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三陸沿岸つなぐブラスの響き 27年で一区切り 釜石で締めくくる「ルート45港町コンサート」

第22回ルート45港町コンサート~音楽と心でつなぐ三陸道~

第22回ルート45港町コンサート~音楽と心でつなぐ三陸道~

 
 岩手、宮城両県の三陸沿岸5市で活動する市民吹奏楽団が続けてきた「ルート45港町コンサート」が4月21日、釜石市民ホールTETTOで最後の演奏会を迎えた。仙台-八戸間の高速道路早期完成を願い、1997年から各地持ち回りで開催されてきたが、2021年12月の「三陸沿岸道路」全線開通を受け、「一区切りに」と幕を下ろすことになった。最終公演は演奏会がスタートした釜石市が会場となり、約600人の聴衆が有終の美を飾る大演奏に感動と感謝の拍手を送った。
 
 新型コロナウイルス感染症の影響で20年から休止を余儀なくされたため、本公演は5年ぶり。東日本大震災による2年間の休止もあり、通算22回目の開催となった。1部はアンサンブルステージで幕開け。トランペット、フルート、クラリネット、サクソフォンの4楽器を担当するメンバーが、それぞれ10~16人編成で1曲ずつ演奏。各楽器の特色が感じられる演奏に聴衆が聞き入った。
 
トランペット(上)、フルート(下)のアンサンブルステージ

トランペット(上)、フルート(下)のアンサンブルステージ

 
クラリネット(上)、サクソフォン(下)のアンサンブルステージ

クラリネット(上)、サクソフォン(下)のアンサンブルステージ

 
 続いては初の試み、参加5団体を南北のチームに分けて送る合同ステージ。北は宮古と釜石のメンバーで「ハリウッド万歳」、「魔女の宅急便」Highlights(ハイライツ)を、南は大船渡、陸前高田、気仙沼のメンバーで「すずめの戸締まり」コレクション、「ルパン三世メドレー」を演奏。話題となった映画や幅広い世代に愛されるアニメの曲で楽しませた。
 
北チーム(宮古吹奏楽団、釜石市民吹奏楽団)のステージ

北チーム(宮古吹奏楽団、釜石市民吹奏楽団)のステージ

 
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南チーム(ぷなと音楽団、陸前高田市民吹奏楽団、気仙沼市民吹奏楽団)のステージ

南チーム(ぷなと音楽団、陸前高田市民吹奏楽団、気仙沼市民吹奏楽団)のステージ

 
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 休憩をはさんだ2部は5団体の合同ステージ。総勢約120人で「ジュビリー序曲」、「風紋」、バレエ音楽「火の鳥」と、吹奏楽演奏の醍醐味(だいごみ)を存分に感じられる大曲で聴衆を魅了した。27年の歴史を重ねてきた“三陸ブラス魂”のこもった演奏に惜しみない拍手が送られ、鳴りやまない拍手にさらに2曲で応えた。
 
5団体合同のステージは圧巻の迫力!聴衆は素晴らしい演奏に聞きほれた

5団体合同のステージは圧巻の迫力!聴衆は素晴らしい演奏に聞きほれた

 
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アンコールは団員らの心の歌「港町ブルース」と、「オーメンズ・オブ・ラブ」を演奏

アンコールは団員らの心の歌「港町ブルース」と、「オーメンズ・オブ・ラブ」を演奏

 
 陸前高田市の臺和敬さん、美穂さん(ともに38)夫妻は高校2年の娘が出演する同演奏会に初めて足を運んだ。「最後と聞いて寂しい思い。沿岸の吹奏楽がこんなに盛んだったとは。子どもたちのためにも何らかの形で復活してくれるといい」と期待。自身も市民吹奏楽団で活動するという花巻市の女性2人(30、40代)は「内陸でもあれだけの規模(120人)の演奏はなかなか聞けない。2回の全体練習で仕上げたとは驚き。勢いも感じたし、何より皆さんが楽しそうに演奏していて、終わってしまうのはもったいない」と惜しんだ。紫波町の村上正勝さん(65)は親戚の釜石団員の応援も兼ねて鑑賞。「大震災もあったが、沿岸の団員の方々が心を一つに頑張ってきたからこそ、あのような素晴らしい演奏ができたのだと思う。皆さんの強い思いも伝わってきた。感動の一言です」と演奏の余韻に浸った。
 
スタート時を知る団員がコンサートの経緯を話す場面も

スタート時を知る団員がコンサートの経緯を話す場面も

 
 同演奏会は1997年、釜石市民吹奏楽団(市吹)、気仙沼市吹、宮古吹奏楽団の3団体でスタート。森進一の名曲「港町ブルース」や沿線の国道45号にちなんだ名称を掲げ、持ち回り開催してきた。2008年には大船渡市のぷなと音楽団が仲間入り。11年の震災津波で団員や演奏会場としてきた2市のホールが被災し存続が危ぶまれたが、13年から再び回を重ね、19年には陸前高田市吹の加入で5団体にまで輪が広がった。その後、前例のない世界的な感染症の流行で、吹奏楽活動そのものが難しい事態に。地域をまたいでの活動もしばらく控えざるを得ない状況が続いた。
 
 「道路と共に音楽で三陸沿岸をつなげよう―」。開始当初からの思いはおおむね達成されたと、一区切りを決めた演奏会。1回目から参加してきた気仙沼市吹の畠山広成団長(52)は「この演奏会の歴史とともに自分自身も育ててもらった。最初はライバル心もあったが、互いの団を行き来し気心が知れてくると調和が生まれ、演奏も回を重ねるごとにいいものになってきた。信頼関係を築けたことが一番の財産」と振り返る。
 
5団体を代表し、釜石市吹の山内真紀人団長(中央)があいさつ。支えてくれた人たちへ感謝の気持ちを伝えた

5団体を代表し、釜石市吹の山内真紀人団長(中央)があいさつ。支えてくれた人たちへ感謝の気持ちを伝えた

 
 釜石市吹の山内真紀人団長(50)は「この取り組みを機に団同士の交流が深まり、互いの演奏会に賛助出演し合う関係ができたことも大きい。他の団体と一緒にやることで成長につながった若手も」と成果を実感。「これで終わりではない。つながった縁を糧に、各団体がさらに地元に寄り添いながら地域を盛り上げる活動を続けていく。いつかまた、みんなで集まって演奏会ができるように…」と、団員らの思いを代弁した。
 
「27年間ありがとう!」万感の思いで最後のステージを締めくくる団員ら。客席からも感謝とねぎらいの拍手が続いた

「27年間ありがとう!」万感の思いで最後のステージを締めくくる団員ら。客席からも感謝とねぎらいの拍手が続いた

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DAZN presents いわてグルージャ盛岡 パブリックビューイング in 釜石PIT ヴァンラーレ八戸FC戦

DAZN presents いわてグルージャ盛岡 パブリックビューイング in ヴァンラーレ八戸FC戦

 

\ いわてグルージャ盛岡を一緒に応援しよう! /

 

DAZN Presents パブリックビューイング in 釜石PIT
いわてグルージャ盛岡の応援企画として、アウェイ戦を中心にパブリックビューイングを開催します!

対象試合

2024明治安田生命J3リーグ 第13節(AWAY)
いわてグルージャ盛岡 vs ヴァンラーレ八戸FC

日時

2024年5月6日(月・祝) 13:00 キックオフ
開場 12:30

場所

釜石PIT(岩手県釜石市大町1-1-10)

 

【駐車場について】
・斜向かいにある釜石大町駐車場または周辺の有料駐車場をご利用ください。
・自転車およびバイクは、釜石PITに隣接する駐輪駐車スペースをご利用ください。

参加費(運営協力費)

大人300円/高校生以下無料
※運営協力費は、本パブリックビューイング開催のための運営費の一部として使用いたします。会場でお支払いください。

その他

・いわてグルージャ盛岡公式グッズを会場にて販売!
・PV会場限定 オリジナルLEDキーホルダーも販売!
・ソフトドリンク/ノンアルドリンクを会場で販売!

主催

釜石まちづくり株式会社

フェリアス釜石

釜石まちづくり株式会社

釜石まちづくり株式会社(愛称 フェリアス釜石)による投稿記事です。

問い合わせ:0193-22-3607
〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内 公式サイト

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馬との触れ合いで人づくり 釜石・黍原豊さん(三陸駒舎) アウトドア・リーダーズ大賞

馬の背に乗ってはしゃぐ子どもたちと同じ笑顔の黍原豊さん(右から2人目)=4月25日

馬の背に乗ってはしゃぐ子どもたちと同じ笑顔の黍原豊さん(右から2人目)=4月25日

 
 釜石市橋野町の一般社団法人「三陸駒舎」(寄田勝彦代表理事)は築100年を超える古民家を拠点に、馬と共に暮らす地域文化の再生やホースセラピーによる心のケアなどに取り組む。そこで生活しながら事業を担う理事の黍原豊さん(47)が、野外活動を通して人材育成に取り組むリーダーを表彰する「ジャパン・アウトドア・リーダーズ・アワード(JOLA)2024」で、最高位となる大賞に輝いた。馬や自然との関わりを手法とした地域づくりの実践や「人間の土台作りに軸を置いている姿勢や考え方」が評価された。大賞の受賞は東北地方では初めて。
 
 黍原さんは愛知県瀬戸市出身で岩手大農学部卒。岩手県葛巻町の廃校を利用したエコスクールでの活動を経て、東日本大震災後の2013年に妻の故郷・釜石に移った。復興まちづくりを手助けする「釜援隊」として活動。子どもたちの居場所づくりに取り組む中、各地で教育牧場を経営する寄田代表と出会って馬に興味を持つようになった。
 
 仮設住宅などで馬との触れ合い体験などを行ってみた黍原さんは、子どもたちの生き生きした様子や、馬との生活を懐かしむ年配者の言葉に「ピンときた」。動物や自然との触れ合いによる心のケア、地域再生の可能性を見いだし、15年4月に寄田代表と同法人を立ち上げた。馬屋と母屋が一体の曲がり家を改修し、家族3人で定住。16年春に馬がやってくると、トレッキングなどエコツーリズム事業を開始し、17年から本格的にホースセラピーに乗り出した。
 
豊かな自然に囲まれた三陸駒舎の拠点。曲がり家で馬とともに暮らす

豊かな自然に囲まれた三陸駒舎の拠点。曲がり家で馬とともに暮らす

 
 「乗せてくれてありがとう」。雌のドサンコ(北海道和種)「アサツキ」(14歳)をなでる子どもたちの表情は柔らかい。気持ちが高ぶった子が馬の背をたたくと、「ダメだよ、痛がるから。驚くでしょ」と別の子が声をかける。「そうだね、ごめん」。そんなやりとりを黍原さんが静かに見守る。
 
 いつもの“さんこま”の風景。放課後の子どもたちがやって来てアサツキのほか、同じ雌のドサンコ「ピーナッツ」(10歳)、雌のポニー「笑馬(えま)」(11歳)と触れ合ったり、馬屋の掃除や餌の計量など世話のお手伝いをしたりする。すぐそばにある森や川といった自然環境を生かした遊びにくり出す子たちがいれば、室内で絵を描いたり、おやつを作り始める子もいる。
 
雌馬の「アサツキ」の背に乗る子どもたちを見守る黍原さん(左)

雌馬の「アサツキ」の背に乗る子どもたちを見守る黍原さん(左)

 
アサツキと触れ合う子を見つめる黍原さんの表情はあたたかい

アサツキと触れ合う子を見つめる黍原さんの表情はあたたかい

 
 利用するのは小中学生が中心。今では月に延べ200人が市内外から訪れる。中には発達障害を抱えていたり、不登校だったりする子もいる。常勤スタッフ5人、非常勤2人で見守る。ここでは「まず、やりたいことをやってもらうのが決まり」と黍原さん。その中で、苦手なことや課題を見つけて挑戦してもらうよう提案する。そうすると、「子どもたちは意欲を持って頑張り、できることを増やしていく」という。
 
 コミュニケーションが苦手だった自閉症の小学生の男子は馬との関わりから体験活動を広げていき、黍原さんいわく「もともと持っていたエネルギーをいい方向に出せるようになった」ことで、友達と遊べるようになった。馬の世話で「命をつなぐこと」を体感した子どもの様子から「自分も役立っていると自己有用感が増している」と感知。言葉という仕切りで世界を分けない動物や自然との触れ合いは「差別や偏見をとかす」と受け止める。こうした福祉と野外活動を絡めた点が今回の受賞につながったと独自に分析する。
 
母屋と馬屋が一体の曲がり家は遊びや学びの要素が散らばる

母屋と馬屋が一体の曲がり家は遊びや学びの要素が散らばる

 
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子どもたちは思い思いの遊びを見つけて自由に過ごす

 
 表彰は国内外のアウトドア関連企業や活動家、研究者らでつくるJOLA運営委員会(東京都)が主催。2017年から行われ、コロナ禍で21年は中止された。7回目の今年は全国から51人の応募があり、審査を経て、黍原さんを含む優秀賞6人、奨励賞2人を選出。3月13日に都内で行われた表彰式当日に、優秀賞の中から大賞と特別賞が発表された。団体や組織ではなく、個人に焦点を当てているのが特徴で、今回を含めこれまでに全国の60人が受賞している。
 
賞状を手に笑顔を見せる黍原さん

賞状を手に笑顔を見せる黍原さん

 
子どもたちの笑顔と元気を引き出す活動を続けていく

子どもたちの笑顔と元気を引き出す活動を続けていく

 
 大賞受賞は「僕なんだ」と意外だったという黍原さんだが、「家族や地域住民、関わってくれている人たちの力を含めた評価」と喜ぶ。団体の活動を振り返り、自身の成長を改めて実感する機会になったと感謝も口にする。一方で課題が見えてきたといい、「苦しい立場の子どもたちも来ているが、馬のおかげでできていることがある。そのノウハウや経験を伝えていきたい。保護者向けの勉強会など家庭に対する支援をセットにした取り組みにしていければ」と展望した。

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戻れ!震災前の生き物たち 釜石・根浜にビオトープ整備 GWには体験イベントも

根浜シーサイド内に整備されたビオトープ(生物生息空間)

根浜シーサイド内に整備されたビオトープ(生物生息空間)

 
 釜石市鵜住居町の根浜海岸観光施設「根浜シーサイド」内に、多様な生き物が生息できる「ビオトープ」が整備された。東日本大震災の津波で失われた水辺環境を復元することで本来の生態系を取り戻し、自然との触れ合いや環境教育に役立てる狙い。同所の市指定管理者かまいしDMC(河東英宜代表取締役)が、市民団体かまいし環境ネットワーク(加藤直子代表)と協働で取り組んだ。大型連休最終日5月6日には、生き物のすみかづくりなどを行うお披露目イベントも予定される。
 
 ビオトープは多目的広場(運動場)の西側、山林が隣接する約80平方メートルの土地を市から借用して整備した。山から流れ出る沢水を引き込んだ大型の池を造成。池の縁の土留めにはスギの丸太材や花こう岩の割栗石を用い、より自然に近い景観にした。池の水深は約30センチ。排水路を施し、水の循環を可能にした。甲子町の佐野建設が施工。釜石東ロータリークラブ(RC、佐藤猛夫会長、会員28人)が60周年記念事業として同所の環境整備のために拠出した寄付金を活用し、実現させた。
 
水辺にすむ生き物が集えるように大型の池を配置

水辺にすむ生き物が集えるように大型の池を配置

 
19日は排水路などの仕上げ作業が行われた。池の真ん中には石を配した小島も(左下)。小鳥やカエルの休息風景も見られるかも?

19日は排水路などの仕上げ作業が行われた。池の真ん中には石を配した小島も(左下)。小鳥やカエルの休息風景も見られるかも?

 
 根浜シーサイドの敷地には震災前、同地区の集落があった。ビオトープの整備地一帯は元々田んぼで、トウホクサンショウウオ、シュレーゲルアオガエル、ニホンアマガエル、ドジョウなど多様な生き物が生息していた。震災の津波は集落全体を飲み込み、住民らは復興事業で新たに造成された高台住宅地に集団移転。跡地にはキャンプ場や多目的広場などを備えた同観光施設が整備された。
 
 震災前から同所の環境に注目していた同ネットワークの加藤代表は、被災後も山からの沢水が見られるこの場所に「もう一度、生き物が住める環境を作れないか」と思案。同DMCにも同様の考えがあり、このたびの釜石東RCの支援を機に事業実現にこぎ着けた。
 
 整備に先立ち、3月初旬に設けた近くの実験池にはトウホクサンショウウオがさっそく産卵。イモリの姿も確認されており、同所が生息環境に適していることを裏付けた。新設池が周辺の自然になじんでくれば、カエルやトンボなど水辺に集まる生き物が見られるようになるのではと期待される。
 
水に落ちたスギ枝に産み付けられたトウホクサンショウウオの卵(左下拡大)。ふ化に期待する加藤代表(右)とかまいしDMCの佐藤奏子さん

水に落ちたスギ枝に産み付けられたトウホクサンショウウオの卵(左下拡大)。ふ化に期待する加藤代表(右)とかまいしDMCの佐藤奏子さん

 
池の背後には広葉樹が茂り、四季折々の景色も楽しめそう

池の背後には広葉樹が茂り、四季折々の景色も楽しめそう

 
 県環境アドバイザーなども歴任する加藤代表はビオトープの概念が浸透する前から、その重要性に着目。これまでに日向ダム(1997年)、甲子町松倉(2005年)、片岸町(07年)につくり、多種多様な生き物が見られる空間を再現。子どもたちの環境教育などに役立ててきた。3年越しの構想が実を結んだ“根浜ビオトープ”に、「本来の生き物が戻るには2~3年はかかるだろうが、自然にすみつくのを待ちたい。近年は自然環境の変化や安全管理の面から、身近に生き物を観察できる場が少なくなった。ここが自然との触れ合い空間になるとともに、地元の方が昔を懐かしむ憩いの場になれば」と願う。
 
 同DMCは5月6日午後1時半から、ビオトープのお披露目を兼ねて、生き物のすみかづくりの体験イベントを予定している。
 
竹を渡した部分に生き物のすみかを作る体験イベントを大型連休中に開催予定

竹を渡した部分に生き物のすみかを作る体験イベントを大型連休最終日に開催予定

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振り返り備える…事前防災へ 釜石市、スマホで避難行動分析 訓練で実証実験、結果を報告

スマホの位置情報を活用し人流を解析する実証実験の結果説明会

スマホの位置情報を活用し人流を解析する実証実験の結果説明会

 
 釜石市は19日、3月の地震・津波避難訓練で行ったスマートフォンの位置情報データを活用して避難行動を分析する実証実験の結果説明会を市役所で開いた。リアルタイムな動きを可視化することで人が集まった場所を確認でき、想定されていなかった新たな経路を発見するなど情報収集ツールとして有用性も認識。市はデータをホームページで公開するほか、行動の振り返りで活用するといった「事前防災」に役立てることを視野に導入について検討を進める。
 
 実証実験は3月3日の避難訓練に合わせて実施した。ソフトバンク子会社で位置情報を活用したビッグデータ事業を手掛ける「Agoop(アグープ)」(東京)が協力。同社が提供する歩数計測アプリをスマホにインストールした約200人の行動データを分析した。
 
実証実験の概要や結果を説明する加藤有祐取締役兼CTO

実証実験の概要や結果を説明する加藤有祐取締役兼CTO

 
 説明会には市幹部職員、小中学校の校長、市議ら約50人が参加。同社の加藤有祐取締役兼最高技術責任者(CTO)が、リアルタイムの人流に岩手県が公表した最大クラスの津波浸水想定のシミュレーションを重ねた動画などをモニターに表示しながら説明した。
 
 人流データをモニタリングしたのは市内の4エリア。スマホの衛星利用測位システム(GPS)を活用したもので、最短3分前の行動を可視化、1分ごとに情報が更新される。ほとんどの人は警報発令の1~3分後に避難行動を開始し、10分ほどで避難が完了。素早く適切に行動できていることを確かめることができた。
 
釜石市内4エリアの人流データに津波シミュレーションを重ねて表示

釜石市内4エリアの人流データに津波シミュレーションを重ねて表示

 
 実験では「市が想定していなかった新たな経路を見つけられた」と報告もあった。避難は短距離ルートで-と考えていたが、唐丹地区では「遠回り」の動きが見られた。現地の様子を確認すると、勾配はあってもより早く浸水想定域を抜けることができ、加藤取締役は「素早く高台に避難するという教育が基になった行動では」と分析。訓練後に可視化データを見て振り返ることで、「危機意識や訓練への参加意識の醸成につながるのでは。平時からの利用が大事で、データ分析を活用してほしい」と強調した。
 
想定外ルートの発見につながった事例などを示しながら解説した

想定外ルートの発見につながった事例などを示しながら解説した

 
 市防災危機管理課の川崎浩二課長は「避難時に行動や場所をどう見いだしているか、可視化したことで知ることができた」と手応えを得る。避難訓練ではAI(人工知能)搭載のカメラを使って避難者の属性などを把握する実験も行っていて、こうした技術を組み合わせ、事前防災に役立てたい考え。行動の見える化で「訓練参加のモチベーションにつながれば」と期待する。
 
 ただ、県公表の浸水想定域には約1万1000人が暮らすが、最終的な訓練参加者は約2400人で、いかに増やすかが課題として残る。また、分析の鍵となるのはデータ量で、訓練の周知と合わせアプリのインストールも呼びかけたが、想定より少なかった。協力者を増やす取り組みも課題として挙がった一方で「下校時の避難訓練で活用したい」との声もあり、市は防災教育や地域防災の場での活用を検討していく。
 
 位置情報を用いた人流データは1月の能登半島地震でも活用された。同社が提携企業から収集した位置情報を基に通行実績マップを作成し、災害派遣医療チームや支援団体などに提供。救援ルート、物資供給の優先度の検討に役立てられたという。釜石の訓練では避難者がいる場所が自動で検知され、避難所に集まった人数がランキング形式で表示された。市の猪又博史危機管理監は「人の流れが自動的に目に見えれば、次の対応につながる。想定外の避難場所を見つけるのにも使えるのではないか。導入に向け、庁内で協議を重ねたい」とした。

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地酒「浜千鳥」お気に入りは? 春恒例・すべてを楽しむパーティーで飲み比べ 28銘柄堪能

今年で32回目! 浜千鳥のすべてを楽しむパーティー=16日夜
 

今年で32回目! 浜千鳥のすべてを楽しむパーティー=16日夜

 
 釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は16日、第32回浜千鳥のすべてを楽しむパーティーを大町のホテルクラウンヒルズ釜石で開いた。市内外から約120人が参加。同社が掲げる“地産地消”の酒を心行くまで味わい、蔵人の技と地元の米、水で生まれる日本酒のうまさを体感した。ミニトーク、利き酒挑戦会などもあり、楽しい夜のひとときを過ごした。
 
 開会にあたり新里社長は、昨年創業100年を迎えた同社の歴史を紹介。製鉄所の繁栄によるまちの酒需要増加を受け、遠野の造り酒屋がルーツの新里家と釜石の有力者の出資で同社がスタートしたことを明かした。「会場にはそれぞれ特徴のある酒が並ぶ。“酒ときどき水”で、いろいろな銘柄を少しずつ試してほしい」と呼び掛けた。
 
 1部は「100年企業の地域ブランドつくり」と題したミニトーク。1902(明治35)年創業のみそ、しょうゆ製造販売業、藤勇醸造(大渡町)の小山和宏専務取締役と23(大正12)年創業の浜千鳥の奥村康太郎杜氏(醸造部長)が話した。小山専務によると、初代藤井勇助氏は釜石鉱山田中製鉄所の横山久太郎所長の命で、資金的バックアップを受けて同社を創業。市民に親しまれる甘口のしょうゆは九州地方に由来するもので、官営八幡製鉄所の操業(1901年)時、釜石の技術者が同地へ指導に行ったことが関係しているという。
 
写真上:藤勇醸造の小山和宏専務(中)、浜千鳥の奥村康太郎杜氏(右)によるミニトーク 同下:両社の歴史を感じながら聞き入る参加者

写真上:藤勇醸造の小山和宏専務(中)、浜千鳥の奥村康太郎杜氏(右)によるミニトーク 同下:両社の歴史を感じながら聞き入る参加者

 
 津波や艦砲射撃を乗り越え100年以上の歴史を刻む両社。時代の変遷とともに新たな挑戦も行いながら、地元の味を創り上げてきた。奥村杜氏は大槌産酒米や湧水を使った酒造り、小山専務はこうじを活用した甘酒や化粧水などの新商品、カフェバーの開店について説明。地域に根差した企業として、今後も発展させていくことを誓い合った。
 
 2部は参加者お待ちかねのパーティー。乾杯後、さまざまな酒と料理を楽しんだ。各テーブルには3月の県新酒鑑評会で金賞を受賞した「純米大吟醸結の香」、大槌産酒米と湧水で仕込んだ「源水」、岩手大生が中心となったi-Sake(あいさけ)プロジェクトとの共同企画「Rondo Iwate(ろんどいわて) 2024」など5銘柄が用意された。料理では地元食材や藤勇醸造のみそ、しょうゆ、浜千鳥の酒かすを使ったメニューも提供された。
 
テーブルに並んだ酒でまずは乾杯!この後を楽しみに…

テーブルに並んだ酒でまずは乾杯!この後を楽しみに…

 
おいしい酒に笑顔を広げ、パーティーを満喫

おいしい酒に笑顔を広げ、パーティーを満喫

 
 毎回人気の試飲コーナーには吟醸酒、純米酒、にごり酒、無ろ過生酒、米焼酎など23種の酒が並んだ。中には1991年醸造の30年ものの古酒も。参加者は興味を持った酒を飲み比べ、香りや味の違いを楽しんだ。
 
 盛岡市の伊勢美里さん(38)、本堂満智子さん(43)、成田麻由さん(30)は古酒、本醸造、純米酒を飲み比べ。「香りが強い」「甘いけどすっきり」などと感想を言い合い、「違いが分かり面白い」とにっこり。飲食業の伊勢さんは「店でも浜千鳥は好まれる。最近は“源水”押し。『すっきりしておいしい』と好評」と話す。ずらりと並んだ浜千鳥商品に「これだけの種類があるとワクワクする」と堪能した。
 
さまざまな銘柄を試飲できるコーナー。目移りしそう

さまざまな銘柄を試飲できるコーナー。目移りしそう

 
浜千鳥自慢の酒28種がずらり。1991年醸造の「仙人郷」(右下写真)は参加者も興味津々

浜千鳥自慢の酒28種がずらり。1991年醸造の「仙人郷」(右下写真)は参加者も興味津々

 
同じものはどれとどれ? 5種の酒を判別する利き酒コーナー

同じものはどれとどれ? 5種の酒を判別する利き酒コーナー

 
 同社に酒米「吟ぎんか」を供給する大槌酒米研究会の佐々木重吾会長によると、昨年は猛暑の影響で米作りには大きな苦労が伴ったという。浜千鳥の奥村杜氏も「これまでに経験したことがない気候。米が溶けにくく吸水などで難しさがあった」と振り返った。その中、県新酒鑑評会では純米大吟醸結の香の金賞に加え、県酒造好適米(吟ぎんが、ぎんおとめ)を使った部門で吟醸酒が7年連続の全農岩手県本部長賞を受賞している。
 
 職場の仲間で参加した釜石市の柏﨑勇希さん(23)は「こんなに種類があるとは驚き。いろいろな酒を気軽に飲めていいですね。好みに合うものも見つかりそう」。同パーティーへの参加は初めてで、「酒好きな人たちからいろいろな話も聞けて面白い」と交流も楽しんだ。
 
 春を迎え、来季の酒造りに向けた稲作準備も始まる。同社の酒造りの一連の工程を学べる一般向け体験塾は5月26日の田植えからスタートする。
 
参加者と談笑する浜千鳥の新里進社長(左)

参加者と談笑する浜千鳥の新里進社長(左)

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釜石さくら祭り

4月28日(日)に唐丹町で釜石さくら祭り(唐丹町天照御祖神社式年大祭大名行列)が6年ぶりに開催されます。唐丹町内の三基の御神輿に加え、神楽や虎舞、手踊り、太鼓が行列に加わり約4㎞を練り歩きます。唐丹町の各地区に代々受け継がれてきた大名行列・郷土芸能・神楽をお楽しみください。
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パンフレットはこちらをご覧ください。[PDF:10.8MB]
当日の行程やお通りのルートはこちらをご覧ください。[PDF:1.78MB]

日時

2024年4月28日(日)

時間 内容
9時00分 天照御祖神社 祭儀、神楽、虎舞、郷土芸能奉納
9時45分~ 行列繰出(行程:神社~旧国道~唐丹公民館~本郷桜並木~本郷海岸ふかさ広場)
10時15分 小白浜唐丹公民館前着~唐丹小中学校入口
11時30分 本郷桜並木着
12時30分 本郷海岸ふかさ広場着
13時00分~ 郷土芸能奉納
14時00分 本郷海岸ふかさ広場(御旅所)発
15時00分 神社帰還

※時間が多少前後する場合があります。

場所

唐丹町

問い合わせ

天照御祖神社社務所
電話番号:0193-55-2138

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 産業振興部 商工観光課 観光物産係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話 0193-27-8421 / FAX 0193-22-2762 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2024040300058/
釜石市

釜石市

釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
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釜石出身 中川大介さん 自然再生、父・故淳さんの思い…自著で伝える 古里で出版記念トーク

中川大介さんトークライブ=14日、桑畑書店

中川大介さんトークライブ=14日、桑畑書店

 
 釜石市平田出身で北海道函館市在住のライター中川大介さん(61)が14日、古里釜石でトークイベントを行った。中川さんの父淳さんは、たたら製鉄研究、東日本大震災後の復興プロジェクトや桜植樹など多彩な活動で地域に貢献した方で、昨年10月に函館市で逝去(享年90)。中川さんは「父が愛した桜の季節に地元で…」と13日、淳さんのお別れ会を釜石市民ホールTETTOで開いた。トークイベントは大町の桑畑書店(桑畑眞一社長)が同会に合わせて企画した。
 
 中川さんは記者として30年勤務した北海道新聞社を2年前に退職。自身が取材活動で関わった河川環境の再生、父淳さんが震災後、地元紙の復興釜石新聞に寄せたコラム「足音」を基に、人間は自然とどう向き合うべきかを記した著書「水辺の小さな自然再生」(一般社団法人農山漁村文化協会刊)を昨年12月に出版した。
 
河川環境再生の取材や父淳さん(右下写真)が寄稿したコラムを基に執筆した本を紹介する中川大介さん。「環の中に生きる」は自費出版

河川環境再生の取材や父淳さん(右下写真)が寄稿したコラムを基に執筆した本を紹介する中川大介さん。「環の中に生きる」は自費出版

 
 記者時代、農漁業や環境保全などの取材を数多く手がけた中川さんは、現場で目にした3面をコンクリートで固められた川(水路)に疑問を感じた。後に北海道東部の3河川で、魚が遡上できる「魚道」作りを取材。流域の住民が自ら立ち上がり、自己調達できる資金規模、多様な主体の参画・協働で取り組む再生活動に感銘を受けた。中でも驚いたのは河川コンサルタントが提唱した「壊れながら機能する魚道」という概念。補修を繰り返すことが住民の継続的な関心へとつながっていくという。
 
 「技術の進歩は人間が自然に関わる機会を減らし、地域の絆の希薄化、自然を見る目を失うことにもなった」と中川さん。自然災害が多発する昨今。「人間の力には限界がある。自然に逆らわない、自然のしくみに折り合うような技術を考えていかねばならない時代にきている。そのヒントが小さな自然再生の中にあるのでは」と話す。
 
北海道の河川での魚道作りは映像を見せながら説明した

北海道の河川での魚道作りは映像を見せながら説明した

 
 中川さんの父淳さんは元中学校技術科教員。「鉄のまち釜石」の教育の一環で、伝統的な「たたら製鉄」の技法を実践。艦砲射撃体験記録の掘り起しや平和運動にも取り組んだ。2011年の震災津波で平田の自宅は全壊。苦難を経験しながら平田地区復興プロジェクト委員長、釜石に桜を植える会会長として古里再生に力を尽くした。17年に病のため、長男大介さんが暮らす函館に転居。闘病中だった昨年10月、急逝した。
 
 中川さんは「父が生きてきた足跡は自分にとっても大きなもの。人と技術、人と自然などを考える上でも重要なヒント」と話す。この日は、震災から1年後に淳さんが新聞に寄稿した桜のコラムを紹介。これを機に桜を植える会が立ち上がり、市内に1000本以上の桜が植えられたことなどを伝えた。「古里の風景をつくる上で、その土地に住む者が関わっていくことはとても大事。風景とはそこに立つ人間が五感で感じるもの。人が重ねてきた記憶がその空間の中に蓄積されている」とも。自身の原風景である平田の山の景色を思い浮かべ、人と自然のつながりの深さを示した。
 
復興釜石新聞連載「足音」から抜粋した中川淳さんのコラム集。13日のお別れ会で配られた

復興釜石新聞連載「足音」から抜粋した中川淳さんのコラム集。13日のお別れ会で配られた

 
 前日の淳さんのお別れ会には生前、関わりのあった市民や教え子ら約90人が出席。淳さんの功績を示す新聞記事や写真、出演番組などを見ながら思い出を語り合ったという。
 
 トークイベントに足を運んだ同市の佐々木久美子さん(61)は「震災の津波で何もかも失ってしまった感があったが、それだけではなく再生への新たな芽も生まれていたことに改めて気づかされた。中川先生(淳さん)の桜を再生させようという取り組みもその一つ」と復興のシンボルにもなった活動に感謝を込めた。
 
約1時間のトークの後はサイン会も行われた

約1時間のトークの後はサイン会も行われた

 
自著を手に笑顔を見せる中川さん。書店の桑畑眞一社長(左)、出版元・農文協の篠田将汰さん(右)と

自著を手に笑顔を見せる中川さん。書店の桑畑眞一社長(左)、出版元・農文協の篠田将汰さん(右)と

DAZN presents いわてグルージャ盛岡 パブリックビューイング in 福島ユナイテッドFC戦

DAZN presents いわてグルージャ盛岡 パブリックビューイング in 福島ユナイテッドFC戦

DAZN presents いわてグルージャ盛岡 パブリックビューイング in 福島ユナイテッドFC戦

 

\ いわてグルージャ盛岡を一緒に応援しよう! /

 

DAZN Presents パブリックビューイング in 釜石PIT
いわてグルージャ盛岡の応援企画として、アウェイ戦を中心にパブリックビューイングを開催します!

対象試合

2024明治安田生命J3リーグ 第11節(AWAY)
いわてグルージャ盛岡 vs 福島ユナイテッドFC

日時

2024年4月28日(日) 14:00 キックオフ
開場 13:30

場所

釜石PIT(岩手県釜石市大町1-1-10)

 

【駐車場について】
・斜向かいにある釜石大町駐車場または周辺の有料駐車場をご利用ください。
・自転車およびバイクは、釜石PITに隣接する駐輪駐車スペースをご利用ください。

参加費(運営協力費)

大人300円/高校生以下無料
※運営協力費は、本パブリックビューイング開催のための運営費の一部として使用いたします。会場でお支払いください。

その他

・いわてグルージャ盛岡公式グッズを会場にて販売!
・PV会場限定 オリジナルLEDキーホルダーも販売!
・ソフトドリンク/ノンアルドリンクを会場で販売!

主催

釜石まちづくり株式会社

フェリアス釜石

釜石まちづくり株式会社

釜石まちづくり株式会社(愛称 フェリアス釜石)による投稿記事です。

問い合わせ:0193-22-3607
〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内 公式サイト

第5回えんむすびマルシェ

第5回えんむすびマルシェ
 
釜石大観音仲見世にて、えんむすびマルシェを開催します。
 
お菓子、飲食物、クラフト雑貨、などの露店とキッチンカーによるマルシェを開催します。今回はステージ企画やその他コンテンツも実施予定です。ぜひお越しください。

日時

2024年5月25日(土) 10:00〜15:00

場所

釜石大観音仲見世(釜石市大平町3-9-1)

料金

入場無料

主催

釜石大観音仲見世リノベーションプロジェクト
Facebookページ: https://www.facebook.com/kamaishinakamise
Instagram: https://www.instagram.com/enmusbi_marche

釜石大観音仲見世リノベーションプロジェクト

釜石大観音仲見世リノベーションプロジェクト

釜石大観音仲見世リノベーションプロジェクトは、仲見世商店街を再生するためにさまざまな活動を行っています。

問い合わせ (代表/宮崎):090-4857-5693 / t-miya@aa.alles.or.jp

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共に生きる社会へ 福祉新拠点「かまいしガーデン」開所 障害者の就労と生活、一体支援

釜石市上中島町に完成した福祉複合施設「かまいしガーデン」

釜石市上中島町に完成した福祉複合施設「かまいしガーデン」

 
 釜石市の社会福祉法人「翔友」(長谷川忠久理事長)が、上中島町に建設を進めていた福祉複合施設「かまいしガーデン」が完成し、17日に開所式があった。障害者が働きながら技能を身に付ける就労継続支援B型事業所と、介護を必要とする人が日中に過ごせる通所型の生活介護事業所を一体的に整備。新施設での事業はすでに始まっていて、長谷川理事長は「障害者を理解してもらう行動を続けるための基地。共生社会の実現へ地域の皆さんと共に努力していきたい」と力を込める。
 
 こうした複合施設を整備した背景には、災害への備えという点で課題があった。同法人関係団体のNPO法人市身体障害者協議会(長谷川理事長)が運営する千鳥町の市福祉作業所が日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の津波想定で浸水エリアに入り、土砂災害への警戒区域であることも判明。甲子川沿いにあり、5~10メートル未満の浸水が想定されるが、障害のある利用者らの避難誘導は緊急避難場所までの距離や周辺の道路事情などで困難な点が多く、安全確保の観点から機能移転などの対応が必要になった。
 
甲子川(手前)沿いに位置する千鳥町の福祉作業所。災害時の早期避難に課題があった

甲子川(手前)沿いに位置する千鳥町の福祉作業所。災害時の早期避難に課題があった

 
 加えて、高齢化で生活介護のニーズは増すが、感染症の影響もあって日中に自由な活動をして過ごせる場所が少ないことも問題として顕著化。障害者の雇用と介護を必要とする人の生活の安定を図るため、複合施設の構想を練った。岩手県の社会福祉施設等施設整備費補助金の活用を考え、申請。交付決定を受け、昨年5月に着工。約9カ月の工期を経て建物が完成した。
 
 新施設は、市身体障害者福祉センターに隣接する敷地面積2637平方メートルの市有地に整備した。鉄骨造り平屋建てで、面積は671平方メートル。建設費は約2億5500万円。4月に入ってすぐに供用を開始した。
 
新施設は市身体障害者福祉センター(右側の建物)に隣接する

新施設は市身体障害者福祉センター(右側の建物)に隣接する

 
 就労支援事業所は「市福祉作業所2nd(セカンド)」との名称で開設。作業室や相談室、食堂などを設けた。市内企業から部品組み立てや袋詰め、食品の表示ラベル貼りなどの作業を受託し、利用者個々の能力や知識の向上に必要な訓練を行う。新設を機に翔友へ事業承継し、千鳥町の施設は従たる事業所として運営する。定員は2施設合わせ40人で、現在は知的・身体・精神の障害者計38人が利用。新施設では足が不自由な人を中心に22人(定員25人)が移って作業に従事している。
 
真新しい施設で作業に励む利用者たち

真新しい施設で作業に励む利用者たち

 
 生活介護事業所の名称は「かまいしケア・ステーション」。リフト付きの入浴施設、多目的ホールなどを備えた。介護が必要な障害者や高齢者らの入浴や食事といった日常生活を支援するほか、創作やレクリエーションなど自由な活動をして過ごせる場を提供。屋外にはイベント広場も整備した。1日当たりの利用定員は20人。現在11人が利用申請している。
 
開所式であいさつする長谷川忠久理事長

開所式であいさつする長谷川忠久理事長

 
 開所式には関係者ら約40人が出席。長谷川理事長は「共生社会をつくるために大事なのは相手を理解すること。その礎となる施設が完成し、感慨ひとしおだ。障害の有無ということではなく、誰もが一人の人間として生きていくことのできる社会の実現を目指す」とあいさつした。建設工事を担った山長建設(大只越町)の山﨑寛代表取締役に感謝状を贈呈。祝辞に立った小野共市長は「不足するサービスを補い、融合した施設。新たな活力を生み出す拠点に」と期待した。
 
 長谷川理事長、小野市長ら6人がテープカットし、新施設の完成を祝った。福祉作業所の利用者を代表して紅白のテープにはさみを入れた40代の女性は「以前より遠くなって通うのに時間はかかるが、安全が確保された場所で安心。きれいな施設で、仕事を頑張りたい」と気持ちを新たにした。
 
新施設の完成を祝ってテープカットする関係者

新施設の完成を祝ってテープカットする関係者

 
入り口は事業ごとに分かれる。作業の様子や入浴施設が公開された

入り口は事業ごとに分かれる。作業の様子や入浴施設が公開された

 
 新設の2つの事業所に配属されたスタッフは計12人で、職業指導や生活支援にあたる。隣接する福祉センターは市から譲渡され、翔友の運営に移行。総合的に事業を展開し、障害者福祉を進展させていく。

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春告げる「松倉神社祭典」 神楽、虎舞で子どもら躍動 地域の伝統を末永く後世に

松倉神社例祭。地域に伝わる神楽と虎舞が神社に奉納された=13日夕方

松倉神社例祭。地域に伝わる神楽と虎舞が神社に奉納された=13日夕方

 
 釜石市甲子町の松倉神社(宮司=須藤寛人・正福寺住職)の例祭は13、14の両日行われた。祭事は松倉町内会(佐野賢治会長、約600世帯)が主催。同町内会芸能部(小久保謙治部長)が受け継ぐ「松倉太神楽」と「松倉虎舞」が神社や地区内で披露され、満開の桜と相まって春の訪れを華やかに彩った。
 
 松倉神社は釜石高校南側の地区内を見下ろす高台にあり、火伏せの神を祭る。本来の縁日(祭りが行われる日)は17日だが、近年は同日に近い土・日曜日に日程を組んで祭りを開催する。13日は宵宮を前に、地区東側の新興住宅地内の店舗3軒を回り門打ち。住民や芸能部の子どもらの希望で実現させた。夕方には同神社で祈祷と踊りの奉納が行われた。
 
宵宮祭で行われた祈祷(写真左)。神社は甲子町松倉の高台、大木の林の中にある(写真右)

宵宮祭で行われた祈祷(写真左)。神社は甲子町松倉の高台、大木の林の中にある(写真右)

 
神前で手を合わせ、今年1年の地区の平穏などを祈る祭り参加者

神前で手を合わせ、今年1年の地区の平穏などを祈る祭り参加者

 
 現甲子町松倉地区は江戸時代、内陸と沿岸を結ぶ交易の要衝“宿場町”として栄え、両芸能はともに江戸前~中期(諸説あり)に伝えられたとされる。松倉太神楽は盛岡の七軒丁(現盛岡市仙北町)から訪れた芸能者によってもたらされたといわれる。昭和10年代までは祭りや婚礼で披露され、地域の祝い事に欠かせないものとなっていたが、戦後は衰退。昭和50年代に町内会が中心となって復活に乗り出し、後継者育成を図りながら現在に至る。
 
江戸時代から今に受け継がれる「松倉太神楽」

江戸時代から今に受け継がれる「松倉太神楽」

 
松倉太神楽は2月に行われた市郷土芸能祭にも出演。後継者も育成中

松倉太神楽は2月に行われた市郷土芸能祭にも出演。後継者も育成中

 
 松倉虎舞は現山田町大沢から伝わったとされる。三陸随一の豪商だった前川(吉里吉里)善兵衛の千石船が航海で大嵐に見舞われ、流れ着いた島で、船方衆がそこに伝わる虎舞を習い覚えて持ち帰ったのが大沢虎舞とされ、釜石大槌地域の虎舞の多くは大沢から広まったと考えられている。松倉は“和藤内の虎退治”を描いた演目を継承する。
 
神社周辺は桜が満開!天候にも恵まれ、絶好の祭り日和の中、躍動する「松倉虎舞」

神社周辺は桜が満開!天候にも恵まれ、絶好の祭り日和の中、躍動する「松倉虎舞」

 
 例祭での両芸能披露は新型コロナウイルス禍で3年休止後、昨年から再開。今年は小中高生を中心に約60人が参加し、3月から週2回の練習を重ねてきた。昨年から虎舞の踊りに参加する森奏心さん(甲子小2年)は「練習は大変だけど、みんなで跳ねて踊るのは楽しい。ちょっと間違ったけど最後までできた」。虎の舞い手、横田楽さん(甲子中3年)は友人に誘われて参加し2年目。「踊りは自分なりには80点ぐらい。地域の皆さんに見てもらえるのがうれしい」と話す。横田さんを誘った佐藤健太さん(同)は虎舞をやっていた祖父に憧れ、幼稚園年中から親しむ。市内最古ともいわれる同虎舞に誇りを感じ、「大人になっても続けたい。下の世代にももっと広まり、自分たちを超えるぐらいうまくなってほしい」と期待する。
 
各演目で練習の成果を発揮。将来が楽しみな小学生ら

各演目で練習の成果を発揮。将来が楽しみな小学生ら

 
matsukura08

やりや刀を手に虎を追い込む役は子どもらが担う

 
 虎舞には松倉地区以外からも子どもたちが参加。小久保芸能部長(51)は「これだけ集まってくれるのはありがたい。伝統も大事にしながら、子どもたちのやりたい形を実現していきたい」と、部長就任初年にあたり継承への思いを新たにする。両芸能は4月27日に行われる道の駅釜石仙人峠の9周年祭でも披露する予定。「もっと踊りたい」という子どもたちの希望をかなえるべく、「声がかかれば他地域にも出向きたい。外との交流は子どもたちの刺激にもなるはず」と小久保部長。
 
虎舞の終盤演目「笹喰(ば)み」は虎の荒々しい姿を表現

虎舞の終盤演目「笹喰(ば)み」は虎の荒々しい姿を表現

 
最後は“和藤内”が虎を仕留める。威勢のいい口上も

最後は“和藤内”が虎を仕留める。威勢のいい口上も

 
 佐野町内会長は「祭りの思い出がいつまでも心に残り、大きくなって釜石を離れても戻ってきてくれる。そんな地域のつながりを大事にしていきたい。祭りは絶やしてはいけない」と意を強くする。同地区には東日本大震災後、被災地域から移住し新たに自宅を構えた人も多く、町内会加入世帯はこの10~15年の間に100世帯近く増えている。「町内会のモットーは親睦第一。新規移住者も巻き込んで町内会活動を活発化させたい。次世代への引き継ぎも確実に進めていければ」と地域の未来を見据える。