新入学児童のお祝いに… 釜石トラ作りの会(平田)キーホルダー製作中 「一緒に作りませんか?」


2024/12/26
釜石新聞NewS #地域

入学祝いのキーホルダーを作る「釜石トラ作りの会」のメンバーと体験参加者

入学祝いのキーホルダーを作る「釜石トラ作りの会」のメンバーと体験参加者

 
 釜石市の平田公民館(樋岡悦子館長)の自主活動グループ、釜石トラ作りの会(前川かな代表、会員10人)は、来春入学予定の地域の子どもたちに贈ろうと、郷土芸能「虎舞」をモチーフにしたキーホルダー作りに励んでいる。黄色のクラフトテープを編んで作るトラは、会員の山下テイさん(91)が考案したオリジナルデザイン。交通安全のお守りにと、心を込めて手作りしている。同会は来年1月19日に市民ホールTETTOで開かれる芸術体験フェスタ(県主催)にも出展予定。「一緒に作りませんか」と体験参加を呼び掛ける。
 
 同会の活動の起源は2011年。東日本大震災で被災した平田地区に仮設住宅が建設され、支援活動をしていたNPO法人カリタス釜石が被災住民にクラフトテープを使った籠づくりを教えたことがきっかけだった。その場に参加していたのが山下さん。編み物をするなど元々、手先が器用だった山下さんは、「テープを細く裂けばいろいろなものができるのでは」と考えた。
 
クラフトテープで作った作品を手にする山下テイさん(写真左)。初めての人に編み方を教える(同右上)

クラフトテープで作った作品を手にする山下テイさん(写真左)。初めての人に編み方を教える(同右上)

 
 最初は仲間と指先サイズの“ミニランドセル”キーホルダーを作り、「小学校入学祝いに」と平田幼稚園の卒園児にプレゼント。後に、黄色のテープにヒントを得た山下さんはトラの顔も作ってみることに…。試行錯誤しながら顔の原形を作り、目やひげ、耳などのパーツを付けた試作品を地元の虎舞団体のメンバーに見てもらうと、「大丈夫、(トラに)見える。作れ、作れ」とお墨付きをもらった。これを機に入学祝いのプレゼントもトラのキーホルダーに。幼稚園から小学校に変更した贈呈先は、平田小プラス唐丹小の2校となり、来春は白山小にも拡大したい考え。
 
作り手によってさまざまな表情に仕上がるトラ。頭の上には鈴が付けられている

作り手によってさまざまな表情に仕上がるトラ。頭の上には鈴が付けられている

 
 自身のアイデアが地域活動にまで発展したことに山下さんは「まさかこうなるとは思いもしなかったが、みんなで楽しく作れるのはうれしいこと。子どもたちも大事にしてくれているようなので、作り手としては励みになる」とにっこり。
 
 山下さんら初期メンバー5人は当初、仮設団地内にあった店舗の一角で活動していた。復興住宅入居や自宅再建後は、現代表の前川かなさん(60)が活動場所の確保や材料の準備など必要な事務を一手に引き受け、月2回の活動を継続してきた。「将来的には市内全小学校の入学児童に(トラキーホルダーを)プレゼントできれば」との夢もあり、前川さんは今年度、仲間を増やすために会の活動発信に乗り出した。
 
会の活動継続のために尽力する代表の前川かなさん(右)。メンバーの信頼も厚い

会の活動継続のために尽力する代表の前川かなさん(右)。メンバーの信頼も厚い

 
 平田地区生活応援センター(平田公民館)だよりで活動を紹介してもらい、夏場に2回の制作体験会を実施。10月に同公民館の自主活動グループとして登録し、11月の公民館まつりにも参加した。「現メンバーは高齢者が多い。次の世代に活動を継続するため若い人たちにもどんどん加わってもらい、郷土愛を育むトラの贈り物を続けていければ」と前川さん。
 
11月に行われた平田公民館まつりでは初の販売活動も。売り上げは材料購入のための費用に充てる

11月に行われた平田公民館まつりでは初の販売活動も。売り上げは材料購入のための費用に充てる

 
まつりは地域住民に活動を知ってもらう機会にもなった=11月27日

まつりは地域住民に活動を知ってもらう機会にもなった=11月27日

 
 今月21日、会が活動する平田集会所(同公民館)を訪ねると、メンバーがトラの顔の原形を作る作業中。月2回の活動は午前10時から午後3時までの間、いつでも出入り自由で、それぞれ都合のいい時間帯を制作に充てている。メンバーらは手を動かしながら会話も弾ませ、終始和気あいあい。この日は、活動を知った人が体験に訪れる姿もあった。地区内から足を運んだ83歳女性は「トラ(虎舞)は縁起物なので興味があって…。見るだけと思って来たが、皆さんがやさしく教えてくれて何とか半分ぐらいまでできた。最初は難しいかもしれないが、続ければ楽しいと思う」と話した。
 
活動中は笑顔が絶えない。手も口も動かし、認知症予防にも

活動中は笑顔が絶えない。手も口も動かし、認知症予防にも

 
 千葉県から帰省中の中込利枝さん(66)はこの日が3回目の参加。一人暮らしの母の様子を見に帰ってくるうち、近所に住む同会会員から誘われて参加するようになった。「トラの顔がみんな違うので面白い。そこが手作りの良さ。虎舞は釜石の伝統芸能。こうした小物はまちのPRや交流のツールにもなる」と実感。新入学児童へのプレゼント活動について、「皆さん、すごく丁寧に作業していて、子どもたちへの愛情が伝わってくる。その気持ちも受け取ってもらえたら」と願う。
 
 仕事柄、高齢者と接する機会が多い前川さんは「手を動かしてものづくりをしている人はやはり元気。認知症にもなりにくい。こうして集まって会話しながらというのも大きい。家にこもりがちな高齢者が外に出るきっかけにもなる」と健康面の効果も期待する。
 
互いに教えあいながら作業が進む。慣れると編むスピードもアップ

互いに教えあいながら作業が進む。慣れると編むスピードもアップ

 
心を込めて一つ一つ手作り。新1年生が喜ぶ顔を思い浮かべながら…

心を込めて一つ一つ手作り。新1年生が喜ぶ顔を思い浮かべながら…

 
 1月19日にTETTOで開かれる芸術体験フェスタでは、午前10時から午後3時まで体験ブースを開設する。対象は小学生以上。トラの顔の原形に目やひげなどのパーツを取り付ける仕上げ作業のほか、希望者はテープを編むところからの体験も可能。「ぜひ会場でやってみてほしい」と呼び掛ける。

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