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養殖5季目・釜石はまゆりサクラマス 水揚げ開始 試食会も「サイズ上々、脂のり良し」

釜石湾で養殖され水揚げされたサクラマス

釜石湾で養殖され水揚げされたサクラマス

 
 釜石市で養殖サクラマスの水揚げが始まった。今季初の水揚げとなった6月30日は、釜石湾に設置したいけすから体長約50~60センチ、重さ2~2.5キロほどに育った約23トンが同市魚河岸の市魚市場に入荷した。2020年に試験養殖が始まり、22年に地元の水産会社・泉澤水産(泉澤宏代表取締役)が事業化。5季目の今年は7月中旬ごろまでの予定で、昨季比40%増しの240トンが見込まれる。
 
今季初めて水揚げされた釜石はまゆりサクラマス

今季初めて水揚げされた釜石はまゆりサクラマス

 
 秋サケの不漁が続く三陸沿岸では、その穴を埋めようとサーモン養殖が広がっている。ギンザケやトラウトサーモンが多いが、釜石では「ママス」の名で親しまれるサクラマスに着目。養殖事業を手がける同社は市や岩手大などの協力を得て「釜石はまゆりサクラマス」としてブランド化に取り組んでいる。
 
 “初もの”を積み込んだ漁船は午前5時ごろ魚市場に入港。同社の社員16人が水揚げや選別作業に当たった。作業の効率化に向け、今季から魚を重量ごとに自動選別する機械を導入。サイズをそろえ、ばらつきなく出荷できる体制につなげている。この日は、1キロ当たり950円ほどで取引。主に地元加工場を経て県内外のスーパーやすし店に流通する。
 
水揚げ、選別作業を進める泉澤水産の社員

水揚げ、選別作業を進める泉澤水産の社員

 
自動重量選別機を使って仕分けは効率的に

自動重量選別機を使って仕分けは効率的に

 
規格(重量)をそろえ、ばらつきをなくし出荷へ

規格(重量)をそろえ、ばらつきをなくし出荷へ

 
 今季は、水温などを考慮しながら15回の水揚げを予定。同社によると、餌やりなどのノウハウが定着し、魚の大きさが安定。種苗に占める生産量の割合「歩留まり」もこれまでの5割から7割ほどになっているという。また、環境負荷の小さい養殖業に与えられる国際認証(ASC)を取得しており、水産物の付加価値を高める取り組みにも力を入れる。
 
 30日は試食会も開かれ、関係者らが刺し身や塩焼きで味を確かめた。泉澤代表取締役は「脂のりが良く、期待通りの出来に仕上がった」とアピール。将来的に年間300トンを目指すとし、「地元に魚を安定供給するのが我々の仕事。地元での消費を多くし、加工品づくりにつながる形が望ましい。日本固有の種として全国に売り出すため、販路の幅も拡大したい」と意気込む。
 
水揚げ後に開かれた養殖サクラマスを使った刺し身の試食会

水揚げ後に開かれた養殖サクラマスを使った刺し身の試食会

 
 ブランド化に向けたプロモーション活動も産学官一体で進める。地元の味としての定着やファンづくりを狙いに、市内飲食店でサクラマスを味わえるフェアを開催したり、学校給食でも提供したり。他の養殖サーモンとの差別化を図り、希少性を生かし認知度向上や商品開発などを続けていく。

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新しい自分へ 釜石・佐藤光子さん ビューティージャパン東北大会(7/12)に挑戦

ビューティージャパン東北大会に出場する佐藤光子さん

ビューティージャパン東北大会に出場する佐藤光子さん

 
 女性の総合的な美しさを重視したコンテスト「ビューティージャパン2025」に釜石市から挑戦する佐藤光子さん(39)が7月12日、宮城県仙台市で開催される東北大会に出場する。「新たな挑戦で自分に自信を持ちたい」とコンテストに応募。約半年間、自分と向き合い、外見や内面を磨く努力を重ねてきた佐藤さんは、「東北大会でも自分の思いをしっかり伝えたい」と意気込む。同市からの同大会出場は初とみられる。
 
 コンテストは、社会で活躍する女性を発掘、支援することを目的に2019年に創設された。一般社団法人ビューティージャパンコンソーシアムが運営。全国各地で地方大会を開催し、選ばれた人たちが全国大会に出場する。東北では北と南の2ブロックで行う選考会後、通過者が東北大会に進出する。佐藤さんは3月29日に盛岡市で開かれた北東北大会通過者8人の一人。
 
 大会審査は3分間のスピーチとランウェイでのウオーキング。佐藤さんは北東北大会で設定された「私の思い」というテーマのスピーチで「自分を大事にすること、さらには他人も大事にし、その循環でより良い関係を築きたい」との願いを発表した。緊張しながらも自分の気持ちを精いっぱい言葉に乗せたという。
 
月29日に県公会堂で開催された北東北大会でスピーチする佐藤光子さん(写真:本人提供)

3月29日に県公会堂で開催された北東北大会でスピーチする佐藤光子さん(写真:本人提供)

 
 佐藤さんは昨年の同大会に知人が出場した際、会場に足を運んだ。「皆さん、すごくキラキラ輝いて見え、すてきだった。自分も(立ってみたい)…」。元々、引っ込み思案で人前に出るのは苦手だったが、以前から「新しいことに挑戦してみたい」との強い思いもあり一念発起。大会への挑戦を決めた。スピーチの練習をする中で、自分と向き合う大切さを実感。日々の生活でも「前向きになれた」自分がいるという。
 
 佐藤さんは釜石市出身。地元高校卒業後、看護系の大学に進学した。帰郷し、現在は市内の病院で看護師として働く。プライベートでは、ヨガ講師発案の手帳の使い方を広める「CITTA(チッタ)手帳アドバイザー」として活動。アロマテラピーや手芸が趣味で、演劇も好きだという。
 
東北大会に向けての情報発信など事前の取り組みも評価対象だという

東北大会に向けての情報発信など事前の取り組みも評価対象だという

 
 東北大会進出が決まった時は「頑張ってきて良かった。大会を目指して自分なりに努力してきたことが報われた」と、夢をかなえた喜びでいっぱいになった。決定後は東北大会に向け、さらに努力を重ねる日々。仙台市で行われる勉強会に出向き、専門家から話し方やメーク、ウオーキングなどの指導を受けている。
 
 東北大会のスピーチのテーマは「私の未来」。長く精神科で働いてきた経験から、「病院で働く人たちの心の健康を支えていけたら」と思い描いており、その気持ちを込めたい考え。大会に出ることを決めてから家族も応援してくれている。「周りに感謝できる人になりたい…」。自身の人間性を高めることも目標に掲げる。
 
小野共釜石市長に東北大会出場を報告する佐藤さん。夫弘樹さん(右)と=18日、市役所

小野共釜石市長に東北大会出場を報告する佐藤さん。夫弘樹さん(右)と=18日、市役所

 
 佐藤さんは18日、夫弘樹さんとともに市役所を訪問。小野共市長に東北大会出場を報告した。出場者を紹介する公式ガイドブックを目にした小野市長は「仕事をしながらやるのは大変ですよね」と気遣い、大会の様子などを質問。「釜石を代表して戦うという側面もあると思うので、体に気を付けて思う存分、頑張ってきてほしい」と激励した。佐藤さんは「さらに頑張ろうという気持ちになった」と来月に迫った大会を見据えた。
 
小野市長から激励の言葉を贈られ、大会への意欲を高めた

小野市長から激励の言葉を贈られ、大会への意欲を高めた

 
 佐藤さんを含む東北6県の18人が出場する東北大会は7月12日午後1時から、仙台市の錦ケ丘アーリー迎賓館で開かれる。

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未来に残そう!青い海 釜石海保 甲東こども園で教室 海洋環境の大切さ伝える

紙芝居を楽しみながら海の環境を守る大切さを学ぶ園児ら

紙芝居を楽しみながら海の環境を守る大切さを学ぶ園児ら

 
 釜石海上保安部(尾野村研吾部長)は23日、釜石市野田町の甲東こども園(野田摩理子園長、園児88人)で海洋環境保全教室を開いた。海上保安庁が定める6月の「海洋環境保全推進月間」に合わせた取り組み。釜石海保の職員6人が訪れ、紙芝居や○×クイズなどで子どもたちに海を守る大切さを伝えた。
 
 年中、年長児約60人が参加した。始めに、海上保安官の仕事を紹介。釜石海保の職員が「何(の仕事)をしていると思う?」と聞くと、園児は「海の安全、守ってくれる人ー!」と元気に答えた。海の治安を確保する業務に船、ヘリコプター、飛行機などを使っていることを説明したほか、「きれいな海を守ることも仕事の一つ」と改めて強調した。
 
海上保安官の仕事や海洋環境を守る取り組みを紹介した

海上保安官の仕事や海洋環境を守る取り組みを紹介した

 
 紙芝居は、ウミガメがクラゲと間違えてビニール袋を食べて病気になってしまう物語。同庁の職員が製作したオリジナル作品で、タイトルは「うみがめマリンの大冒険」。海上保安官に助けられ、手術を受けて元気になったウミガメが無事に海に戻ると、園児たちは「よかったねー」と笑顔を見せた。
 
紙芝居でプラスチックごみが海洋生物に与える影響の大きさを伝えた

紙芝居でプラスチックごみが海洋生物に与える影響の大きさを伝えた

 
じっと聞き入る園児。物語の世界に入り込んだ

じっと聞き入る園児。物語の世界に入り込んだ

 
 物語ではなく、実際の海で生き物たちが命に関わる被害を受けていることから、▽ごみはごみ箱に入れる▽ごみが落ちていたら拾うーといった行動をクイズ形式で解説。幼少期から海をきれいにしようとする気持ちが一番大事だとし、「未来に残そう 青い海」とのキーワードを記憶してもらった。
 
 今回は、この春からプラスチックごみの分別収集を始めた釜石市とも連携。市生活環境課の職員2人がクイズを通じ、「ペットボトルはラベルをはがして、きれいに洗ってから捨てよう」「買い物に行くときはマイバッグを持っていこう」などとお願い。「ごみを減らしてきれいなまちにしよう」と呼びかけも加えた。
 
子どもたちは○×クイズや「うみまる」との交流を楽しんだ

子どもたちは○×クイズや「うみまる」との交流を楽しんだ

 
 「はーい」と理解を示す子どもたちだったが、「なんで(ペットボトルを)あらわなきゃいけないの?」「どうして海にごみをすてちゃダメなの?」と気になったことを質問する場面も。紙芝居で聞いた物語のようなことになるかもと想像した平松杏理ちゃん(5)は「海にごみをすてない」とうなずいた。同庁のマスコットキャラクター「うみまる」が登場し、触れ合う時間も。杏理ちゃんは海上保安官の仕事を知って「船に乗るの、かっこいい」と憧れた。
 
ビシッと敬礼し写真撮影。合言葉は「あおいうみー」

ビシッと敬礼し写真撮影。合言葉は「あおいうみー」

 
手作りの花束で「ありがとう」を伝える園児と笑顔の交換

手作りの花束で「ありがとう」を伝える園児と笑顔の交換

 
 この教室は、幼い時から海を大事にする意識を持ってもらうことを狙いにする。同園を含む市内2カ所のこども園で実施する予定。釜石海保警備救難課の池田隆課長は「海洋などに流出したプラスチックごみは細分化され、微小な粒、マイクロプラスチックとなるが、2050年には魚の数を超えると言われる。減らすためには子どもの頃から気持ちを育み、大人、年代に関わらず地道な活動が重要だ」との認識を示した。
 
 このほか、釜石東中など海上保安協力校との海岸のごみ拾いや、海事関係者らを対象に海洋ごみ削減への協力などを呼びかける啓発活動も行うことにしている。

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地域と歩み10周年 デイサービスセンター善(平田) 多機能型介護導入で在宅生活を全面支援

職員らと楽しい時間を過ごす「デイサービスセンター善」の利用者=13日

職員らと楽しい時間を過ごす「デイサービスセンター善」の利用者=13日

 
 釜石市平田の「デイサービスセンター善」が開設から10周年を迎えた。合同会社ZEN PROJECT(前川寛代表)が運営する同施設は、2018年に三陸鉄道平田駅近くの現在地に移転新築後、「小規模多機能型居宅介護サービス」も導入。自宅で暮らす高齢者が必要とする支援を1カ所で継続的に受けられ、利用者とその家族の安心につながっている。当初から掲げる「その人らしく日常の延長で」との理念を貫きながら、時代の変化、利用者ニーズの多様化に対応したサービスで、同市の在宅高齢者の生活を支える。
 
 同施設は、平田災害公営住宅近くに建てられた震災復興支援のプレハブ建物を借り、2015年に開所した。要支援、要介護の在宅生活者を対象にデイサービス(通所介護)を提供していたが、それだけでは在宅生活の継続が困難となってくるケースを目の当たりにし、「通い」「宿泊」「訪問」のサービスを1カ所で提供可能な「小規模多機能型居宅介護」の事業申請を決意。開所1年半ながら市の公募に手を挙げ、認可を受けた。サービス拡大に伴い18年、現在地に木造2階建ての新施設を建設。前施設の約3.3倍の広さ(延べ床面積約500平方メートル)を確保した。
 
釜石市平田第3地割、三陸鉄道平田駅近くにある「デイサービスセンター善」

釜石市平田第3地割、三陸鉄道平田駅近くにある「デイサービスセンター善」

 
昼食前に手指を動かす体操でリラックス。おいしいご飯を楽しみに…

昼食前に手指を動かす体操でリラックス。おいしいご飯を楽しみに…

 
 提供するデイサービスは、要介護者対象の「地域密着型」、要支援の一歩手前から利用可能な「通所型サービスA」、「認知症対応型」の3種類。デイサービスだけで対応が難しくなった場合は「小規模多機能型居宅介護」への移行が可能。介護予防の段階から施設入所に至る前まで、可能な限り在宅生活を支える体制を整える。「比較的元気な段階から関わらせてもらうことで、身体や認知機能の低下を緩やかにできれば。利用者のフェーズが変わっても同じ場所、同じスタッフのケアにより、本人や家族は大きな安心感を得られる」と前川代表(48)。現在、デイサービスには95人、小規模多機能型には29人が利用登録する。
 
施設では毎日、利用者の様子を写真に収める。室内には10年の思い出が詰まったたくさんの写真が飾られる

施設では毎日、利用者の様子を写真に収める。室内には10年の思い出が詰まったたくさんの写真が飾られる

 
昼食づくりを手伝ったり、読書をしたり、話に花を咲かせたり…。2階のテラス(写真右上)も居心地のいい場所

昼食づくりを手伝ったり、読書をしたり、話に花を咲かせたり…。2階のテラス(写真右上)も居心地のいい場所

 
 利用者は好きなことをして1日を過ごす。入浴、読書、手芸、塗り絵、会話…。時間の使い方は人それぞれ。開所当初から変わらない自由な雰囲気が漂う。昨年5月から週2回、デイサービスを利用する女性(85)は昼食づくりをお手伝い。食材を切ったり、盛り付けをしたり。他の利用者との会話も楽しみの一つで、「知らないことを教えてもらえるし、皆さん、いい方ばかり。ストレスもない」とにっこり。施設に来る日は朝から「今日は何を着て行こうかな、誰と一緒になるかな、昼食のおかずは何かな…とウキウキ、ワクワク。生活にも張りが出る」と喜ぶ。
 
この日の昼食は赤魚の煮付け、たけのこご飯など。栄養バランスのとれた食事がうれしい

この日の昼食は赤魚の煮付け、たけのこご飯など。栄養バランスのとれた食事がうれしい

 
職員の笑顔も利用者を元気に…。室内は和やかな空気に包まれる

職員の笑顔も利用者を元気に…。室内は和やかな空気に包まれる

 
 同社は大只越町に居宅介護支援事業所も開設。ケアマネジャー(介護支援専門員)が利用者のケアプランを作成し、適切にサービスを受けられるよう調整している。ケアマネ有資格者は5人。開所時7人だった職員は33人にまで増えた。18年に入社した介護士の鈴木歩美さん(30)は「最初は拒否反応がある方も積極的にコミュニケーションを取るうちに信頼関係ができたり、家に閉じこもりがちだった方がここに来ることが楽しみになったり。そういう変化が仕事のやりがいにつながっている」と実感。利用者から教わることも多く、「さまざまな経験をされてきた人生の大先輩」と敬う。
 
利用者は人生経験豊富な皆さん。若い職員らは学びが多いという

利用者は人生経験豊富な皆さん。若い職員らは学びが多いという

 
施設を運営する合同会社ZEN PROJECTの前川寛代表

施設を運営する合同会社ZEN PROJECTの前川寛代表

 
 前川代表は大槌町出身、在住。2011年の震災津波で祖父母を亡くした。「いつ何が起こるか分からない。その人らしく人生を生き切る手助けがしたい-」。長く携わってきたデイサービス事業での独立を決意。釜石市で開かれていた人材育成道場「未来創造塾」で半年間学び、起業にこぎ着けた。施設開所から10年。この間、事業拡大、新施設の整備、コロナ禍など数々の山を乗り越えながら、思い描く理想の介護を追い求めてきた。
 
 目指すのは「施設のルールにはめるのではなく、利用者それぞれの立場に立ったサービス」。団塊の世代全員が後期高齢者となる“2025年問題”を見据え、もの言う高齢者にも満足してもらえるようなサービス、空間提供を心がけてきた。介護保険制度の浸透もあり、この10年で利用者層にも変化が。「60、70代が増えた。若年性認知症(64歳以下)の方も割合的には多い。早くサービスを受けようとする人が一般的になってきている」と前川代表。
 
 6月8日、施設駐車場で10周年記念イベントを開いた。地区の生活応援センターや小学校にもチラシを配り、来場を呼び掛けた。会場内には飲食ブースや子ども向けコーナーを設置。地元平田の虎舞や神楽、前川代表ゆかりの大槌町吉里吉里の神楽なども披露され、大勢の来場者でにぎわった。「地域密着」も事業理念に掲げる同社。現在地に移ってからはコロナ禍で地域との交流が難しい時期が続いたため、今回は施設の存在を広く知ってもらう機会にもなった。
 
10周年記念イベントで「恵比寿舞」を披露した平田神楽。利用者らと記念写真も

10周年記念イベントで「恵比寿舞」を披露した平田神楽。利用者らと記念写真も

 
前川代表の地元から吉里吉里大神楽(大槌町)もお祝いに駆け付けた

前川代表の地元から吉里吉里大神楽(大槌町)もお祝いに駆け付けた

 
豚汁や飲み物などは無料でお振る舞い。ボーイスカウトは子ども向けの遊びも提供した

豚汁や飲み物などは無料でお振る舞い。ボーイスカウトは子ども向けの遊びも提供した

 
 イベントをひときわ盛り上げたのは、開所当初からの職員鹿野正治さん(66)。“尚玉泉”の名で各地のイベントに引っ張りだこの女形舞踊の名手で、この日も多くのファンを楽しませた。調理師免許を持ち、普段は利用者の食事づくりでも力を発揮する。「10年か…あっという間。早いね」。利用者とのたくさんの思い出をまぶたに浮かべ、「みんなに助けられていると実感する」。施設規模の拡大で、より細かい対応が難しくなった側面はあるものの、若い職員には「『今日一日、楽しかった』と思ってもらえるようなお世話を。利用者一人一人の存在をしっかり認識し、あいさつから始まって必ず声を掛けることが必要」と思いを伝える。
 
あでやかな踊りで10周年を祝う職員の鹿野正治(尚玉泉)さん。施設では食事づくりを含む介護の仕事で奮闘する

あでやかな踊りで10周年を祝う職員の鹿野正治(尚玉泉)さん。施設では食事づくりを含む介護の仕事で奮闘する

 
幅広い年代の来場があった10周年記念イベント。地域との絆を強めた

幅広い年代の来場があった10周年記念イベント。地域との絆を強めた

 
 「会社設立時の気持ちを忘れずに。もう一度初心に立ち返って―」。10年の節目に誓いを新たにする前川代表。65歳以上の4人に1人が認知症またはその予備軍(軽度認知障害)とされる時代。「症状を正しく理解し、手を差し伸べられるまち」の実現を願い、「介護という枠にとらわれず、常にチャレンジし続けたい」と超高齢社会のより良い未来を模索する。

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海中転落車両から運転女性を救助 唐丹の漁業者 橋本尚實さんに釜石警察署長感謝状

人命救助の功労で釜石警察署長感謝状を受けた橋本尚實さん(中央)=17日、唐丹町漁協事務所

人命救助の功労で釜石警察署長感謝状を受けた橋本尚實さん(中央)=17日、唐丹町漁協事務所

 
 釜石市唐丹町の小白浜漁港で車両ごと海中に転落した80代女性を救助した同町の漁業橋本尚實(たかみつ)さん(77)に、釜石警察署(松本一夫署長)は17日、署長感謝状を贈った。橋本さんの迅速な行動がなければ、女性は命を落としていた可能性も。「とにかく車が沈まないよう必死に耐えた。顔だけ出してもらえれば…それだけを考えて」。橋本さんは当時の緊迫した状況を語った。
 
 橋本さんは5月30日午前7時5分ごろ、早朝のウニ漁を終えて帰港。船を岸壁に着けようとしていたところ、背後で「ガーン」とものすごい音がした。振り返ると、軽トラックが頭から海に落ちている状況。運転席に人の姿が見え、「大変だ。これを沈めてしまっては助からない」と、とっさに船の接岸などで使う1メートル50センチほどの“棒かぎ”を伸ばして運転席側の車体に引っかけた。
 
車両が転落した小白浜漁港の事故現場。橋本さんは自身の船(写真)から棒かぎ(写真左下矢印)を車体に引っかけ、前方が沈まないよう耐えた

車両が転落した小白浜漁港の事故現場。橋本さんは自身の船(写真)から棒かぎ(写真左下矢印)を車体に引っかけ、前方が沈まないよう耐えた

 
 自分の体も持って行かれそうになる中、船のへりを利用して力ずくで踏ん張った。荷台の方が沈み、運転席が上向きになったことで、乗っていた女性は助手席の手動窓を開けて脱出。水面から手が出たのを確認した橋本さんは棒かぎを車から離し、持ち手側を女性に差し出してつかまらせた。女性を船に引き寄せ、背中側から脇を抱えて引き上げた。同時刻、偶然にも漁業取り締まりパトロールに来ていた釜石海上保安部職員3人が高台から事故を目撃。すぐに現場に駆け付け、橋本さんの船から女性を岸壁に上げた。女性は左手首を骨折したが、命に別条はなかった。
 
 現場の岸壁は海側に向かって緩やかな傾斜がある場所。「車のエンジンはかかっておらず、(何らかの要因で動いた)車体が岸壁のへりをこする形で落ちたようだ」と橋本さん。女性はウニ漁に出ていた夫を待って、岸壁で作業中だったという。橋本さんは他の漁業者よりも一足早く漁を切り上げて帰ってきたところで、事故に出くわした。近くに他に人はおらず、橋本さんがいなければ命に関わる事案になっていたとも考えられる。
 
感謝状を受け取る橋本さん

感謝状を受け取る橋本さん

 
 「10秒でも20秒でも遅れたら危なかった。女性は泳げなかったというし、岸壁にはつかまって上がれるところが無いから」。漁業歴約60年の橋本さん。実は、海での人命救助は中学生の時から人生3回目。今回は沈みゆく車を船上から1人で支えるというすご技で命を救った。「体力は案外ある。腕力もそれなりに。これを助けられなければ一生の不覚と思って…」と、とっさの行動を振り返った。
 
「(女性の命が)助かって良かった…」。大事にならなかったことに安堵する橋本さん

「(女性の命が)助かって良かった…」。大事にならなかったことに安堵する橋本さん

 
当時の状況を聞く松本一夫署長(左から2人目)ら釜石署署員

当時の状況を聞く松本一夫署長(左から2人目)ら釜石署署員

 
 唐丹町漁協事務所で感謝状を手渡した松本署長は「海に落ちた車の中から脱出するのは非常に困難。けがをしていればなおさら。橋本さんの迅速な行動、奮闘がなければ助からなかったかもしれない」と深く感謝。同町では5月14日にも海中転落事故があった。「地元の皆さんに事故防止の広報はしているが、漁港には他地域から釣りに来る人もいるので、合わせて注意を促していきたい」と話した。

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「浜千鳥の梅酒」造りに地域の手 釜石産の青梅、丸々 摘み取り体験で魅力再発見

梅の実に手を伸ばす摘み取り体験の参加者

梅の実に手を伸ばす摘み取り体験の参加者

 
 柔らかな口当たりで、ほんのり甘い「浜千鳥の梅酒」。釜石市の酒造会社・浜千鳥(新里進社長)が仕込んで売り出すこの銘柄は、飲みやすさや味わいに定評がある。その“味力”のもとになっているのが、地元で育つ梅の実。収穫時期を迎えた梅林で14日、実の摘み取り体験があり、市内外から12人が参加した。6~7月が梅酒の仕込みシーズンとされ、同社もしかり。初夏の爽やかさも閉じ込める梅酒の味わいづくりに地域の手を借りた。
 
青々、丸々!収穫時期を迎えた釜石地方で育つ梅の実

青々、丸々!収穫時期を迎えた釜石地方で育つ梅の実

 
 釜石地方梅栽培研究会(前川訓章会長)が主催。同社が梅酒製造に使用する青梅を地元農家などから安定的に調達するため設立、釜石や大槌の生産者、漬梅(梅酒製造に使われた梅の実)の活用業者ら34会員が所属する。今回の体験は地元産梅のPRや、自然体験を楽しんでもらおうと初めて企画した。
 
 体験の場は、同会副会長の山崎元市さん(75)が管理する同市片岸町の梅林。約300坪(約990平方メートル)の土地に白加賀(しろかが)、 豊後(ぶんご)など数品種の梅を50本ほど栽培している。普段、収穫は妻とふたりで行い、最盛期には親族が協力。今回の企画を歓迎し、「好きなように取って」と呼びかけた。
 
広い梅林で協力して収穫を体験する参加者

広い梅林で協力して収穫を体験する参加者

 
 参加者は実の大きさを確かめながら収穫。鉄串を使ってヘタ取りにも取り組んだ。作業の合間には、漬梅を使って調理された鶏肉や炭酸飲料を味わっておいしさを再発見。山崎さんから、木の手入れで気を配っていることや実の活用法などを聞いたりする姿もあり、品質向上のため技術を学びながら精を込めて育てる生産者の思いにも触れた。
 
梅の実を摘み取る家族連れ「思ったよりかんたん!」

梅の実を摘み取る家族連れ「思ったよりかんたん!」

 
たわわに実った梅に手を伸ばし…「大きいの、取った」

たわわに実った梅に手を伸ばし…「大きいの、取った」

 
実を収穫したり、ヘタ取りしたり、梅風味の食材を味わったり

実を収穫したり、ヘタ取りしたり、梅風味の食材を味わったり

 
 千鳥町の大澤七奈さん(10)は「大きい実がいっぱい。取りやすいから楽しい」とにっこり。「シャインマスカットみたいでおいしそう」と、妹の世奈さん(6)と一緒に手を伸ばした。父の賢一さん(44)は「本当に楽しそう。遊ぶ場が限られる中、木や自然に触れ、伸び伸びできるのがいい」と、うれしそうに見守った。
 
 友人に誘われ参加した大平町の藤原緑さん(62)は大きく育った青梅を見つめ「きれい」とひと言。買った梅をシロップ漬けにしたり梅干しを作ることもあり、暑い夏に見ると「爽やかな気持ちになる」のだとか。自身が取った青梅が「浜千鳥の梅酒」のひと味に加わるのを想像し、「飲むのが楽しみ」と目じりを下げていた。
 
 同会では良質な梅の生産、安定的な原料供給を目指し、会員らが生産技術向上や生産量拡大への取り組みを続けている。「情報を交換し、共有したり、他の栽培環境を見たり勉強になっている」と山崎さん。昨年は収量が芳しくなかったが、今年の実は「良いあんばい」との見立て。収穫作業は7月中旬頃まで続き、最終的に1トン以上を同社に提供できそうだという。
 
梅の木の特徴を参加者に説明する山崎元市さん(左)

梅の木の特徴を参加者に説明する山崎元市さん(左)

 
 漬梅の活用策も模索。24年分は約3割を県外業者に販売したほか、会員や地元企業がジェラートやジャム、飲料などを商品化し、廃棄量ゼロとした。事務局を担う同社の奥村康太郎杜氏(44)は「収穫を体験してもらうことで、新しい釜石の特産として認知が広まれば。生産者や参加者の気持ちも混ぜ込み、おいしくなるよう仕込みたい。楽しみにしてほしい」と腕をまくる。
 
収穫体験に夢中になった大人たちは梅酒の完成を楽しみに待つ

収穫体験に夢中になった大人たちは梅酒の完成を楽しみに待つ

 
 同社は2010年から地元産梅を日本酒で漬け込む梅酒製造を始めた。11年7月から720ミリリットル入りを販売し、現在は300ミリリットル入りも市場に投入。年間約1万本の販売数を維持する。今年の梅の実は7月中に漬け込み、約3カ月後に実を引き揚げて熟成させる。

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磨く!救助技術、仲間と共に 釜石大槌地区消防本部が訓練披露 岩手県大会前に

消防救助技術訓練の効果測定でロープブリッジ救出に挑む署員

消防救助技術訓練の効果測定でロープブリッジ救出に挑む署員

 
 釜石大槌地区行政事務組合消防本部では、第48回消防救助技術岩手県大会(6月26日、矢巾町・県消防学校)に向け、出場する職員らがそれぞれ鍛錬を重ねている。5月の大型連休明けに始まった訓練は、いよいよ終盤戦。11日には、釜石市鈴子町の釜石消防署で大会前最後となる効果測定があり、出場者らが訓練の成果や課題を確かめた。
 
 同本部が県大会でエントリーするのは、陸上の部5種。水平に張った長さ20メートルのロープを渡って対面する塔上の要救助者を助け出す「ロープブリッジ救出」(4人一組)や、高さ15メートルの「はしご登はん」、8メートルの煙道をくぐって要救助者を救出・搬送する「ほふく救出」(3人一組)などで、釜石、大槌の2署から計18人が出場する。
 
要救助者を助け出すためロープを渡る署員

要救助者を助け出すためロープを渡る署員

 
 11日の効果測定は駒林博之消防長や幹部職員らが見守り、本番さながらの緊張感が漂う中で行われた。日々の職務をこなしながら厳しい訓練に臨んできた出場者らは、その努力を発揮しようと競技に集中。いずれの種目も速さのほか、▽安全の確認ができているか▽機材を確実に操作しているか―など実際の救助で役立てられるレベルまで習熟しているかが評価されることから、「タイムは?」「減点はないか」と現時点の力量、修正点を見つけ出していた。
 
はしごを勢いよく登る大会出場者を先輩署員らが見守る

はしごを勢いよく登る大会出場者を先輩署員らが見守る

 
ほふく救出は煙道をくぐって要救助者を助け出す

ほふく救出は煙道をくぐって要救助者を助け出す

 
 2人一組でロープを使って高さ15メートルまで登る「ロープ応用登はん」は、同本部から5年ぶりにエントリーした種目。出場を強く望んだ釜石署の長野凌太さん(28)はこの日、ロープを瞬時に右足に巻き付け、両手で手繰り寄せながら駆け上がるようにして登っていった。「訓練でやってきたことを、実際の現場で生かせればいい」と言いつつ、挑戦には別の理由も。以前、出場した際に結果を残せず、「リベンジ」に燃えていた。
 
器具を使わずロープを登る長野凌太さん。補助者と息を合わせるのが鍵

器具を使わずロープを登る長野凌太さん。補助者と息を合わせるのが鍵

 
 効果測定を終え、長野さんは「失敗。ゴール手前で失速した」と悔しがった。現状を確かめられたと前向きに捉え、「スピードを保てるよう体力を」と上を向く。応用登はんは、ロープをさばく足の柔軟性と引っ張る腕力が必要な上、地上でロープを引っ張る補助者とのコンビネーションも重要になるという。補助者の篠原優斗さん(26)=釜石署=は「タイミングを合わせるのがポイント。磨きをかけたい」と後押しに熱を込める。
 
 「引揚救助」(5人一組)に出場する大槌署の細田智之さん(29)もリベンジ、再挑戦という思いを持つ一人。昨年まで2年連続で県大会上位に入り、東北大会への切符を手にした。ただ、昨年は山形県などで発生した豪雨災害の影響で東北大会が中止となったため、「今年こそ」との気持ちが強い。この日は雨が降っていたため、「減点なし」を意識して競技に集中。安全確実性、タイムも「かなり良かった」と手応えを感じた。
 
引揚救助はチームワークがポイント。左上写真の右側が細田智之さん

引揚救助はチームワークがポイント。左上写真の右側が細田智之さん

 
 地下などでの災害を想定した引揚救助は、空気呼吸器を装着して下降しロープを用いて要救助者を引き上げる団体種目。細田さんは「いろんな人と関われるが、思いやりを持ってやらないと結果が出ない。団体行動の消防業務、救助活動と同じで、技術だけでなく気遣いが大事」と話す。メンバーには訓練を始めて2年目の職員もいて、「大会には慣れていないが、ポテンシャルはある」と仲間を信頼。「全員のメンタルをケアしながら本番に臨みたい。県大会は1位を目指す。そして、確実に東北大会へ」と意気込む。
 
 救助活動に必要な体力や精神力、技術力を鍛えることが目的の大会。駒林消防長は「訓練での努力は現場、あらゆる仕事でプラスになる。体調やメンタルをしっかり整え、ベストなパフォーマンスを」と激励した。
 
消防長の激励を受け、県大会に向け気を引き締める署員

消防長の激励を受け、県大会に向け気を引き締める署員

 
 同本部の出場者らが目指す東北地区支部指導会は7月29日に宮城県仙台市で、全国大会は8月30日に兵庫県三木市で開かれる。同指導会には水上の部(7月16日・新潟県新潟市)もあり、同本部から「溺者救助」(3人一組)に出場する。

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川面の群舞復活に期待! 小川川支流水路にホタルの幼虫の餌「カワニナ」放流 中小川地区住民ら一丸

旧小川小敷地内に整備された水路にホタルの餌「カワニナ」を放流する親子=15日

旧小川小敷地内に整備された水路にホタルの餌「カワニナ」を放流する親子=15日

 
 釜石市内有数のゲンジボタル生息地である小川川流域。東日本大震災後、周辺環境の変化などでその数は激減したが、地域住民らが再び光を取り戻そうと奮闘している。今年もホタルの幼虫の餌となる巻き貝「カワニナ」の放流が行われた。流域の中小川町内会(佐々木正雪会長)が行う4年目の取り組み。個体数増へ少しずつ成果が表れ始めていることに手応えを感じつつ、間もなく見られる成虫の発光に期待を寄せる。
 
 カワニナの放流はこれまで、小川川本流の通称「ワッカラ淵」と呼ばれる中流域で行われてきたが、大雨の影響などで土砂が堆積。増水でカワニナが流され、定着しにくい状況もあったため、今年から放流場所を変更した。新たな放流地は、閉校した旧小川小の敷地の一角を市から借りて、同町内会が2023年に整備した“ホタル水路”。田んぼに水を引いていた農業用水路から流れを分岐し、長さ約30メートル、幅約1.5メートルの繁殖場所を確保した。
 
4年目の放流会には地域住民を中心に約30人が参加した

4年目の放流会には地域住民を中心に約30人が参加した

 
ホタルが生息できるように2023年に整備された“ホタル水路”きれいな水が流れる

ホタルが生息できるように2023年に整備された“ホタル水路”きれいな水が流れる

 
 15日に行われた放流会には子どもから大人まで約30人が参加。始めに、釜石ホタル友の会の臼澤良一会長(76)がカワニナやホタルについて説明した。臼澤会長によると、日本に生息するカワニナは18種。水中の石の表面に付着しているコケや藻を食べ、3.5センチほどに成長する。水辺の草に産み付けられたホタルの卵は1カ月ほどでふ化し、幼虫は約10カ月間、水中で生活する。その過程で餌とするのがカワニナ。消化液を注入して肉を溶かして食べる。ふ化したばかりの幼虫は1.5ミリほどで、生まれたばかりの1ミリにも満たないカワニナの稚貝を食べて成長していくという。「カワニナはきれいな水の指標生物になっている。ゲンジボタルもきれいな水がないと生きていけない」と臼澤会長。
 
カワニナやホタルの生態について教える釜石ホタル友の会の臼澤良一会長

カワニナやホタルの生態について教える釜石ホタル友の会の臼澤良一会長

 
小川川上流で採集したカワニナに参加者も興味津々

小川川上流で採集したカワニナに参加者も興味津々

 
 この日は、前日に町内会員ら17人が小川川上流の繁殖地から採集したカワニナ約1200匹を放流。参加者は小さなバケツにカワニナを分けてもらい、水路の岸からまんべんなく放した。
 
 家族で訪れた同市の小学生、川﨑仁遥さん(10)は以前にも放流会に参加。同所で発光するホタルの成虫も見たことがあるといい、「とてもきれいだった」と、その光景を思い浮かべた。この日も臼澤会長の話に熱心に聞き入り、「放流したカワニナをホタルの幼虫が元気に食べて成長し、来年も卵を産んで、見られるホタルがもっと増えてほしい」と願った。
 
「たくさん食べて大きくな~れ」 水路の広範囲にカワニナを投入

「たくさん食べて大きくな~れ」 水路の広範囲にカワニナを投入

 
カワニナを手に「はい、ポーズ!」

カワニナを手に「はい、ポーズ!」

 
貴重な体験に笑顔を広げながら放流を楽しむ参加者

貴重な体験に笑顔を広げながら放流を楽しむ参加者

 
 同水路では整備後すぐにホタルが見られるようになり、昨年は、田んぼ周辺で見られていたヘイケボタルも出現。ゲンジとヘイケ、2種のホタルが一カ所で見られるという新たな魅力も加わった。昨年は町内会主催の観察会も開いたという。自宅でカワニナの養殖にも取り組んできた佐々木会長(75)は「子どもたちも関心を持ってくれてうれしい。今後もカワニナの放流を続けながら、昔のようにたくさんのホタルが飛び交う環境を取り戻したい」と話す。同町内会には昨年11月、長年にわたる小川川流域の水環境整備やホタルの生育環境保全への功労で県知事感謝状が贈られていて、この日の放流会で報告された。
 
「これからもホタルが見られるように」と願いを込める子どもら

「これからもホタルが見られるように」と願いを込める子どもら

 
昨年11月に贈られた県知事感謝状を披露する中小川町内会の佐々木正雪会長(左)

昨年11月に贈られた県知事感謝状を披露する中小川町内会の佐々木正雪会長(左)

 
 同水路周辺では昨年、6月20日ごろにはゲンジボタルが飛ぶ姿が見られ始めた。例年6月下旬から7月中旬が発光が見られる時期で、今年はさらに数が増えるかどうか注目される。

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自然、電気、ごみ分別… 身近なことから環境を考えよう 6月「環境月間」に合わせ市がイベント

手回し発電で魚釣りを楽しむ親子=7日、釜石市自然・生活環境展

手回し発電で魚釣りを楽しむ親子=7日、釜石市自然・生活環境展

 
 6月の「環境月間」に合わせ、釜石市は7、8の両日、港町のイオンタウン釜石で自然・生活環境展を開いた。各種体験や情報提供を通して、日々の暮らしが地球環境に直結していることを広報。地球温暖化の影響による異常気象で、世界各地で風水害被害が頻発するなど環境問題への対応は待ったなしの状態。日常生活での意識、行動変容につなげるきっかけにと、親しみやすいコンテンツで来場者を迎えた。
 
 環境月間は、国連が定める6月5日の「世界環境デー」(日本では環境の日)に由来。この日は1972年にストックホルムで「国連人間環境会議」が開かれた日で、日本がセネガルと共同で、環境への意識啓発の日として提案したことによる。
 
 釜石市では毎年、市民に環境への理解を深めてもらう催しを実施。今年も楽しみながら学べる企画を用意した。釜石の動植物にスポットを当てた展示では、市の花「ハマユリ」、同木「タブノキ」、同鳥「オオミズナギドリ」を写真で紹介。釜石で見られる生き物の幼虫クイズもあった。県環境学習交流センター(盛岡市)は県産間伐材の積み木広場、さまざまな樹木の実を段ボールの台紙に貼り付けてオブジェを作る工作コーナーを開設。ドングリや松ぼっくりは樹木によって大きさや形が異なり、解説パネルで名称も紹介した。
 
釜石市の花、木、鳥を紹介する展示コーナーで豊かな自然をPR

釜石市の花、木、鳥を紹介する展示コーナーで豊かな自然をPR

 
県環境学習交流センターが開いた「森の工作館」

県環境学習交流センターが開いた「森の工作館」

 
さまざまな木の実を台紙に配置してオリジナル作品を作る。発想は無限大!

さまざまな木の実を台紙に配置してオリジナル作品を作る。発想は無限大!

 
完成した作品を手にする子どもたち。「お家のどこに飾ろうかな?」

完成した作品を手にする子どもたち。「お家のどこに飾ろうかな?」

 
 電気について学べるコーナーでは、手回し発電機で電気をつくる体験が行われた。来場者は白熱灯、蛍光灯、LED(発光ダイオード)を点灯させるのにどれだけの電力が必要かを実体験。発光する時に熱が出ないLEDは無駄なエネルギーを使わないため、消費電力が少なく長寿命であることなども学んだ。釣り糸の先端に取り付けた電磁石で魚のぬいぐるみを釣る体験も。竿の手元にはリールの代わりに手回し発電機が取り付けられていて、回す手を止めると電流が切れ、磁力が失われるしくみ。挑戦した子どもたちは、発電機のハンドルを懸命に回し、電気を生むことは簡単ではないことを実感した。
 
手回し発電機で白熱灯、蛍光灯、LEDを点灯させてみる。「一番、電気が必要なのは?」

手回し発電機で白熱灯、蛍光灯、LEDを点灯させてみる。「一番、電気が必要なのは?」

 
魚の頭の先に付いた金属に釣り糸の先端の電磁石を合わせてから手回し発電機を回す

魚の頭の先に付いた金属に釣り糸の先端の電磁石を合わせてから手回し発電機を回す

 
「釣れた、釣れた!」 電気をつくる大変さも感じた電磁石による魚釣り体験

「釣れた、釣れた!」 電気をつくる大変さも感じた電磁石による魚釣り体験

 
 同市で4月から始まったプラスチックごみの分別収集にちなんだクイズもあり、挑戦者には景品をプレゼント。会場では親子で各種体験を楽しむ姿が多く見られ、地球環境にやさしい生活へ意識を高めた様子だった。
 
 同市の今野莉心さん(6)は電磁石の魚釣りを体験。「楽しかった。(発電機のハンドルを)回すの、大変だった」と言いつつ、釣り上げたチンアナゴとサバににっこり。「ゲームセンターよりも熱中しているかも!?」と笑う父幸輝さん(30)は「電気のことを子どもでも分かるようにという配慮がうれしい」と歓迎。家庭では使わない部屋の照明を消す、テレビを見ていない時は確実に消す…など、家族で省エネを実践する。プラごみ分別も「ガイドブックを見ながらやれば難しいことはない」とし、「環境のためになるのであれば、子どもと一緒にどんどん取り組んでいきたい」と話した。
 
 市生活環境課環境保全係の佐々木歩主任は「環境というと複合的な問題が絡み、難しいとか興味がないという方もいるかもしれないが、多くは私たちの生活に密着したこと。まずは足元の部分を見直し、(省エネやごみ分別など)自分たちでできることから取り組んでほしい。こうしたイベントが環境について考えるきっかけにもなれば」と期待した。

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スマホ・ゲーム利用の約束、親子で考えよう 釜石・白山小で情報モラル教室

インターネット利用について学ぶ白山小の児童と保護者

インターネット利用について学ぶ白山小の児童と保護者

 
 釜石市嬉石町の白山小(鈴木慎校長、児童33人)で7日、インターネットを正しく安全に使うための情報モラル教室が開かれた。スマートフォンやオンラインゲームなどインターネットを介した情報のやりとりが増える中、利用の仕方を親子で考える機会にしてもらおうと、授業参観日に合わせて実施。全校児童と保護者ら約60人が参加した。
 
 教室は、釜石市とソフトバンク(東京)が2020年に締結した地方創生に関する連携協定の一環で、釜石公民館事業として行われた。これまで、市内の3つの小学校で実施してきたが、白山小では初開催。他校では高学年児童が対象だが、同校ではスマホ所有の有無や学年、年齢にかかわらず「みんな何かしら触れている」うえ、国が推進する「GIGAスクール構想」で、児童1人に学習用のタブレット端末が1台ずつ配られていることもあり、使い始めの1年生にも学んでもらおうと全校児童を対象にした。
 
 講師は、同社の北海道・東北地域CSR部の鈴木利昭参与(64)。「小学生では高学年になると半数がスマホを持っている。最近は6~7割と増加傾向」と全国的な動向を紹介したうえで、参加者にスマホやゲーム機の所有、利用の時間帯を聞いた。白山小ではスマホ所有は半数ほどだが、ゲーム機はほぼ全員が持っていると意思表示。深夜2時くらいまで使っている子もいた。
 
SNSのリスクなどを解説した鈴木利昭参事(右上の写真)

SNSのリスクなどを解説した鈴木利昭参事(右上の写真)

 
クイズや質問に意思表示しながらネット利用を学ぶ児童ら

クイズや質問に意思表示しながらネット利用を学ぶ児童ら

 
 ネットの世界で起こることすべてが自分のせきにん―。「交通ルールがあるようにネットにもルールがあり、守るから安全。ただ、ネットの言葉は難しいものが多いから、無理せず分かること、できることから始めて」と鈴木参与。「簡単で便利、そして無料。使う人が多いから、トラブルも多い」と話した上で、交流サイト(SNS)を取り上げて使い方や注意点を解説した。
 
 事例に挙げたのは「LINE(ライン)」でのやりとり。会話でよくないところを考えてもらい、▽急がず、きちんと伝える(文字だけで伝えようとすると誤解が生じることも。絵文字を使ったり工夫する)▽守ろう、時間!(長時間は迷惑になることも。相手がいることを忘れない)▽やめよう!人を傷つける発信(ネットに書き込んだ言葉は良いことも悪いことも一生消えないと思って。発信する前に読み返す。見る、受け取る相手の気持ちを考える)―との守ってほしいルールを伝えた。
 
児童も保護者も講師の話にしっかりと耳を傾ける

児童も保護者も講師の話にしっかりと耳を傾ける

 
 また、ネットにひそむ危険性も説明。手軽に世界とつながり便利な反面、顔が見えないことで怖い面もあるとし、他人が見ることを考えて写真の位置情報や、個人を特定できるような写真は投稿しないよう強調した。災害発生など非常時にデマが流れたり、うそや思い込みの話題も多いとし、見極めの大切さや大人への相談の必要性を指摘。より正しく楽しく使うため、「1日に○時間だけにするなど家族でルールを決めてほしい」と呼び掛けた。
 
 終わりに、親子で「スマホデビュー検定」に挑戦。オンラインゲーム中にしてはいけない行動や、「スマホ依存(スマホの使用がやめられなくなってしまう状態)」にならないよう気を付けることなど、使い方を振り返ったり、話し合いながら知識を深めた。
 
「スマホデビュー検定」に挑戦する親子

「スマホデビュー検定」に挑戦する親子

 
正しい?間違っている?問いに向ける視線は真剣

正しい?間違っている?問いに向ける視線は真剣

 
 小山琉世さん(6年)は「知らない人とつながってしまうのが怖いから、オンラインゲームはやっていない。スマホを持つようになったら気を付けて使いたい」と話し、妹の結凪さん(4年)もうなずいた。父親の純平さん(36)は「うちは厳しい方」と言うが、「中学生になったらスマホを」と思案中。「子どもたちを信頼しているけど」と母親の美紀子さん(36)と顔を合わせ、「親が口うるさく言うことを分かってもらえただろう」と、教室の開催を歓迎した。「ネットは自己責任」とは言え、子どものことはやはり親に責任があるとの考えで、「親も一緒に学んで理解して使えば、子どもも正しく安全に使ってくれるだろう」と話した。
 
 鈴木校長は「危険にあってから知るのでは遅い。今の利用の仕方を見直す機会に。ルールづくりに親子で取り組んでほしい」と求めた。
 
楽しそうに話し合いながら情報モラルについて学んだ

楽しそうに話し合いながら情報モラルについて学んだ

 
「水、くださーい」。力を合わせたプール掃除も楽しそう

「水、くださーい」。力を合わせたプール掃除も楽しそう

 
 親子で学習した後は、プール清掃でも協力。大変なことも「一緒に楽しく」取り組んで、子どもたちの成長を見守り、支えていく。

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土砂災害を知る!釜石・甲子中、工事現場見学 「地域の守り手に」岩手県沿岸振興局、期待込め

工事現場で活用されるドローンの操作を体験する生徒ら

工事現場で活用されるドローンの操作を体験する生徒ら

 
 釜石市甲子町の甲子中(山蔭深思校長、生徒112人)の2年生39人は6日、地元で進められている砂防工事現場を見学し、防災対策や建設業へ理解を深めた。土砂災害に関する出前授業もあり、座学と模型実験を行って有事に身を守る意識を高めた。
 
 建設業の担い手確保などを狙いに、岩手県沿岸広域振興局(土木部)が主催。沿岸振興局が手掛ける「大松砂防堰堤(えんてい)改築工事」(同町大松地内)の現場見学では、土木部の職員や工事を担う山長建設(大只越町)、建設機械レンタル会社イブキ産業(本社・宮古市)の社員らが講師を務め、「土石流などの災害から地域住民の命や財産を守るため」に進める工事の概要を説明した。
 
砂防工事の現場見学で建設業に理解を深めた甲子中2年生

砂防工事の現場見学で建設業に理解を深めた甲子中2年生

 
 もともとあった砂防堰堤は1961(昭和36)年に築造された石積みのもので、60年以上経ち老朽化していた。水漏れや土砂の堆積などにより崩壊し災害につながる恐れがあることから、2023年3月から補強する工事に着手。鋼製の型枠を設置し元の堰堤との間にコンクリートを流し込んで固める作業は数日前に終え、堤長約93メートル、堤高11.5メートルの堰堤本体が完成した。工期は今年8月末までで、今後は原状復旧などを進める。
 
もともとあった砂防堰堤を補強する形で改築工事を進めた

もともとあった砂防堰堤を補強する形で改築工事を進めた

 
砂防堰堤の上流部に堆積する土砂(手前)。大小さまざま

砂防堰堤の上流部に堆積する土砂(手前)。大小さまざま

 
 生徒は、工事の計画づくりや進捗(しんちょく)確認などに使うドローンや土砂を掘削するのに使うバックホーの操作に挑戦。安全教育として仮想現実(VR)で落下物の事故に遭う体験、高所作業車にも試乗した。講師らは「建設現場では未来の形という最新技術をうまく利用している」とアピール。その形を生徒たちがつないで「建設業の未来をつくってほしい」と思いを伝えていた。
 
現場の地形を把握するのに活躍するドローンの操作体験

現場の地形を把握するのに活躍するドローンの操作体験

 
高所作業車に乗って工事現場を見渡す生徒ら

高所作業車に乗って工事現場を見渡す生徒ら

 
VRでの事故体験は建設業の安全教育に活用する

VRでの事故体験は建設業の安全教育に活用する

 
 座学は学校で行い、土木部の職員が土砂災害の発生状況や土石流、地滑り、崖崩れの特徴を写真や映像で解説した。模型実験で生徒たちは、堰堤などの砂防施設が上流から流れる土砂を受け止め、勢いを弱める様子を見て、その役割を認識。安心感を得た生徒らに、講師は「必ず砂防堰堤があるわけではなく、あったとしても災害は想定を上回ることもある。大丈夫と思わず、逃げることを考えてほしい」と強調した。
 
模型を使った実験で、砂防施設の役割を学ぶ生徒

模型を使った実験で、砂防施設の役割を学ぶ生徒

 
土砂災害についても学び、身を守る意識を高めた

土砂災害についても学び、身を守る意識を高めた

 
 建設業についての説明も。座学の講師を務めた沿岸振興局河川港湾課技師の三浦賢太郎さん(26)は大槌町の出身で、小学6年生の時に経験した東日本大震災とそこからの復旧、復興の歩みを見つめ建設業や土木関係の仕事に興味を持った。「地元のために役立てる仕事をと選んだ道。自分たちが計画した事業が形になった時の喜びは大きい。中学生に建設業に触れてもらってうれしいし、きっかけは何でもいいので興味を持ってほしい」と望んだ。
 
 建設現場で働く姿を想像しながら、さまざまな体験活動に取り組んだと話すのは、小林悠人さん。「重機の操作は難しいけど、楽しかった。いろいろ覚えられるのもすごい。(建設業は)楽しさだけじゃない、どこかで事故が起きるかもしれない厳しさもあると感じた。知らなかった職業を知る機会になったのは良かった」と視野を広げた。
 
重機の操作は真剣に、高所作業車の試乗は楽しく

重機の操作は真剣に、高所作業車の試乗は楽しく

 
工事関係者と触れ合い笑顔を見せる生徒たち

工事関係者と触れ合い笑顔を見せる生徒たち

 
 佐々木ひよりさんは「災害があったとしても生きていられるのは、こうした構造物をつくる活動のおかげで、感謝しながら生活したい。地域のことを考えて仕事をしていることが分かった。災害への備えも大事だと改めて感じた。防災マップを確認したり、家族が別々の場所にいた時の避難とか対策を考えてみる」とうなずいた。
 
 中高生ら若い世代に建設業界の魅力を伝えようと実施する出前授業や現場見学会は本年度、計6回予定する。沿岸振興局調整課の本間健一郎課長(技術特命参事)は「楽しみながら体験することで、一人でも多く興味を持ってもらい、将来の選択肢に考えてほしい。地域、地元の守り手になってもらえたら」と期待する。

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漬梅×しょうゆ×鶏肉 釜石産食材で新商品誕生 未利用資源活用へ4社がタッグ

「梅ぇ鶏(うめぇどり)プロジェクト」新商品発表会=6日、TETTO

「梅ぇ鶏(うめぇどり)プロジェクト」新商品発表会=6日、TETTO

 
 釜石市の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)の梅酒製造で出る「漬梅(つけうめ)」を活用した新商品が誕生した。漬梅ペーストとしょうゆで味付けした鶏肉の冷凍加工品で、その名も「むね肉の漬梅焼き」。同市で操業する食品加工の麻生三陸釜石工場(本社・神奈川県平塚市)、鶏肉生産加工販売のオヤマ(本社・一関市)、みそ、しょうゆ製造販売の藤勇醸造(釜石市)が協力して開発した。生産者と事業者の連携、SDGs(持続可能な開発目標)を意識した取り組みで、地域農畜産業の活性化、地元食材の発信につなげていく。
 
 「梅の日」の6日、同市大町の市民ホールTETTOで新商品の発表会が開かれ、市内飲食店、宿泊業者を含む関係者約50人が出席した。商品開発に関わった4社の代表と梅生産者がこれまでの経緯を説明。解凍して加熱した商品が振る舞われた。試食した人たちからは、肉のやわらかさに感激する声が。鼻から抜ける梅のさわやかな香りも好評だった。
 
新商品開発について話すプロジェクトメンバーら

新商品開発について話すプロジェクトメンバーら

 
新商品「むね肉の漬梅焼き」を試食する発表会の出席者ら

新商品「むね肉の漬梅焼き」を試食する発表会の出席者ら

 
 平治旅館(中妻町)の平松正浩代表(65)は「むね肉のパサつき感がなく食べやすい。梅の香りもあり、しょうゆとの風味のバランスもいい」と話し、「焼き鳥みたいに串に刺したり、提供の仕方も工夫すれば(旅館の食事にも)使えそう。客に『これが食べたい』と思わせるようなストーリー的アピールがあればなお良い」と発信力に期待した。
 
 原材料には、オヤマが釜石市の養鶏農場などで生産するブランド鶏「奥州いわいどり」が使われる。漬梅の種を取りペースト状にしたのは、数年前から研究を重ね、加工技術を確立してきた麻生。味付けには漬梅ペーストとともに、釜石市民なじみの味、藤勇のかけしょうゆが使われた。オヤマ独自の技術で“しっとりやわらか”な口当たりを実現。一口サイズの適度な薄さのカットで、火が通りやすく家庭でも消費しやすいよう配慮した。
 
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写真左:浜千鳥が販売する梅酒 同中:(上から)梅酒製造に使う地元産青梅、製造後の漬梅、麻生が加工した「漬梅ペースト」 同右:藤勇醸造の「かけしょうゆ」

 
解凍後、加熱した「むね肉の漬梅焼き」

解凍後、加熱した「むね肉の漬梅焼き」

 
 商品化に向け一番の課題だったのは梅のえぐみの解消。オヤマの開発チームが試行錯誤の末、ベストな味バランスにたどり着いた。同社の小山達也常務取締役は「鶏のイノシン酸、しょうゆのグルタミン酸、梅のクエン酸と3つの掛け合わせが、うまみの相乗効果を生み、まさに『最高傑作』ができた」と太鼓判。クエン酸には疲労回復、抗酸化作用による美肌効果があるとされ、高タンパク、低脂質の鶏むね肉とともに健康食材としてもアピール。「自由にアレンジしてもらい、飲食店や子ども食堂、学校給食など幅広く活用してもらえれば」と望んだ。
 
新商品を熱くPRするオヤマの小山達也常務取締役(左)

新商品を熱くPRするオヤマの小山達也常務取締役(左)

 
 浜千鳥は地元産青梅を使った梅酒製造のため、2010年に生産者からの一括集荷を開始。当初は1トン程度の集荷で、梅酒販売も夏限定だったが、14年に生産者らによる釜石地方梅栽培研究会(前川訓章会長)を立ち上げたことで栽培技術が向上。年に約2~3トン集まるようになり、通年販売も可能となった。生産拡大に伴い、会では梅酒製造後に廃棄されていた漬梅の活用策も模索してきた。これまでに県外業者への販売、地元ジェラート店での活用、ジャムやサイダーの商品化が実現しているが、継続的な廃棄量ゼロには至っていなかった。
 
釜石地方梅栽培研究会の青梅集荷会=昨年6月、栗林町

釜石地方梅栽培研究会の青梅集荷会=昨年6月、栗林町

 
 会の事務局を務める浜千鳥の奥村康太郎醸造部長は、「なかなか利活用が進まなかった」漬梅の新商品開発について、「オヤマさんの技術の結集で、すごくおいしい商品に仕上がった。梅の香りが後からフワッとくる」と絶賛。オヤマの養鶏農場は栗林町にあり、同町には梅生産者も多いことから、「業種の違うものが同じ地区でコラボできたのは喜ばしい。釜石の農畜産物の新たな連携の形として、今後にも期待したい」と話した。
 
 釜石市は地形的に広い農地の確保が難しく、耕地面積は市の総面積の1.7%。23年産の農業産出額は1億5千万円で、県内最下位となっている。畜産業を含む課題解決に乗り出す市は、収益性の高い農畜産物の生産、地産地消の推進を掲げ、他産地との差別化、市内での購入機会増、事業者による利活用促進を図る。今回の新商品開発もそうした取り組みの一環。市の声掛けにオヤマなどが賛同し、昨年12月にプロジェクトが発足。約半年という短期間で商品販売にこぎ着けた。
 
新商品の試食に先立ち、釜石市の農畜産業の現状と課題解決への取り組みが説明された

新商品の試食に先立ち、釜石市の農畜産業の現状と課題解決への取り組みが説明された

 
 「むね肉の漬梅焼き」は内容量300グラムで、希望小売価格600円。店頭販売は道の駅釜石仙人峠、かまいし特産店(シープラザ釜石内)で実施。通信販売はオヤマのネットショップ「奥州いわいネット」で購入可能。今後、同市のふるさと納税の返礼品としても活用される予定。