書と絵画、山野草の展示に茶席が加わる独特の情緒を楽しむ合同展
「秋を彩る」をテーマにした書道・山野草・煎茶道・絵画の合同作品展は9~11日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。釜石書道協会(佐々木和子会長、会員約20人)、釜石草友会(古舘昭吉会長、同5人)、釜石蘭煎会(桑畑美梢会長、同約30人)、美術集団サムディ45(鈴木睦代表、同約20人)の4団体がコラボレーション。和洋、異種の組み合わせながら風趣に富んだ空間を提供し、足を運んだ市民らは「芸術の秋」を先取りした。
丹精込めて育てられた山野草に見入る来場者
筆致勇壮、多彩な書体の力作が並んだ
山野草はイワショウブ、イワギボウシ、ヤブラン、サワヒヨドリなどの草花を単品、寄せ植えなどの形で約30点を展示。書道は篆書(てんしょ)、隷書、漢字仮名交じり書、甲骨文字などを額、掛け軸、びょうぶ、短冊にした約30点を並べた。
コスモスなど季節の草花を散りばめた鉢物、「初秋の彩り」としたためられた書、色とりどりの花が描かれた油彩画などが飾られた茶席では、蘭煎会の会員がおもてなし。来場者は秋を感じさせる作品の数々にじっくりと見入ったり、お茶で一服の清涼感を味わったり、穏やかなひとときを過ごしていた。
出品者と交流しながら会場内をめぐる人も
季節の草花を前に笑顔でおしゃべりを楽しんだ
山野草と書、油彩画を眺めながら優雅に一服
書道協会と草友会は2013年から合同で作品展を開催。さらに心安らぐ鑑賞の場にしようと、15年から新たに煎茶の呈茶を加えて開いてきた。新型コロナウイルスの流行で20年と21年は中止。3年ぶりの合同展示では、同時期、同施設で個別に作品展を計画していた同集団と共演する形にした。
古舘会長(78)は「秋の開催は初めてで、季節を感じて楽しんでもらえるよう花を咲かせるのが大変だった。4つの組み合わせは不安もあったが、うまく調和した。この雰囲気がいいし、見せ方、飾り方などいい勉強になる」と相乗効果を語った。新会員の加入など運営面で明るい話題もあった佐々木会長(82)は「マンネリから抜け出した展示になった。鑑賞の雰囲気作りに工夫することで、ゆっくり、じっくりと見てもらえる。コラボはいい」と効果的な発表の場の継続に期待を寄せた。
個性豊かな作品が並ぶ「サムディ45」の56回展
サムディの56回展は同ホールギャラリーで行われ、日本画、洋画、切り絵、色鉛筆画、写真、工芸など幅広いジャンルの力作約60点が並んだ。地元釜石のほか、北上、仙台、鹿児島など県内外に広がる会員16人が出展。代表経験者の故菅野幸夫さん、故岩井利男さんの作品計3点も紹介した。
5年ほど前から同集団に参加する平田の小笠原美津子さん(76)は浮世絵をモチーフにした刺しゅう画、ビーズを使ったモザイクアートなどを出品。病気で左半身にまひが残るが、力の入る右手一本で創作活動に励む。リハビリを兼ねているというが、「細かな作業が好き。作りたくてしょうがない」とにっこり。「こんな体でもできるんだよ」と達成感を味わえるのが制作の原動力で、作品を見てもらうことで喜びもかみしめる。
切り絵の体験コーナーでは創作活動の一端に触れた
同集団は講師を置かず、個々に創作活動に取り組んでいるのが特徴。事務局では「描くことが大好きな仲間、先輩方が培ってきた活動を絶やすことなく続けていくことが私たちの役割。次の世代へと引き継いでいきたい」と活動継続へ願いを込める。