中心市街地を一望できる大町の薬師公園は、昼とともに夜も桜を楽しめる人気スポット。今年も釜石観光物産協会などによる夜間のちょうちん点灯が行われていて、昼とは違った風景を広げている。坂道の遊歩道沿いにはシダレヒガンザクラなどが咲き誇り、頂上広場のソメイヨシノも少し遅れて満開を迎えた。13日は家族連れやカップルが次々に訪れ、ちょうちんや街路灯で浮かび上がる夜桜に見とれた。
 
ちょうちんの明かりで夜桜も堪能できる「薬師公園桜まつり」

ちょうちんの明かりで夜桜も堪能できる「薬師公園桜まつり」

 
 大渡町の女子高校生(16)は下から見える遊歩道のちょうちんの明かりに誘われて足を運んだ。「夜の桜は初めて見た。昼とは違い、幻想的な雰囲気。まるで映画の世界みたい」と感激。スマホカメラでたくさん写真を撮り、「釜石ではなかなか見られない風景。写真は家族に見せたい」と声を弾ませた。ちょうちんの点灯は日没から午後9時までで、21日まで実施。
 
坂道の遊歩道を彩る桜は複数種。ツバキの花、三日月ともコラボ(写真左)

坂道の遊歩道を彩る桜は複数種。ツバキの花、三日月ともコラボ(写真左)

 
訪れた人たちは幻想的な景色にうっとり。写真も撮ってお土産に

訪れた人たちは幻想的な景色にうっとり。写真も撮ってお土産に

 
桜の木々の合間からは市街地の夜景も…。震災復興で建った建物などで多くの明かりが見える

桜の木々の合間からは市街地の夜景も…。震災復興で建った建物などで多くの明かりが見える

 
 市内ではこのほか、小川川上流の日向ダムで管理事務所周辺の桜が満開。ダムの上流、船着き場付近は複数種の桜が咲き始め、これからシダレザクラなどが開花する見込み。橋野町の世界遺産「橋野鉄鉱山」周辺のソメイヨシノやヤマザクラは14日時点でつぼみ状態で開花はこれから。同所では高炉場跡の石割桜、道路沿いの八重桜の開花と5月にかけて桜シーズンが続く。
 
日向ダム周辺にも多くの桜が生える。ダム上流部にはこれから開花する花も

日向ダム周辺にも多くの桜が生える。ダム上流部にはこれから開花する花も

sakura2024_08

桜前線釜石に 見ごろ予想は今週末 「上栗林のサクラ」ライトアップ&各所の開花状況

青空に映え、美しく咲き誇る釜石市内の桜。写真左下はライトアップされた市指定文化財「上栗林のサクラ」=10日

青空に映え、美しく咲き誇る釜石市内の桜。写真左下はライトアップされた市指定文化財「上栗林のサクラ」=10日

 
 日本の春の象徴、桜の季節が今年もやってきた-。釜石市内の桜は最高気温が20度を超えた7、8の両日で一気に咲き進み、10日時点で5~9分咲きの所が多数。青空が広がった10日は並木道を散歩したり、美しく咲き誇る花をカメラに収めたりする人の姿が各所で見られた。市指定文化財(天然記念物)の「上栗林のサクラ」は7日から夜のライトアップを開始。幻想的な花風景を広げている。
 
 甲子町松倉の甲子川沿いの市道はエドヒガン、ソメイヨシノ、シダレザクラなどが混在する市内有数の並木道。今年は早咲きが4日ごろ開花し、10日にはほぼ満開状態になった。機を逃すまいとカメラを向ける人、車両で通行する人などそれぞれの楽しみ方で美しい光景を目に焼き付けた。
 
甲子川沿い、野田町西端から甲子町松倉まで連なる桜並木。古くから市民に愛される桜スポット

甲子川沿い、野田町西端から甲子町松倉まで連なる桜並木。古くから市民に愛される桜スポット

 
10日午前はわずかにつぼみが残る木もあったがほぼ満開

10日午前はわずかにつぼみが残る木もあったがほぼ満開

 
 同所では6日、かまいし環境ネットワーク(加藤直子代表)主催の「お花見クリーンアップ」が行われた。市民ら約80人が参加し、並木の下や土手、河川敷のごみを拾い集めた。前日には、地区内の久保沢川で工事中の佐野建設(甲子町)がボランティアで同河川を清掃。両日の活動で計約150キロのごみが回収された。31年前、自主的に清掃を始め、同所の環境を見続けてきた加藤代表は「ごみの量は少なくなってきてはいるが、相変わらずポイ捨てが後を絶たない」と話し、通行者のモラル向上を願う。一方地元では、この一斉清掃以外にも個々でごみを拾い集める住民が増えており、着実な環境保護意識の高まりも感じさせる。
 
甲子川沿いの桜並木周辺で市民らが行った「お花見クリーンアップ」=6日

甲子川沿いの桜並木周辺で市民らが行った「お花見クリーンアップ」=6日

 
約1時間の清掃で空き缶、ペットボトル、ビニール片などさまざまなごみを拾い集めた

約1時間の清掃で空き缶、ペットボトル、ビニール片などさまざまなごみを拾い集めた

 
 大渡町の大渡橋たもと、橋詰広場の一本桜も10日時点でほぼ満開。橋上市場があった時代の名残を見せる桜は、2011年の東日本大震災の津波にも耐え、毎年花を咲かせている。10日午後には市内の水産加工会社で働くインドネシア出身の女性3人が休暇を使って訪れ、美しい花姿を楽しんだ。釜石に来て1~2年目という3人。来日して初めて目にした日本の桜に「すばらしい。きれいな花を見るとうれしくなる」と笑顔を広げ、しきりにスマホカメラのシャッターを切った。撮った写真は母国の家族に送るといい、「他の場所の桜も見てみたい」と期待を膨らませた。
 
大渡町の橋詰広場の桜もきれいに咲きそろう=10日午後

大渡町の橋詰広場の桜もきれいに咲きそろう=10日午後

 
日本の桜に感動し、撮影の手が止まらないインドネシア出身女性

日本の桜に感動し、撮影の手が止まらないインドネシア出身女性

 
 市内最大とされる栗林町上栗林の一本桜は、気温が20度を超えた7日から多くの花が開花。昨年より5日遅いものの、7、8連日の20度超えで次々に花開き、雨上がりの10日は全体がほぼ咲きそろった。地元住民組織、上栗林振興会(三浦栄太郎会長、28世帯)が行うライトアップは今年で12年目。2色のLED照明で浮かび上がる夜桜は毎年足を運ぶファンも多く、連日、家族連れなどが訪れている。
 
ライトアップ中の「上栗林のサクラ」。今年は県道側に丸太椅子が設置され、座っても観賞できる

ライトアップ中の「上栗林のサクラ」。今年は県道側に丸太椅子が設置され、座っても観賞できる

 
 樹齢400年以上と推定される同桜はエドヒガン種。地元では「種蒔(たねまき)桜」と呼ばれ、開花は農事の目安とされてきた。2007年に市の文化財に指定されている。古木ながら今も成長を続けているとみられ、花勢も衰えてはいない。地元住民によると、今年は花が小ぶりだというが、枝いっぱいに花をつける姿は例年と変わらない。訪れた人たちは見る角度によって違った風情を醸す桜を撮影しながら、春の夜のひとときを楽しんだ。
 
「どこから見てもきれい」。来場者を魅了する一本桜。下から見上げたり、離れた所から観賞したり楽しみ方いろいろ

「どこから見てもきれい」。来場者を魅了する一本桜。下から見上げたり、離れた所から観賞したり楽しみ方いろいろ

 
晴れた日には星空とも競演!周辺を移動時は足元が暗いので十分注意を

晴れた日には星空とも競演!周辺を移動時は足元が暗いので十分注意を

 
 三浦会長(73)は「新型コロナ感染症の余波もあり、道路沿いへの看板掲示はまだ控えている状態だが、一般の方やキッチンカー出店希望者から問い合わせをいただくことも。口コミでの広がりはあり、逆に効果的なよう。来年以降は開花時期に合わせた音楽イベントも企画できれば」と話す。ライトアップは14日までの実施は確実で、以降は花の散り具合により判断する。点灯は午後6時半から同9時半まで。
 
 釜石市内は13、14日も気温が平年より高めに推移する見込みで、桜が満開となる所もさらに増えそう。ここからは10日時点の市内の桜の開花状況を写真で紹介する。
 
 【野田中央公園】住宅地側のヤマザクラは満開。風が吹くと花びらがちらほら。甲子川側の並木はもうすぐ満開

【野田中央公園】住宅地側のヤマザクラは満開。風が吹くと花びらがちらほら。甲子川側の並木はもうすぐ満開

 
【定内公園】「今年は一斉に咲いた感じ。花が特にもきれい」と近所の女性(80)。川をはさんだ小佐野町、せいてつ記念病院敷地の桜も咲き誇る

【定内公園】「今年は一斉に咲いた感じ。花が特にもきれい」と近所の女性(80)。川をはさんだ小佐野町、せいてつ記念病院敷地の桜も咲き誇る

 
【小川川下流域】両岸のソメイヨシノの枝が川に垂れる人気スポット。散歩する80代女性は「5分咲きかな。老木ながら毎年こんなに咲くのには驚き。今週末には満開になるのでは」と予想

 【小川川下流域】両岸のソメイヨシノの枝が川に垂れる人気スポット。散歩する80代女性は「5分咲きかな。老木ながら毎年こんなに咲くのには驚き。今週末には満開になるのでは」と予想

 
【唐丹町本郷】1933(昭和8)年の三陸大津波からの復興を願って植樹された。道路の両側に立ち並び、桜のトンネルを形成。10日は9分咲き

【唐丹町本郷】1933(昭和8)年の三陸大津波からの復興を願って植樹された。道路の両側に立ち並び、桜のトンネルを形成。10日は9分咲き

kaigaten03

身近な風物 独自の感性で グループ名新たに再出発 「釜石絵画クラブ」作品展

釜石絵画クラブの会員たちが力作を並べた作品展

釜石絵画クラブの会員たちが力作を並べた作品展

  
 昨年6月に改名し新たなスタートを切った釜石市の絵画愛好者グループ「釜石絵画クラブ」の作品展が5~7日に大町の市民ホールTETTOで開かれた。全会員13人と講師1人が、この1年間に仕上げた作品を中心に84点を展示。転機を力に会員たちは創作意欲を高めており、「継続」という共通目標に向かって共に歴史をつなぐ。
 
お気に入りの作品の前で写真撮影を楽しむ姿もあった

お気に入りの作品の前で写真撮影を楽しむ姿もあった

 
 市の社会教育講座「市民絵画教室」として1978年度にスタートした同クラブ。講座は3年間で終了したが、継続を希望する市民らによって自主活動グループに移行し、教室の名を継いで学習を続けた。作品発表やスケッチ旅行なども行い、活発に活動。当初は夜間に開かれ、多い時には子どもや社会人、高齢者まで80人近くが参加した。近年は会員が十数人で、平均年齢も少しずつ高くなり、昼間の活動に変更。現在は60~90代のメンバーが月に2回、隔週水曜日に集う。
 
 昨年の展示会後、会員の高齢化もあって“解散状態”になりかけた。そんな時、市の講座時代から講師を続ける菊池政時さんが「会の名前を変えてスタートしてみたら」と提案。2011年の展示会は会期中に東日本大震災が発生して作品が津波にのまれたが、負けじと翌年には活動を再開させた。そんな「伝統ある会を維持したい」という会員の思いは強く、「釜石絵画クラブ」として再出発を決めた。
 
1年間の成果を見せる「わたくしたちの絵画展」

1年間の成果を見せる「わたくしたちの絵画展」

 
 年一度の作品展「わたくしたちの絵画展」は名前を変えず継続し、今回で43回目を数える。市内の海景や街並み、庭先を彩る植物、自画像など身近な生活の一部をテーマに独自の感性で描いた作品が目立った。画材は油彩、水彩、アクリル、パステル、色鉛筆などさまざま。他グループで活動している人など絵画に親しむ仲間が3人増え、新たな彩りも加わった。
 
釜石港など身近な海を題材にした作品も並んだ

釜石港など身近な海を題材にした作品も並んだ

 
大型の作品をじっくりと見入る来場者

大型の作品をじっくりと見入る来場者

 
 改名に合わせ、会長に就任した小田島ヨシ子さん(82)は、植物を題材にした油彩画など7点を並べた。「朝顔」は、きれいに花開いてくれた喜びを込めた一枚。自宅で育てる朝顔はここ数年、シカの食害に遭っていたといい、「本当にきれいに咲いた。新たなスタートを後押ししてくれているよう」と頬を緩めた。創作活動は苦労もあるというが、何もかも忘れて没頭できる時間や作品として仕上がった時の達成感、見てもらえるうれしさが「たまらない」。出歩くと、いつの間にか目線は画題探しになり、「描きたい気持ちが膨らむ。今、描けることが一番の幸せ」と意欲は衰えない。
 
絵を描く仲間との触れ合いを楽しむ小田島ヨシ子さんと作品「朝顔」

絵を描く仲間との触れ合いを楽しむ小田島ヨシ子さんと作品「朝顔」

 
 新生グループは、再来年の45回展に向け気持ちを高める。これまで会に名を連ねた人や転居して遠方で暮らす人たちの作品も集めて展示しようと計画中。小田島さんは「同じ目標に向かって盛り上がっている。楽しみにしてほしい」と腕をまくった。

santetsu40nen01

走り続け40年…これからも!三陸鉄道 記念列車、釜石へ 「ありがとう」思い乗せ

釜石駅に到着した三陸鉄道の開業40周年記念列車

釜石駅に到着した三陸鉄道の開業40周年記念列車

 
 岩手県沿岸を走る三陸鉄道(本社・宮古市、石川義晃社長)は1日、開業40周年を迎えた。「ありがとう」との文字を配したヘッドマークを付けた記念列車を運行。釜石市鈴子町の釜石駅では関係者が大漁旗を振って歓迎した。東日本大震災など幾多の苦難を乗り越え、地域の足として親しまれている“三鉄”。記念イヤーに合わせ多彩な企画を用意していて、「これからも走り続ける」との思いを発信する。
 
開業40年を記念した上り列車。トリコロールカラーの車両が甲子川にかかる橋りょうを進む風景は開業時から変わらない

開業40年を記念した上り列車。トリコロールカラーの車両が甲子川にかかる橋りょうを進む風景は開業時から変わらない

 
 記念列車は三鉄カラーの赤青白のトリコロール車両(2両編成)で、上下線で運行した。正午頃、大船渡・盛駅発の下り列車が釜石駅に到着。ホームでは市職員ら約10人が出迎え、乗客に地元の特産品「仙人秘水」や観光パンフレットなどを手渡した。
 
 電車や新幹線といった鉄道車両が好きな及川朝陽君(10)は「三鉄40周年、どうしても乗らなきゃ」と盛岡市から、宮古市に住む祖母のもとへやって来て、一緒に乗車。「車体のカラーリングがかっこいい。海の景色もいいし、いろんな人と話もできて楽しい」と旅を満喫した。祖母の小林みきえさん(70)は普段から三鉄を利用。「交通の足で、なくなると困る。ずっと走ってほしい」と望んだ。
 
釜石駅ホームで下り列車を歓迎する関係者。大漁旗を振ったり利用客に土産品をプレゼントしたり

釜石駅ホームで下り列車を歓迎する関係者。大漁旗を振ったり利用客に土産品をプレゼントしたり

 
唐丹駅に到着した下り列車。乗客は記念の三鉄旅を楽しむ

唐丹駅に到着した下り列車。乗客は記念の三鉄旅を楽しむ

 
 三陸鉄道は1984(昭和59)年4月1日、県や沿線自治体が出資する国内初の第三セクター路線として開業。当時は南リアス線(盛―釜石、36.6キロ)、北リアス線(宮古―久慈、71.0キロ)に分かれて運行していた。2011(平成23)年3月の震災では路線や駅舎が流失するなど全線で運行が不能となったが、わずか5日後に北リアス線の一部区間で無料の「復興支援列車」を運行。南リアス線も含め復旧を進め、14(同26)年4月に全線復旧した。
 
 同じように震災で不通となったJR山田線釜石―宮古間(55.4キロ)は路線存続が危ぶまれたが、県や沿線自治体の強い要望を受け、JR東日本が鉄道を復旧。19(同31)年3月に三鉄に移管され、現在の形、大船渡・盛駅と久慈駅をつなぐ総延長163キロの三陸鉄道リアス線となった。
 
JRから移管された路線を走行する下り列車。震災で被災した鵜住居町を活気づける

JRから移管された路線を走行する下り列車。震災で被災した鵜住居町を活気づける

 
 その約半年後、三鉄は再び逆境に見舞われた。19(令和元)年10月の台風19号で鉄路の約7割が不通に。翌20(同2)年3月に復旧したが、ほぼ同時に新型コロナウイルス禍が影を落とし、苦しい状況が続いた。それでも、被災地域を活気づける「復興のシンボル」として工夫を凝らした企画を打ち出し、観光振興へ力を注いでいる。
 
 釜石駅の山蔭康明駅長(59)は「震災や台風、コロナ禍と、この十数年は苦労が多かった。地域や乗客の支えがあって、この日を迎えられた」と感慨もひとしおだ。「40年、よくやったな」。入社1期生で、三鉄が歩んだ歴史は自身の歩みとも重なる。先行きが見えない時期も、利用客の「ありがとう」という言葉が働く意欲につながった。記念イヤーは、感謝を込めた企画がめじろ押し。「必要としてくれる人がいる。マイレール意識を持ってもらえるよう、そして地域外のたくさんの人が乗って楽しめる鉄道を目指し、これからも走り続ける。沿岸全体がにぎやかになるように」と未来を思う、その表情は明るかった。
 
「ありがとう!」などの言葉が入る横断幕と釜石駅の山蔭康明駅長

「ありがとう!」などの言葉が入る横断幕と釜石駅の山蔭康明駅長

 
「これからも…」。釜石の街なかを三鉄車両は走り続ける

「これからも…」。釜石の街なかを三鉄車両は走り続ける

 
 記念事業として記念切符や硬券セット、御朱印の鉄道版「鉄印」の販売を始めた。13日には宮古市内で記念式典を予定。企画の詳細は公式ホームページで確認できる。

shinnendo01

新年度スタート!釜石市長「行政改革元年」 辞令受け取り、新採用職員「前向きに」

辞令の交付を受け宣誓する釜石市の新採用職員ら

辞令の交付を受け宣誓する釜石市の新採用職員ら

  
 新年度を迎えた1日、釜石市役所では新規採用者らへの辞令交付や小野共市長の訓示があった。東日本大震災から13年が経過したまちは人口減少や少子高齢化に歯止めがかからず、人口が3万人を割り込むなど転換期を迎える中での船出。財政健全化を図る一方、市民サービスの利便性は維持、向上させるといった行政運営の実現が求められる。「現状を受け入れ、前を向いていけることを」。担い手に加わった若者たちは「新しい時代」へ意欲を示した。
  
 本年度は新たに9人が仲間入り。それぞれ緊張の面持ちで小野市長から辞令交付を受けた。新職員を代表して鈴木生真さん(22)が宣誓。全員で声をそろえ、「市民全体の奉仕者として誠実かつ公正に職務を遂行します」と決意を込めた。
  
釜石市役所議場で行われた新規採用者の辞令交付式

釜石市役所議場で行われた新規採用者の辞令交付式

  
 鈴木さんは甲子町出身で、「生まれ育った地域だからこそ問題が分かり、解決のために働く姿が想像できた」と公務員を選択。少子高齢化を止めるのは難しいとした上で、「受け入れつつ前を向き、市を存続させていく政策を考えていきたい」と未来を見つめる。生活環境課から市職員としての歩みをスタート。「市民に信頼される仕事をしたい」と背筋を伸ばした。
  
 「市政に共感した」。何のゆかりもない釜石で社会人生活をスタートさせたのは、群馬県出身の飯塚侑詩朗さん(22)。もともと公務員志望で、下調べをして釜石のまちづくり、海外との交流に興味を持った。面接のため来釜し、滞在した2日間で住みやすさ、自然の豊かさに触れ、移住を決意。携わる業務はまだ分からないが、水産農林課配属で、「なるべく早く仕事に慣れ、市民に寄り添えるようになりたい」とやる気スイッチを入れる。仕事以外で楽しみたいのは、ラグビー観戦。それと、「海なし県」では体験できなかった自然との触れ合いだ。
  
市職員としての一歩を踏み出した若者たち

市職員としての一歩を踏み出した若者たち

  
 辞令交付を終え、小野市長は幹部職員約40人を前に訓示。昨年11月の市長選で初当選し、市政運営のかじ取りを本格化させる2024年度は「行政改革元年。財政はかなり厳しい状況で、行財政の再建に取り組む。我慢の年になると覚悟してほしい」と理解を求めた。26年春の使用開始を目指し建設工事が始まった新市庁舎への移転を見据え、機構改革による組織のスリム化を進める考え。一方で市民サービスの低下は避けなければならず、業務効率化や効果的な施策実行を目指した人員体制づくりにも取り組むとした。
  
行財政の改革に向けた考えを表明する小野共市長

行財政の改革に向けた考えを表明する小野共市長

  
小野市長の訓示に聞き入り、気を引き締める幹部職員ら

小野市長の訓示に聞き入り、気を引き締める幹部職員ら

  
 職務に臨む姿勢について、小野市長は「市の発展にじかに関わる仕事を担う行政マンとして誇りを持ってほしい」と要望。2年前に発覚した市職員の情報漏洩(ろうえい)事件に触れ、行政運営の大前提となるコンプライアンス(法令や社会規範の順守)の徹底を呼びかけた。また、課題解決には職員一人一人の力が欠かせないとした上で、心身の健康への心がけを強調。「元気よく明るく仕事をしよう」と促した。

kodomoshokudo01

進む食、弾む会話 釜石・甲子地区で「子ども食堂」初開設 市内3カ所目 波及に期待

 「みんなで食べるとおいしいね!」甲子地区で初めて開かれた子ども食堂=正福寺幼稚園

「みんなで食べるとおいしいね!」甲子地区で初めて開かれた子ども食堂=正福寺幼稚園

 
 子どもの居場所、孤食防止、地域交流の場として各地で開設が進む「子ども食堂」。釜石市内では昨夏から学校の長期休暇に合わせた行事として、地域団体による試行がスタート。同市の女性奉仕団体、国際ソロプチミスト釜石はまぎく(佐々木未知会長、会員14人)は3月31日、初の試みとなる同食堂を甲子町の正福寺幼稚園で開いた。地域の幼児から小学生39人が参加し、遊びと食事で楽しい時間を過ごした。
 
 この日のメニューは子どもたちが好きなカレーライス。会員9人が前日から準備にあたり、約80人分を調理した。食材は地元住民からの寄付金などを利用して購入。米は正福寺が寄付した。ジュースやヨーグルト、帰りのおみやげも市内の事業所などが協賛した。
 
カレーライスの調理にあたる国際ソロプチミスト釜石はまぎくの会員ら

カレーライスの調理にあたる国際ソロプチミスト釜石はまぎくの会員ら

 
 食事の準備が整うまでの間、子どもたちはいろいろな遊びに夢中になった。折り紙、輪投げのほか、パラリンピック種目にもなったヨーロッパ発祥のスポーツ「ボッチャ」も体験した。大型絵本の読み聞かせもあった。
 
正福寺幼稚園内のホールが会場。大勢の子どもたちが集まった

正福寺幼稚園内のホールが会場。大勢の子どもたちが集まった

 
折り紙を楽しむ子ども。作品に顔を描き入れたり自由な発想で

折り紙を楽しむ子ども。作品に顔を描き入れたり自由な発想で

 
市内でも普及が進む「ボッチャ」に挑戦(写真上、左下)。大型絵本の読み聞かせも(右下)

市内でも普及が進む「ボッチャ」に挑戦(写真上、左下)。大型絵本の読み聞かせも(右下)

 
 午前11時半すぎ、ホール内にテーブルを並べて着席すると佐々木会長(54)があいさつ。子ども食堂開設の経緯などを説明し、みんなで「いただきます」をして昼食となった。子どもたちは「おいしい」と笑顔を輝かせながらカレーを頬張り、おかわりする子も多数。ご飯が足りなくなるほど好評だった。
 
ソロプチミストの会員らは配膳に大忙し。運営の大人の分も含め約80人分を用意した

ソロプチミストの会員らは配膳に大忙し。運営の大人の分も含め約80人分を用意した

 
みんなで「いただきます」のあいさつ。作ってくれた人に感謝して…

みんなで「いただきます」のあいさつ。作ってくれた人に感謝して…

 
 菊池芽生さん(甲子小3年)は「カレーライス大好き。うまい」とにっこり。おかわりもして存分に味わった。初めてのボッチャも「楽しかった」と話し、「またやってほしい。次も来る」と気に入った様子。母未来さん(37)は「近所には同年代の子が少ない。休日に多くの子どもたちと同じ時間を過ごせるのは貴重。食欲も増しているよう」と喜んだ。
 
 1年男児の母親(35)は「子どもだけだと不安もあったので、親も参加できるのはありがたい。少し緊張もあるようだが楽しそう」とわが子の様子に目を細めた。子ども食堂については「いろいろな人に会っておしゃべりできる場があるのはすごくいいこと。親以外にもつながりを持ち、一人ぼっちにならないことが大事」と話した。
 
春休み中の子どもたちは久しぶりの友だちとの食事。楽しい雰囲気に食欲も倍増!?

春休み中の子どもたちは久しぶりの友だちとの食事。楽しい雰囲気に食欲も倍増!?

 
 ソロプチミスト釜石は同市の子ども食堂の実情を聞き、必要性を実感。「まずは一歩を踏み出そう」と、未開催だった甲子地区を対象に選んだ。甲子小を通じてチラシを配り、春休み中の子どもたちに参加を呼び掛けた。申し込みは予想以上。市子ども課や地元の民生委員・児童委員、事業所などに協力してもらい、初運営に挑んだ。「子どもたちも喜んでくれて感激。反響は思った以上」と佐々木会長。長く続けていくには地域母体への運営移行も必要と考え、「私たちがきっかけづくりをして、地域の人たちが自分たちでできるようになっていけば」と今後を思い描く。
 
 市子ども課によると、同市での子ども食堂の実施は昨年7月、本年1月の小佐野地区(同地区民生委員・児童委員協議会)、3月の平田地区(平田いきいきサークル)に続き、甲子地区(国際ソロプチミスト釜石はまぎく)が3カ所目(かっこは実施主体)。小佐野地区が一つのモデルとなり、徐々に広がり始めている。村山明子子ども課長は「釜石の場合は地域の顔が見える関係づくりに主眼を置く。顔見知りになれば見守りも可能。常設は難しいが、単発でも無理なく続けることが大事」と話す。

chiikiokoshi01

“釜石を住みたいまちに”地域おこし協力隊 初の合同活動発表 住民と協働で課題解決の一歩に

「地域おこし協力隊」活動発表会=3月27日、釜石PIT

「地域おこし協力隊」活動発表会=3月27日、釜石PIT

 
 釜石市で活動する地域おこし協力隊(8人)の活動発表会が3月27日、同市大町の釜石PITで開かれた。各分野で活動する隊員が一堂に集まり、市民向けに発表会を開くのは今回が初めて。同協力隊という名前は知りつつも、隊員の思いや具体的活動に触れる機会はこれまで少なかっただけに、来場者も興味津々。隊員らは移住のきっかけや現在の取り組み、今後の展望などを熱く語り、住民とのさらなる協働で、地域課題解決や魅力発信につなげていくことを誓った。
 
 同市では現在、20~50代の隊員8人(担い手型5、行政型3)が活動。農水産、スポーツ、コミュニティー、教育、観光など各分野で、同市に新たな風を吹き込む取り組みを展開する。会では隊員それぞれにブースを設け、1回7分の発表を3ローテーション行い、来場者約40人が興味のあるブースで話を聞いた。
 
 教育魅力化コーディネーターとして活動する岡田稜平さん(26)=2023年2月着任、栃木県出身=は、市内2高校でキャリア支援、課題研究のサポートなどを行う。岩手県立大在学時、地元学生の「岩手は何もない」という言葉に違和感を覚えた岡田さん。「不完全だからこそ、いろいろ考えてアプローチできるフィールドがある。高校生に問題解決の成功体験をさせたい」と願う。今後は自身の強みであるプログラミングの技術を生かし、「生徒たちとまちの課題を解決するシステムを作りたい」と目標を掲げる。25年の大学入学共通テストから「情報Ⅰ」の出題が加わることもあり、生徒の学びも後押ししたい考え。
 
高校と地域をつなぐ活動に取り組む岡田稜平さん。情報系の知識、技術を発揮

高校と地域をつなぐ活動に取り組む岡田稜平さん。情報系の知識、技術を発揮

 
 橋野町青ノ木に居住し、「トマト系ユーチューバ―」として同地の暮らしを発信しているのは三科宏輔さん(28)=22年4月着任、神奈川県出身=。同市の地域振興作物「すずこま」という品種のトマトを無農薬で栽培し、ジュースにして販売。農閑期には自宅の古民家の改修を進めていて、民泊や企業研修の受け入れを目指す。志高くいきいきと暮らす釜石人に魅せられ、「自分もここで人生を全うしたい」と会社員から転身。大切にする「暇(いとま)」という概念を「自己の充実に充てることができる最もぜいたくな時間」と捉え、心豊かな暮らしを提案する。自身の活動や日常を定期配信。今後は栽培トマトの新商品開発や体験プログラムの構築にも力を入れたいとしている。
 
大好きなトマトの栽培から商品化までを手掛ける三科宏輔さん。活動はユーチューブで配信

大好きなトマトの栽培から商品化までを手掛ける三科宏輔さん。活動はユーチューブで配信

 
 農園芸クリエーターとして活動する小松園さん(54)=22年8月着任、宮城県出身=は甲子町を拠点に、地域資源を活用した草木染めの研究、商品開発を進める。編み物が趣味で、繊維の知識もあったことを生かし、地元素材を使った糸の染色を行う。色を出す染料は柿の皮、色を定着させる媒染液には鉄鉱石を用いる。“すずこま”や植物のアカネによる染色も。現在、商品販売に向け準備を進めているところで、市民向けの体験会も開催している。
 
釜石の風土が生んだ素材で草木染めの商品開発を行う小松園さん

釜石の風土が生んだ素材で草木染めの商品開発を行う小松園さん

 
 観光地域づくりコーディネーターの横木寛裕さん(23)=23年4月着任、新潟県出身=は首都圏の大学卒業と同時に釜石へ。移住フェアで同市職員と出会ったのがきっかけだった。市商工観光課職員として活動する行政型隊員。市の観光パンフレット作成などを手掛ける。発表会について「予想以上の来場者。新たなつながりを生み、認知にも効果的だった」と喜ぶ。観光客にみこしの担ぎ手になってもらう、漁業体験者=作業の貴重な人材など(人手不足解消)、観光による各種課題解決を目指す。
 
観光で地域課題の解決を目指す横木寛裕さん

観光で地域課題の解決を目指す横木寛裕さん

 
 発表会に来場した甲子町の内舘靖さん(55)は「隊員が志や問題意識を持って取り組んでいるのが分かった。一堂に集まってコミュニケーションを図れる場もいい」と歓迎。自身も昨年、千葉県からUターンし、地元特産の「甲子柿」や夏野菜の生産を始めたばかり。「思いを同じくする隊員とつながることで、互いのやりたいことの実現、一緒に釜石を盛り上げる手立ても生まれそう」と活動の広がりに期待した。
 
 同市では2017年から「地域おこし協力隊」制度を運用。当初は「起業型(ローカルベンチャー)」でスタートし、20年までに計13人が活動。慶應義塾大との連携で、大学院生による「地域おこし研究員」1人の受け入れも行った。その後、「担い手型(個人事業主)」、「行政型(任期付き職員)」の2種で隊員が活動を続ける。
 
地域おこし協力隊員(前列)と発表会の来場者ら。意見交換しながら交流を深めた

地域おこし協力隊員(前列)と発表会の来場者ら。意見交換しながら交流を深めた

 
 東日本大震災後、釜援隊(復興支援員29人)、地域おこし協力隊(21人)と外部人材のサポートを続ける釜石リージョナルコーディネーター協議会によると、協力隊の任期(最大3年)を終えた後、同市に定住しているのは86%(全国平均80%)。全国平均を上回るものの、経済的自立はやはり課題。発表会の意見交換でも、地域との協働の継続、定住支援の必要性が話題に上った。
 
 現隊員の多くは来年度が任期の最終年度。ラグビーによるまちづくりに取り組む竹中伸明さん(35)=22年11月着任、大阪府出身=は任期後を見据え、「将来的には釜石での活動を望む外部の人の受け皿や、進学などで一旦地元を離れた人もまた帰ってこられる仕組みづくりをしていきたい」と、同市に残ってまちづくりの一翼を担うことを希望する。
 
 今回の発表会は、自分たちのこれまでの活動を総括し世話になった人たちに報告するとともに、釜石のこれからを来場者と共に考え、アクションを起こすきっかけにと隊員らが自ら企画した。