倒壊の恐れ 危険な「特定空き家」解体 所有者不存在、釜石市が初の略式代執行
略式代執行による解体作業が始まった建物
釜石市は13日、老朽化で倒壊の恐れがある甲子町大松地内にある空き家について、所有者が不存在のため行政が費用を負担して解体する「略式代執行」による除却(取り壊し)を始めた。2015年に全面施行された空家等対策の推進に関する特別措置法に基づくもの。同執行は市内で初めてとなる。
対象となった空き家は木造平屋の母屋(床面積約76平方メートル)と倉庫(同約27平方メートル)で、1956年以前に建てられたとみられる。登記簿上で所有者となっているのは林業関連の法人だがすでに解散し、77年に清算も結了しているため、適正管理などを求める者が存在しない。貸家として利用された時期もあったとの情報もあるが、20年ほど前から人の出入りは確認されておらず、2016年4月に市民から釜石消防署を通じ「危険な空き家」として情報が寄せられた。
外壁や窓などが崩れ落ち、倒壊の危険性が高い対象空き家
市は実態調査で外壁や屋根、柱など建物全体が著しく腐朽しているのに加え、県道に接道していることから、倒壊した場合、通行車両に被害を及ぼす可能性があることを確認。21年8月には甲子地域会議からも撤去を求める要望があり、市は今年5月に放置すれば保安上の危険、景観や生活環境に悪影響を与えるとして、倒壊などの恐れがある「特定空き家」に認定した。同6月下旬~7月末に公告。情報を求めたが連絡はなく、市民の安全安心の確保を優先とし、「所有者不存在」として略式代執行による空き家の除却に踏み切った。
解体する空き家の前で略式代執行を宣言する野田市長
この日は午前9時半、野田武則市長が特定空き家の前で代執行を宣言し、市内業者による解体工事が始まった。作業員らは重機で屋根や外壁を取り壊した。解体工事は9月下旬までに終える予定。工事費は121万円で、5分の2の約48万円は国庫補助金、残り72万円余りを市が負担する。
作業員はトタンや廃材などに分別しながら作業を進めた
市によると、市内には現在約980棟の空き家があり、うち約20棟は倒壊の恐れがある。人口減や高齢化に伴い、今後も空き家は増えるとの懸念も。今回の工事執行責任者、市の菊池公男市民生活部長は「危険な空き家をつくらないような対策が重要になる。空き家バンクの運用による利活用促進と合わせ、家屋の適切管理を所有者に周知する取り組みに力を入れたい。将来を考えた管理、きちんと相続手続きを行ってほしい」と呼び掛ける。
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