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達増知事(右から3人目)と意見を交わした釜石・大槌地域の5人

復興推進へ前向き提言、達増知事と県政懇談会〜地域づくりの課題共有、交流人口拡大へ地域間連携を

達増知事(右から3人目)と意見を交わした釜石・大槌地域の5人

達増知事(右から3人目)と意見を交わした釜石・大槌地域の5人

 

 「復興の先を見据えた豊かな三陸の振興に向けて」をテーマに、達増拓也知事が地域で活動する市民の声を聞き、意見を交わす県政懇談会「がんばろう岩手!」は4日、釜石市大町の情報交流センター釜石PITで開かれた。震災からの復興を目指し、釜石市や大槌町で産業や地域づくりに取り組む5人が活動内容を紹介し、知事と意見を交わした。

 

 出席したのは、釜石で活動する熊谷友行さん(新日鉄住金釜石製鉄所総務部)、小山明日奈さん(藤勇醸造広報・商品企画開発担当)、遠藤ゆりえさん(NPO法人かまいしリンク代表)のほか、大槌町の松橋康弘さん(城山観光常務)、岩間妙子さん(アトリエ・イスト)。

 

 冒頭、達増知事は「元に戻す復旧ではなく、より安全、より暮らしやすく、地域経済や産業も新しい時代へと進んだ復興にしなければ。地元の底力、外部とのつながりを生かし力強く復興に取り組んでいる地域の声を聞き、県政で役立てたい」とあいさつ。5人が取り組みの課題や地域の未来について語った。

 

 共通の話題として挙がったのは、来年に迫ったラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催。関心の低さを心配する声も聞かれた。インバウンドの推進やW杯のプロモーション事業を手掛ける遠藤さんは▽民間人の活用▽女性と若者の巻き込み▽スタジアムの活用―が課題と指摘。「大会は岩手の復興、釜石ラグビーの再興につながる」と信じ、活動推進に意欲を見せた。

 

 熊谷さんは、仮設住宅や復興住宅の整備などに必要な土地を提供するといった会社の不動産管理を担当し、「生まれ育ったまちの復興に携わることができ、やりがいを感じる」と充実した表情。高校生のキャリア教育にも関わっており、進路選択の幅を広げる機会となる取り組みの継続に向けた意気込みも語った。

 

 小山さんは震災後の商品開発、食育などの取り組みを説明し、つながりの大切さを強調。「地元企業や団体とコラボして売り出すことで既存のものも新しいものに変わる。可能性は無限大」と、ものづくりの楽しさを話した。

 

 交流人口拡大に関し、地域間連携、広域での取り組みを求める人や、県内陸部から沿岸部につながる誘客方法の検討を望む声もあった。

 

(復興釜石新聞 2018年6月9日発行 第696号より)

 

復興釜石新聞

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こつこつと手作りした庭を開放している菊池夫妻

和洋の草花咲き誇る「陽子ガーデン」解放〜甲子町洞泉菊池さん宅

こつこつと手作りした庭を開放している菊池夫妻

こつこつと手作りした庭を開放している菊池夫妻

 

 季節の花や緑を楽しんでもらおうと、釜石市甲子町洞泉の菊池秀明さん(70)、陽子さん(71)夫妻が自宅の庭を開放し、鑑賞を呼び掛けている。華やかなバラが咲き誇るイングリッシュガーデン風の庭もあれば、枯れ山水の日本庭園もあり、それぞれの雰囲気を楽しめる。10日まで。

 

 夫婦でこつこつ手作りした庭は、約1600平方メートルの広さになる。公開するのは3年目。今年も、花びらがレースのような「クチュール・ローズ・チリア」、真っ赤な大輪花が目を引く「アンクルウオルター」、とげのないしなやかな枝に小花を多数咲かせる「春風」など、今では約60種類にもなるバラのきれいな姿、心地よい香りを楽しめる時期に合わせた。

 

 花の手入れを担当するのは陽子さん。「花と触れ合っていると気持ちが和らぎ、癒やされる。花それぞれの個性を楽しみ、喜んでもらえたらうれしい」と願う。

 

 庭造りは、秀明さんが退職した10年前に本格的に始まった。サツキなどで彩った日本庭園づくりを楽しんできた秀明さんが庭を拡張。陽子さんも気に入った草花をどんどん育てるようになり、花壇や小径などが次々と設けられた。

 

 年々、庭を見に来る人が増えていることから、今回の公開に合わせ歩道を整備し、駐車場も用意。「陽子ガーデン」の愛称も付けた。

 

 庭では、例年より遅れ気味のサツキがバラを追いかけるように少しずつ開花。さらにアジサイ、ヤマユリと続き、秋にはまた四季咲きのバラが楽しめる。冬期は庭をイルミネーションで飾り付け。秀明さんは「さまざまな花が咲き誇る今が一番幸せだけど、一年中楽しみがある庭にしたい。和洋の組み合わせも楽しみつつ、石造りの日本風の庭の良さも感じてもらえたら」と、庭造りの意欲は衰えない。

 

(復興釜石新聞 2018年6月6日発行 第695号より)

 

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60人が真剣に耳を傾けた終活講演会

「終活」講演会スタート、7月まで市内6地区で開講〜相続が争族にならないために

60人が真剣に耳を傾けた終活講演会

60人が真剣に耳を傾けた終活講演会

 

 元気なうちに人生の最後に向けた準備をする「終活(しゅうかつ)」をテーマにした講演会が5月31日、釜石市甲子町の甲子地区生活応援センターを皮切りに始まった。高齢化が加速し、終活の注目度が高まる中、残される家族の負担を軽減し、前向きに人生の締めくくり方を考える機会にしてもらおうと、市地域包括ケア推進室が昨年度に続いて企画。本年度は7月まで市内6地区の生活応援センター単位で順次開催する。

 

 甲子地区での講演会には約60人が参加した。釜石ひまわり基金法律事務所長の多田創一弁護士が「人生100年時代の終活~相続が争族にならないために」と題して講演。万一の時に自分の意思を残しておく準備の必要性、遺言の重要性、今すぐ始める終活などをアドバイスした。

 

 多田弁護士は相続問題を例えに挙げながら、「もっと早く対応していれば争うことなく済んだと思えるケースが多くある。残された家族、親族が仲たがいせず関係を継続していけるよう配慮するのが終活。始めの一歩を踏み出してほしい」と訴えた。

 

 財産、医療・介護と葬儀・お墓についての希望、親戚・友人の連絡先など、自分の身の回りのものを記録しておく終活ノートを配布。「残された人たちに決断させるのは酷。自分はどうしたいか、どうしてほしいか思いを残してほしい。意思表示があると家族が動きやすくなる。記録したノートのことを教えておくことも必要」と強調した。

 

 成年後見人制度、死後事務委任契約についても紹介。「悩み事の交通整理が弁護士の役割。必要なところにつないだり、アドバイスもできる。相談場所として選択肢に加えてほしい」と呼び掛けた。

 

 平田から足を運んだ60代の女性は「相続問題を抱え、すごく大変な思いをしている。子どもたちに同じ思いをさせたくない。迷惑をかけないよう、終活をきちんとしていかなければ」と話した。

 

 昨年度は、中妻と小佐野地区で実施。この日は甲子のほか、唐丹地区でも開催した。

 

 今後の開催予定は次の通り(かっこ内は開始時刻)。
 ▽6月19日=平田集会所(午後1時半)▽29日=栗橋地区基幹集落センター(午前10時)▽30日=青葉ビル(同)▽7月2日=鵜住居地区生活応援センター(午後2時)

 

(復興釜石新聞 2018年6月2日発行 第694号より)

 

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開講したボランティア通訳養成講座

ボランティア通訳養成講座開講、外国人観光客をサポート〜ワールドカップへ おもてなしの心も学ぶ

開講したボランティア通訳養成講座

開講したボランティア通訳養成講座

 

 1年後に迫ったラグビーワールドカップ(W杯)に向け、釜石市国際交流協会(丸木久忠会長)が主催するボランティア通訳養成講座が5月27日から市民ホールで開講した。釜石を訪れる多くの外国人観光客をスムーズに受け入れるのが目的。中学生から一般まで約30人が受講。講座は11月まで5回にわたって開かれ、英会話の基礎や、おもてなしの心などを学ぶ。

 

 同講座は昨年から来年まで3年計画で進めており、2年目の今年は受講者のほぼ半分が昨年からの継続。本年度初回のこの日は、市ラグビーワールドカップ2019推進本部事務局の増田久士主幹が国際大会のボランティアガイドについて講義。高橋晃進副主幹はボランティア募集について説明した。

 

 増田主幹は、3年前のラグビーW杯英国大会を視察した経験をもとに「現地のボランティアが失敗を恐れずに学び、挑戦する姿勢が強く印象に残った。釜石には釜石らしいやり方がある。相手のことを知ってあげるのが一番のおもてなしになるのではないか」などとアドバイスした。

 

 続く英会話講座では市の国際交流員エミリー・ハラムズさん、アシュリン・バリーさんが講師となり、身ぶり手ぶりを交えながら分かりやすく指導した。

 

 W杯組織委員会は、観客席への誘導などを担当する大会公式ボランティア(開催12都市で約1万人)を7月18日まで募集している。開催都市で観光案内などを行う独自ボランティアの内容や実施方法については検討中。釜石市国際交流協会事務局の宮崎敏子さんは「釜石の力を生かし、スムーズなサポートをお手伝いしたい」と意気込む。

 

(復興釜石新聞 2018年6月2日発行 第694号より)

 

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実りに期待を込めながらカボチャの苗を植え付けた

形はラグビーボール、カボチャでワールドカップ盛り上げ〜鵜住居町田郷の遊休農地に植え付け、釜石市農業委員会「特産品に」

「農地の日」にちなんだ活動を展開した農業委員ら

「農地の日」にちなんだ活動を展開した農業委員ら

 

 釜石市農業委員会(二本松誠会長)は21日、鵜住居町田郷の遊休農地でカボチャの苗の植え付けを行った。今回植え付けたのは「ロロン」「白栗(しろぐり)」という品種で、どちらもラグビーボールのような形をしたカボチャ。来年に迫ったラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催の機運醸成を農業面からも後押しする。

 

 県農業会議が2013年に設定した「農地の日」(7月15日)にちなんだ取り組み。釜石市では農地の有効活用、景観保全を狙いに、市内各地にある遊休農地でソバ栽培などを試みてきた。16年から今回と同じ農地(約10アール)で品種の異なるカボチャを栽培。昨年は夏にロロンを植え付け、晩秋に収穫したが、台風の影響やシカによる被害があり、収量は目標の8割程度だった。

 

 今回はW杯開催時に活用できるよう、植え付けを春、収穫を夏と作業の時期を変えて再挑戦。上品な甘さと滑らかな舌触りが特徴のロロンのほか、ほくほくした食感と甘い味わいで日持ち性の高い白栗の2種類を植え、一定の収量確保や品質などを調査する。

 

 この日の作業には委員ら15人が参加。甲子町の農業、佐々木四郎さん(72)が育てた2種の苗計80株を植え付けた。

 

実りに期待を込めながらカボチャの苗を植え付けた

実りに期待を込めながらカボチャの苗を植え付けた

 

 佐々木さんは自身のビニールハウスにも2種を植え付けており、水やりなど管理されたハウスと露地栽培での収量、品質の違いを確認するのを楽しみにする。マスクメロン、イチゴ、トマト、ホワイトアスパラなども育てていて、「農業は、ぼけ防止にいい。普通にやるより、いろいろ試して面白おかしく楽しみたい」と笑った。

 

 二本松会長(54)によると、ロロンは昨年の特産品販売イベントなどで試食してもらい、味の評価は上々。今年も生産を楽しみにする声もあり、「ユニークな形のカボチャを飾ってもらえれば、いい宣伝になる。ラグビーの盛り上げ、釜石の特産品につなげたい」と協力者の増加を期待した。

 

 今後は協力して間引き作業などを行い、7月下旬から8月に収穫する予定だ。

 

(復興釜石新聞 2018年5月23日発行 第691号より)

 

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震災前以来の根浜での楽しむ会に地元住民も喜びの笑顔

釜石・大槌郷土料理研究会、海の幸 山の幸 ふんだんに〜「根浜の復活」もちつきで実感

美しい海の景色と絶好の晴天の中、餅つきを楽しんだ

美しい海の景色と絶好の晴天の中、餅つきを楽しんだ

 

 釜石・大槌郷土料理研究会(前川良子会長、11人)主催の「新緑まつり~もちつき体験と郷土料理バイキングを楽しむ会~」は20日、釜石市鵜住居町根浜の民宿前川で開かれた。2011年の震災で甚大な被害を受けた同地区で、郷土料理を楽しむ会が行われるのは震災後初めて。高台移転で新たな集落が形成された復興団地の一角で、会員が腕によりをかけた海と山の幸を振る舞い、参加者とともに最高の笑顔を広げた。

 

 活動15年目を迎える同研究会は、釜石・大槌地区の農漁家の女性らで結成。海岸部の会員の中には震災の津波で家や家族を失った会員もいるが、山間部の会員や支援団体の尽力で活動を存続させ、翌12年には被災前に開いていた郷土料理を楽しむ会を再開。13年からは春に、橋野町青ノ木の八重桜の下で餅つきと料理を楽しむ会を継続し、市内外の参加者から好評を博してきた。

 

 震災から7年を経た今年は、昨春に高台移転のまち開きを果たした根浜地区が会場となった。研究会は震災前、根浜海岸レストハウスを活動拠点としていたが、津波で建物が全壊。今回は実に8年ぶりの根浜での催しとなった。

 

 前川会長が夫婦で経営する民宿の厨房(ちゅうぼう)に会員が朝早くから集まり、参加者を迎えるための料理作りに励んだ。会には市内外から20人が参加。眼下に海を臨む駐車場で餅つきを楽しんだ後、会員が調理した13品のメニューをバイキングで食した。海の食材はアメマス、イカ、ワカメなど。アメマスはみそ煮、焼き魚、汁物に姿を変え、参加者の舌をうならせた。一方、山の代表格は春の山菜。タラの芽、ウド、ワラビ、コゴミなど多彩な種類を用い、天ぷら、和え物、漬物風と地元ならではの家庭の味が並んだ。

 

震災前以来の根浜での楽しむ会に地元住民も喜びの笑顔

震災前以来の根浜での楽しむ会に地元住民も喜びの笑顔

 

 盛岡市から訪れた飲食店勤務の石田学さん(36)は「既製品を使わず素材を生かしているのがいい。自分でついた餅と山菜の味は格別。郷土食を次世代につなげようという会員の意欲を感じる。また勉強しに来たい」と笑顔で箸を進めた。

 

 昨年3月から同団地に暮らす佐々木虎男さん(80)は、レストハウスで開かれていた会を懐かしみ、「海と山の新鮮なものが食べられるのはやっぱりいいね。根浜や箱崎の会員がみんなの協力を得て、ここまで復活できたのは夢みたいだ。うれしいね」と声を弾ませた。

 

 13年に被災した民宿を自力で高台再建し、根浜復興をけん引してきた前川会長(66)は地元での楽しむ会実現に「本当に感無量。やっと海のお母さんたちが活躍できる場ができた。支えてくれた山のお母さんたちに感謝の気持ちでいっぱい」と目頭を熱くした。研究会では一昨年から食育活動にも取り組み、学校に出向いて団子作り体験なども行っている。「食への関心とともに、子どもたちには海や山など自然の中で楽しむことも伝えていきたい。会員同士、手を携え、今できることに力を尽くしていく」と、たゆまぬ前進を誓った。

 

(復興釜石新聞 2018年5月23日発行 第691号より)

 

復興釜石新聞

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釜石山火事復旧植樹活動~みんなで尾崎半島の緑を再生しよう!

【インタビュー】釜石山火事復旧植樹活動~みんなで尾崎半島の緑を再生しよう!

釜石山火事復旧植樹活動~みんなで尾崎半島の緑を再生しよう!

 

昨年の5月8日に発災した釜石市尾崎半島の林野火災は、当時の天候や消火活動が難航する環境なども関係し、被害面積413haと言う全国的に見ても大規模な火災となり、被害総額は7億4千万円にも及びました。

 

1年が経過し現場では復旧作業が進められていますが、現状について気になっている方も多いのはないでしょうか?

 

そんな想いに応えてくれる「釜石山火事復旧植樹活動~みんなで尾崎半島の緑を再生しよう!」が、6月17日(日)に開催されます。主催の釜石地方森林組合・高橋幸男 参事に、山林再生の取り組みについて伺って来ました。

 

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長年掛けて育てた木が被害に遭った山主さん達の想いとたくさんの支援

 

釜石地方森林組合・高橋幸男 参事

 

ーーまずは、これまでの取り組みについて教えて下さい。

 

高橋さん:

5月15日に鎮圧の発表を受け直後から関係各所と共に現地調査を開始し、6月初旬に岩手県、釜石市と「釜石市尾崎白浜・佐須地区林地再生対策協議会」をつくり、6月下旬には山林を所有する方々への説明会を行いました。

 

当初は復旧出来るかどうかについては大きな不安を感じていました。というのも、被害に遭った山林は組合員である山主さんが個人所有されており、復旧に取り組むには山主さんの意向や同意を頂く事が第一で、私たちだけでは動けないというのが実情でした。

 

ーー山主さんの気持ちを思うと、失意は如何ばかりか・・・と報道を見て心を痛めていた方も多かったですね。

 

高橋さん:

そうですね、ここまで60年程の時間を掛けて、今まさに販売できるという所まで育て上げた木がことごとく被害に遭い、その想いをぶつける相手もいないという現状で、山主さんの気持ちは汲んでも汲みきれない程でした。

 

でも、そんな中いち早く地元有志の皆さんが募金活動を行って下さり、その後も市内、県外のたくさんの個人、団体の皆さんから多くの支援を頂きました。そうした方々の存在や想いが、山主さん達の「よし!またやろう!」という気持ちに繋がったと言える程、その力は大きかったと思います。

 

風評被害~被害木の活用~

 

被害木伐採の様子

被害木伐採の様子(画像提供:釜石地方森林組合)

 

ーー被害に遭った木の取り扱いについてはどうだったのでしょうか?

 

高橋さん:

はい、その部分も山主さん達が復旧しようと決断する為には重要な点でした。
これまでの経験で、火災に遭った木でも樹皮をむけば使えることは分かっていましたが、それでもやはり被害木を販売する事は難しいかもしれないと危惧していました。

 

というのも、火災後の風評被害と言いますか、「被害に遭った木は通常の材木より安くなりますか?」というような内容の問い合わせが多くあったのです。ですから復旧に向かうためには、まず材木として使用できるかどうかを確認することが先決でした。

 

そこで、地元の製材所にご協力頂きサンプルとして製材した所、通常と遜色なく利用可能な事が確認出来ました。その結果を受け、8月中旬には所有者の方の一部自己負担により、先行して伐採が行われました。

 

その後、各種補助金などを利用して、平成32年度までは所有者の負担なしで再生に向けた復旧作業が行えることが決まり、それを受けて山主の皆さんの同意を頂き、本格的に動き出す事が出来ました。

 

被害木伐採の様子

被害木伐採の様子(画像提供:釜石地方森林組合)

 

ーー実際にどのように利用されているのでしょうか?

 

高橋さん:

初めに地元の製材所に製材を引き受けて頂き、個人の方が積極的に建築資材として使用して下さった事が、「被災木も通常の木材と変わらずに使えます」という事を広めて頂くモデルケースになったと思います。その後、大量の木を扱える集成材工場が東北地方に見つかり、さらなる利用促進につながりました。

 

釜石市に現在建設中の『鵜住居復興スタジアム』の一部分にもこの被害木が利用されていて、この夏の完成が待ち遠しい所です。また、催事の記念品などにもご利用頂き、予想を超えるご購入を頂いています。

 

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山林再生までの道のり~被害の大きさを思い知らされる日々~

 

釜石地方森林組合・高橋幸男 参事

 

ーー被害木の活用も広がり、復旧作業にも力が入る所だと思いますが、復旧の進捗具合についてはいかがでしょうか?

 

高橋さん:

被害面積のうち、植樹する総面積は260haで、これを3年で行う計画です。平成29年度中に植樹前の下準備が済んだ面積は40ha、実際に植樹が完了したのは14~15haとなっています。

 

何しろ現場は急傾斜地が多く、作業は困難を極めています。職員は毎日懸命に現場で作業をやってくれていていますが、数字だけ見るとまだまだで、私も改めて被害の大きさを思い知らされています。

 

でも、これまで植樹活動やボランティアで参加した方々から、「毎日こんな大変な場所で作業されているのですね!」と苦労を垣間見て声を掛けて頂ける事が、現場で作業するメンバーの励みや力になっています。そういう点でも一般参加型の植樹活動を行う意味は大きいと思っています。

 

山についての正しい知識を伝えたい~参加型の植樹活動~

 

ーー実際に現地に行くことで初めて分かる、知る事がある。そして、何より自分が参加出来る事が嬉しいと感じる方も多いのではないでしょうか?

 

高橋さん:

そうですね。「山林復旧の為に使って下さい」「ぜひ苗木の購入費に充てて下さい」というお声と共に、これまでたくさんの寄付金を頂いています。
“寄付金をどう活用するか”という話し合いで、やはり頂いた言葉や想いを大切にしたいという気持ちがありました。そこで、一緒に山を再生するために植樹に参加して頂く形も良いのではないかとの意見があり、企画に至りました。

 

ーー一般の方と一緒に植樹活動をされる時、どんな事を大事にされていらっしゃいますか?

 

高橋さん:

まずは参加する皆さんの“安全を確保する”こと、これが第一ですので、その部分に細心の注意を払っています。それから、“山について知ってもらう”この点も大切にしています。これは今回だけに限らず、当組合の事業など外部の方にお話しする機会にも同じように考えてお伝えしています。

 

ーーその場所の“ストーリー”を知る事は、その場所に愛着を持つ、大切にするという想いにも繋がりますね。

 

高橋さん:

植えた苗木にはご自分の名前が入ったマーカーを取り付けるのですが、このマーカーは記念品ともなっていて、一部分をお持ち帰り頂けます。帰った後も、ぜひ山との繋がりを感じて頂きたいと思っています。

 

植樹活動

一般参加による植樹活動の様子、右下:植樹活動参加記念品 マーカーとコースター(画像提供:釜石地方森林組合)

 

釜石山火事復旧植樹活動~みんなで尾崎半島の緑を再生しよう!

 
釜石市の8割を占める森林について知る事は、きっと故郷に誇りを持つことにつながるのではないかと思います。今回のインタビューではお届けしきれませんでしたが、山を適切に管理保全することが、災害に備える事になるなど、私たちの生活環境を守る事に繋がるという興味深いお話も教えて頂きました。

 

あなたも植樹会に参加して高橋さんのお話しを聞きながら、故郷の山について考えてみませんか?

 

6月17日に開催される「釜石山火事復旧植樹活動~みんなで尾崎半島の緑を再生しよう!」開催内容の詳細は以下のサイトなどからご覧ください。

 

6.17「釜石山火事復旧植樹活動~みんなで尾崎半島の緑を再生しよう!」参加者募集! – 釜石地方森林組合公式サイト
http://blog.kamamorikumi.jp/?eid=220

釜石地方森林組合Facebook
https://www.facebook.com/kamamorikumi/

 

縁とらんす

かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんす

縁とらんす編集部による記事です。

問い合わせ:0193-22-3607 〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内

座談会では花巻や気仙沼の施設について会場から質問も

釜石大観音仲見世通りの空き店舗を改修、新事業展開を期待〜シェアオフィス オープン祝う、利用者の交流促す

木のぬくもりが感じられるシェアオフィス。コミュニティーの場にも

木のぬくもりが感じられるシェアオフィス。コミュニティーの場にも

 

 釜石市大平町の釜石大観音仲見世通りの空き店舗1軒が、昨年6月からの改修工事を経て、シェアオフィス「co|ba kamaishi marudai(コーバ・釜石・マルダイ)」に生まれ変わった。19日、施設のお披露目を兼ねたオープニングイベントが行われ、約30人がリノベーションやシェアオフィスの先進事例に理解を深めた。

 

 改修されたのは、大観音落慶(1970年)により整備された商店街で土産物店として営業後、17年間空き家となっていた築約40年の木造2階建て物件。2012年に震災復興で三重県から来釜した一級建築士の宮崎達也さん(46)=宮崎建築事務所代表取締役=が、この物件を購入。15年に仲間と立ち上げた市民団体「釜石大観音仲見世リノベーションプロジェクト」が母体となり、改修工事が進められてきた。

 

 1階の半分と2階の約80平方メートルのスペースを、個人事業主などが複数入居できるシェアオフィスに改修。2階の床板には昨年5月の尾崎半島山林火災で被災したスギ材を有効活用した。作業には同プロジェクトメンバーのほか、入居する市の起業型地域おこし協力隊(釜石ローカルベンチャーコミュニティ)やボランティア有志が協力した。

 

 同施設は東京都の企業「ツクルバ」が運営するシェアオフィス、コワーキングスペースのネットワークに加盟。「co|ba(コーバ)」の名称で全国に展開される拠点は、釜石が20カ所目で、本県では花巻、一関に次いで3拠点目となる。釜石の施設名の“マルダイ”は、土産物店の屋号を引き継いだ。

 

 イベントでは、コーバ運営の先輩となる花巻市の小友康広さん(35)、宮城県気仙沼市の杉浦恵一さん(32)を招き、講演や座談会、情報交換などが行われた。

 

座談会では花巻や気仙沼の施設について会場から質問も

座談会では花巻や気仙沼の施設について会場から質問も

 

 15年に「花巻家守舎」を設立、代表取締役を務める小友さんは、実家の老朽化した自社ビルを改修し、コーバ花巻を開設。16年には「上町家守舎」を立ち上げ、同市の商業施設「マルカンビル」の閉鎖危機を救った。小友さんは、エリア価値を高めるリノベーションまちづくりについて講演。座談会では2人から、それぞれのコーバのコンセプトや利用状況が紹介された。

 

 シェアオフィスは複数の利用者が同じスペースを共有することで賃借料負担の大幅削減につながり、利用者同士の交流で新たな事業展開も期待される。釜石の施設は2階をテーブル席のワークスペースとし、プリンター、wifi、キッチンなどを装備。1階はカウンター、ソファ席を配置し、多様な働き方に対応する。2階はイベント会場としての貸し出しも行う。

 

 オーナーの宮崎さんによると、同協力隊員以外に、webデザイン業者などから利用に関する問い合わせが数件入っているという。「新しいものを作り出したいという志を持つ人たちが集まり、実際に新しい働き方、商品、ビジネスなどが生まれる場になれば」と宮崎さん。

 

 通りに面した1階の残り半分のスペースは店舗用に貸し出したい考えで、テナントを募集中。同施設の情報は、webサイトで見ることができる。

 

(復興釜石新聞 2018年5月23日発行 第691号より)

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再建された集会所・消防屯所の併設施設は新神住民活動を後押し

地域コミュニティの再構築へ、活気ある町内会へ住民一丸〜鵜住居町 新田神の沢、集会所・消防屯所の完成祝う

再建された集会所・消防屯所の併設施設は新神住民活動を後押し

再建された集会所・消防屯所の併設施設は新神住民活動を後押し

 

 東日本大震災の津波で被災した釜石市鵜住居町、新田神の沢集会所・消防屯所の併設施設が以前と同じ場所に完成し、その祝う会が13日、同集会所で開かれた。地元住民ら50人が出席し、地域コミュニティーセンターの再建を喜び合った。

 

 祝う会を主催した新田神の沢(新神)町内会の藤原吉明会長は「津波で当町内会でも40人以上の犠牲者を出し、集会所がなくなった。地域の集会や郷土芸能の練習には地域住民の施設や自宅を提供してもらった。この新しい施設を中心にコミュニティーをつくり直す。末長く大事に使い、多くの被災住民が戻り、以前のように活気ある町内会にしたい」と意欲を示した。

 

 野田武則市長は「以前と同じ規模というが、広く明るく感じる。鵜住居町では来年、ラグビーワールドカップ(W杯)が開かれる。釜石の新しい歴史をつくるステップに、『鵜住居』を国内外に発信しよう」と祝辞を述べた。

 

 岩崎吉平さん(岩崎商店会長)が旧施設を住民の総力で建設した逸話を紹介し、乾杯の音頭を取った。

 

木の香もすがすがしい念願の拠点施設の完成を祝う住民

木の香もすがすがしい念願の拠点施設の完成を祝う住民

 

 新施設は釜石市が建設。敷地、規模は旧施設と同じだが、冷暖房をエアコンに改善した。355平方メートルの敷地に、駐車場用地149平方メートルを確保。木造2階建てで、延べ床面積300平方メートル。集会所は仕切りがある55畳の会議室のほか、給湯室、トイレを備え、2方向の階段で出入りできる。1階の屯所には車庫、資機材置き場、会議室、休憩室を配置した。事業費は約9590万円。

 

 旧施設は新神町内会が1978年に建設。2階に集会所、1階は消防団第6分団第8部(岩崎有光部長、19人)の屯所だった。震災で建物とともに消防ポンプ車や資機材を失った。仮屯所は2カ所を転々と移動する中、新たな消防ポンプ車が2013年に配備された。

 

 新神町内会は震災前、約155世帯が暮らし、住宅の86%が被災した。現在、会員は約100世帯で、30戸が工事中、または建設を予定している。新たに移転して来る住民もあるという。

 

(復興釜石新聞 2018年5月16日発行 第689号より)

 

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戸建て住宅の整備も進む両石地区

両石アパート完成、内覧〜新しい生活に思いはせ、今月下旬から入居開始

国道45号沿いに完成した県営両石アパート

国道45号沿いに完成した県営両石アパート

 

 釜石市両石町に整備が進められてきた災害公営住宅、県営両石アパート(24戸)が完成し、12日、入居予定者らを対象に内覧会が開かれた。これにより県が市内に整備する災害公営住宅8カ所(373戸)は全て完了。入居は今月25日以降を予定し、入居者たちは震災から7年2カ月を経て始まる新たな住まいでの暮らしに思いをはせた。

 

 同アパートは国道45号沿い、盛り土造成された土地に建設された。鉄筋コンクリート造り5階建てで、敷地面積3125平方メートル、延べ床面積1865平方メートル。1DK4戸、2DK18戸、3DK2戸で構成した。

 

 1階部分には集会所、備蓄倉庫、物置、自転車置き場などを配置。駐車場は36台分を確保し、広場や植栽エリアなども設けた。建築工事は日本住宅(盛岡市)が担い、昨年5月に着工した。

 

 内覧会では4階の3タイプの部屋が1室ずつ公開され、入居予定者らが見学。メジャーで窓の大きさを測ったり、「冷蔵庫はここに置こう」などと間取りを確かめながら、新居のイメージをつかんだ。

 

部屋の間取りを確認しながら新生活に備える入居予定者ら

部屋の間取りを確認しながら新生活に備える入居予定者ら

 

 同アパートには震災前、同町で暮らしていた18世帯が入居を予定する。「あら、奥さまいらっしゃいませ。眺めがいいよ」「やっぱりここ(両石町)がいいね」。市内各地で離れて生活し、久しぶりの再会、会話を楽しむ姿も見られた。

 

戸建て住宅の整備も進む両石地区

戸建て住宅の整備も進む両石地区

 

 上中島町の仮設住宅に住む佐々木良子さん(81)は「やっぱり生まれ育った場所に住みたい。何もなくなったが、ふるさとだからね。海も見えていた方がいい」と、心待ちにしていた住まいの完成を喜んだ。仮設住宅暮らしで夫を失い、現在は一人で生活していて、「2、3年で戻れると思っていたが、こんなにかかるなんて」と複雑な思いもくすぶっている様子。それでも「みんなも戻ってくる。交流は生きがいになる。これからが楽しみ」と笑みを浮かべた。

 

 同アパートには若干の空き室があり、今後、日程を調整し再募集する。

 

(復興釜石新聞 2018年5月16日発行 第689号より)

 

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広報かまいし2018年5月15日号(No.1688)

広報かまいし2018年5月15日号(No.1688)

 

広報かまいし2018年5月15日号(No.1688)

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【目次】
表紙:釜石さくら祭り
P02:緊急避難場所を確認しましょう
P06:民生委員・児童委員の日
P08:介護保険の説明会/人生100年時代の終活講演会
P09:立正大学デリバリーカレッジ/「みんなの橋野鉄鉱山」開催
P10:市職員採用試験/工業統計調査
P11:復興住宅入居者再募集/ごみゴミ減量チャレンジ
P12:市民のひろば
P13:まちのお知らせ
P16:まちの話題
P18:保健案内版
P20:RWC2019TMミニ通信

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/shisei_joho/koho/backnumber/detail/1218494_2596.html
釜石市

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会場には老若男女が集い、熱いライブに盛んな拍手を送った

復興応援、バンドで奏でる〜大町でミュージックフェスタ、イベントも多彩に

会場には老若男女が集い、熱いライブに盛んな拍手を送った

会場には老若男女が集い、熱いライブに盛んな拍手を送った

 

 釜石市東部地区の中心市街地再興を音楽で後押しする「Oh!マチミュージックフェスタ」(同実行委主催)が3日、大町の市民ホールTETTO屋根のある広場で開かれた。アマチュアバンドのライブに加え、周辺ではドローン体験、フォトラリーなど楽しいイベントが組まれ、復興8年目の同地区を活気づけた。

 

 2015年に始まった同フェスタは、昨年まで青葉通りをメイン会場に開催。4年目の今年は4月にグランドオープンした市民ホールを会場とした。広場に面するホールBを開け放ち、屋外とつなげた空間を創出。特設のメインステージと、雨のため、おおまち広場から同ホール玄関前に移したアコースティックステージで交互に演奏した。

 

 応募20組の中から選ばれた県内外のソロ、バンド14組が出演。ロック、ブルース、ジャズ、ポップスなど多彩なジャンルの演奏で観客を楽しませた。ゲストとして、国内外に活動の場を広げる広島出身のレゲエシンガーDRIBBLA(ドリブラ)が出演。大規模土砂災害で多数の犠牲者が出た広島と東日本大震災の被災地に思いを寄せた楽曲などを披露し、心を通わせた。

 

魂の歌で釜石にエールを送ったドリブラ

魂の歌で釜石にエールを送ったドリブラ

 

 県南部のメンバー4人で結成するSOULMATE(ソウルメイト)のドラム担当、多田俊輔さん(32)=釜石市=は「今回のフェスタが、まちのにぎわいの縮図になっているよう。市民ホールという拠点ができ、いろいろな面で再スタートが図られるのでは」と期待感を高めた。

 

ジャズ、昭和歌謡などを透き通る歌声に乗せて届けたソウルメイトのステージ

ジャズ、昭和歌謡などを透き通る歌声に乗せて届けたソウルメイトのステージ

 

 会場内には今年も「青葉マルシェ」を開設。地元商業者が各種飲食メニューを提供したほか、キッチンカーの出店、フリーマーケットもあった。トイドローンの映像で上空からの景色を楽しむコーナー、消防、警察車両の展示、写真を撮りながら同地区を歩き、完成させたビンゴで飲食メニュー引換券がもらえるフォトラリーも人気を集めた。

 

 毎年同フェスタに足を運ぶ甲子町の鈴木文乃さん(30)は「地元が盛り上がっている感じがいい。今年は会場もコンパクトで、より一体感がある」と新たな魅力が加わったイベントに笑顔を広げた。

 

 震災の津波で被害を受けた東部地区は被災事業者の再建、復興住宅の完成、市民ホールの開館などで、まちの姿を大きく変える。新里耕司実行委員長(大町商店街振興組合理事長)は「今後は市民ホールを中心に、どう周辺に人を呼び込めるかが課題。昨年11月に立ち上げた東部地区事業者協議会を基盤に、大渡町から浜町までの一体的な地域振興に取り組みたい」と話した。

 

新日鉄釜石ラグビー部OB 長山さん 音楽でエール

 

 今回の一般出演者の中で最も遠くから足を運んだのは埼玉県行田市の会社員、長山時盛さん(55)=岩崎電気=。茨城県出身で1981年から新日鉄釜石ラグビー部のFW(プロップ)として活躍し、88、89年には主将としてチームを率いた経歴を持つ異色のミュージシャンだ。

 

アコースティックサウンドで釜石への思いを歌う長山さん(右)

アコースティックサウンドで釜石への思いを歌う長山さん(右)

 

 「Yellow Blues Kenny(イエロー・ブルース・ケニー)」の名で音楽活動を続ける長山さんは現在、クラブチームの監督などを務めるかたわら、若いころから親しんできたギターの弾き語りで各地の音楽イベントに多数出演している。

 

 釜石時代の仲間とは今も親交が深く、根浜の友人宅でライブを開くなど、応援の気持ちを寄せ続ける。同フェスタには今回初めて応募。釜石在住の音楽仲間の賛助出演を得て、オリジナル曲「釜石イズオールライト」などを披露し、復興に向かう地元住民を励ました。

 

 「復興は道半ば。少しでも音楽で力になれれば」と長山さん。震災後、何度も釜石を訪れ、まちの様子を見守ってきた。完成した市民ホールを目の当たりにし、「このホールが釜石復興の象徴のように感じる。大町界隈(かいわい)に明るさが戻ってきた」と笑顔を輝かせた。

 

(復興釜石新聞 2018年5月9日発行 第687号より)

関連情報 by 縁とらんす
Oh!マチ Music Festa 2018 – 縁とらんす
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