「戦争を身近に考えることから」 高校生平和大使、釜石中で講演 被団協ノーベル賞に触れる
釜石中で開かれた高校生平和大使による講演会
戦争を身近なものとして考えてほしい―。高校生平和大使として活動する佐藤凛汰朗さん(釜石高2年)が13日、母校の釜石中(佐々木一成校長、生徒294人)で講演。核兵器廃絶への思いや釜石が経験した戦争の記憶を語るとともに、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が今年のノーベル平和賞に選ばれた意義にも触れ、戦争の記憶を後世に伝える重要性と平和の尊さを訴えた。
釡中の講演会は総合的な学習の時間を活用して行われ、全校生徒が耳を傾けた。佐藤さんは、1998年に長崎から始まった「高校生平和大使」の活動が全国に広がり、岩手県では2011年からスタートしたことを紹介。今年、27代目として活動する全国の仲間とともに核兵器廃絶を求めて集めた署名は約9万6000筆に達し、これまでの累計で262万筆以上がスイス・ジュネーブの国連欧州本部に届けられたことを説明した。そして、「一人ひとりの行動が核兵器廃絶の力になる」と強調した。
平和の尊さを伝える高校生平和大使の佐藤凛汰朗さん
佐藤さんは、被団協の受賞について「体験を語り続けてきたことで、核兵器の非人道性が国際社会に共有された結果。廃絶を求める長年の努力が認められたことは率直にうれしい」と喜ぶ。一方で「被爆者の平均年齢が85歳を超え、記憶を直接伝えられる時間が限られている今、私たち若い世代がその思いを引き継がなければならない」と語りかけた。
広島・長崎の被爆者の証言や原爆の写真をもとに、核兵器の非人道性についても解説。「原爆は家族や生活を一瞬で奪い去る。核兵器が使われれば、その影響は日本だけでなく世界全体に及ぶ」と述べ、廃絶の必要性を改めて訴えた。被爆者が長期にわたって放射線による被害や差別に苦しんできた状況も伝えた。
佐藤さん(奥)の話に中学生が熱心に耳を傾ける
核兵器が使われるような状態にしないためにも二度と戦争をしてはいけない。そうは言っても「戦争は遠い国の出来事だから、イメージ湧かない」と思う人はいる。では、どうすればいいか―。
「戦争を身近なものと考えることから始めてみたらいい」と佐藤さん。釜石が受けた艦砲射撃や捕虜収容所の存在に触れ、「釜石は戦争の被害地である一方で加害地でもある」と指摘した。釜石製鉄所が標的となった本州初の艦砲射撃の歴史や、捕虜が過酷な労働を強いられた実態を紹介。「地元の歴史から戦争の現実を知ってほしい。戦争はどこか遠い世界の話ではなく、私たちが住む場所でも起きた現実」とした。
「どう感じた?」。被爆地の写真などを見せながら問いかけた
戦争のない社会に向けてできることは―。佐藤さんは「微力だけど、無力じゃない」という高校生平和大使の合言葉を紹介し、後輩たちに「できることを考えて」と問いかけた。「被爆者や戦争体験者の思いを引き継いでいく」「交流サイト(SNS)で世界に発信する」。そんな意見に対し、佐藤さんは▽ニュースや新聞を読んで、世界で起きていることを知る▽勉強を頑張る▽平和について考える仲間をつくる―などヒントを示し、「実現には一人ひとりが行動を起こすことが大切。今の時代に合った方法で平和の思いを広めてほしい」と呼びかけた。
釜中の岩間心来(ここな)さん(2年)は「戦争を身近なものとして理解し、次の世代へ伝えていく工夫をしたい」と感想。川端俐湖さん(1年)は「『子どもだから知らない』ということをなくし、多くの人が平和について考えることができるよう、周囲に伝えていきたい」と関心を深めた様子だった。
平和への思いを共有する佐藤さんと後輩の釜中生たち
この講演会は佐藤さんの持ち込み企画で、恩師の協力を得て実現。「平和賞の受賞もあり、取り組みを加速させることが重要。『核兵器は人類と共存できない』。被爆者の声を継承し、世論を形成していくという意識を持ち、できることを続けたい」と意欲を語った。
釜石新聞NewS
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