日頃は釜石新聞NewSをご覧いただき、誠にありがとうございます。
年末年始につきまして、以下の通り休載とさせて頂きます。
休載(記事配信休止)期間:2023年12月29日(金)~2024年1月8日(月・祝)
・2024年は1月9日(火)からの更新となります
・問合せ対応等につきましては1月5日(金)からとなります
引き続き「釜石新聞NewS」をよろしくお願いいたします。
2023年12月20日
釜石まちづくり(株)
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2023年12月20日
釜石まちづくり(株)
新型コロナウイルス感染症が5類に移行され、社会活動が少しずつ平常化してきた2023年。釜石市内では再開された祭りやスポーツなど各種行事で、再会を楽しむ顔に多く出会う年となった。そして、区切り、交代、誕生…といった「変化」や「新たな芽吹き」を感じる一年でもあった。そんなまちの動きをネット上で紹介した記事から振り返る。(年齢、肩書は当時)
【将棋・小山怜央さんプロに、地元歓喜】
釜石市出身で将棋のアマチュア強豪、小山怜央さん(29)は13日、大阪市で行われたプロ棋士編入試験5番勝負の第4局に勝利し、通算成績3勝1敗で合格を決めた。棋士養成機関「奨励会」の未経験者、岩手県出身者で初のプロ棋士が誕生し、地元では歓喜の声が広がった。3月に帰省し、子どもらと交流。応援を力に飛躍を誓う。
【東日本大震災から12年―犠牲者13回忌 変わらぬ鎮魂の祈り各地で】
未曽有の被害をもたらした東日本大震災から12年。今年の“3.11”も亡き人を思い、祈りをささげる人たちの姿が市内各所にあった。墓所、祈りのパーク、海岸…。それぞれの場所で花を手向け冥福を祈った。年々増えていく「(震災を)知らない世代」にどう伝え、未来の命を守るのか。教訓継承への取り組みは続く。
【SMCが釜石に第5工場新設 雇用拡大、外国人労働者も増加】
空気圧制御機器製造、世界首位のSMC(本社・東京都)が釜石市に新たな工場を建設した。同市が1991年に誘致以来、5番目となる工場。国内外の需要増に対応し、生産拡大を図るためのもので、2026年ごろまでに約600人の就労を見込む。ベトナム、インドネシアなどからの特定技能外国人労働者も受け入れており、安定的な生産体制を目指す。
【明治日本の産業革命遺産フォトコン 最優秀賞は橋野鉄鉱山】
「明治日本の産業革命遺産」を対象にしたフォトコンテストで、橋野町の世界遺産「橋野鉄鉱山」を被写体にした作品「悠久のたたら場跡と星空」が最優秀賞に輝いた。撮影者は佐々木弘文さん(55)。「原燃料の山と橋野一番高炉」と題した藤原信孝さん(74)の作品はエリア賞を獲得。2人は10日に市役所を訪れ、喜びを伝えた。
【クマ出没注意!目撃相次ぐ 県、7年ぶりに警報】
釜石市内では5月以降、クマ(ツキノワグマ)の目撃情報が相次いでいる。26日には只越町の市役所前にクマ1頭が出没。約3時間後に捕獲という緊張を強いられる状況が発生した。県は人身被害が多発していることから、全域に「ツキノワグマの出没に関する警報」を発令。2016年度以来7年ぶりで、今回で2回目となった。
【復興支えたSL銀河 惜しまれながら10年の運行に終止符】
JR釜石線で2014年から運行してきた観光列車「SL銀河」が、客車の老朽化のため、6月上旬で引退した。高らかな汽笛、迫力の走行で震災復興を力強く後押ししてきた大人気の列車。この10年で延べ約7万4000人が乗車した。ラストランには同列車を愛してやまない人たちが全国から駆け付け、最後の雄姿を見届けた。
【釜石はまゆりサクラマス 養殖事業化後、初水揚げ】
釜石湾で養殖されている「釜石はまゆりサクラマス」が27日、今季初めて市魚市場に水揚げされた。昨秋に事業化してからの“初もの”は、体長60~80センチ、重さ1.7キロほどに育った計8.4トン。「身ぶりが良い」と関係者らは好感触を得る。プロモーション活動にも着手し、希少性を生かした取り組みに力を入れていく構えだ。
【ラグビーアマ代表 フランス大会出場へ結団式】
ラグビーのワールドカップ(W杯)フランス大会に合わせて初めて開かれる「ワールドアマチュアラグビーフェスティバル」に、日本代表として「いわて釜石ラグビーフットボールクラブ」が出場。地域にゆかりのあるメンバー30人が公募で選ばれ、26日に釜石鵜住居復興スタジアムで結団式。「世界一を狙う」と気持ちを高め合った。
【4年ぶりの釜石よいさ 継承へ新たな形】
第32回「釜石よいさ」は23日、釜石鵜住居復興スタジアムで開かれた。コロナ禍で中止が続き、屋外での通常開催は4年ぶり。「笑顔を生み出す場」を心待ちにしていた15団体約550人が熱い群舞を繰り広げた。経費や運営人員不足など課題もあり、「どう継続するか」を模索する中、会場や開催時期を変更して新たな形を試した。
【コロナ禍から復活 かまいし仙人峠マラソン大会4年ぶりに開催】
高低差400メートルの急峻な峠道を駆け上がる「かまいし仙人峠マラソン大会」が29日、4年ぶりに開かれた。2010年から始まり、震災後は「復興の峠を駆け上がれ」の合言葉の下、継続されてきたが、新型コロナの影響で20年から中止されていた。久しぶりの大会は雨模様となったが、老若男女が絶景の紅葉を力に変え、難コースに挑んだ。
【釜石最後の芸者・艶子姐さんの生涯 語りと踊りで再現】
「芸は津波に流されない―」。踊りや三味線など磨いた芸で、戦後の釜石の社交の場を華やかに彩った故伊藤艶子(藤間千雅乃)さんの生涯が、ふるさと釜石で舞台化された。俳優名取裕子さんの語り、伊藤さんの芸を継ぐ東京・八王子の芸者衆の踊りなどで“艶子姐さん”の波乱万丈の人生が浮かび上がった。29日、市民ホールTETTOで公演した。
【片岸町に大津波記念碑が完成 悼み、伝え続ける震災】
釜石市片岸町に東日本大震災の被災状況や教訓を伝える大津波記念碑が建立された。4日の除幕式で町民らにお披露目。津波で倒された神社の鳥居を「人」の形に組み、犠牲者の慰霊と教訓発信を末永く誓う。石柱には中高生が伝えたい言葉を刻んだ。同町は震災の津波で8割が被災。住民33人が犠牲になった。
【震災復興→力強いまちへ 16年ぶりに代わるリーダー】
「撓(たわ)まず屈せず」を合言葉に、東日本大震災の復興で陣頭指揮を執った市長・野田武則氏(70)が17日に任期を満了し、16年(4期)通った市庁舎を後にした。この退任を前に行われた市長選で新人同士の一騎打ちを制して初当選した小野共氏(54)は20日に初登庁。「力強いまち」を目指し、市政運営をスタートさせた。
【かまいしの第九 45年の歴史に幕 「いつかまた…」】
師走の釜石で歌い継がれてきたベートーベンの交響曲第9番。市民に愛された「かまいしの第九」は今年の公演が最後となった。中核メンバーの高齢化や資金減などが理由。同市の音楽文化の象徴が大きな功績とともに一時代を終えた。17日の最終公演では、出演者と聴衆が一体となる感動のステージが繰り広げられた。
■後記
市民の皆様、釜石新聞NewSをご覧いただいている全国の皆様、本年のご愛読ありがとうございました。
WEB専門の媒体としてのご理解と認知度も着実に高まり、皆様の生活の中に受け入れていただいている手ごたえを感じる機会が多くなりました。取材依頼などについては運営体制の変化などもあり、復興釜石新聞の時のようにはお応えしきれない点についてお詫び申し上げるとともに、あらためてご理解を賜れれば幸いです。
皆様、どうぞよいお年をお過ごしください。
市郷土資料館で開催中の「かまいしの古き良き時代 ザ・昭和 ~鐵(てつ)と共に~」
釜石市の歴史や文化を知るなら鈴子町の市郷土資料館(佐々木豊館長)。さまざまなテーマの展示で釜石を学べるが、年に数回行われる特別展示も興味深い。現在、開催中の企画展「ザ・昭和」は、製鉄所の繁栄で人口9万人以上を記録したこともある戦後の時代にスポットを当てる。多くの市民が行き交うまちはたくさんの商店や飲食店、娯楽施設が並び、活気を呈した。その古き良き時代を遺物や写真などで振り返る。展示は来年1月14日まで(12月28日~1月4日までは年末年始休館)。
「鉄のまち」と称される釜石市は、太平洋戦争末期の1945(昭和20)年、米英連合国軍による2度の艦砲射撃で壊滅的な被害を受けた。戦後、復興への鉄需要の高まりで、釜石製鉄所は国内の主力として急成長。まちは企業城下町として栄え、63(同38)年には人口9万2000人を突破した。大渡町から東前町までの通りは最大の繁華街で、製鉄所の三交替勤務に伴い、飲食店などは昼夜問わずにぎわっていたという。
その“昭和の釜石”を垣間見ることができる今回の企画展。会場では同館の所蔵物のほか、市内の企業などから寄せられたさまざまな遺物が公開されている。商売で使われた金銭登録機(今のレジスター)、商店や飲食店、宿泊施設、企業などの名前入りマッチ、灰皿、菓子製造に使われた道具、料亭の状差し…など。まちの繁栄の象徴、デパート(丸光、及新)などの包装紙もあり、当時を知る人にとっては懐かしい記憶がよみがえる。廃業した店も多く、まちの歴史を物語る貴重な品々が並ぶ。
建材を扱っていた大町の「前田商店」で使われていた金銭登録機
浜町にあった料亭「福寿楼」の状差し(中)と看板(左)
デパートや商店の包装紙(左側)と店などで身に着けていた前掛け(右側)
市内の収集家が集めた商店や飲食店、会社などの名前が入ったマッチ
今年創業100年を迎えた小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は1968(昭和43)年まで、現只越町3丁目(今の釜石郵便局の場所)で操業。当時の社名は釜石酒造商会。本企画展では、小川町に移転する際に目抜き通りで行ったパレードの写真や、「浜千鳥」の前の商品名が入った量り売り用の漏斗(じょうご)、当時製造していたサイダー瓶などが展示される。
今年創業100年を迎えた「浜千鳥」に関する展示コーナー
企画展で展示されている浜千鳥の“キンレンサイダー工場”の写真と同サイダー瓶
市内在住の写真家、藤枝宏さんが撮影した昭和50年代の釜石の街並み写真も展示。煙突が立ち並ぶ製鉄所、「不夜城」と言われたまちの夜景、映画館のある中心商店街など、まちの活気を感じさせる光景が凝縮される。
藤枝宏さん撮影の昭和の街並み写真展示コーナー
東日本大震災の津波で流失した「呑兵衛横丁」。この通りは昭和30年代、大にぎわいだった
同館では「当時を生きた人が懐かしさを感じるのはもちろん、昭和を知らない世代にも釜石の歩みを知ってもらえる展示。常設展示品以外のものがほとんどなので、ぜひこの機会にじっくりと観賞してもらえれば」と来場を呼び掛ける。問い合わせは同館(電話/FAX 0193・22・2046)へ。
覚書を取り交わす小野共市長(左)と柴山和久社長
釜石市は19日、ソフトバンク子会社で位置情報を活用したビッグデータ事業を手掛けるAgoop(アグープ、東京都渋谷区、柴山和久代表取締役社長兼CEO)と防災まちづくりの推進に関する覚書を結んだ。スマートフォンなど携帯端末の位置情報を活用し、災害時の避難行動のあり方を検証するため実証実験を行うのが主な目的。来年3月に市全域で実施する避難訓練などで人流データを収集・分析し、防災計画などの政策に反映する。
同社は同意を得た利用者のスマホアプリから移動の速度や方向などのデータを匿名化して収集している。活用するのはスマホの衛星利用測位システム(GPS)で、独自開発の歩数計測アプリをダウンロードしてもらう。アプリは通信事業者を問わず使うことができるという。
避難行動分析イメージ。釜石市中心部の津波浸水想定にスマホの位置情報を重ねた(Agoop提供)
実証実験は来年3月3日の釜石市地震・津波避難訓練で行う予定。「津波到達前に避難できているか」「浸水域を通っていないか」など避難速度や経路を確認する。避難場所の人数もリアルタイムで計測。救助、物資供給など即時支援につなげる態勢の構築を目指す。
釜石市役所であった締結式で、小野共市長と柴山社長が覚書に署名した。柴山社長は「人流データを人の命を救うために役立てることができる。避難行動を見直し、考えてもらえるのでは」と意義を強調。小野市長は「データを基に釜石の防災を確かなものにしたい」と期待を込めた。
覚書に署名する小野市長(手前左)と柴山社長(同右)
締結のきっかけは、東日本大震災。市によると、発災時、市指定ではない避難場所に逃げる人もいて安否確認や避難者情報の把握に時間を要した。「どこに、どれくらいの人が避難しているか。どう探し出すか」。方策に頭を悩ませていた頃、同社が新型コロナウイルスの感染拡大に関連して人流データを公開しているのを知り、「課題解決につながるのでは」と市側が話を持ちかけた。
同社はコロナ禍の人流解析に使ったこの技術とデータを防災面でも生かしている。20年7月の熊本豪雨では熊本赤十字病院が避難所に支援スタッフを派遣する際に活用。日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震で津波被害が懸念される北海道根室市の花咲漁港で行われた防災訓練でも利用した実績がある。災害対策に特化し覚書を締結するのは釜石市が初めてだという。
技術の概要を説明する柴山社長らアグープ関係者
避難行動の分析を実証するためには「データ量が鍵」になる。市では防災訓練実施の周知を図るほか、市教育委員会や学校を通じて小中学生や高校生、その保護者らにアプリの導入を働きかける考え。佐々木道弘危機管理監は「津波の避難対象は約1万2000人で、その15~20%に当たる市民の協力をお願いしたい」と呼びかける。
震災時の経験を踏まえ、「どこに、どんな人が避難しているか把握した上で必要な対策、優先度を見いだしていくことが大事」と佐々木危機管理監。県の津波浸水想定は震災時より広範囲に被害が及ぶとされ、「これまでと同じ避難のし方ではいけない。幾重にもある避難方法…さまざま考えておいても足りることはない。セーフティーネットの一つとして防災、災害対策に生かし、計画づくりを進めていく」と力を込めた。
最終公演となった第44回かまいしの第九=市民ホールTETTO
45年の長きにわたり、師走の釜石市に“歓喜の歌”声を響かせてきた「かまいしの第九」。地域の音楽文化発展の礎を築き、経済低迷や震災など困難に立ち向かう市民に勇気と希望を与え続けた伝統の演奏会が17日、惜しまれながら幕を閉じた。メンバーの高齢化や活動資金減少などで「今回を一区切り」とした実行委。初代指導者の故渡邊顕麿さんの教えを脈々と受け継ぎ、釜石の第九イズムを貫いたメンバーは、あふれる思いを歌声に込め、同演奏会を愛する聴衆と感動のフィナーレを迎えた。
釜石市民ホールTETTOで開かれた最終公演。会場には市内外から約550人が集まった。オーケストラは指揮者の瓦田尚さん(40)=釜石出身、東京在住=率いるアマチュアオケ「ムジカ・プロムナード」、釜石市民吹奏楽団の団員ら総勢60人。合唱隊は「かまいし第九の会」を中心とした市内外の115人で編成した。
演奏会は、東日本大震災をテーマとした「明日を」「群青」の2曲の合唱で幕開け。続いて、ベートーベンの交響曲第9番1~4楽章が演奏された。本県出身の声楽家4人がソリストを務め、管弦楽の壮大な演奏、時代、世代を超えてつながれた魂の歌声がホールいっぱいに響き渡った。
4人のソリストは本県出身者(左からSoprano:土井尻明子さん、Alto:在原泉さん、Tenor:澤田薫さん、Bass:小原一穂さん)
同演奏会は1978年、旧市民文化会館のこけら落とし公演として行われたのが始まり。前年に帰郷し、実家の寺を継いだ渡邊顕麿さん(1931-96)がそれまでの合唱活動の経験を生かし、市内で指導を始めた中での新たな挑戦だった。初期メンバーはドイツ語の辞書を片手に歌詞の意味を読み解き、渡邊さんの教え「曲に込められた精神をそれぞれの生活、生き方に反映させる」ことを忠実に守りながら、演奏会を重ねてきた。
初代指導者・指揮者の渡邊顕麿さん(左上)。合唱指導をする渡邊さん(右上)。釜石市民文化会館で行われていた第九演奏会(1991年、下)=写真提供:実行委
子どもから高齢者まで多くの市民が参加した1999年の第九演奏会=写真提供:実行委
87年からは第九以外の大曲にも挑戦。渡邊さん他界後は、遺志を継いだ山﨑眞行さんが指導にあたり、両輪での合唱披露は2014年まで続いた。03年からは次世代への合唱文化継承を目指し、市内の中学校が毎年順繰りに歌う「オーケストラと歌おう」のコーナーも開設。渡邊さんが残した「学び、耕し続ける文化」を着実に実践してきた。
最大の存続危機は2011年の東日本大震災。メンバーの犠牲、被災、会場の市民文化会館の全壊でしばらくの活動休止もやむを得ない状況だったが、「被災者が立ち上がる力に」と開催を決断。校舎を失った釜石東中の生徒が第九の合唱に声を重ね、大きな感動を呼んだ。被災後の6年間は釜石高体育館が会場となり、17年の市民ホール落成のこけら落とし公演が、くしくも初演時と同様、この第九演奏会となった。
東日本大震災があった2011年、釜石高体育館で行われた演奏会。釜石東中の全校生徒が第九の合唱にも参加した
2017年、釜石市民ホールTETTOのこけら落とし公演となった第40回かまいしの第九
このまま順調に行くかと思われたが、予想もしなかった新型コロナウイルス感染症の大流行で20、21年は開始以来、初めての中止に追い込まれた。昨年、復活開催したものの、さまざまな情勢の変化で「事業を支えるだけの“体力”を維持できなくなった」として、本公演を最後とすることを決めた。
万感の思いで迎えたフィナーレ。拍手が鳴りやまない中、ステージに招かれたのは、2代目指揮者として25年間、演奏会を率いた山﨑眞行さん(73)。これまでの功績に瓦田さんから感謝の花束が手渡された。山﨑さんは昨年の復活演奏会でも指揮する予定だったが、病のため急きょ降板。この日は客席から演奏を見守り、「みんな頑張ってくれた。一生懸命の第九が聞けてうれしい」と喜んだ。ここまで続いた原動力を「みんなの情熱」とし、「今日で終わりではないと感じる。きっと(何らかの形で)続いていくと思う」と実感を込めた。
2019年まで指揮者を務めた山﨑眞行さんがステージに登場。合唱メンバーや聴衆から感謝の拍手が送られた
昨年に続いて指揮をした瓦田尚さん(右)。最後は聴衆も一体となり「歓喜の歌」を響かせた。同演奏会恒例のフィナーレ(左)
「これまで感動をありがとう!」出演者をたたえる拍手は鳴りやまず
終演後のロビーでは出演者と来場者が入り交じり、第九でつながれた強い絆をあらためて心に刻み合った。支えてくれた家族からねぎらいの言葉を受ける人も。孫から花束を贈られ喜びの笑顔を見せたのは、通算18回目の出演を果たした土橋郁子さん(78)。本公演には夫博聰さんも来場する予定だったが、11月上旬に突然の急逝(享年79)。音楽好きだった夫のためにもと、悲しみを乗り越えステージに立った。「どこかで聞いていてくれたかな…」。第九は生きがいだった。「今はやりきったという感じ」。長男照好さん(52)は「父にも母の思いが届いたのではないか。演奏も感動的だった。始めた人たちの思いを感じることができた気がして…」と余韻に浸った。
「おつかれさま!」お孫さんから花束を贈られ、喜びの笑顔を輝かせる土橋郁子さん(左)
互いの演奏会に出演し合い、釜石のメンバーとは約30年の付き合いという八戸メンネル・コールの河原木久一さん(89)は「釜石の人たちは心が温かい。私たちのことも快く受け入れてもらった」と感謝。震災があった年に被災した中学生と一緒に歌った演奏会が「忘れられない。あの歌声に三陸の人たちがどれほど励まされたことか」と思いをはせた。
この日は過去に出演経験がある人たちも多数、駆け付けた。渡邊さんが立ち上げた親と子の合唱団ノイホフ・クワィアーに家族3人で所属していた山本美津子さん(86)は、旧市民文化会館のこけら落とし公演に夫、娘と出演した経験を持つ。「(当時が)とても懐かしくてね。アンコールでは一緒に歌った」と声を弾ませ、「第九(演奏会)は市民の大事な宝物だった。もう1回やってほしい」と復活開催に望みを託した。
第1回からの合唱メンバーで最終公演を迎えたのは5人。20代後半から参加してきた菊池玲次さん(71)は「たくさんの先輩方に支えられ、ここまで続けてこられた。亡くなった方も多いが、本当に感謝しかない」と、人生の半分以上を共に歩んだ第九に深い思いを寄せる。この日は、長年一緒に歌い、プライベートでも親交のあった市芸術文化協会前会長の岩切潤さん(2017年逝去、享年82)のちょうネクタイを胸に忍ばせて歌った。
終演後、さまざまな思いを分かち合った出演者と来場者。左上は感謝の気持ちを伝える実行委の川向修一会長
地元紙の記者として初の第九発会式を取材した際、渡邊さんに声を掛けられ、合唱メンバーの一員になった実行委の川向修一会長(71)。最後のステージでは渡邊さんの教えの一言ひと言、活動を共にした故人の顔が浮かび、目を潤ませる場面もあった。多くの人たちと心を通わせ歌い続けた45年―。「ひとつの形としての演奏会は終わるが、自分たちのやってきたことが種となり、この先、新たな形で芽吹いてくれれば…」。“一区切り”の言葉に出演者も聴衆も「いつかまた…」との期待を込める。
地元企業の業務効率化・知識定着、また個人のスキルアップにつなげたいという想いと、企業・個人問わず興味関心があることについて有益な情報をお伝えできる機会になればと考えています。参加費はございませんのでご興味のあるセミナーへのご参加お待ちしています。
[DAY1]
効率化・視覚化を実現! Google スプレッドシート活用術
日時:2024年1月16日(火) 14:00〜15:30
対象者:会社員、個人事業主、求職者の他関心・興味のある個人
[DAY2]
マネーフォワード会社設立で設立手順が明確に
日時:2024年1月18日(木) 14:00〜15:30
対象者:個人事業主、起業を検討している方や関心・興味のある個人
[DAY3]
デジタル時代を生きる -親子で学ぶWEBスキルとデジタルリテラシー-
日時:2024年1月20日(土) 11:00〜12:30
対象者:普段パソコンを使っているデジタルリテラシーを高めたい小学生と保護者の方、パソコンを使うようになった小学生と保護者の方
しごと・くらしサポートセンター
岩手県釜石市港町2-1-1 イオンタウン釜石2F
こちらのフォームよりご連絡ください。
地域住民に歌をプレゼントする上中島こども園児=中妻地区生活応援センター
釜石市の上中島こども園(楢山知美園長、園児48人)の園児18人が18日、園近くの中妻地区生活応援センター(菊池拓朗所長)で地域の高齢者にお遊戯を披露した。日ごろの見守りへの感謝を込め、昨年に続いて企画。かわいらしい衣装に身を包んだ子どもらの歌やダンスに、集まった高齢女性12人は大喜び。終始、笑顔で楽しい時間を過ごした。
センターを訪問したのは3歳、5歳児クラスの園児。始めに全員で「We wish You A Merry Christmas」「にじのむこうに」の2曲を合唱した。3歳児クラスの8人はサンタクロース姿でクリスマスメドレーのダンスを披露。小さな体をめいっぱい動かし、一足早いクリスマス気分を届けた。
かわいいミニサンタの登場に目を細める高齢女性
クリスマスの曲に合わせ踊る3歳児クラスの園児
5歳児クラスの10人は2グループに分かれてお遊戯。「アロハ・フラ~海と空と太陽と」の曲で披露したダンスは南国気分を漂わせ、冬の寒さを吹き飛ばした。「あばれ太鼓~雷ジーン」はかっこいい振り付けが特徴。決めポーズもバッチリで、りりしい姿を見せた。
南国のフラダンスであったか気分を届ける5歳児クラスの園児
はっぴ姿の男児は太鼓のばちに見立てた道具を手に元気に踊った
“ちびっこサンタ”姿の藤原依茉ちゃん(4)は「うまく踊れた。クリスマス大好き。(もうすぐなので)楽しみ」とにっこり。フラダンサーになり切った小林妃奈乃ちゃん(5)は「楽しかった。おばあちゃんたち、笑って喜んでくれた。これからも元気でいてほしい」と願いを込めた。
同園では9日に、園児らの成長を保護者に見てもらう3~5歳児の生活発表会を開催。この時に発表したお遊戯を「地域の方にも見てもらいたい」と、会終了後も練習を重ねてきた。目尻を下げっぱなしだった平野京子さん(73)は「みんな上手。胸がいっぱいになって涙が出てきた」と大感激。自身の保育園時代と比べ、「今の子どもたちはすごいね。いろいろなことを覚えてねぇー」と感心しきり。
子どもたちの頑張りに盛んな拍手を送る
会場にはたくさんの笑顔が広がった
園児と高齢者は共に楽しいひとときを過ごした
上階が復興住宅になっている同センターでは週に2回、住民らがラジオ体操を行っていて、同園の園児が参加することも。季節の行事でも交流が続く。「地域の皆さんに見守ってもらいながら子どもたちを育てていきたい」と楢山園長。こうした交流は子どもの心の成長への効果だけではなく、日ごろからの行き来で顔見知りになることで大人の目が増え、不審者の声掛けや犯罪などに巻き込まれるリスクを軽減できればとの思いもある。新型コロナウイルス禍で園行事への招待はしばらくできずにいたが、来年から再開できればと心待ちにする。
園児から日ごろの感謝を込めて、松ぼっくりツリーとクリスマスカードのプレゼント
「これ、いいね」。クリスマスマーケットで品定めする来場者
障害のある人が作った菓子や雑貨などを販売するクリスマスマーケットが16日、釜石市港町のイオンタウン釜石で開かれた。就労支援などを行う市内外の6施設が出店したほか、松ぼっくりを使ったツリーづくりのワークショップなど遊びも用意。普段の活動の成果や施設の発信、利用者と地域住民の触れ合いの場にした。
NPO法人遠野まごころネット(遠野市)が釜石・甲子町で運営する障害者自立支援施設「まごころ就労支援センター」の主催で、釜石大槌地域障がい者自立支援協議会・ひまわり隊が共催した。障害の有無にかかわらず楽しめる催しの実施、新型コロナウイルス禍で減った販売機会の提供、施設利用者に支払う工賃の維持・向上などにつなげるのを狙いに初開催。同地域外から奥州市や宮古市、山田町の施設が参加した。ほか、地元の菓子工房もブースを並べた。
クリスマス風の飾り付けで来場者をおもてなし
釜石産のカボチャやブルーベリーを使った焼き菓子、パンなどの食べ物、使用する糸や織り方に決まりがない「さをり織り」のバッグや小物入れなどを販売。サンタクロースやトナカイの衣装を身に着けた利用者たちが積極的に呼び込みをし、買い物客らは製品の特徴などを聞いたりしながら品定めした。
さをり織りの小物入れなどを並べた奥州市の事業所
トナカイ風の装いで山田町から手作り菓子をお届け
買い物客らと触れ合いを楽しみながら店番したり
楽しそうと釜石市内から足を運んだ近藤麻衣さんは、あちこちから聞こえてくる誘いに乗って両手が袋でいっぱいに。「和気あいあいとして雰囲気がよく、欲望に負けそうな空間。地域外で作られているものを知る機会にもなった」と目を細めた。
まごころセンターは、布を細かく裂いて織り込んだ「裂き織り」のバッグやランチョンマット、利用者が育てたブドウを使ったワインなどを売り出した。施設敷地内で栽培するラベンダーを使った「ねこサシェ」(猫の顔をかたどった香り袋)はクリスマス仕様に。トナカイの顔、ツリーやリースの刺しゅうを施したりしていて、「どの顔、図柄が好きですか?」などと買い物客らの声に耳を傾けた。
まごころ就労支援センターはクリスマス仕様の製品をPR
サンタクロースの衣装を着た利用者らは呼び込みでも活躍
利用者の30代女性は「作ったものが目の前で売れるのがうれしい。一針一針に思いを込めていて、嫁に出した気分。いろんな顔を楽しそうに選んでいるのが印象的で、これからも喜んでもらえるものを作りたい」とやりがいを実感した。
松ぼっくりを使ったツリーづくりのワークショップ
遊びや工作を楽しんで笑顔いっぱいの家族連れ
催しには「個性との出合い、人とつながり、心に星を灯(とも)そう。」と願いを込めた。まごころセンターの山本智裕施設長(46)は「施設外でのイベントは利用者の刺激になり、新しい表情や得意なことの発見にもなる。この企画をきっかけに他事業所や支援者、ボランティア、行政、地域とのつながりを深めたい」と会場を見つめた。
結成30周年記念交流会を楽しむ釜石のボランティアら
釜石市ボランティア連絡協議会(久保道子、中川カヨ子共同代表)が結成30周年を迎えた。市内で開かれるイベントの運営などで力を合わせたり、市外の団体と交流したり、多様な活動を展開。新型コロナウイルス感染症などの影響で控えていた顔を合わせた活動が徐々に再開される中、構成団体のメンバーたちは奉仕の心を大切にした活動の継続へ気持ちを新たにしている。
同協議会は、1992年の三陸海の博覧会で市内の女性団体がおもてなしを担当したことをきっかけに93年に結成。ボランティア団体の相互の情報交換や連携を目的にし、市社会福祉協議会が事務局を担う。本年度は13団体246人で構成。活動内容は花壇整備や防災活動、手話学習、高齢者家事援助、子育て支援、傾聴など多岐にわたる。
10日、記念の交流会を上中島町の中妻公民館で催し、約60人が日ごろの活動を紹介し合いながら節目を祝った。久保共同代表(釜石地区更生保護女性の会会長)は「この30年、東日本大震災やコロナの感染拡大など、さまざまな困難や苦労もあったと思う。それでも長い間、先輩方の思いをつなぎながら活動を続けてこられたことに感謝の気持ちでいっぱい。お互いに感謝とねぎらいの時間を過ごし、今後の活動の励みとしましょう」とあいさつ。来賓の吉田守実・岩手県ボランティア団体連絡協議会長が祝辞を述べた。
開会式であいさつする久保道子共同代表(左)、来賓の吉田守実会長
人形劇団どっこいしょKが活動紹介。こちらも結成30年
協議会と同じく結成30周年の「生きがい人形劇どっこいしょK」(千葉勝美座長)が活動紹介。「孤立したキツネ~引きこもり編」と題した演目で、震災で職を失って帰郷し、引きこもりがちになった男性を公的支援につなぐ物語。終盤、音響トラブルが発生したが、団員の菊地恵美子さん(93)がマイクを手に舞台から顔を出し、団体の歴史を話して場をつないだ。
途中でトラブルが起きても慌てず場をつなぐ菊地恵美子さん
劇団は岩手高齢者大学釜石校の人形クラブを母体に同窓生、OB有志で93年に結成された。脚本づくりから人形や道具の制作、音声、舞台設営まで全て団員が手作りし運営。地域の民話を題材にしたり、保健所と協働で認知症や心の病などをテーマにした演目を市内外の福祉施設、保育施設、講演会などで上演してきた。震災では浜町で保管していた人形などを失ったが、数カ月後に活動を再開。会員9人のうち4人が90代だが、今なお現役で活動する。
コロナ下で3年間活動ができず、団員たちは久しぶりのお披露目に気合が入った。菊地さんも、普段使っているつえを手放しキビキビ歩いて元気満々。「ボランティアは社会にとって大事で、愛と信頼関係がなければ続かない。仲間に感謝。皆さんもお互いに励まし、支え合っていきましょう」と通る声で呼びかけた。
団員の平均年齢は90歳超。「生き生きと楽しく」がモットー
“お元気シニア”の代表格どっこいしょKの劇に見入る参加者
昼食の時間には、協議会結成のきっかけとなった三陸博の映像や写真資料などがスクリーンに映し出され、参加者が懐かしそうに視聴。そのほか、紙芝居や合唱などの活動紹介もあり、参加者みんなで楽しい時間を共有した。
30年前の映像を見ながらおしゃべりを楽しみ親睦を深めた
事務局担当の市社協職員は「どっこいしょKのようなお元気シニアの皆さんからエネルギーをもらって、それぞれが活動に励んでもらえたら」と期待。人口減、高齢化、会員の減少など課題はあるが、ボランティア活動は携わる人の生きがい、やりがいにつながり、地域も活性化することから、息の長い活動になるようサポートしていく考えだ。
観光列車「ひなび」車両公開=9日、JR釜石駅
JR東日本の新しい観光列車「ひなび(陽旅)」が盛岡-釜石間で今月から運行を開始する。旅行商品専用団体臨時列車として23日デビュー。30日から来年2月25日まで、土日祝日を中心に15往復の運行が予定される。釜石線(花巻-釜石間)を走り、東日本大震災からの復興を後押ししてきた「SL銀河」が今年6月に運行を終了。観光客減少への懸念があった沿線自治体などにとって、新車両の運行は今後の誘客の好材料になるものと期待される。
「ひなび」は「リゾートあすなろ」として運行していたディーゼルハイブリット車2両を改装した列車。外装には山や波、花など北東北の豊かな自然をイメージしたデザインと縁起の良い水引“梅結び”が描かれている。白地に赤ラインは国鉄時代に岩手、青森両県を走った気動車を思い起こさせる配色。
車両展示会のため、釜石駅に入る「ひなび」
水引「梅結び」(上段)と波や花(下段)などをイメージしたデザインが施された車両
1号車はグリーン車で、4人掛けと2人掛けのボックスシート、1人用シートを備え、定員は25人。運転席の後方には展望スペースがあり、運転手と同じ目線で進行方向の景色を見られるシートも。2号車は普通車で、2人掛けのリクライニングシートなどが並ぶ。定員は34人。両車両とも窓が大きく、沿線の四季折々の景色を存分に楽しむことができる。
1号車(グリーン車指定席)=4人掛けボックスシート12席、2人掛け同10席、1人掛けシート3席(定員25人)
運転席後方に設けられた展望スペースには運転手と同じ目線で外を見られるシート(右下白枠)も
2号車(普通車指定席)=2人掛けリクライニングシート32席、1人掛け同2席(定員34人)
9日は釜石駅で一般向けの車両展示会が行われた。訪れた人たちはホームから外観の写真を撮ったり、車内でシートの座り心地を確かめたりし、走行車両への乗車を心待ちにした。釜石市の小学生千葉條太郎君(7)は「グリーン車がすごい。シートはふかふか。運行が始まったら乗ってみたい」とわくわく。鉄道好きで、一番好きなSLの釜石線運行がなくなり寂しい思いをしていただけに、新車両の登場にうれしさをにじませる。同線では陸中大橋駅近くの赤い橋「鬼ヶ沢橋りょう」がお気に入り。ひなびの走行風景も楽しみにする。
出張で釜石に来ていた東京都の会社員榎本譲さん(39)は帰りの列車の待ち時間が車両公開の時間帯と重なり見学。「ゆったりした座席で、大きな窓から眺める景色も良さそう。お酒とか飲みながらもいいですね。移動そのものを楽しめる感じ。家族や友人とのグループ旅行に使ってみたい」と乗車の機会を望んだ。
車両展示会で車内を見学する人たち。スマホカメラで熱心に撮影
グリーン車の4人掛けシートの感触を確かめる日本製鉄釜石SWの桜庭吉彦GM(右奥)ら。見学者に翌日のホーム開幕戦をPRした
同列車のコンセプトやデザイン、名前は、JR東日本盛岡支社の社員らによる釜石線を盛り上げるプロジェクトで協議し決定した。SL銀河に代わる同線の新たなシンボルとして愛されることを期待する。乗客へのサービスとして、スマートフォンからの事前予約で沿線の弁当などを駅や列車内で受け取れる「うけとりっぷ」も実施。釜石駅の髙橋恒平駅長は「沿線の景色と料理を堪能しながら快適な旅を。ひなびを利用して釜石、沿岸に足を運び、観光や周遊を楽しんでもらえれば」と呼び掛ける。
ひなびは全車指定席で、乗車区間の乗車券と指定席券(またはグリーン券)が必要。指定席の料金はグリーン車が2000円、普通車は大人840円、子ども(小学生以下)420円。乗車日1カ月前の午前10時から、みどりの窓口や予約サイト「えきねっと」で購入できる。
手前の1人掛けシートは目の前を流れる車窓の景色を独り占め。テーブルもあり移動オフィスにも
小山怜央四段の著書出版を記念し釜石で開かれたイベント
「夢破れ、夢破れ、夢叶(かな)う」。11月下旬に釜石市内の書店に並んだ本のタイトルだ。著者は、地元出身で岩手県初の将棋プロ棋士となった小山怜央四段(30)。棋士養成機関「奨励会」を経ずに棋士になるという特異な道のりをたどる自伝で、「アマチュア棋士がプロに勝ち、プロになった話」をつづる。刊行を記念し、桑畑書店(釜石・大町)が12月9日にトークイベントを開催。小山四段は、応援する市民や将棋ファンら約30人を前に「自分を信じて挑み続ける」と尽きせぬ情熱を伝えた。
イベントは、幼少期の小山四段を指導した日本将棋連盟釜石支部長の土橋吉孝さん(68)との対談形式で進んだ。土橋さんいわく、「集中力があるが、夢中になると周りのことが耳に入らなくなる子」だったという小山四段。そうした面が対局中に現れ注意されたことが著書で触れられていて、土橋さんは「あとで読んで」と濁したが、小山四段は「細かく書けなかった」と当時の癖を自ら明かしたり、ほほ笑ましい2人のやりとりに会場からくすっと笑いが起こった。
終始楽しげにトークを展開する小山四段と土橋吉孝さん
小山四段の強みは、最後まで諦めない姿勢や失敗を引きずらない切り替えの良さが挙げられるが、「大学生活や社会人経験も強みになる」と自己分析。棋力向上には「AIをガッツリ使っている。反省会と称した研究会があって、奨励会員や棋士と対局しながら腕を磨いている」と近況を伝えた。プロになってからの成績は3勝6敗。来場者から「逆境をどう乗り越えるか」などと質問されると、「スタイルは変えない。自分の読みを信じる」と芯の強さをのぞかせた。
ファンに思いを伝える小山四段「嫌になることはあっても、やめたいと思ったことはない。将棋だけは」
トークの後はサイン会。「信念」と力強く記した本を小山四段から受け取った井戸大靖さん(関西大法学部4年)が見せたのは満面の笑み。自身も将棋を楽しんでいて、奨励会未経験、岩手初という偉業に「すごい」と尊敬のまなざしを向ける。「働きながら学び続けるのも大変なのに、仕事を辞めて挑む。情熱ですよね。そういうものを自分も見つけられたら」と感化された。
市民やファンが列を作ったサイン会。「信念」と言葉を残す
小山四段(右)の気さくな人柄に触れてみんな笑顔に
自伝は、▽将棋との出会い~奨励会に挑戦▽高校入学~東日本大震災▽大学入学~二度目の奨励会挑戦▽サラリーマン生活~プロ編入試験の受験資格獲得▽プロへの挑戦-の5章構成。奨励会に入ることはできず、災禍に見舞われたとしても、「棋士になる」という夢を大事に育て、運を味方にしたら諦めず突き進んでつかみ取る、そんな半生をしたためている。
「二度にわたって夢破れ、その末にかなった夢」。プロ棋士となった今、「二つの新たな夢ができた」と著書で明かす。そのほか、土橋さん、プロ編入試験直前に対局した遠山雄亮六段、師匠の北島忠雄七段のインタビューや、棋士編入試験5番勝負全局の棋譜も収録する。
信じた道を歩み続ける小山四段の著書「夢破れ、夢破れ、夢叶う」
小山四段の活躍と書籍の売れ行きを期待する編集者ら
時事通信社刊。四六判152ページ、税抜き1500円。小山四段のドラマチックな歩みはさまざまな報道で知る人も多く、市民、県民に喜びや感動、勇気を与えた。この書籍はその道のり、経験、思いを「当事者の目線」で記しているのが注目点。イベントには編集を担当した時事通信出版局の永田一周さん(編集委員)も参加し、「縁があり出版にこぎつけた。小山さんには活躍してもらい、皆さんは本を買って応援をお願いします」と売り込んでいた。
【P1】
表紙
【P2-7】
特集 まちを守るHERO
【P8-9】
物価高騰対応重点支援給付金
償却資産申告書の受け付け 他
【P10-11】
こどもはぐくみ通信
市民のひろば 他
【P12-13】
まちの話題
【P14-15】
まちのお知らせ
【P16-17】
保健案内板
保健だより
【P18】
イベント案内
釜石市
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