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かまいしの第九“原点回帰”で歌い継ぐ 15日開催の合唱協会初の試み「つなコン」で

15日のコンサートに向け「第九」の合唱練習に励む参加者=8日、中妻公民館

15日のコンサートに向け「第九」の合唱練習に励む参加者=8日、中妻公民館

 
 釜石の合唱文化の原点、ベートーベンの「第九」が有志の熱い思いで歌い継がれる―。昨年12月、惜しまれながら45年の歴史に幕を下ろした「かまいしの第九」演奏会(実行委主催)。その合唱メンバーに名を連ねてきた釜石市合唱協会(柿崎昌源会長、3団体)所属の各団体会員らが、形を変えて歌い継ぐ方法を模索。新たな試みとなる協会の合同演奏会「つなコン」で、第4楽章(抜粋)を響かせることになった。演奏会は15日午後1時半から市民ホールTETTOで開かれる。
 
 「つながろう・つなげよう・絆のコンサート」と銘打った合同演奏会は4部構成。典礼聖歌などの混声合唱で幕を開け、賛助出演の釜石高音楽部の合唱、女声合唱組曲「遙かな歩み」と続き、合同演奏の「ケヤキ(合唱組曲「よかったなあ」より)」で前半を締めくくる。
 
 休憩後の第4部が「第九」のステージ。第4楽章を通常の3分の2ほどの長さにし、合唱メインの構成で届ける。合唱メンバーは約40人。これまでプロの声楽家を招待していたソリスト(独唱者)は、今回の参加メンバーから男女6人を選出。ソプラノは永田理恵さんと川畑薫さん、アルトは中野和子さん、テノールは大和田宏明さんと石田昌玄さん、バスは小澤一郎さんが務める。指揮は、かまいしの第九で昨年までソリスト(バス)を務め、合唱指導も行ってきた小原一穂さん(盛岡市)。演奏は釜石市民吹奏楽団の団員を中心とした19人で編成し、管楽器主体のミニオーケストラとなる。
 
ソリストは地元在住者を中心とした男女6人が務める。ソプラノとテノールは2人体制

ソリストは地元在住者を中心とした男女6人が務める。ソプラノとテノールは2人体制

 
釜石市民吹奏楽団の団員を中心とした有志が楽器演奏を担当

釜石市民吹奏楽団の団員を中心とした有志が楽器演奏を担当

 
 8日、中妻公民館で行われた最後の合同練習では、指揮者の小原さんの指導のもと、テンポやタイミング、強弱など細かな部分を調整。1週間後に控えた本番に向け、約2時間にわたって熱のこもった練習が続いた。
 
 ソプラノソリストの2人は「素人が出すのは難しい音域。声帯も筋肉なので、運動しながら頑張ってきた」と口をそろえ、永田さんは「この半年間、生活のほとんどが第九練習」、川畑さんは「コロナ禍前以来の参加で、声を戻すためにレッスンを受けた」と苦労を明かした。それでも第九を歌える喜びは大きく、「みんなのやりたいという気持ちが原動力。(釜石の第九演奏会を始めた)渡邊顯麿先生(故人)もきっと見ていてくれていると思う」と川畑さん。永田さんは「プロのような演奏ではないが、同じ市民目線であたたかく見守っていただければ」と本番を心待ちにする。
 
 トランペットの岡本崇子さん(44)は3回目の第九オケ参加。「弦楽器のプロが主体だったこれまでに比べ個々の負担が大きく心配もあるが、アットホームでもいいからきちんと形にして届けたい」と意欲を見せる。形を変え続く第九には「楽器が吹けなくなったら合唱で…という夢も持ち続けてきた。希望がつながった」とうれしさをのぞかせた。
 
合唱にはこれまでかまいしの第九を歌ってきたメンバーらが集う

合唱にはこれまでかまいしの第九を歌ってきたメンバーらが集う

 
小原一穂さん(写真左上)の指揮で届ける初めての第九。本番へ意欲を高める

小原一穂さん(写真左上)の指揮で届ける初めての第九。本番へ意欲を高める

 
 指揮者の小原さん(65)は、かまいしの第九のソリストを約30年務めてきた。今回の試みに「新鮮な驚きとともに、やっぱり皆さん、歌いたいんだな」と思いを受け止める。小原さんが第九演奏で指揮するのは初めて。「出演者の第九を愛する気持ちを届けられれば。昨年の演奏会終了後、観客の寂しがる声も多数あったので、『また聞けて良かった』と思ってもらえるような演奏ができれば」と本番を見据える。
 
 1978年の「かまいしの第九」スタートの礎となったのは、前年77年に釜石混声合唱団が行った釜石初の第九演奏。合唱メンバー27人、吹奏楽10人足らずの編成だったという。今回の試みは、いわば“原点回帰”。釜石の合唱文化を次世代につなぐ方策を考える中、合唱協会が中心となって「新たな一歩を踏み出せれば」と、第九を含めた合同演奏会開催を発案した。
 
 合唱協会事務局長の小澤一郎さん(47)は「コロナ禍で演奏活動が休止になった時、その後の再開には大きな労力を要した。何とか間を空けずに…と考え、有志で動き出すことにした」と開催経緯を説明。「釜石で培われた合唱をつないでいきたいというのが一番の思い。その一部が第九。来場をきっかけに、歌い継いでいく仲間が増えてほしい」と願う。
 
合唱メンバーは約40人。一人一人がこれまで培った力を発揮する

合唱メンバーは約40人。一人一人がこれまで培った力を発揮する

 
10人ほどが初めての第九演奏。経験者のアドバイスを受けながら練習に励む

10人ほどが初めての第九演奏。経験者のアドバイスを受けながら練習に励む

 
 釜石市合唱協会合同演奏会「つなコン」は15日午後1時半開演(同1時開場)。入場料は500円(未就学児無料)。プレイガイドは釜石市合唱協会、市民ホールTETTO。

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地域の医療課題解決へ病・医院、行政がタッグ “連携推進法人”設立目指し釜石市で準備委発足

「地域医療連携推進法人」設立に向けた準備委員会の総会=3日、釜石PIT

「地域医療連携推進法人」設立に向けた準備委員会の総会=3日、釜石PIT

 
 地域の医療機関が連携し、医師の相互支援や医療機器の共同利用などで経営の安定化、患者の安心につなげる「地域医療連携推進法人」設立への取り組みが釜石市で始まった。3日、市内の医療法人や医師会、市などによる設立準備委員会が発足。会則や体制、法人の名称を決め、連携方針を確認した。今後、一般社団法人として組織化し、2025年度内に同連携推進法人の認定を得たい考え。認定されれば県内では初の事例となる。
 
 準備委は医療法人楽山会(せいてつ記念病院、佐藤滋理事長)、独立行政法人国立病院機構(釜石病院、岡田千春審議役)、医療法人仁医会(釜石厚生病院、釜石のぞみ病院、鹿野亮一郎理事長)、医療法人社団KFC(釜石ファミリークリニック、上村明理事長)、一般社団法人釜石医師会(小泉嘉明会長)、釜石市(小野共市長)で構成。3日に開いた準備委設立総会で、会長に楽山会の佐藤理事長、副会長に医師会の小泉会長を選出した。
 
 法人の名称は「釜石スクラムメディカルネット」に決定。“ラグビーのまち釜石”にちなみ、手を取り合い、スクラムを組んで地域医療の充実を図りたいとの思いが込められる。ロゴマークにもラグビーボールやスクラムをイメージしたデザインが採用された。
 
設立準備委は医療法人、医師会、市などの6者で組織

設立準備委は医療法人、医師会、市などの6者で組織

 
法人のロゴマークは4デザイン案からD案(写真右)を選んだ

法人のロゴマークは4デザイン案からD案(写真右)を選んだ

 
 「地域医療連携推進法人」は地域内で医療機能の分担、連携を進めるため、国が2017年度に創設した法人制度。釜石保健医療圏(釜石市、大槌町)では人口減少に伴い患者数が減少。少子高齢化による労働人口の減少もあり、医療従事者の不足など各医療機関は多くの経営課題を抱える。そうした厳しい状況下でも、住民が求める医療提供体制を維持していく必要があると、同市の医療法人が中心となり、同連携推進法人の立ち上げを決断した。
 
 同市で目指すのは、回復期から慢性期、退院後の在宅医療までを担う各医療機関の連携。推進法人に参加する5病院・診療所は機能的重複がないことから、それぞれの医療資源を最大限に活用し、機能分担と業務連携を推進する。急性期からの受け皿としての役割を果たし、介護事業との連携で「地域包括ケアシステム」の充実を図る方針。具体的には▽医師の相互支援▽医療従事者の確保、育成▽医療機器の共同利用▽医薬材料、医薬品の共同交渉、購入▽在宅医療の充実―などを掲げる。
 
 準備委は今後、同連携推進法人の認定に必要な法人格(一般社団法人)取得に向け動く。連携推進法人の認定可否は、一般社団法人から申請を受けた都道府県知事が、医療審議会の意見を聴取して決定する。
 
設立準備委の佐藤滋会長(写真右上)が議長を務め、提出議案を審議した

設立準備委の佐藤滋会長(写真右上)が議長を務め、提出議案を審議した

 
 準備委会長を務める楽山会の佐藤理事長は「多くの課題はあるが、まずは一つ一つ向き合い、前に進めていければ。回復期、慢性期の医療を担っている私たちがスクラムを組み、必要とする方々が不自由のないようにしていきたい」と話した。

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好きに撮る!風景写真 気の合う愛好家「写遊はまゆり」三人展・釜石 多様な視点で

魅力的な写真を展示した(左から)阿部秀見さん、村上民男さん、沼田義孝さん

魅力的な写真を展示した(左から)阿部秀見さん、村上民男さん、沼田義孝さん

 
 自然の風景を大判プリントの写真で堪能-。アマチュア写真家の村上民男さん(77)=大槌町、阿部秀見さん(74)=釜石市、沼田義孝さん(71)=大槌町=は12月1日まで、釜石・大町の市民ホールTETTOで三人展を開いた。四季折々の風景を独自の視点で切り取った作品を迫力のサイズで見せた。
 
 写真歴50年超の村上さん、30年以上カメラを手にする阿部さん、本腰入れて約10年となる沼田さんの3人は趣味として撮影を楽しむ仲間。10年継続した愛好グループ・釜石写遊会で作品発表を重ねながら親交を深め、解散した今も情報交換し合う「気の置けない仲」だ。
 
 村上さんと阿部さんは「大型写真を目にする機会を」と5年前に二人展を開いた。撮りためた写真、見てもらいたいものが多くなってきたことから「そろそろ、やろうか」と意気投合。今は矢巾町で暮らす沼田さんにも声をかけ、もとの愛好グループの名をつなぐ「写遊はまゆり」として写真展を催した。
 
「写遊はまゆり」として開かれた三人展

写遊はまゆり」として開かれた三人展

 
 ここ数年に撮った作品を、全倍(90センチ×60センチ)、全倍のほぼ半分の全紙サイズを中心に計約40点展示。国内外の海や山、花や木々、トンボなど、3人それぞれが「これ!」と選び抜いた豊かな自然風景を持ち寄った。
 
 村上さんは、ピンク色に色づき始めた木々の間から望む残雪の岩手山を写した「春・爛漫」、散歩中に見かける三陸鉄道のカラフルなラッピング列車を記録する組み写真「復興の三鉄」など10数点を並べた。モノクロの独特な風合いが魅力的なフィルム時代の作品も紹介。ユニークなタイトルも“ならでは”で、四角い建物の間からのぞく釜石港の荷役クレーンを捉えた一枚には「喜寿にして習作・遠近」と“遊び心”も加えた。
 
村上さんは身近な風景を切り取った作品を並べた

村上さんは身近な風景を切り取った作品を並べた

 
ソニー製カメラを愛用中。フィルム時代の作品も(右)も紹介

ソニー製カメラを愛用中。フィルム時代の作品も(右)も紹介

 
 阿部さんは、釜石大観音の朝焼けや朝霧に浮かぶ満開の桜(遠野市)など、早朝の絶景写真を多数見せた。何度も足を運ぶ中で撮影できた貴重な瞬間が来場者の目をくぎ付け。「何回も失敗して…でもそれも楽しい。同じ被写体でも視点を変えれば印象も違う。同じシチュエーションもない。一瞬を撮るのが面白い」と、どっぷりハマる。主役のヒガンバナを印象的に浮かび上がらせた「赤と黒」などカメラの性能を駆使した作品も紹介したり、意欲作を20点ほど出品した。
 
来場者に撮影場所や独自の視点を伝える阿部さん(奥)

来場者に撮影場所や独自の視点を伝える阿部さん(奥)

 
愛機はキャノン製。色彩の対比が印象的な作品が展示された

愛機はキャノン製。色彩の対比が印象的な作品が展示された

 
 沼田さんは心動かされる被写体をいつも狙っているといい、「感動したことが出てくるのが写真の良いところ」と笑った。6点出品し、イチ押しの作品はライトアップされた黄葉の木々と御堂が沼に映り込む光景を捉えた「黄金の平泉御堂」。風もなく、ピタッと時が止まった瞬間と現地の感動を封じ込めた。「これだよ!こういうの」「よっしゃー」。撮影者のそんな気持ちを感じ取った多くの人が足を止め、じっくりと見入っていた。
 
「感動の分かち合い」を楽しむ沼田さん(右)

「感動の分かち合い」を楽しむ沼田さん(右)

 
キャノン製カメラを相棒に狙った風景写真がずらり

キャノン製カメラを相棒に狙った風景写真がずらり

 
 3人の撮影スタイルは、グループ活動していた頃から変わらない。「自由に、好きなように。肩肘張らずに楽しんでいこう」が合言葉。村上さんは「気心知れたメンバーだから。みんながリーダー」と、いたずらっぽい笑みを浮かべた。“生きる証し”というカメラは手放せないようで、「いいなと思ったものを撮り続けたい」と意欲は衰えない。
 
 また展示会を―。早くも、次の構想は動き出している。「喜寿の記念に」とつぶやく阿部さんに、「傘寿を迎える頃には見せたい写真がさらに増えているな」と返す村上さん。「展示しきれないものをプロジェクターとか使って映して見せたい。スライドショー、いいね」と、沼田さんは案を出したり。三者三様だ。

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チームづくり応援!釜石リアスライオンズクラブ杯中学校バスケ 地域超えた交流も

釜石リアスライオンズクラブ杯バスケ大会で中学生が熱戦を繰り広げた

釜石リアスライオンズクラブ杯バスケ大会で中学生が熱戦を繰り広げた

 
 釜石市と大槌町でバスケットボールに打ち込む中学生が集う「釜石リアスライオンズクラブ杯釜石地域中学校バスケットボール大会」は1日、釜石市鵜住居町の市民体育館で開かれた。34回を数える今大会で男子は3チームが出場し、優勝杯をかけた熱戦を展開。一方、女子は地域連合の1チームとなったことから、初めて地域外から対戦相手を招待して交流試合という形とした。
 
 男子は釜石、大平、大槌の3校が参加し、リーグ戦に臨んだ。各校とも、個々の競技力やチームメートとの連係などを確かめながら実戦経験を蓄積。その中でも、圧倒的な強さを見せた釜石が優勝を手にした。
 
ダイナミックな動きやスピード感あふれる試合が展開

ダイナミックな動きやスピード感あふれる試合が展開

 
チームメートや相手チームの選手の動きを観察しながら応援

チームメートや相手チームの選手の動きを観察しながら応援

 
 女子は今回、大平・釜石・大槌の連合チームとして出場した。各校とも部員数は減り、単独参加が可能だったのは大平だけ。けがなどの理由もあって2校連合も難しく、3校が力を合わせる形となった。10月開催の岩手県中学校新人大会(新人戦)もこのチームで臨んだ。
 
力を結集して試合に臨んだ大平・釜石・大槌チーム(白)

力を結集して試合に臨んだ大平・釜石・大槌チーム(白)

 
 試合ができない―。動いたのは、釜石中女子バスケットボール部顧問の佐藤彩華教諭(34)。くしくも自身と同じ「34年続く大会を途絶えさせないため」、そして「生徒たちに試合経験を積ませるため」に招待試合を提案した。公式戦審判員としても活躍していることから、新人戦地区予選を勝ち抜いた宮古第一(宮古地区)、高田東・高田第一の合同チーム(気仙地区)に出場を打診し、快諾を得た。
 
招待試合を提案した佐藤彩華教諭も選手たちと走った

招待試合を提案した佐藤彩華教諭も選手たちと走った

 
 優勝カップを狙う形ではなかったものの、各地区の選手たちは“勝ち”を目指して真剣勝負を繰り広げた。釜石中の川村柚夢(ゆずゆ)さん(2年)は「練習試合の機会を作ってくれた」と、大会関係者や他地区の選手らへの感謝を込めてプレー。他地域の強さや自身の力を確認もでき、刺激を受けた様子だった。連合チームでは伸び伸びとプレーできる環境があったといい、新人戦県大会は1回戦で敗退したものの「悔いなくできた」と満足。「仲間と話し合って協力し、1点、2点…とつないでいくのがバスケの良さ」と改めて感じたようで、「大人になっても続けたい」と笑顔を見せた。
 
作戦会議は連合チームの連係を強める貴重な時間

作戦会議は連合チームの連係を強める貴重な時間

 
 宮古市・宮古一中は今回、司令塔役の選手を抜いて参加。佐藤桃心(もこ)さん(2年)は「一人ひとりが練習してきた成果を生かし、それぞれの動きを確かめる機会になればいい。攻守の判断とか自らの積極性を高められたら」と汗を流した。
 
 部員数の減少に悩むのは他地区も同様。気仙の地区大会で女子は初戦が決勝戦で、対戦相手も3校による合同チームだったという。陸前高田市・高田東中の菊谷和桜(なお)さん(2年)は実戦経験を重ねるチャンスと来釜。チームの特徴は「めっちゃ仲良し」と胸を張る一方で、「試合になるとあたふたして周りが見えなくなる。仲の良さをチームワークとして生かせるようにしたい」とうなずいた。高田一中の及川由真さん(2年)は普段、男子に交じって練習し、週1度、東中との合同練習に参加する。地区予選、県大会も一緒に参戦しており、「チームの一員として活躍して、いい結果を残せたら。来年の中総体が最後の大会になるから、もっと力をつけたい」と目標を掲げた。
 
初参加した宮古市と陸前高田市の中学校チームの試合

初参加した宮古市と陸前高田市の中学校チームの試合

 
手製グッズで子どもたちにあたたかい声援を送る保護者

手製グッズで子どもたちにあたたかい声援を送る保護者

 
 釜石も含め各地区ではミニバスケットボールに打ち込む小学生は一定数いるが、中学入学時には地域内外のクラブチームに所属し、学校の部活動には加わらないケースが少なくないという。団体競技の継続は厳しさを増すが、頑張る子どもたちを盛り上げようと、保護者らは2階席から声援。高田チームの応援団は“押し”の子の名を記した手製のうちわを振って、より熱い思いを送った。
 
「実践経験の場をこれからも」との思いを持つ柏舘旨緒会長

「実践経験の場をこれからも」との思いを持つ柏舘旨緒会長

 
 釜石地域バスケ大会は、青少年の健全育成やスポーツ振興などを目的に継続。同クラブ(正会員21人)の柏舘旨緒会長は「スポーツも多様化し、部活動が成り立つか心配はある」としながら、「釜石では新人戦後に試合する機会は少ない。交流することで実践経験を積み、来春のチームづくりに役立ててもらいたい」と願う。

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橋野鉄鉱山含む「明治日本の産業革命遺産」とは? 世界遺産登録10周年を前に市立図書館で講座

鉄の記念日に合わせ、市立図書館が開いた「鉄の町かまいし歴史講座」

鉄の記念日に合わせ、市立図書館が開いた「鉄の町かまいし歴史講座」

 
 釜石市の橋野鉄鉱山を含む「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」(8県11市23資産)は来年、世界遺産登録から10周年を迎える。これを前に同遺産の内容を学ぶ講座が1日、釜石市立図書館で開かれた。「鉄の記念日」に合わせた市民教養講座として同館が企画。同市世界遺産室の森一欽室長が講師を務め、市民ら20人が聴講した。
 
 日本における製鉄・製鋼、造船、石炭産業の急速な発展(1850年代~1910年)を物語る遺構が「顕著な普遍的価値」を有するとして、世界遺産に登録された同遺産。日本の産業革命は非西洋地域では初めて、さらには約60年という短期間で達成されたことから「東洋の奇跡」とも呼ばれる(英産業革命は200年を要した)。
 
 「日本の産業革命はその過程が独特」と森室長。1857(安政4)年、釜石・大橋で日本初の洋式高炉による連続出銑に成功した大島高任は、現物を見ずして蘭学書を頼りに高炉建設を実現した。試行錯誤の挑戦は世界遺産の鹿児島(旧集成館)、韮山、萩の反射炉建設でも象徴される。後に外国人技術者の招へいや留学から戻った日本人の活躍で、長崎、三池の造船、石炭産業を中心に西洋の科学技術導入が進む。明治末期までに官営八幡製鉄所が軌道に乗り、三菱長崎造船所や端島炭鉱(長崎)、三池炭鉱(福岡)の近代化で日本の産業基盤が確立されていった。
 
市世界遺産室の森一欽室長が「明治日本の産業革命遺産」について解説した width=

市世界遺産室の森一欽室長が「明治日本の産業革命遺産」について解説した

 
 世界遺産の構成資産以外にも重工業の産業革命に関連する資産は数多くあるものの、登録には「完全性」と「真実性」が求められるため、「“本物”が残っていないものは世界遺産にはならない」と森室長。近代製鉄発祥の地とされる釜石でも、最初に操業に成功した大橋の高炉は現物が残っていないため、翌年から稼働した橋野鉄鉱山(国内現存最古の洋式高炉がある)が世界遺産になったことを明かした。
 
 森室長は3分野の資産の相関図も示した。製鉄・製鋼の分野では、釜石(大橋、橋野)で成功した鉄鉱石を原料、木炭を燃料とした連続出銑、官営釜石製鉄所の失敗、釜石鉱山田中製鉄所のコークス燃料での大量生産実現が、後の官営八幡製鉄所(銑鋼一貫)の成功につながっていった歴史を紹介。八幡製鉄所の高炉建設では大島高任の息子、道太郎が技監を務め、釜石の田中製鉄所から技術者や熟練労働者が派遣された。八幡ではドイツの最新技術が導入されたものの相次ぐトラブルで操業停止に追い込まれ、高炉の改良や本格的なコークス炉の導入で操業を可能にしたのは、釜石でコークス操業技術を確立した野呂景義の尽力によるものだった。
 
コークス燃料での高炉操業に成功した釜石鉱山田中製鉄所に関連する遺構や遺物を紹介

コークス燃料での高炉操業に成功した釜石鉱山田中製鉄所に関連する遺構や遺物を紹介

 
長崎県は最も多い8資産(造船、石炭産業)が世界遺産に登録されている

長崎県は最も多い8資産(造船、石炭産業)が世界遺産に登録されている

 
 森室長は全国8エリアに分類される各地の構成資産についても説明した。釜石と他地域の資産とはつながりも多く、韮山のれんがが釜石の官営製鉄所で使われたり、釜石で作られた鉄が長崎で造船の原料になったり、釜石で採掘された銅の精錬に三池の石炭が使われていたり…。あまり知りえない話に聴講者は興味をそそられながら聞き入った。
 
市立図書館で開催中の「鉄の記念日図書展」。さまざまな書籍が並ぶ

市立図書館で開催中の「鉄の記念日図書展」。さまざまな書籍が並ぶ

 
 市立図書館では1日から「鉄の記念日図書展」も開催中。ユネスコに提出した「明治日本の産業革命遺産」世界遺産推薦書の原本のほか、釜石の鉄の歴史に関する著作、鉄がどうやってできるかを記したものなど、さまざまな視点の鉄に関する本が並ぶ。ほとんどが貸し出し可能。川畑広恵館長は「釜石のものづくりの精神が世界遺産に結実したのが10年前。身内が製鉄業に携わっていたという方も多いと思う。普段、手が出ない分野という方もこの機会に手に取っていただき、理解を深めてもらえれば」と来館を呼び掛ける。図書展は15日まで開催されている。
 
鉄をテーマに集めた本のほか、市が作成した橋野鉄鉱山に関するパンフレットなども展示

鉄をテーマに集めた本のほか、市が作成した橋野鉄鉱山に関するパンフレットなども展示

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自転車競技・BMXレーシングに夢中 釜石市の小学生姉弟 活躍の原動力は…

愛用する自転車に乗ってメダルを見せる越野杏音さん(左)、斗葵さん

愛用する自転車に乗ってメダルを見せる越野杏音さん(左)、斗葵さん

 
 釜石市在住の小学生の姉弟が、自転車競技のBMX(バイシクルモトクロス)で活躍している。越野杏音(あのん)さん(10)と、斗葵(とあ)さん(8)。さまざまな起伏やカーブがある400メートルほどのコースで速さを競うレーシングの国内シリーズに挑み、2024年の年代別ランキングは、杏音さんが2位、斗葵さんは5位に入った。杏音さんは世界への挑戦切符も手にする位置にいて日々練習中。「(お姉ちゃんには)今も勝ってるから」と斗葵さんも負けん気を見せ、2人でさらに上を目指す。
 
 BMXレーシングは、頑丈な競技用自転車に乗った最大8人がダートコースを走り、ゴール順位を競う。2008年の北京五輪から正式種目にもなっている競技。時には選手同士が接触したり、カーブで転倒したりするため、別名「自転車の格闘技」とも言われる。
 
 越野姉弟はこの1年、一般社団法人全日本BMX連盟が主催する国内大会に参戦してきた。4月に始まった「JBMXF大東建託シリーズ」(全9戦)では7戦に臨み、杏音さんは女子9~10歳の部で毎回3位以内に入賞。6月の第3戦つくば大会では優勝し、表彰台の一番高いところに立った。これは東北勢として初の快挙だったという。
 
BMXシリーズ戦に臨む杏音さん【撮影者:北川大介さん(三重県在住・カメラマン)】

BMXシリーズ戦に臨む杏音さん【撮影者:北川大介さん(三重県在住・カメラマン)】

 
斗葵さんもBMXシリーズ戦で活躍。でこぼこ道に挑む【撮影者:同】

斗葵さんもBMXシリーズ戦で活躍。でこぼこ道に挑む【撮影者:同】

 
 男子7~8歳の部に出場した斗葵さんは、第1戦大阪大会で3位に入賞。大船渡市三陸町越喜来の「三陸BMXスタジアム」が会場となった第7戦では、姉弟そろって2位となった。他にも10月開催の全日本選手権(日本自転車競技連盟主催)では年代別部門でともに4位となり、11月にあったJOCジュニアオリンピックカップ(同)でも杏音さんは3位、斗葵さんが6位と結果を残した。
 
 越野姉弟が同競技を始めたのは3年ほど前で、体験会への参加がきっかけ。「怖いけど、楽しい」と魅力にハマったという。すぐにクラブチームに入って練習に打ち込むが、岩手県内では競技の認知度は高くなく、練習施設の運用も始まったばかりで指導を受けられる機会は多くなかった。
 
釜石市内で練習する杏音さん(左の写真)と斗葵さん

釜石市内で練習する杏音さん(左の写真)と斗葵さん

 
 2人の「やりたい」との希望が強かったこともあり、家族が練習をサポート。父・一成さん(48)は自身もBMXに挑戦したり、知識を学んだりしながら、自宅でのトレーニングを後押ししてきた。仕事が休みの日は放課後に釜石市内の広場などに2人を連れ出し練習。自宅から30分ほどかけて同スタジアムにも週2回ほど通い、自転車を走らせる時間を作るようにしている。時にはプロライダーの指導や助言も受けられ、成長につなげている。
 

負けず嫌いの2人、さらなる高みへ

 
 
 11月のある日、放課後の練習をのぞいた。合間に、杏音さんに質問。今シーズンの結果に、「うれしい」と素直に喜んだ。一成さんによると、強みは加速力と攻めの姿勢。ペダルを踏む動きから重心移動を使った技「プッシュ」へのつながりがよく、「コブ」と呼ばれるデコボコ道も加速しながら進むという。
 
放課後に釜石市内で練習する越野姉弟

放課後に釜石市内で練習する越野姉弟

 
 いい評価に照れ笑いする杏音さん。課題を聞いてみると、「スタート。タイミングよくしたい」と真剣な表情になった。同年代に“ぶっちぎりに速い人”がいるといい、首をかしげながら「(ランク2位に)満足している」としたのは、ほんのひととき。上を向き、「瞬発力を高めて1位を狙えるようにしたい」と目の奥をキラリと光らせた。
 
 それに劣らず、負けず嫌いというのが斗葵さん。練習中、「もう勝ってるし…」と幾度となく口にし、自転車を操って速度を上げた。今、力を入れて取り組んでいるのがジャンプと、前輪を浮かせて後輪で走る技「ロール」。こうした技術を高め、コブでもスピードを落とさない走りが目標だ。「毎回上位入賞」。すでに来シーズンに目を向けていた。
 
 「タイムは同じくらい。互いの負けん気が、それぞれの成長につながっている」と一成さん。競技に熱中する2人を見ていると、擦り傷も多かったり、転倒してヒヤッとすることもあるというが、「頑張ろうとしていることを応援したい」と、立ち上がる姿を見つめ続ける。
 
子どもたちの頑張りを父・一成さんら家族が応援する

子どもたちの頑張りを父・一成さんら家族が応援する

 
三陸BMXスタジアムで練習の合間にパチリ【撮影者:一成さん】

三陸BMXスタジアムで練習の合間にパチリ【撮影者:一成さん】

 
 気になるのは岩手県、釜石の競技人口がまだ少ないこと。市内でジュニア世代は数人しかおらず、女子は杏音さんだけ。一成さんは「BMXはレースに出なくても楽しめる。自転車に乗る技術を身に付けるためと、難しく考えずやってみてほしい。親子で楽しむ遊び感覚で」と、仲間が増えることを期待する。
 
 実は杏音さん、ランク上位者ということもあって来年の世界選手権への出場切符を持っている。ただ、参加や渡航などにかかる費用は全て自己負担で、出場は思案中だ。練習場所の確保も悩みの一つ。普段は広めの平坦な空き地を使ったりしているが、凸凹道での感覚を鍛えるには不十分だと感じている。
 
賞状を手にする杏音さん(左)と笑顔を重ねる斗葵さん

賞状を手にする杏音さん(左)と笑顔を重ねる斗葵さん

 
スタート時の構えで準備よし!さらなる高みを目指す

スタート時の構えで準備よし!さらなる高みを目指す

 
 だから頑張る―。自分が活躍することでBMXに興味を持つ人が増えてほしいと、杏音さんは望んでいる。練習環境も大事で、「設備が充実すればいいな」とも。
 
 練習を終えると、近くにあった遊具に駆け寄り、小学生らしい一面をのぞかせた越野姉弟。冬期は屋内パークで技を磨くという2人、さらなる活躍に注目していきたい。

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ボーイスカウト指導者54年 釜石市の末永正志さん(県連副連盟長) 社会教育功労で県教育表彰

県教育表彰受賞を報告した末永正志さん(左から3人目)と市幹部ら

県教育表彰受賞を報告した末永正志さん(左から3人目)と市幹部ら

 
 日本ボーイスカウト岩手連盟の副連盟長で、本県の指導者養成などに尽力してきた釜石第2団先達の末永正志さん(74)が、社会教育振興に貢献したとして県教育表彰を受けた。社会教育活動の指導者の功績で同表彰を受けるのは同市では初めて。末永さんは「ボーイスカウトそのものの活動が広く認められたようでうれしい。今後は次に続く指導者の育成にもさらに力を入れたい」と思いを強くする。
 
 本県の教育振興、文化財保護に貢献した団体や個人をたたえる同表彰は県教委が実施。毎年11月1日の「いわて教育の日」のつどいで伝達している。本年度は各分野での功績が認められ、12団体37人が表彰を受けた。盛岡市で開かれたつどいに出席した末永さんは26日、釜石市の小野共市長を訪ね、受賞を報告した。
 
これまでのボーイスカウト活動について話す末永正志さん。現在、日本ボーイスカウト岩手連盟の副連盟長を務める

これまでのボーイスカウト活動について話す末永正志さん。現在、日本ボーイスカウト岩手連盟の副連盟長を務める

 
 末永さんは小学6年時に釜石第2団の団員となり、21歳からは指導者として活動。野外活動や奉仕活動を通じて、子どもの自立心や協調性、リーダーシップなど社会で役立つ力を育んできた。40歳で日本連盟の指導者養成のためのトレーナー資格を取得。プログラム開発や各種活動のマネジメントなどに携わってきた。岩手連盟の要職も歴任。2006年からコミッショナーを4年、12年から8年間は理事長、20年から副連盟長に就任し現在に至る。
 
 岩手連盟は東日本大震災後、関係団体と連携し、被災地の子どもの傷ついた心をケアする活動を展開。2011年から年2回、釜石、大槌、大船渡3市町の小学4~6年生を滝沢市の国立岩手山青少年交流の家に招待し、キャンプや自然観察、乗馬など各種体験活動で心身の回復を図ってきた。12年からは釜石市などで「遊びの広場」を開設。被災で遊び場の減った子どもたちのために、昔遊びやボーイスカウトで行う野外活動の体験プログラムを用意し、訪れた親子らを楽しませた。
 
震災後に滝沢市で開催したグリーフケアのための「岩手しぜんとあそぼキャンプ」=写真提供:末永さん

震災後に滝沢市で開催したグリーフケアのための「岩手しぜんとあそぼキャンプ」=写真提供:末永さん

 
釜石・シープラザ遊で開いた第1回目の「遊びの広場」=2012年5月

釜石・シープラザ遊で開いた第1回目の「遊びの広場」=2012年5月

 
 末永さんは、連盟理事長を務める釜石第2団の山崎義勝団委員長(71)とともに市役所を訪問。長年にわたる青少年の健全育成活動を振り返りながら、今回の受賞について報告した。
 
 市職員として働きながらボーイスカウト活動を続けてきた末永さんは、同活動の理念“備えよ常に”に触れ、「ボーイスカウトで培ったことが市職員としての下地になったと思う。防災課長時代には小中学校の防災教育にも着手することができた。震災後の支援活動で市にも恩返しができたかな」。同活動は人と交わる楽しさも魅力といい、未来を担う子どもらに「ぜひ経験してほしい」と願った。
 
末永さんと連盟理事長を務める山崎義勝さん(右)はボーイスカウト活動の現状なども説明した

末永さんと連盟理事長を務める山崎義勝さん(右)はボーイスカウト活動の現状なども説明した

 
 「大きな課題の一つが指導者の確保」と山崎さん。少子高齢化の影響もあり、近年、担い手不足が顕著という。末永さんは「指導者の育成には時間がかかる。われわれの経験を若いリーダーに伝え、活動を広げる手助けができれば」と今後を見据える。
 
 報告を受けた小野市長は「子どもたちの健全な成長、健康増進に多大な貢献をいただいている」と感謝。学校以外での学びの多さも実感し、「今後も健康に留意し、釜石の教育、子どもたちの育成にお力添えを」と期待を込めた。

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誰もが安心して暮らせるまちへ 釜石市社会福祉大会で誓い新た 子どもらも関心高く

幼児福祉絵画コンクール入賞作品の前で記念撮影する親子ら=釜石市社会福祉大会

幼児福祉絵画コンクール入賞作品の前で記念撮影する親子ら=釜石市社会福祉大会

 
 第45回釜石市社会福祉大会は11月21日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。市社会福祉協議会、市共同募金委員会、市民生児童委員協議会が主催した。福祉功労者と小中高生の福祉作文コンクール、幼児の福祉絵画コンクールの入賞者計29人を表彰。生活課題解決への取り組みを進め、「地域共生社会」の実現を目指す大会宣言を採択し、住民同士の支え合いによる住みよいまちづくりへ誓いを新たにした。
 
 関係者約80人が参加。東野武美大会長(市社会福祉協議会会長)は4月に施行された孤独・孤立対策推進法に触れ、「コロナ禍で孤立、孤独の問題が一層顕在化した。今後、単身(高齢)世帯の増加が見込まれ、問題の深刻化が懸念される。住民が自ら望む地域で生きがいや希望を持ち、安心して生活できるよう重層的支援に努める」と話した。
 
 社会福祉事業功労者として介護職員や福祉施設職員、民生委員児童委員ら14人、共同募金運動功労者として行政連絡員1人を表彰。小佐野地区で民生委員児童委員を務めてきた佐藤國治さんが受賞者を代表し、東野大会長から表彰状を受け取り、謝辞を述べた。
 
社会福祉事業、共同募金運動功労者として15人を表彰。代表して民生委員児童委員の佐藤國治さん(写真左上)が表彰状を受け取り謝辞を述べた<

社会福祉事業、共同募金運動功労者として15人を表彰。代表して民生委員児童委員の佐藤國治さん(写真左上)が表彰状を受け取り謝辞を述べた

 
 同大会の取り組みとして長年続けられる「福祉作文コンクール」には本年度、小中高6校から39点が寄せられた。釜石中1年の菊池すずさんの作品「すべての人の幸せに向けて」が最優秀賞を受賞。他に優秀賞2点、佳作4点が選ばれた。表彰後、菊池さんが作文を朗読した。
 
 菊池さんは小学生の時に知的障害児をからかう上級生を止められなかった経験から、福祉への関心が芽生えた。自分にできることを探そうと、障害者が働く福祉作業所を見学。理解を深めたことで、将来、当事者の役に立ちたいと思うようになったといい、自らの福祉に対する考えを作文につづった。発表後、菊池さんは「障害への偏見はまだまだある。多くの人が福祉について知り、興味を持つことでそうしたものもなくなっていくと思う」と話し、「すべての人が幸せに生活できるように行動する」という福祉の理念の広がりに期待した。
 
福祉作文コンクールの入賞者(写真左) 最優秀賞の釜石中1年菊池すずさんが受賞作品を朗読した(同右)

福祉作文コンクールの入賞者(写真左) 最優秀賞の釜石中1年菊池すずさんが受賞作品を朗読した(同右)

 
 年長児を対象とした福祉絵画コンクールには11施設から148点の応募があった。「ぼくの、わたしのだいすきなひと」をテーマにした作品は、家族や友だちの姿が伸び伸びと表情豊かに描かれる。金賞は正福寺幼稚園の琴畑成太君の作品「だいすきなおともだちとおにごっこ」が受賞した。他に銀賞2点、銅賞4点が選ばれ、入賞者全員に大会で記念品が贈られた。福祉絵画の全応募作品と福祉作文の入賞作品は12月15日から18日まで市民ホールTETTOギャラリーで展示される予定。
 
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絵画コンクールでは琴畑成太君(正福寺幼稚園)の作品が金賞を受賞(写真左)

 
絵画コンクールで入賞した子どもと保護者ら

絵画コンクールで入賞した子どもと保護者ら

 
 最後は地域の現状を踏まえた大会宣言を採択。▽住み慣れた地域で生活ができるよう、互いを思いやり支え合うコミュニティーづくり▽防災意識を高め、震災を風化させることなく被災者を支援。住民同士がつながり支え合う地域づくり▽高齢者の生きがいと健康づくり。障害者が安心して社会参加できるまちづくり▽福祉教育の推進と児童健全育成に向けた取り組み▽福祉人材の確保、福祉サービスの質の向上―に努めることを確認した。
 
 大会運営にあたった市社協の佐々木理香さんは「子どもたちが福祉に対しての考えを持ち続けて成長していけば、釜石の未来も明るいものになっていくと思う。どんな人でもつらい時はある。その時に明るく乗り越えられる底力みたいなものも育まれれば」と願った。
 
第45回釜石市社会福祉大会の出席者ら

第45回釜石市社会福祉大会の出席者ら

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地域の伝統・刺し子…つなぐには 釜石商工高生8人、課題研究で挑戦 一針に込める「手作業の味」

刺し子の製品づくりに取り組む釜石商工高の生徒ら

刺し子の製品づくりに取り組む釜石商工高の生徒ら

 
 釜石商工高(今野晋校長)では機械、電気電子、総合情報科の3年生が各科の特徴を生かした課題研究に取り組む。産業や地域課題などのテーマを選んで5月にスタートさせた探究活動は終盤戦に突入。年内に予定する校内発表会に向け、まとめの作業が進む。このうち、総合情報科の8人は地域で受け継がれてきた伝統的な手芸「刺し子」に注目。担い手の育成について考える中で、技術の習得にも挑む。集大成として東京での販売会(12月)を計画。参加のめどが立ち、応援者への“返礼品”づくりに励む。11月20日、同校の一教室。8人の挑戦をのぞいてみた。
 
 刺し子は重ねた布を細かく縫いつける伝統技法。布の補強や保温のために東北地方で始まったと言われる。「運針」と呼ばれる針を刺し進める手法は波縫いが基本。縫い目の間隔にとらわれず、ちくちくと直線に縫っていく手軽さが魅力。幾何学模様などの図柄を縫い込む技法もあり、少しの手間で布をよみがえらせ日常に彩りを添える。
 
 地域の産業として事業化、ブランド化させ新しい魅力を吹き込んでいるのが「大槌刺し子」。東日本大震災で被災した女性たちの生きがいづくりに―と2011年に復興支援プロジェクトで発足し、京都市のNPO法人テラ・ルネッサンスが運営する。バッグや小物などを作ってきたが、近年は売り上げが停滞。最盛期に約200人いたという職人も高齢化など社会変化の影響を受け、現在は15人と大きく減った。
 
 そんな中、長く取引を続ける東京のアパレル会社MOONSHOT(ムーンショット)から提案があり、ブランド「SASHIKO GALS(サシコギャルズ)」を創設。靴や洋服などに古布を縫い当てて刺し子を施して作り直す、ひと手間を加えたものづくりを始めた。新たな感性を取り入れた動きに合わせ、技術の担い手を育成する取り組みも開始。今回の釜石商工高との連携につなげた。
 
釜石商工高総合情報科の教室で生徒らが刺し子づくりに励む

釜石商工高総合情報科の教室で生徒らが刺し子づくりに励む

 
 同校には、もともと別のテーマで講師役を担当した人から刺し子の話が持ち込まれた。課題研究テーマとして組み込まれ、8人が手を挙げ、週3時間、刺し子を学んでいる。講師は大槌刺し子事務所スタッフで職人の黒澤かおりさんと佐々木加奈子さん(ともに47)。針を持つのは小学校の家庭科の授業以来という生徒がほとんどで、持ち方や進め方から、「くぐり刺し」「かがり刺し」といった技法も丁寧に教えてきた。
 
 “若さ”が光り、すんなり身に付けた生徒たちだが、始めた当初は「刺し子をやるとは思っていなかった」という。研究は担い手を増やす方策を考えたり、ビジネスを学ぶ内容だと思っていたらしい。
 
 堀切好花(このか)さんもそんな一人。苦笑いしつつも、新たな試みに挑戦できると前向きに捉えて実践。ムーンショット代表の講話などでサシコギャルズが世界的に評価されていることも知り、「刺し子の可能性を広げる過程に協力したい」と強く思うようになった。作り手としての大変さ、やりがいも実感。「ネクタイとか日常的、実用的なもので、目にする機会を増やした方がいい」とアイデアも出てきた。慣れてきたことで作業中に弾ませるのはおしゃべり。「手を動かしながら団らん。そこも刺し子の魅力」と楽しそうに笑う。
 
布を持ち真剣な表情で一針一針と進める生徒たち

布を持ち真剣な表情で一針一針と進める生徒たち

 
大槌刺し子の職人に助言をもらいながら取り組む

大槌刺し子の職人に助言をもらいながら取り組む

 
生徒を見守る講師とおしゃべりも楽しむ

生徒を見守る講師とおしゃべりも楽しむ

 
 生徒らはこの研究プログラムに「Harito(はりと)」と名を付けた。“針と〇〇(まるまる)”という意味で、「結びつけるものは無限大」と可能性の広がりを期待してのもの。半年たった今、総仕上げとしてさらに熱心に針を進めている。作っているのは「HOME」との刺しゅう文字が入ったミニトートバッグと、古布を重ねつなぎ合わせたりカラフルな波縫いの線が交差するクッション。10月に実施したクラウドファンディング(CF)の返礼品だ。
 
 成果を発信すべく、東京での販売会に臨むため行ったCFでは60人余りから応援が寄せられた。大槌刺し子の職人らを含めて参加できることになり、支援者へ感謝を込めた一点物を製作中。「手作業の味が伝わるように」と一針一針に思いをのせている。
 
クラウドファンディングに向けて撮影した集合写真(提供:釜石商工高)

クラウドファンディングに向けて撮影した集合写真(提供:釜石商工高)

 
ちくちく…一針ごとに感謝の気持ちを込めて縫い進める

ちくちく…一針ごとに感謝の気持ちを込めて縫い進める

 
返礼品として生徒がすべて手作業で仕上げている刺し子

返礼品として生徒がすべて手作業で仕上げている刺し子

 
 CFは生徒らの学びの機会にもなった。販売内容に関わる計画やマーケティング、広報、チラシ作り、交通費の算出など、それぞれが得意分野を生かして取り組んでいたと同科の沼﨑麗(うらら)教諭。「学校外の人と関わることで視野が広がったと思う。担い手の課題はすぐに結果が出るものではないが、地域の伝統を知り、外に出た時に伝え広げられたら、成功という一つの形になるのかな」と目を細めた。
 
 生徒自身もそれぞれ成長を感じている様子。久保菜月さんは「思った意見を言えるようになった」とはにかむ。刺しゅうデザインなど提案、相談を重ね、採用されたり意見が通らなかったこともあったが、「あとで生かされる」と確信。地域との関わりや伝統を身近に感じられる機会にもなり、「後輩たちにつなぎ、残したい」と願いを抱いた。
 
 技術を紹介した大槌刺し子の2人にも発見があった。長く携わると型にはまってしまうが、まっさらな状態の高校生は「自由に思うまま」で、色合いや発想に驚かされることもしばしば。「参考になる」と刺激を受けた。
 
講師を務める大槌刺し子職人の佐々木加奈子さん(左)、黒澤かおりさん(右)

講師を務める大槌刺し子職人の佐々木加奈子さん(左)、黒澤かおりさん(右)

 
 佐々木さんは「古くなったものを新しい糸で生き返らせる。補修にデザイン性が加わっておしゃれによみがえる。刺し子のすてきなところ」と愛着をにじませ、黒澤さんも「手を加えるだけでオリジナルになる」とうなずく。地方でもファッション業界に関われる可能性、世界での評価という手応えを得る一方、すべて手作業で一つの製品に一週間以上かかることもあり、大変さも身に染みて思う2人。それでも「現代にあった刺し子を作り続けたい」と気持ちも重ねる。今回の授業は間もなく終わるが、形は変わったとしても継続させたい考えだ。
 
大槌刺し子の拠点でも販売会に向け職人たちが追い込み作業中

大槌刺し子の拠点でも販売会に向け職人たちが追い込み作業中

 
 販売会は12月14日、東京の伊勢丹新宿本店の本館で予定する。ムーンショットが手がけるファッションブランド「KUON(クオン)」の期間限定店に参加する形で展開。大槌刺し子の職人が手がけた帽子などを並べる。

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広報かまいし2024年12月1日号(No.1845)

広報かまいし2024年12月1日号(No.1845)
 

広報かまいし2024年12月1日号(No.1845)

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【P1】
健康診査・肺がん検診を追加実施します【要予約】
ジム・バトラー・グループ クリスマス・ジャズ・ナイト

【P2-3】
釜石大槌地区行政事務組合決算
岩手沿岸南部広域環境組合決算 他

【P4-5】
まちの話題

【P6】
イベント案内

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2024112600048/
釜石市

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ドローンなど活用で森林測量の効率、省力化へ 林業関係者ら事例学ぶ 釜石でセミナー開催

ドローン測量の実演などが行われた釜石地方林業活性化セミナー

ドローン測量の実演などが行われた釜石地方林業活性化セミナー

 
 険しい山での作業負担軽減や担い手確保が課題となっている林業―。そうした諸課題解決に、デジタル技術を活用し作業の効率、省力化を図ろうという取り組みが進む。産業用無人ヘリコプターやドローンを使った森林測量もその一つ。釜石市でこのほど開かれた「釜石地方林業活性化セミナー」では、ドローンや三次元計測が可能なアプリを使った森林測量の事例が紹介された。
 
 同セミナーは釜石地方林業振興協議会(会長=林春彦県沿岸広域振興局農林部長)と同振興局農林部が主催し、片岸町の釜石地方森林組合事務所で開かれた。沿岸市町村から自治体職員や民間事業者など約30人が参加した。
 
 本年8月、県は「デジタル技術を活用した森林整備事業の申請等に関する取扱について」という通知を発出。施行地の現地測量にGNSS(衛星測位システム)やドローン(無人航空機)などのデジタル技術を活用する場合に守るべき基準、適切な林務手続きを行うために参照すべき事項を定めた。セミナーでは同通知で定められている4つの測量方法について説明。現時点で補助金交付対象は人工造林、下刈りの周囲測量、森林作業道の延長測量のみであることが伝えられた。
 
県の担当者が8月に発出された通知について概要を説明

県の担当者が8月に発出された通知について概要を説明

 
 県林業技術センター(矢巾町)専門研究員の中軽米聖花さんはドローンなどを活用した測量事例を紹介。どんなデータが得られるかやメリット、デメリット、補助金申請書類の作成、検査の作業イメージなどを説明した。
 
 「ドローン測量」は、空中から連続撮影した写真をパソコンのSfMソフト(三次元形状に復元するソフトウェア)で正射投影化(オルソ画像という)。これを基にGISソフト(地理情報システム)で施行地の位置、形状、面積のデータを得る。GNSS受信機2つ(移動局、基準局)の観測データを使って高精度の測位をリアルタイムで行う方法(RTK-GNSS 対応)と、1つの受信機で測位する方法(単独測位)がある。
 
 この他、現地を歩いて衛星測位システム観測機器で測点の位置座標を記録し、GIS上でつないで施行地のデータを得る「GNSS測量」、“mapry(マプリィ)林業”などのアプリを入れたスマートフォン、タブレットを使い、現地を歩いて座標を記録する方法(地上レーザースキャナーによる三次元測量)がある。
 
衛星測位システムやドローンなどを活用した測量事例が紹介された

衛星測位システムやドローンなどを活用した測量事例が紹介された

 
 中軽米さんはドローン測量について、「全測点を歩かなくても測量ができ、画像、点群データとして森林全体の現況把握、記録ができる」一方、「ドローンや処理ソフト導入などの初期投資が必要で、GIS操作などが不慣れな人は使いこなすのに時間がかかる」ことを説明した。また、単独測位では3~10メートルほどの絶対位置のずれが生じるため、現地しゅん工検査にはST計算(水平距離、方位角算定)で変換した測量野帳が必要となることも付け加えた。
 
釜石地方森林組合事務所の駐車場でドローンのデモフライトが行われた

釜石地方森林組合事務所の駐車場でドローンのデモフライトが行われた

 
 この日は座学の後、同組合事務所の駐車場で、ドローン測量の実演も行われた。大槌町のNPO法人吉里吉里国の河井舞さん(同町地域おこし協力隊員)は「大槌町も実態が分かっていない山がたくさんあるので、こういう技術が使えればより現状把握が可能になりそう。地道に山を歩いて測量、分布を調査するのに比べ格段に便利。あとは金額の問題」と導入の課題を示した。
 
ドローン撮影の空中写真を基にした計測データ(写真左)を示す県林業技術センター専門研究員の中軽米聖花さん(写真右)

ドローン撮影の空中写真を基にした計測データ(写真左)を示す県林業技術センター専門研究員の中軽米聖花さん(写真右)

 
 中軽米さんは「林業は人手不足が顕著。現場労務が軽減されるドローン測量は今後、広がっていくと思われる。撮影した森林の画像データは施業計画立案にも活用可能」と話す。2022年6月からは100グラム以上の無人航空機の登録が義務化され、航空法の規制対象となっている。目視外を飛ばすには免許も必要だという。
 
 釜石市では22年6月に釜石地方森林組合が開いた研修会以降、レーザー計測機を搭載した産業用無人ヘリコプターによる森林計測サービス(ヤマハ発動機)が県内に先駆けて導入されている。
 
ドローン測量の実演に興味津々の参加者。写真右下はヤマハ発動機が森林計測サービスで使用する産業用無人ヘリコプター

ドローン測量の実演に興味津々の参加者。写真右下はヤマハ発動機が森林計測サービスで使用する産業用無人ヘリコプター

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釜石PIT 2024年12月のスケジュール

 

釜石PITの12月のスケジュールです。
太字で表示されているイベントは一般の方も参加できます。イベントに関するお問い合わせは、各主催者までお願いいたします。
 
施設に関する詳細はこちらのページをご覧ください。

フェリアス釜石

釜石まちづくり株式会社

釜石まちづくり株式会社(愛称 フェリアス釜石)による投稿記事です。

問い合わせ:0193-22-3607
〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内 公式サイト