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休載(記事配信休止)期間:2024年12月28日(土)~2025年1月6日(月)
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2024年12月20日
釜石まちづくり(株)
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2024年12月20日
釜石まちづくり(株)
「将棋フェスティバルin釜石」に参加した小山怜央四段(右)
釜石市出身で、岩手県初の将棋のプロ棋士となった小山怜央四段(31)。今夏、フリークラスから順位戦C級2組への昇級を決めた。飛躍を続ける地域の星を応援しようと、市民らが棋士と交流する「将棋フェスティバル」を企画。愛棋家や子どもたちと触れ合った小山四段は「釜石に関するいいニュースの発信源になれるよう頑張りたい」と意気込みを見せた。
イベントは8日、同市大町の市民ホールTETTOで開かれた。岩手日報釜石広華会(新里進会長、25会員)、岩手日報社が主催。小山四段、渡辺明九段(40)、本田小百合女流三段(46)を招き、市内外のファンら約200人が集結。憧れの棋士との指導対局やトークを楽しんだ。
小山四段、渡辺明九段、本田小百合女流三段によるトークショー
トークショーは、釜石出身のフリーアナウンサー佐野よりこさんが進行役を担当。棋士3人はそれぞれの将棋にまつわる経験や印象に残る対局について語った。将棋界における人工知能(AI)の活用について、渡辺九段は「誰もが使うようになって、むちゃくちゃ大変になった。AIで研究しようと思えば終わりがない。時間がいっぱいあった5、6年前に戻りたい」と苦笑い。本田女流三段は「AIは研究には欠かせない存在」とし、小山四段も「研究すべき視点が明確になった。『これを習得できた』みたいな実感を得られる」と恩恵があることを明かした。
特に注目されたのは「どうやったら強くなれるのか」という質問。渡辺九段が「普段から『分からない』と答えている」と明かすと、本田女流三段が「それを生で聞けた」と返し、和やかな笑いを誘った。そして、「得意戦法を持つことや、詰将棋(つめしょうぎ)をやるのがいい。終盤力を鍛えるのに役立つ」とアドバイス。小山四段は「自分の体験と重なる部分が多い」と同調した。
憧れの棋士たちのトークや抽選会をファンらが楽しんだ
また、将棋の普及に関して渡辺九段は「地域にある教室や指導者の存在が大きいが、それがない地域もあるので課題だと思う」と指摘。本田女流三段は「学校教育とかで取り入れてもらえると、初心者や子どもたちにも将棋の楽しさを伝わる」と伝統文化としての魅力の浸透に期待を込めた。
子どもたちを相手に対局する「多面指しぐるぐる将棋」
イベント終盤では、棋士3人が小中高生約20人と一斉に戦う「多面指しぐるぐる将棋」が行われた。紫波町から参加した小学6年生の櫻田大貴さんは「すごい人たちと指すことができて楽しかった。感想戦では褒めてもらってうれしい。こつこつ勉強を続けて強くなって、小山四段のように棋士の道を進んでいけたら」と夢を膨らませた。
将棋ファンの大人たちは、受ける棋士の手に視線が集中。地元の佐々木信孝さん(74)、鈴木守義さん(80)は「子どもたちもなかなかの腕前、強い」と“見る将”を満喫した。小山四段の活躍に注目していて、「これからも上がっていくのを期待している」と応援を続ける構えだ。
プロ棋士と子どもたちのやり取りに熱視線を送る大人たち
盤面に鋭い視線を送り、思考し、繰り広げられる真剣勝負。決すと笑顔も
将棋フェスは、釜石が持つ文化的魅力と将棋界の発展をつなぐ意義深い催しとなった。主催者の新里会長(66)は「小山四段の存在がきっかけとなった。プロ棋士との交流で刺激を受け、将棋人口が増えれば」と願った。
名棋士を囲んで記念写真に収まる子どもたち
小山四段は翌9日、父・敏昭さん、母・聖子さん、日本将棋連盟釜石支部長の土橋吉孝さんとともに市役所を訪れ、小野共市長に昇級を報告。「地元の期待に応えたい」と思いを伝えた。
昇級を報告するため市役所を訪れた小山四段(中)
活躍に祝意を表した小野共市長(右下写真・左)らと懇談
来年度から順位戦に挑む小山四段は「長時間の対局に耐えられる体力と集中力をつけたい。どんな戦型にも対応できるよう準備し、勝率6割を目指したい」と抱負を語った。小野市長は「諦めず夢を持ち続けて取り組めば、かなう。それを体現する怜央さんは我々のスター。徹底的に応援する」とエールを送った。
小山四段は7月の棋戦で谷川浩司十七世名人に勝利し、成績要件(30局以上指して勝率が6割5分以上)を満たして昇級を果たした。プロ入りから約1年半での達成に「思ったより早い」と振り返りながらも、「厳しい世界なので、現実を見据えながら頑張りたい」と気を引き締めた。
地元からの応援を力にさらなる高みを目指す小山四段
地元からの応援を実感している小山四段は「常に釜石のいいニュースになるよう、一つひとつ結果を残していきたい。最近は負けが込んでいるが、しっかり頑張るので安心してください」と笑顔で決意を語った。
今季リーグ戦の開幕に向け、出陣式で共に戦う気持ちを高める選手とファンら
NTTジャパンラグビーリーグワン2部の日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)は21日、今季リーグ戦の初戦を迎える。13日、シーズン開幕に向けた出陣式が釜石市港町のイオンタウン釜石で行われた。プレシーズンマッチを5勝1敗で終え、勢いづくチームにファンらの期待も高まる今季。式に出席した選手らは「1試合でも多くの勝利を届けたい」と強い決意を見せた。
会場にはファン、スポンサー企業の代表ら約50人が集まった。須田康夫ヘッドコーチ(HC)は「今季こそたくさん勝利する姿をお見せしたい。ぜひグラウンドに足を運んで応援を」と切望。今季からチームをまとめるSH村上陽平主将は「プレマッチでは例年にない、いい結果を残した。慢心することなく、シーズンでも結果を出せるようチーム一丸となり頑張っていく」と決意表明。フランカー河野良太クラブキャプテンは「昨年の悔しさを晴らすべく8月から練習を重ねてきた。プレマッチのいい流れのまま、勝利を積み重ねていければ」と闘志を燃やした。
日本製鉄釜石シーウェイブス 2024-25シーズン出陣式=13日、イオンタウン釜石
ファンらの前で意気込みを述べる(写真上段左から)須田康夫HC、村上陽平主将、河野良太クラブキャプテン
スポンサーを代表し、日本製鉄北日本製鉄所の倉地三喜男副所長(釜石地区代表)は「多くの支えがあることを忘れず、最後まで思い切り戦ってほしい。熱い声援が必ず選手の力になる。1人でも多く足を運んでいただき、チームの背中をみんなで押していきたい」。かまいしラグビー応援団の土肥守副団長は「17年追っかける中で今年は一番強い。体ができているし反則が少ない。今年の試合を見ないと損」と太鼓判を押し、SW応援歌の熱唱でチームを鼓舞した。
熱い応援メッセージを送る倉地三喜男副所長(写真左上)と応援歌で激励する土肥守副団長(同右上)。参加者が手拍子で応援歌を盛り上げる(同下)
リーグワン2部は今季、昨季より2チーム増の全8チームで争う。リーグ戦は来年5月まで14試合が組まれる。昨季6チーム中6位(1勝11敗)で、3部との入れ替え戦(2勝0敗)で2部残留を決めたSW。今季は「4位以内」を目標に掲げる。
21日の開幕戦、九州電力キューデンヴォルテクス戦について須田HCは「プレマッチでは勝っているが、決して油断できない相手。いかに自分たちを律してプレーするかが一番の鍵」。ホームの釜石鵜住居復興スタジアム(うのスタ)での初戦は28日、グリーンロケッツ東葛との対戦。「相手は体が大きく、フィジカルにプレーしてくる部分が多いが、自分たちはしっかりエリアを取って負けないラグビーをしたい」と意気込む。
仲間の信頼も厚く、その采配が注目される村上主将は「いかにチームを前に引っ張っていくかにフォーカスしてやっていきたい」と長丁場のシーズンを見据える。まずは未勝利の開幕戦で「必ず勝って勢いをつけたい」とスタートダッシュを誓い、2戦目のホーム、東葛戦で昨季の雪辱を期したい考え。
出陣式にはプロップ松山青、同青柳魁、フランカー髙橋泰地の3選手も出席。仕事とラグビーの両立について、職場の理解やサポートへ感謝の気持ちを示した。チームグッズなどが当たる抽選会もあり、選手とファンが楽しく交流した。
仕事とラグビーの両立などについて話す(写真上段左から)松山青選手、青柳魁選手、髙橋泰地選手
坂下功正総監督(写真左上)もチーム状態の良さをアピール。抽選会では選手が賞品を手渡した(同下)
チームスポンサー企業に勤める釜石市の阿部刀也(たつや)さん(50)は「うのスタでのプレマッチも見ていたが、今年は本当に強いと感じる。期待しているので、頑張って4位以内を達成してほしい」とエール。SWジュニア団員の大和田崇太さん(11)は昨季負けたチームに勝てるかどうかに注目。「バックス陣に足が速い選手が多いので機動力に期待」と話し、大ファンのSO中村良真選手の「活躍が見たい」と目を輝かせた。
釜石SWのホストゲーム全7試合は、全国の小中学生と70歳以上が入場無料となる(自由席に限る)。28日のうのスタ初戦、グリーンロケッツ東葛戦は午後1時キックオフ。地元の桜舞太鼓が選手入場などを盛り上げるほか、ハーフタイムには釜石応援フラッグチーム「ちあ釜」のパフォーマンスが予定される。試合後は誰でも参加可能な「ラグビーのまち釜石教室」、選手の見送り、写真撮影、サイン会も実施する予定。
東北銀行釜石支店で行われた強盗事件を想定した対応訓練
釜石市大渡町の東北銀行釜石支店(水野吾一支店長)で4日、強盗の侵入を想定した行員の対応訓練が行われた。年末にかけ、金融機関を狙った強盗事件が多発傾向にあることから、釜石地区金融機関防犯協会(会長:安田重行岩手銀行釜石支店長、26機関)が会員機関で毎年実施している訓練。同行同支店では約10年ぶりの開催となった。訓練の様子は他機関の職員も見学し、いざという時の対応を学んだ。
訓練は釜石警察署(三浦正人署長)の協力を得て実施。想定は、口座開設を希望する客を装った犯人が窓口を訪れ、行員が対応する中、もう一人の犯人が拳銃を発砲して行内に侵入。ロビーに座っていた女性客を人質に取り、行員らを脅して現金を強奪するというもの。
2人組の強盗犯が時間差で侵入。拳銃を向けて行員を脅す(訓練)
犯人は来店客を人質に取り、現金をかばんに入れるよう要求(訓練)
警察官が扮(ふん)する犯人は大声で威嚇し、指示に従うよう要求。行員を後方の壁際に立たせ、女性行員に現金を出すよう命令した。金庫から出した金を差し出すが、犯人は再度要求。持参したかばんに金を詰めさせ奪うと、発砲して逃走した。行員3人がすぐさま追いかけ、逃走車両に蛍光塗料を付着させるためのカラーボール(訓練用)を投げつけた。行内では人質になった客のけがの有無を確認し保護。犯人の足跡を消さないよう逃走経路に新聞紙を敷き、移動範囲をテープで仕切り現場保存(証拠保全)した。
逃走した犯人を追いかけ、防犯カラーボール(この日は訓練用)を投げる。地面などに当て車両に蛍光塗料を付着させるのが目的
逃走経路に新聞紙を敷き、人質になった客を安全な場所に誘導。見学者が一連の行動を確認した
犯人侵入直後に行員が押した非常通報ボタンで、警察は事件発生を認知。指令を聞いた近くをパトロール中の警察官がまもなく駆け付け、行員から犯人の体格や服装、逃走方向や車種、ナンバーなどを詳しく聞き取り、情報が無線で伝えられた。
駆け付けた警察官の聞き取りに、犯人の情報をできるだけ詳しく伝える
訓練後、釜石署生活安全課の高橋友一課長は「被疑者の人相や着衣を覚える人、カラーボールを投げる人、現場保存する人など役割分担ができていて、落ち着いて対応していた。臨場した警察官への説明もうまくできていた」と評価。その上で、「被害に遭った時、一番大事なのは自分たちと客の身の安全を確保すること。防犯カメラの映像も重要な手掛かりとなるので、日ごろから設備の点検や店外の様子の確認を」と防犯意識を促した。参加者からは拳銃を使った犯罪への望ましい対応についても質問があった。
入行1年目の佐々木長政さん(23)は初めての訓練だった。非常通報ボタンを押し、犯人の特徴を覚え、カラーボールを投げる係を担当したが、「カウンターの中にいると下半身が見えなくて。さらには犯人に後向きにさせられたので、人相とかの記憶が曖昧(あいまい)だった」と振り返り。対応の難しさを感じつつ、「まずは慌てないこと。お客さまに被害を与えないよう、日ごろから対策を確認し、非常時に備えることが大事」と意識を高めた。
写真上:訓練後の振り返り。犯人の特徴を記憶していたかをチェック 同下:水野支店長の話を聞く参加者
水野支店長(54)は「訓練とはいえ迫力があり、みんな気が動転していたようだが、防犯教材などを見て準備してきたことはある程度、冷静にできていたと思う」と所見。予測できない強盗事案への対策として「日ごろからお客さまの目を見て話す、怪しい人物が入ってきた時は一声かけるなど、犯罪のけん制になる対応を心がけたい。今回の訓練を振り返り、行員全員で気を引き締めていく」と話した。
協会の安田会長は「全国的に金融強盗は減少傾向にあり、県内でも2006年を最後に18年間発生していないが、近年の特徴として出退勤の職員を脅して店内に侵入し、金庫を開けさせるという事案も発生している」と説明。訓練を見学した各機関の職員に対し、「今日出た注意点を持ち帰り、各店で再確認、徹底を」と呼び掛けた。
鵜住居川を進む小型ボート。釜石商工高生が製作した
釜石市大平町の釜石商工高(今野晋校長、生徒180人)の機械科3年生21人は、バイク製作やボードゲーム作りなど4つのテーマで課題研究カリキュラムに取り組んでいる。このうち、小型ボート(2人乗り)の製作に挑んだ7人が6日、同市鵜住居町の鵜住居川で出来栄えを確認。「学びや実習の経験を生かせた。楽しい」と納得の笑顔を連鎖させた。
課題研究で小型ボートづくりに挑戦した機械科の生徒7人
課題研究は5月に本格化。小型ボート班は、製作や運航を通じて安全に関する知識や理解を深めることも目的に、今年初めてテーマに組み込まれた。楽しいことが好きな7人が選択し、週3時間、ものづくりを通じた学びの深化に取り組んできた。
ボートは発泡スチロール製。ガラス繊維で強化し、さらに繊維強化プラスチック(FRP)樹脂で固めて船体を作り、船舶用塗料で塗装した。手こぎ用にオールも作製。旋盤を使って加工し、固定する金具部分は溶接で仕上げた。製作の過程では、船体の曲げ加工や樹脂の塗布で隙間ができるなどの課題に直面。試行錯誤を重ねて完成させた。
川で実運転をする一週間ほど前に、市営プールで試験運転を行った。その際、船体の下部から水が浸入するトラブルが発生。この問題を受け、塗料を3度重ね塗りし、再度運航に臨んだ。
進水場所を探して堤防を歩く釜石商工高の生徒ら
進水場所は鵜住居水門付近。初めにオールを使った手こぎで船を出した。想定通りに船が進むと、生徒らは「おー、やったー」と歓声を上げた。さらにボート用のエンジンを取り付けた運航も確認。交代で2人ずつ乗り込み、安定性や耐久性に好感触を得た。
期待を込めて鵜住居川に船を運ぶ生徒ら。浸水なし「よし」
ライフジャケットや救助用のロープを用意し安全対策もよし
エンジンを取り付けてスムーズに進むボートに「よっしゃー」
この取り組みで生徒たちは、模型作りに3次元(3D)CADを使い、ボートやオールで使うパーツの寸法を測ったり、切り抜く作業でも校内にある機械を活用。船体とオールの製作を担当する班に分かれ、進ちょくを確認しながら作業を進め、計画性とチームワークの重要性を学んだ。試験運転での問題点を本番前に修正できたことも成長につながった。
鵜住居水門そばでボートを走らせて成果を確認した
仲間と挑むものづくりの楽しさを共有した生徒たち
リーダーの栗澤大翔さんは「実習の経験を生かしたものづくりができた。苦労もあったが、みんなで意見を出し合い、改善した結果。みんなが楽しそうに乗っていたのがうれしい」と胸を張った。地元の空気圧機器メーカーに就職が決まっていて、「技能職として力を発揮したい。仕事以外でも地域を盛り上げられたら」と未来を思い描いていた。
活動を見守り、指導や助言をしてきた同科の似内拓也教諭(34)は「樹脂の固まりのでこぼこをなくすため、ひたすら削ったり、細かい作業、根気のいる作業が多かったが、粘り強く取り組んでいた。船体の表面の滑らかさ、船の浮いたバランスも良かった」と肩の力を抜いた。最後まで楽しそうな姿が印象的な7人に目を向け、「職場で粘り強く頑張ってほしい」と願った。
小型ボート製作に取り組んできた生徒と見守った教師ら
今回、浮かぶ船の製作には成功したが、7人はさらなる改良の余地があると感じている。年内に科内の成果発表会があり、1、2年生に活動を紹介。「ハンドルなど船内の改装をしてほしい」などと希望を伝え、次年度以降、引き継ぎたいと名乗り出る後輩の出現を待つ。
優勝旗を掲げて笑顔を見せる佐藤碧空さん(左)と山崎陽介さん
11月に開催された第71回岩手県中学校総合体育大会(中総体)の第41回ラグビーフットボール競技の部で、釜石中(佐々木一成校長、生徒294人)の特設ラグビー部が2年連続の優勝を飾った。主要メンバーらが12月4日に市役所を訪れ、小野共市長に報告。決勝では甲子中との同地区対決を制して栄冠を手にし、「ラグビーのまち釜石」の未来や飛躍を感じさせた。
大会は11月2、3日に北上総合運動公園で開催。6チームが2組に分かれて予選リーグで熱戦を繰り広げた。釜石中は、甲子、釜石東の同地区3校による組で総当たり戦を展開。甲子に敗北し2位で通過した。決勝トーナメントの準決勝で別組1位の宮古合同チーム(宮古地区などの7校で結成)と対戦。経験値では劣る部分があったというが、持ち前の精神力とチームワークを発揮し勝利を収め、決勝に駒を進めた。
決勝戦の相手は、予選リーグで敗れた甲子。悔しさを持つ釜石は、「必ず勝つ」とチーム一丸となって試合に挑んだ。終盤、残り1分半で逆転を許す苦しい展開となったが、最後のプレーで劇的な逆転トライを決め勝利を収めた。
2連覇を果たした釜石中特設ラグビー部の選手たち(学校提供)
釜石から出場する3校はみな特設ラグビー部として結成される。釜石中も部活動を引退した3年生を中心に編成。昨年の優勝を経験した3人が広報活動を通じて仲間を増やし、マネージャーを含めて24人が集まった。夏休み中に3回ほど練習日を設け、休み明けからは週2~4回、放課後に活動。競技経験者や学校OBらが加わったコーチ陣によると、未経験者の吸収力が大きな強みとなり、短期間で実力が高まったという。
「雰囲気がいい」と佐々木校長が見守った選手らは、大会当日も試合後や移動中に積極的に話し合い、戦略を練って「勝つこと」を意識し続けた。マネージャーが作成した名前入りのキーホルダーが選手たちの士気を高めるなど、チーム全体の結束力がこの結果を支えた。
人差し指を立ててポーズを決める釜石中生と小野共市長(左)
市役所訪れたのは、釜石中特設ラグビー部主将の佐藤碧空(そら)さん、山崎陽介さん(ともに3年)、佐々木校長ら関係者6人。佐藤さんは「全員が勝つぞと優勝に向かって試合していて、その雰囲気を保ちながら最後まで戦えた。全員が練習したことを本番で発揮できた」と報告。同部顧問の鈴木悠太教諭、コーチの山崎政仁さんと前川靖展さんが試合展開やチームづくりの過程などを小野市長ら市関係者に伝えた。
釜石中の関係者が市役所を訪れ、中総体での優勝を報告した
釜石中の佐藤さん、山崎さんはともに幼少期から地元ラグビーチーム・釜石シーウェイブス(SW)のジュニアチーム「釜石シーウェイブスジュニアラグビースクール」に所属し、競技に打ち込む。市外へ進学を予定する佐藤さんは「高校でもラグビーを続け、この経験を力に頑張りたい」と次のステージへの意気込みを語った。山崎さんは競技を通して広がった人の輪を生かし、「地元でラグビーを盛り上げていきたい」と決意を述べた。
連覇を喜ぶ生徒たち。「高校でもラグビーを」と思いを伝えた
健闘をたたえる市関係者。「ラグビーのまち」の発信に期待を寄せた
小野市長は「絶対に諦めないという気持ちの強さが勝利を引き寄せた。この成功体験を今後の人生にも生かしてほしい」と選手らを賞賛。同席した高橋勝教育長は「2連覇の意義は非常に大きい。3連覇を目指して」と期待を示したうえで、「釜石から3校が出場したことがうれしい。ラグビーのまちを支える中学生として鍛え合ってほしい」と願った。
【P1】
表紙
【P2-13】
日本製鉄釜石SW 今シーズン初ホストゲーム
身近な笑顔を守る地域の力
【P14-15】
こどもはぐくみ通信
釜石市結婚新生活支援補助金 他
【P16-17】
まなびぃ
【P18-19】
まちの話題
【P20-23】
保健案内板
まちのお知らせ
【P24】
市民百景
釜石市
釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。15日のコンサートに向け「第九」の合唱練習に励む参加者=8日、中妻公民館
釜石の合唱文化の原点、ベートーベンの「第九」が有志の熱い思いで歌い継がれる―。昨年12月、惜しまれながら45年の歴史に幕を下ろした「かまいしの第九」演奏会(実行委主催)。その合唱メンバーに名を連ねてきた釜石市合唱協会(柿崎昌源会長、3団体)所属の各団体会員らが、形を変えて歌い継ぐ方法を模索。新たな試みとなる協会の合同演奏会「つなコン」で、第4楽章(抜粋)を響かせることになった。演奏会は15日午後1時半から市民ホールTETTOで開かれる。
「つながろう・つなげよう・絆のコンサート」と銘打った合同演奏会は4部構成。典礼聖歌などの混声合唱で幕を開け、賛助出演の釜石高音楽部の合唱、女声合唱組曲「遙かな歩み」と続き、合同演奏の「ケヤキ(合唱組曲「よかったなあ」より)」で前半を締めくくる。
休憩後の第4部が「第九」のステージ。第4楽章を通常の3分の2ほどの長さにし、合唱メインの構成で届ける。合唱メンバーは約40人。これまでプロの声楽家を招待していたソリスト(独唱者)は、今回の参加メンバーから男女6人を選出。ソプラノは永田理恵さんと川畑薫さん、アルトは中野和子さん、テノールは大和田宏明さんと石田昌玄さん、バスは小澤一郎さんが務める。指揮は、かまいしの第九で昨年までソリスト(バス)を務め、合唱指導も行ってきた小原一穂さん(盛岡市)。演奏は釜石市民吹奏楽団の団員を中心とした19人で編成し、管楽器主体のミニオーケストラとなる。
ソリストは地元在住者を中心とした男女6人が務める。ソプラノとテノールは2人体制
釜石市民吹奏楽団の団員を中心とした有志が楽器演奏を担当
8日、中妻公民館で行われた最後の合同練習では、指揮者の小原さんの指導のもと、テンポやタイミング、強弱など細かな部分を調整。1週間後に控えた本番に向け、約2時間にわたって熱のこもった練習が続いた。
ソプラノソリストの2人は「素人が出すのは難しい音域。声帯も筋肉なので、運動しながら頑張ってきた」と口をそろえ、永田さんは「この半年間、生活のほとんどが第九練習」、川畑さんは「コロナ禍前以来の参加で、声を戻すためにレッスンを受けた」と苦労を明かした。それでも第九を歌える喜びは大きく、「みんなのやりたいという気持ちが原動力。(釜石の第九演奏会を始めた)渡邊顯麿先生(故人)もきっと見ていてくれていると思う」と川畑さん。永田さんは「プロのような演奏ではないが、同じ市民目線であたたかく見守っていただければ」と本番を心待ちにする。
トランペットの岡本崇子さん(44)は3回目の第九オケ参加。「弦楽器のプロが主体だったこれまでに比べ個々の負担が大きく心配もあるが、アットホームでもいいからきちんと形にして届けたい」と意欲を見せる。形を変え続く第九には「楽器が吹けなくなったら合唱で…という夢も持ち続けてきた。希望がつながった」とうれしさをのぞかせた。
合唱にはこれまでかまいしの第九を歌ってきたメンバーらが集う
小原一穂さん(写真左上)の指揮で届ける初めての第九。本番へ意欲を高める
指揮者の小原さん(65)は、かまいしの第九のソリストを約30年務めてきた。今回の試みに「新鮮な驚きとともに、やっぱり皆さん、歌いたいんだな」と思いを受け止める。小原さんが第九演奏で指揮するのは初めて。「出演者の第九を愛する気持ちを届けられれば。昨年の演奏会終了後、観客の寂しがる声も多数あったので、『また聞けて良かった』と思ってもらえるような演奏ができれば」と本番を見据える。
1978年の「かまいしの第九」スタートの礎となったのは、前年77年に釜石混声合唱団が行った釜石初の第九演奏。合唱メンバー27人、吹奏楽10人足らずの編成だったという。今回の試みは、いわば“原点回帰”。釜石の合唱文化を次世代につなぐ方策を考える中、合唱協会が中心となって「新たな一歩を踏み出せれば」と、第九を含めた合同演奏会開催を発案した。
合唱協会事務局長の小澤一郎さん(47)は「コロナ禍で演奏活動が休止になった時、その後の再開には大きな労力を要した。何とか間を空けずに…と考え、有志で動き出すことにした」と開催経緯を説明。「釜石で培われた合唱をつないでいきたいというのが一番の思い。その一部が第九。来場をきっかけに、歌い継いでいく仲間が増えてほしい」と願う。
合唱メンバーは約40人。一人一人がこれまで培った力を発揮する
10人ほどが初めての第九演奏。経験者のアドバイスを受けながら練習に励む
釜石市合唱協会合同演奏会「つなコン」は15日午後1時半開演(同1時開場)。入場料は500円(未就学児無料)。プレイガイドは釜石市合唱協会、市民ホールTETTO。
「地域医療連携推進法人」設立に向けた準備委員会の総会=3日、釜石PIT
地域の医療機関が連携し、医師の相互支援や医療機器の共同利用などで経営の安定化、患者の安心につなげる「地域医療連携推進法人」設立への取り組みが釜石市で始まった。3日、市内の医療法人や医師会、市などによる設立準備委員会が発足。会則や体制、法人の名称を決め、連携方針を確認した。今後、一般社団法人として組織化し、2025年度内に同連携推進法人の認定を得たい考え。認定されれば県内では初の事例となる。
準備委は医療法人楽山会(せいてつ記念病院、佐藤滋理事長)、独立行政法人国立病院機構(釜石病院、岡田千春審議役)、医療法人仁医会(釜石厚生病院、釜石のぞみ病院、鹿野亮一郎理事長)、医療法人社団KFC(釜石ファミリークリニック、上村明理事長)、一般社団法人釜石医師会(小泉嘉明会長)、釜石市(小野共市長)で構成。3日に開いた準備委設立総会で、会長に楽山会の佐藤理事長、副会長に医師会の小泉会長を選出した。
法人の名称は「釜石スクラムメディカルネット」に決定。“ラグビーのまち釜石”にちなみ、手を取り合い、スクラムを組んで地域医療の充実を図りたいとの思いが込められる。ロゴマークにもラグビーボールやスクラムをイメージしたデザインが採用された。
設立準備委は医療法人、医師会、市などの6者で組織
法人のロゴマークは4デザイン案からD案(写真右)を選んだ
「地域医療連携推進法人」は地域内で医療機能の分担、連携を進めるため、国が2017年度に創設した法人制度。釜石保健医療圏(釜石市、大槌町)では人口減少に伴い患者数が減少。少子高齢化による労働人口の減少もあり、医療従事者の不足など各医療機関は多くの経営課題を抱える。そうした厳しい状況下でも、住民が求める医療提供体制を維持していく必要があると、同市の医療法人が中心となり、同連携推進法人の立ち上げを決断した。
同市で目指すのは、回復期から慢性期、退院後の在宅医療までを担う各医療機関の連携。推進法人に参加する5病院・診療所は機能的重複がないことから、それぞれの医療資源を最大限に活用し、機能分担と業務連携を推進する。急性期からの受け皿としての役割を果たし、介護事業との連携で「地域包括ケアシステム」の充実を図る方針。具体的には▽医師の相互支援▽医療従事者の確保、育成▽医療機器の共同利用▽医薬材料、医薬品の共同交渉、購入▽在宅医療の充実―などを掲げる。
準備委は今後、同連携推進法人の認定に必要な法人格(一般社団法人)取得に向け動く。連携推進法人の認定可否は、一般社団法人から申請を受けた都道府県知事が、医療審議会の意見を聴取して決定する。
設立準備委の佐藤滋会長(写真右上)が議長を務め、提出議案を審議した
準備委会長を務める楽山会の佐藤理事長は「多くの課題はあるが、まずは一つ一つ向き合い、前に進めていければ。回復期、慢性期の医療を担っている私たちがスクラムを組み、必要とする方々が不自由のないようにしていきたい」と話した。
魅力的な写真を展示した(左から)阿部秀見さん、村上民男さん、沼田義孝さん
自然の風景を大判プリントの写真で堪能-。アマチュア写真家の村上民男さん(77)=大槌町、阿部秀見さん(74)=釜石市、沼田義孝さん(71)=大槌町=は12月1日まで、釜石・大町の市民ホールTETTOで三人展を開いた。四季折々の風景を独自の視点で切り取った作品を迫力のサイズで見せた。
写真歴50年超の村上さん、30年以上カメラを手にする阿部さん、本腰入れて約10年となる沼田さんの3人は趣味として撮影を楽しむ仲間。10年継続した愛好グループ・釜石写遊会で作品発表を重ねながら親交を深め、解散した今も情報交換し合う「気の置けない仲」だ。
村上さんと阿部さんは「大型写真を目にする機会を」と5年前に二人展を開いた。撮りためた写真、見てもらいたいものが多くなってきたことから「そろそろ、やろうか」と意気投合。今は矢巾町で暮らす沼田さんにも声をかけ、もとの愛好グループの名をつなぐ「写遊はまゆり」として写真展を催した。
写遊はまゆり」として開かれた三人展
ここ数年に撮った作品を、全倍(90センチ×60センチ)、全倍のほぼ半分の全紙サイズを中心に計約40点展示。国内外の海や山、花や木々、トンボなど、3人それぞれが「これ!」と選び抜いた豊かな自然風景を持ち寄った。
村上さんは、ピンク色に色づき始めた木々の間から望む残雪の岩手山を写した「春・爛漫」、散歩中に見かける三陸鉄道のカラフルなラッピング列車を記録する組み写真「復興の三鉄」など10数点を並べた。モノクロの独特な風合いが魅力的なフィルム時代の作品も紹介。ユニークなタイトルも“ならでは”で、四角い建物の間からのぞく釜石港の荷役クレーンを捉えた一枚には「喜寿にして習作・遠近」と“遊び心”も加えた。
村上さんは身近な風景を切り取った作品を並べた
ソニー製カメラを愛用中。フィルム時代の作品も(右)も紹介
阿部さんは、釜石大観音の朝焼けや朝霧に浮かぶ満開の桜(遠野市)など、早朝の絶景写真を多数見せた。何度も足を運ぶ中で撮影できた貴重な瞬間が来場者の目をくぎ付け。「何回も失敗して…でもそれも楽しい。同じ被写体でも視点を変えれば印象も違う。同じシチュエーションもない。一瞬を撮るのが面白い」と、どっぷりハマる。主役のヒガンバナを印象的に浮かび上がらせた「赤と黒」などカメラの性能を駆使した作品も紹介したり、意欲作を20点ほど出品した。
来場者に撮影場所や独自の視点を伝える阿部さん(奥)
愛機はキャノン製。色彩の対比が印象的な作品が展示された
沼田さんは心動かされる被写体をいつも狙っているといい、「感動したことが出てくるのが写真の良いところ」と笑った。6点出品し、イチ押しの作品はライトアップされた黄葉の木々と御堂が沼に映り込む光景を捉えた「黄金の平泉御堂」。風もなく、ピタッと時が止まった瞬間と現地の感動を封じ込めた。「これだよ!こういうの」「よっしゃー」。撮影者のそんな気持ちを感じ取った多くの人が足を止め、じっくりと見入っていた。
「感動の分かち合い」を楽しむ沼田さん(右)
キャノン製カメラを相棒に狙った風景写真がずらり
3人の撮影スタイルは、グループ活動していた頃から変わらない。「自由に、好きなように。肩肘張らずに楽しんでいこう」が合言葉。村上さんは「気心知れたメンバーだから。みんながリーダー」と、いたずらっぽい笑みを浮かべた。“生きる証し”というカメラは手放せないようで、「いいなと思ったものを撮り続けたい」と意欲は衰えない。
また展示会を―。早くも、次の構想は動き出している。「喜寿の記念に」とつぶやく阿部さんに、「傘寿を迎える頃には見せたい写真がさらに増えているな」と返す村上さん。「展示しきれないものをプロジェクターとか使って映して見せたい。スライドショー、いいね」と、沼田さんは案を出したり。三者三様だ。
釜石リアスライオンズクラブ杯バスケ大会で中学生が熱戦を繰り広げた
釜石市と大槌町でバスケットボールに打ち込む中学生が集う「釜石リアスライオンズクラブ杯釜石地域中学校バスケットボール大会」は1日、釜石市鵜住居町の市民体育館で開かれた。34回を数える今大会で男子は3チームが出場し、優勝杯をかけた熱戦を展開。一方、女子は地域連合の1チームとなったことから、初めて地域外から対戦相手を招待して交流試合という形とした。
男子は釜石、大平、大槌の3校が参加し、リーグ戦に臨んだ。各校とも、個々の競技力やチームメートとの連係などを確かめながら実戦経験を蓄積。その中でも、圧倒的な強さを見せた釜石が優勝を手にした。
ダイナミックな動きやスピード感あふれる試合が展開
チームメートや相手チームの選手の動きを観察しながら応援
女子は今回、大平・釜石・大槌の連合チームとして出場した。各校とも部員数は減り、単独参加が可能だったのは大平だけ。けがなどの理由もあって2校連合も難しく、3校が力を合わせる形となった。10月開催の岩手県中学校新人大会(新人戦)もこのチームで臨んだ。
力を結集して試合に臨んだ大平・釜石・大槌チーム(白)
試合ができない―。動いたのは、釜石中女子バスケットボール部顧問の佐藤彩華教諭(34)。くしくも自身と同じ「34年続く大会を途絶えさせないため」、そして「生徒たちに試合経験を積ませるため」に招待試合を提案した。公式戦審判員としても活躍していることから、新人戦地区予選を勝ち抜いた宮古第一(宮古地区)、高田東・高田第一の合同チーム(気仙地区)に出場を打診し、快諾を得た。
招待試合を提案した佐藤彩華教諭も選手たちと走った
優勝カップを狙う形ではなかったものの、各地区の選手たちは“勝ち”を目指して真剣勝負を繰り広げた。釜石中の川村柚夢(ゆずゆ)さん(2年)は「練習試合の機会を作ってくれた」と、大会関係者や他地区の選手らへの感謝を込めてプレー。他地域の強さや自身の力を確認もでき、刺激を受けた様子だった。連合チームでは伸び伸びとプレーできる環境があったといい、新人戦県大会は1回戦で敗退したものの「悔いなくできた」と満足。「仲間と話し合って協力し、1点、2点…とつないでいくのがバスケの良さ」と改めて感じたようで、「大人になっても続けたい」と笑顔を見せた。
作戦会議は連合チームの連係を強める貴重な時間
宮古市・宮古一中は今回、司令塔役の選手を抜いて参加。佐藤桃心(もこ)さん(2年)は「一人ひとりが練習してきた成果を生かし、それぞれの動きを確かめる機会になればいい。攻守の判断とか自らの積極性を高められたら」と汗を流した。
部員数の減少に悩むのは他地区も同様。気仙の地区大会で女子は初戦が決勝戦で、対戦相手も3校による合同チームだったという。陸前高田市・高田東中の菊谷和桜(なお)さん(2年)は実戦経験を重ねるチャンスと来釜。チームの特徴は「めっちゃ仲良し」と胸を張る一方で、「試合になるとあたふたして周りが見えなくなる。仲の良さをチームワークとして生かせるようにしたい」とうなずいた。高田一中の及川由真さん(2年)は普段、男子に交じって練習し、週1度、東中との合同練習に参加する。地区予選、県大会も一緒に参戦しており、「チームの一員として活躍して、いい結果を残せたら。来年の中総体が最後の大会になるから、もっと力をつけたい」と目標を掲げた。
初参加した宮古市と陸前高田市の中学校チームの試合
手製グッズで子どもたちにあたたかい声援を送る保護者
釜石も含め各地区ではミニバスケットボールに打ち込む小学生は一定数いるが、中学入学時には地域内外のクラブチームに所属し、学校の部活動には加わらないケースが少なくないという。団体競技の継続は厳しさを増すが、頑張る子どもたちを盛り上げようと、保護者らは2階席から声援。高田チームの応援団は“押し”の子の名を記した手製のうちわを振って、より熱い思いを送った。
「実践経験の場をこれからも」との思いを持つ柏舘旨緒会長
釜石地域バスケ大会は、青少年の健全育成やスポーツ振興などを目的に継続。同クラブ(正会員21人)の柏舘旨緒会長は「スポーツも多様化し、部活動が成り立つか心配はある」としながら、「釜石では新人戦後に試合する機会は少ない。交流することで実践経験を積み、来春のチームづくりに役立ててもらいたい」と願う。
鉄の記念日に合わせ、市立図書館が開いた「鉄の町かまいし歴史講座」
釜石市の橋野鉄鉱山を含む「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」(8県11市23資産)は来年、世界遺産登録から10周年を迎える。これを前に同遺産の内容を学ぶ講座が1日、釜石市立図書館で開かれた。「鉄の記念日」に合わせた市民教養講座として同館が企画。同市世界遺産室の森一欽室長が講師を務め、市民ら20人が聴講した。
日本における製鉄・製鋼、造船、石炭産業の急速な発展(1850年代~1910年)を物語る遺構が「顕著な普遍的価値」を有するとして、世界遺産に登録された同遺産。日本の産業革命は非西洋地域では初めて、さらには約60年という短期間で達成されたことから「東洋の奇跡」とも呼ばれる(英産業革命は200年を要した)。
「日本の産業革命はその過程が独特」と森室長。1857(安政4)年、釜石・大橋で日本初の洋式高炉による連続出銑に成功した大島高任は、現物を見ずして蘭学書を頼りに高炉建設を実現した。試行錯誤の挑戦は世界遺産の鹿児島(旧集成館)、韮山、萩の反射炉建設でも象徴される。後に外国人技術者の招へいや留学から戻った日本人の活躍で、長崎、三池の造船、石炭産業を中心に西洋の科学技術導入が進む。明治末期までに官営八幡製鉄所が軌道に乗り、三菱長崎造船所や端島炭鉱(長崎)、三池炭鉱(福岡)の近代化で日本の産業基盤が確立されていった。
市世界遺産室の森一欽室長が「明治日本の産業革命遺産」について解説した
世界遺産の構成資産以外にも重工業の産業革命に関連する資産は数多くあるものの、登録には「完全性」と「真実性」が求められるため、「“本物”が残っていないものは世界遺産にはならない」と森室長。近代製鉄発祥の地とされる釜石でも、最初に操業に成功した大橋の高炉は現物が残っていないため、翌年から稼働した橋野鉄鉱山(国内現存最古の洋式高炉がある)が世界遺産になったことを明かした。
森室長は3分野の資産の相関図も示した。製鉄・製鋼の分野では、釜石(大橋、橋野)で成功した鉄鉱石を原料、木炭を燃料とした連続出銑、官営釜石製鉄所の失敗、釜石鉱山田中製鉄所のコークス燃料での大量生産実現が、後の官営八幡製鉄所(銑鋼一貫)の成功につながっていった歴史を紹介。八幡製鉄所の高炉建設では大島高任の息子、道太郎が技監を務め、釜石の田中製鉄所から技術者や熟練労働者が派遣された。八幡ではドイツの最新技術が導入されたものの相次ぐトラブルで操業停止に追い込まれ、高炉の改良や本格的なコークス炉の導入で操業を可能にしたのは、釜石でコークス操業技術を確立した野呂景義の尽力によるものだった。
コークス燃料での高炉操業に成功した釜石鉱山田中製鉄所に関連する遺構や遺物を紹介
長崎県は最も多い8資産(造船、石炭産業)が世界遺産に登録されている
森室長は全国8エリアに分類される各地の構成資産についても説明した。釜石と他地域の資産とはつながりも多く、韮山のれんがが釜石の官営製鉄所で使われたり、釜石で作られた鉄が長崎で造船の原料になったり、釜石で採掘された銅の精錬に三池の石炭が使われていたり…。あまり知りえない話に聴講者は興味をそそられながら聞き入った。
市立図書館で開催中の「鉄の記念日図書展」。さまざまな書籍が並ぶ
市立図書館では1日から「鉄の記念日図書展」も開催中。ユネスコに提出した「明治日本の産業革命遺産」世界遺産推薦書の原本のほか、釜石の鉄の歴史に関する著作、鉄がどうやってできるかを記したものなど、さまざまな視点の鉄に関する本が並ぶ。ほとんどが貸し出し可能。川畑広恵館長は「釜石のものづくりの精神が世界遺産に結実したのが10年前。身内が製鉄業に携わっていたという方も多いと思う。普段、手が出ない分野という方もこの機会に手に取っていただき、理解を深めてもらえれば」と来館を呼び掛ける。図書展は15日まで開催されている。
鉄をテーマに集めた本のほか、市が作成した橋野鉄鉱山に関するパンフレットなども展示