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楕円のボールで育む友情と心身 釜石・小学校対抗タグラグビー大会 特別ゲストとの交流も

5回目を迎えた釜石市小学校対抗タグラグビー大会=釜石鵜住居復興スタジアム

5回目を迎えた釜石市小学校対抗タグラグビー大会=釜石鵜住居復興スタジアム

 
 第5回釜石市小学校対抗タグラグビー大会(釜石東ロータリーカップ2023)は19日、釜石鵜住居復興スタジアムで開かれた。釜石ラグビー応援団(中田義仁団長)が主催。市内の小学生ら144人がゲームや交流を楽しみ、“ラグビーのまち釜石”の子どもパワーを見せつけた。今大会にはラグビー元日本代表の畠山健介さん(38)=宮城県気仙沼市出身=が特別ゲストとして登場。試合の合間に児童らと触れ合い、技も伝授した。
 
 同大会は、釜石も会場地の一つになったラグビーワールドカップ(W杯)2019日本大会の機運醸成を図る一環で2017年にスタート。児童らの健全育成と他校との交流などを目的に継続される。新型コロナウイルス禍による2年の休止を経て昨年から再開された。
 
 試合には市内5校と釜石シーウェイブス(SW)ジュニアから16チームが参加。各チームは4年生以上で結成され、1チーム5人で戦う。予選リーグを行い、ブロック上位の2チーム(計8チーム)が決勝トーナメントに進んだ。各チームは仲間や家族の熱い声援を受けながらコートいっぱい駆け回り、協力してトライを勝ち取ると喜びの笑顔を広げた。
 
釜石小6年髙木壮嘉君の選手宣誓で大会が幕開け

釜石小6年髙木壮嘉君の選手宣誓で大会が幕開け

 
練習の成果を発揮し元気にプレーする釜石の児童

練習の成果を発揮し元気にプレーする釜石の児童

 
相手選手の腰のタグを取るのがタックルの代わり

相手選手の腰のタグを取るのがタックルの代わり

 
 甲子小は2チームが参加。10月から朝と放課後の練習を重ねてきたといい、カッシーズAが3位に入る健闘を見せた。メンバーの佐々木隆之介君(5年)は昨年に続いての大会に「相手チームの裏をかき、いろいろなパス回しができた。戦績は悪いとこもあったけど、強いチームから3点取れたのは大きい」。キャプテンの鈴木秋音君(6年)は「スピードやパスなどそれぞれの強みを生かした個人プレーも効いていた。みんなで練習の成果を発揮できた」とさわやかな表情。
 
インゴールへ走り込みトライ「よしヤッター!」(左)。カッシーズA(甲子小)は平田ブロッサムズを7-3で下し3位入賞

インゴールへ走り込みトライ「よしヤッター!」(左)。カッシーズA(甲子小)は平田ブロッサムズを7-3で下し3位入賞

 
 決勝は小佐野バーバリアンズと鵜住居ウォーリアーズの対戦。前半は小佐野が3-2でリード。「前半、少し焦りがあった」という鵜住居は、ハーフタイムでの顧問の教諭のアドバイスで落ち着きを取り戻し、後半は本来の力を発揮。連続トライを重ね、6-3で優勝をもぎとった。鵜住居小は昨年に続く連覇。
 
 鵜住居小では週3回のクラブ活動としてタグラグビーに取り組む。3年生から練習に加わる子も多く、先輩たちの背中を見て力をつけている。キャプテンの前川和民君(6年)は「今日までみんな練習を頑張ってきた。負けることなく優勝できて良かった」。佐々木一真君(6年)は12月17日に予定される県知事杯兼サントリーカップ県大会を見据え、「今のままでは(強豪の)日詰に勝てないので、もっと練習して強くなりたい。ノックオンやタグミスが多いので直していきたい」とし、県大会制覇を目標に掲げた。
 
小佐野バーバリアンズ(オレンジビブス)と鵜住居ウォーリアーズ(水色同)の決勝

小佐野バーバリアンズ(オレンジビブス)と鵜住居ウォーリアーズ(水色同)の決勝

 
大盛り上がりを見せた決勝戦。自校の熱い応援を受け、トライへまっしぐら

大盛り上がりを見せた決勝戦。自校の熱い応援を受け、トライへまっしぐら

 
後半の追い上げで逆転し、見事優勝に輝いた「鵜住居ウォーリアーズ」の選手ら

後半の追い上げで逆転し、見事優勝に輝いた「鵜住居ウォーリアーズ」の選手ら

 
 試合の合間にはゲストの畠山健介さんが児童らと交流。効果的なパスの出し方を教えたり、チームに交じってプレーしたりし、児童らを喜ばせた。「釜石の強みはトップチームの釜石SWがあること。将来、ここでプレーしたいと思わせる存在があると、目標や夢もより具現化しやすい」と畠山さん。W杯での日本代表の活躍などで注目を集めるラグビーだが、「頂点が盛り上がるだけではだめ。それを支える裾野の底辺が大きくないと。長く競技に親しんでもらうには楽しいと思わせる経験が必要」と、地域活動の広がりに期待を寄せた。
 
ラグビー元日本代表の畠山健介さんとの交流に子どもたちは弾ける笑顔!

ラグビー元日本代表の畠山健介さんとの交流に子どもたちは弾ける笑顔!

 
畠山さんはパスの出し方も指導。日本代表経験者から学べる貴重な機会

畠山さんはパスの出し方も指導。日本代表経験者から学べる貴重な機会

 
試合で畠山さんの目に留まった選手には「ケニー賞」としてサイン色紙やジャージーをプレゼント

試合で畠山さんの目に留まった選手には「ケニー賞」としてサイン色紙やジャージーをプレゼント

 
 10月に同スタジアムで行われた県中総体ラグビーでは釜石中が初優勝、甲子中が準優勝という好成績を残した。両校とも特設チームでの快挙。小学校時代、同大会でプレーした子どもたちのその後の活躍に大会関係者も喜びを表していた。
 
3年生以下の34人は釜石SW選手やボランティアスタッフのサポートでラグビーの面白さを体験

3年生以下の34人は釜石SW選手やボランティアスタッフのサポートでラグビーの面白さを体験

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釜石や大槌でもクマ出没増 人身被害も 関係機関、情報共有「知らないをなくしたい」

釜石大槌地区のクマの出没状況などを共有した管理協議会

釜石大槌地区のクマの出没状況などを共有した管理協議会

 
 釜石・大槌地区ツキノワグマ管理協議会は21日、釜石市新町の釜石地区合同庁舎で本年度2回目の会合を開いた。例年は1度の開催だが、今年は人身被害が相次いでいることから、関係者間の情報共有を図ろうと回数を増やした。岩手県や釜石市、大槌町の鳥獣被害対策担当者、猟友会、農業や林業関係者など約20人が出席。広範で効率的な情報収集により市街地に出没した時に迅速に対応すべく知恵を絞った。
 
 県沿岸広域振興局環境衛生課の担当者が県内の出没状況を説明。今年はブナなどのドングリが大凶作のため、目撃や痕跡で確認されたクマの出没数は9月末時点で3368件と、前年同期の2049件に比べて急増している。人身被害は11月8日時点で死亡2人を含む43件46人(前年同期21件22人)。例年、出没のピークは8月で、9月には減少傾向となるが、今年は6月(873件)をピークに減ってはいるが、数字的には高い水準で推移している。
 
クマ出没に関する資料を確認しながら情報共有

クマ出没に関する資料を確認しながら情報共有

 
 釜石市でも県と同様に出没数が急増。今年、これまでに確認されたのは284件で、昨年1年間(143件)の約2倍となっている。6月の65件をピークに1桁となる月もあったが、10、11月は50件前後と増加。それに伴い、人身被害も発生している。
 
 「2件になってしまった」。市水産農林課の宮本祥子さん(林業振興係長)が市内に残るクマの痕跡を示しながら人身被害の状況を話した。10月と11月に1件ずつ発生し、場所はともに甲子地区内。このうち、散歩中の80代女性がクマに襲われ負傷した10月のケースは、市がクマの出没を把握していない場所で起こった。事後に住民らに聞き取りをすると、「近くに柿の木があって以前からクマがうろついていた」というが、市には連絡していなかった。「行政だけでは情報を得られない。広く共有するには住民の協力が必要。報告が重要になる」と、苦い事例にやるせなさをにじませた。
 
釜石市内での事例を伝える宮本さん(奥)

釜石市内での事例を伝える宮本さん(奥)

 
クマのものとみられる痕跡を示して情報提供

クマのものとみられる痕跡を示して情報提供

 
 11月に発生したのは、以前から出没を確認していた柿畑。少し前に1頭を捕獲し、市では「被害はおさまる」と考えていた。だが、結果的に別の個体が害をもたらし、畑の様子を見に来た70代女性がけがを負った。2件とも柿の木が誘因物の一つと考えられ、宮本さんはクマのものとみられる爪痕がある幹、折られた枝、周辺に残されたふんの写真を表示しながら、「クマの出没を知らない状況を極力なくしたい。小さな変化でも気になることがあれば連絡してほしい」と求めた。
 
 出席者から、6月に出没が増えた要因や次年度の予測について質問が上がった。沿岸振興局の担当者は「急増の要因は把握できていないが、全県的に生息頭数が増えていると推測される」と回答。本年度の捕獲上限は686頭としているが、10月13日時点で捕獲数は591頭に上り、過去最多を更新。人身被害や市街地への出没が多発しており、「来年度は上限を110頭増やし、796頭とすることが決まっている」とした。
 
会合ではクマ対策をめぐって意見を交わした

会合ではクマ対策をめぐって意見を交わした

 
 大槌町でも2件の人身被害が発生しており、町の担当者は「この時期になっても、まだ出没を前提にした対応をしなければならない。誘因物の除去も大事だが、一つ除いても次のリスクにつながるのではと感じる。いたちごっこのよう。どういうゴールを目指すのか、分からない」と困惑。釜石地方森林組合の関係者らはドングリが実る広葉樹を針葉樹林に増やす混交林に触れ、「植樹は時間がかかるが、検討していく必要があるのでは」と考えを伝えた。
 
 沿岸振興局保健福祉環境部の田村良彦部長は「普段から連携をとっているが、さらに強化したい。痕跡を早期に発見、共有して住民に還元し、人身被害の防止につなげていく」と強調した。

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釜石市×東京大 2年目の「海と希望の学園祭」 体験、工作、トーク…さまざまに地域の魅力発見

来場者を出迎えた新種「オオヨツハモガニ」のバルーンオブジェ。風船1千個以上を使った大作

来場者を出迎えた新種「オオヨツハモガニ」のバルーンオブジェ。風船1千個以上を使った大作

 
 釜石市と東京大の連携事業「海と希望の学園祭」が18、19の両日、同市大町の市民ホールTETTOと釜石PITで開かれた。共同研究や技術開発などで協力協定を結ぶ両者が昨年から開始し2年目を迎えた。展示、ワークショップ、トークイベントなど多彩な企画が用意され、多くの来場者でにぎわった。
 
 展示コーナーでは同大生産技術研究所(生産研)、先端科学技術研究センター(先端研)が研究内容を紹介。大槌町に施設がある大気海洋研究所(大海研)の助教が2019年に発見した新種の「オオヨツハモガニ」は今年もバルーンオブジェで登場した。
 
 市水産農林課は釜石湾内で養殖が進む「釜石はまゆりサクラマス」の試食コーナーを設けた。昨年から事業化され、今季は約160トンを水揚げ。将来的には約1千トンの生産を目指す期待の魚。「生産体制は整ってきている。今後は市内で流通するしくみを確立したい」と小笠原太課長。試食した市民からは「サケとは違うおいしさ。身もやわらかい。値段がもう少し下がれば買いやすい」などの声が聞かれた。
 
 「釜石はまゆりサクラマス」の試食コーナーでは認知度のアンケート調査(シール投票)も

「釜石はまゆりサクラマス」の試食コーナーでは認知度のアンケート調査(シール投票)も

 
 釜石海上保安部は海上保安庁作成の「日本近海海底地形図」を公開。来場者は青と赤のフィルム眼鏡で立体感を体感した。職員からは日本列島が4つのプレートに囲まれていて、地震が起こりやすい環境であることが説明された。地震発生のしくみについて熱心に説明を受ける方も。
 
釜石海上保安部は「日本近海海底地形図」を公開

釜石海上保安部は「日本近海海底地形図」を公開

 
 同市平田にキャンパスを持つ岩手大は、三陸に生息する海の生き物9種に触れられるタッチプールを設置した。東日本大震災後、復興支援活動で同市とつながる文京学院大(東京都)は海にちなんだ工作、フォトスポットコーナーを開設。釜石のクルミの樹皮を利用し、学生らが商品開発したランタンは販売も行われた(売上金を市に寄付)。
 
 文京学院大の学生14人は全員が初めての釜石訪問。荒賀弓絃さん(3年)は「来場者が楽しんでくれているようでうれしい。今後もこのような活動で釜石の活性化、復興支援につなげていければ」。リーダーの武田愛華さん(2年)はランタン作りも手掛け、「地域のために役立つ活動がしたかった。釜石の人たちのやさしさに触れ、この場所をもっと盛り上げたいという気持ちになった」と話した。
 
地元の岩手大釜石キャンパスは海の生き物に触れられるタッチプールで来場者を楽しませた

地元の岩手大釜石キャンパスは海の生き物に触れられるタッチプールで来場者を楽しませた

 
文京学院大は海のいきもの帽子の工作コーナーを開設。海の中をイメージしたフォトスポットで記念撮影も(右下)

文京学院大は海のいきもの帽子の工作コーナーを開設。海の中をイメージしたフォトスポットで記念撮影も(右下)

 
文京学院大生が商品開発する釜石のクルミの樹皮を使ったランタンの販売コーナー。宝来館の女将岩崎昭子さんがプロジェクトに協力

文京学院大生が商品開発する釜石のクルミの樹皮を使ったランタンの販売コーナー。宝来館の女将岩崎昭子さんがプロジェクトに協力

 
 上中島町の前田倫太郎君(7)は海の生き物に初めて触れ、「ウニは固かった。海が好き。深海の魚を見てみたい」と興味をそそられた様子。父興大さん(38)は「海で生き物を見つけても怖くて触れないところがあったので、いい経験ができた」と喜び、地元の海の豊かさを実感。「鉄やラグビーだけでなく海や魚でも、もっと釜石が有名になってくれれば」と期待を込めた。
 
 5年前に東京から釜石に移住した親子は昨年に続き来場。息子(11)は「ウニのストラップを作ったり、工作が面白かった。海の生き物に興味があり、貝殻も集めている。将来は海に関わるお仕事もいいな」。父親(42)は「水産資源の減少が気になる。釜石でもサケの遡上が少ないと聞く。魚を食べることが多いので、資源復活を願う」と話した。
 
大槌町のSASAMO(ササキプラスチック)はウニフィギュアの製作体験コーナーを設けた

大槌町のSASAMO(ササキプラスチック)はウニフィギュアの製作体験コーナーを設けた

 
 会場では今年も東京大の教授陣らによる講演、トークイベントが2日間かけて行われた。初日のトークイベントには4人が出演。2006年の「希望学」調査を機に同市とつながり続ける社会科学研究所(社研)の玄田有史所長の進行で、大海研の兵藤晋所長、生産研の岡部徹所長、先端研の杉山正和所長が「科学とは」というテーマで話した。
 
 釜石港で行われる波力発電の技術指導も担う先端研の杉山所長は「世の中のしくみ、モノや人のことわり(道理)を知るのが科学。だとすれば、それを使って社会をもっと良くしていこうというのが技術なのではないか」。“レアメタル”研究で注目を集める生産研の岡部所長は「効率良く作って、みんなの生活を豊かにするためのものが工学。最近は生産性やコストだけでなく、アートやデザインなど人の感性に訴えることも大切な要素」。ハイギョ(肺魚)の研究を続ける大海研の兵藤所長は「比較生物学では生き物の進化を想像し、検証するのが科学。水の中からどうやって陸に上がれるのか、非常に興味深い」。
 
東京大の4研究所長らが出演した初日のトークイベント。会場では生産研と先端研の研究紹介展示も行われた(右下)

東京大の4研究所長らが出演した初日のトークイベント。会場では生産研と先端研の研究紹介展示も行われた(右下)

 
 4人は来場者からの質問にも答えた。「震災後の12年で最も進展した科学トピックは?」との問いには「AI(人工知能)の進展、世界のネットワークの広がり」、「必要性が強調されてきたのはカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)」と回答。同大と民間企業、地域とのつながりについては「東大は思ったよりオープン。遠い存在と感じずに相談を持ちかけ、いろいろなチャンスを広げてほしい。科学技術が地方の方々の問題意識とつながると面白い。ぜひアプローチを」などと述べた。

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にこにこ100歳!箱崎町出身・植田くめさん 生活中の三峯の杜で多くの祝福受ける

釜石市から100歳のお祝い金や祝い状を贈られた植田くめさん(左)

釜石市から100歳のお祝い金や祝い状を贈られた植田くめさん(左)

 
 釜石市箱崎町出身で現在、鵜住居町の介護老人福祉施設・三峯の杜(齊藤敦子施設長、長期利用29人、短期同20人)で暮らす植田くめさんが、今月12日で満100歳を迎えた。20日、植田さんの100歳を祝う会が施設内で開かれ、市、県、国からの祝い状や記念品が贈られた。同市の100歳以上の方は26人(男1、女25)となった。
 
 市から三浦功喜高齢介護福祉課長らが訪問。特別敬老祝い金(5万円)と野田武則前市長直筆の額入り祝い状、羽毛肌掛け布団を植田さんに贈った。「これからも健康で人生を楽しんで」と三浦課長。この日は、岸田文雄内閣総理大臣、達増拓也県知事名の祝い状や記念品の贈呈も行われ、齊藤施設長が植田さんに手渡した。
 
岸田文雄総理大臣からの祝い状に驚きの表情

岸田文雄総理大臣からの祝い状に驚きの表情

 
家族や職員、利用者仲間に見守られながら祝い状を受け取った

家族や職員、利用者仲間に見守られながら祝い状を受け取った

 
 施設職員からは手作りの記念色紙や花束が贈られた。お祝いの映像上映、職員によるスコップ三味線の演奏などもあり、にぎやかに100歳の長寿を祝った。駆け付けた長男静男さん(74)ら家族、親族5人と利用者、職員に囲まれ、笑顔を輝かせる植田さん。職員と一緒にお礼の言葉を述べ、「まだまだ元気に過ごします!植田くめ」と締めくくると大きな拍手が起こった。
 
職員からは手作りのお祝い色紙と花束が贈られた

職員からは手作りのお祝い色紙と花束が贈られた

 
たくさんの祝福を受け、笑顔でお礼を述べる植田くめさん

たくさんの祝福を受け、笑顔でお礼を述べる植田くめさん

 
 植田さんは1923(大正12)年11月12日、箱崎町生まれ。同郷の夫とは戦後間もなく結婚。漁業のほか畑仕事、ヤクルト配達などをしながら子ども6人を育て上げた。孫11人、ひ孫が10人いるという。長男家族らと暮らしていたが、本年2月、同施設に入所した。
 
 「きかねえ(気が強い)んだ。家では自由気ままに過ごしていた。だから長生きなのかも」と長男静男さん。現在は体調の大きな変化もなく生活中。耳は遠いが、耳元で大きな声で話しかけると、受け答えはできるという。施設職員によると、普段はシルバーカーを押して自分の足で歩いて移動(行事の時は疲れないよう車いすを利用)。食事も箸を使って自分で食べる。
 
 踊りや歌が大好きだという植田さん。施設ではリビングでテレビを見たり、塗り絵をしたり、風船バレーを楽しんだり…。“ドリフターズ”の昔の面白映像を見て笑ったり、職員が耳元で声を出し一緒に歌を歌うこともあるという。植田さんのお世話を担当している施設職員の佐々里沙さん(32)は「とてもかわいらしく、よく気付いてくださる方。外に干した洗濯物が風で飛ばされた時も教えてくれたりとか」。他の利用者や職員にも元気をくれる存在のようで、「これからもけがなく、風邪をひかずに過ごしていただければ」と佐々さん。
 
そろいのはんてん姿の職員らはスコップ三味線演奏でお祝い

そろいのはんてん姿の職員らはスコップ三味線演奏でお祝い

 
歌や踊りが大好きな植田さんは手拍子をして楽しんだ

歌や踊りが大好きな植田さんは手拍子をして楽しんだ

 
 植田さんは2019年から同施設のショートステイを利用。2人の妹と利用が重なった時期もあり、3姉妹で互いに行き来しながら仲良く過ごす姿も見られたという。現在、同施設で100歳以上の方は植田さんお一人で利用者最高齢。齊藤施設長は「他の利用者さんも植田さんを目指して、ともに健康に生活していただければ」と願った。

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シン・シネピット −6作品一挙公開−

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シン・シネピット -6作品一挙公開-チラシ(PDFファイル/2.9MB)

上映スケジュール

2023年12月2日(土)
オープニングセレモニー
9:50〜10:00
1. 地球交響曲ガイアシンフォニー第九番
10:00〜12:05
2. 大河への道
13:00〜14:55
3. ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years
16:00〜18:20

 

2023年12月3日(日)
4. こんにちは、母さん
10:00〜11:50
5. 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン
13:00〜15:20
6. 福田村事件
16:00〜18:20

会場

釜石PIT(釜石情報交流センター)

チケット料金

席数 90席
各チケットは11/17(金)より釡石情報交流センター
(釡石市大町1-1-10/取扱時間10:00~19:00)にて前売り開始。
 
1PIT IN チケット[当日販売あり]
各作品専用の1回券
・大人1,200円
・中高生500円
・小学生以下無料
販売期間:最終上映終了まで
 
2PIT IN チケット[限定20枚、前売りのみ]
2~6のうち好きな作品を2つ鑑賞可能:2,000円
販売期間:12/1(金)まで
 
3PIT IN チケット[限定10枚、前売りのみ]
2~6のうち好きな作品を3つ鑑賞可能:2,400円
販売期間:12/1(金)まで
 
※1.地球交響曲ガイアシンフォニー第九番 は、「第44回かまいしの第九」応援特別上映として一律500円にてチケットを販売します。

主催

CINEPIT運営委員会
(釜石まちづくり株式会社・みやこ映画生活共同組合)
 
Special Thanks:笹村聡一、村上浩継
作品提供:松竹、太秦、KADOKAWA、龍村仁事務所

お問い合わせ

釜石まちづくり株式会社 TEL 0193-22-3607
作品に関して:みやこ映画生活共同組合 TEL 0193-64-5588

フェリアス釜石

釜石まちづくり株式会社

釜石まちづくり株式会社(愛称 フェリアス釜石)による投稿記事です。

問い合わせ:0193-22-3607
〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内 公式サイト

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「浜千鳥」東北鑑評会で4年連続のダブル優等賞(吟醸、純米酒)獲得/酒造り体験塾は仕込みへ

東北清酒鑑評会で4年連続の2部門「優等賞」を受賞した浜千鳥。英語の賞状も授与された=写真提供:浜千鳥

東北清酒鑑評会で4年連続の2部門「優等賞」を受賞した浜千鳥。英語の賞状も授与された=写真提供:浜千鳥

 
 釜石市の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は2023年の東北清酒鑑評会(仙台国税局主催)吟醸酒、純米酒の2部門で優等賞を受賞した。12年に奥村康太郎さん(43)が杜氏(醸造部長)に就任以降、同鑑評会での受賞は8回目。ダブル受賞は今年で4年連続6回目となる。全国トップクラスの東北6県の酒蔵が出品する鑑評会は入賞が非常に難しく、2部門での連続受賞はさらなる難関。今年、創業100周年を迎えた同社にさらに大きな喜びが重なった。
 
 同鑑評会は吟醸酒と純米酒の味や香りについて総合的に判断し、製造技術の優劣の観点から品質評価を行う。評価員は国税局鑑定官、管内の醸造に関わる研究機関職員、製造場の技術者などが務める。予審と決審を行い、成績が優秀な酒を「優等賞」として出品した製造場を表彰する。各部で入賞した製造場の上位3場のうち、1位に「最優秀賞」、他2場に「評価員特別賞」を授与する。
 
 本年は148の製造場から吟醸酒の部に125場143点、純米酒の部に118場134点が出品された。10月上旬に行われた審査の結果、吟醸酒の部で47点(45場)、純米酒の部で42点(40場)が優等賞となった。本県からは両部門で7場が受賞。浜千鳥、酔仙酒造大船渡蔵(大船渡市)、南部美人(二戸市)の3場が2部門での受賞を果たした。
 
 吟醸酒の部受賞の「浜千鳥 大吟醸」、純米酒の部受賞の「浜千鳥 純米大吟醸 結の香」は共に、岩手オリジナル酵母「ジョバンニの調べ」で醸造。純米大吟醸は本県最上級のオリジナル酒米「結の香」を使用する。大吟醸の原料は酒米の王「山田錦」。
 
釜石税務署の石亀博文署長(右)から仙台国税局長名の賞状を受け取る浜千鳥の奥村康太郎杜氏=写真提供:浜千鳥

釜石税務署の石亀博文署長(右)から仙台国税局長名の賞状を受け取る浜千鳥の奥村康太郎杜氏=写真提供:浜千鳥

 
 2010年に最年少で南部杜氏の資格を取得、12年に同社醸造部長・杜氏に就任以降、各種鑑評会などでの同社入賞をけん引する奥村さん。今回の連続受賞を「レベルの高い東北で入賞するのは大変なこと。続けて評価をいただいたというのは品質を維持できている根拠になり、お客様にいいものを届けられているという自信にもつながる」と喜ぶ。受賞回数を重ねても「毎年、結果は出てみないとわからない」と難しさを語る奥村さん。「品質を維持しつつ、さらに高められるよう頑張りたい。安定も課題」と今後を見据える。
 
 同社には10日、釜石税務署の石亀博文署長から表彰状が伝達された。「(鑑評会連続入賞で)商品への信頼度が増す。その年の原料米の傾向、対策を捉え、より良いもの、再現性も含め私たちらしい味を造るのが仕事。それが認められるのはうれしいこと」と新里社長。同社の4年連続ダブル受賞は5年連続の1社に次ぐ記録。同社は20年には純米酒の部で初の最優秀賞にも輝いている。
 

今季の仕込み10月始動 酒造り体験塾第3弾で市内外の36人がもろみ造りに挑戦

 
浜千鳥酒造り体験塾「仕込み体験会」=12日

浜千鳥酒造り体験塾「仕込み体験会」=12日

 
 浜千鳥の好評企画、一般向けの酒造り体験塾は11、12の両日、第3弾の仕込み体験会が同社酒蔵で開かれ、市内外から計36人が参加した。もろみ造りのための櫂(かい)入れ作業などを体験し、蔵人の苦労の一端を味わった。最後の工程となるしぼり体験会は12月10日に行われる予定。
 
 酒米の田植えから醸造、製品化まで酒造りの一連の工程を体験できる同塾は今年で25年目。仕込み体験は大槌町の田んぼで育てた岩手オリジナル酒米「吟ぎんが」を使って、清酒「ゆめほなみ(夢穂波)」に仕上げる作業に挑戦する。
 
 12日は参加者13人が4班に分かれ、交代で各作業を行った。60パーセントに精米された約680キロの酒米は高温の蒸気で蒸され、参加者が甑(こしき)から冷却機に移す作業を体験。湯気が立ち上る中、スコップで蒸し米を掘り起こし、機械に乗せるのはなかなかの重労働。暑さと戦いながら頑張った。機械で冷ました米は運搬用の布に受け、2人1組で仕込み場まで運び、酒母が入ったタンクに投入。発酵を促す「櫂入れ」作業で、しっかりかき混ぜた。
 
蒸した酒米を甑から冷却機に移す作業。スコップを持つ手に力が入る

蒸した酒米を甑から冷却機に移す作業。スコップを持つ手に力が入る

 
冷ました米は2人がかりで仕込み場へ運ぶ

冷ました米は2人がかりで仕込み場へ運ぶ

 
タンクに投入された米をかき混ぜる「櫂入れ」

タンクに投入された米をかき混ぜる「櫂入れ」

 
 翌日に使う米を洗う体験も行われた。米の状態に合わせ、吸水時間がきっちり管理されていて、参加者は社員の合図で行動。水を吸った米は白色に輝き、参加者の目を引いた。
 
米を洗って吸水させる。時間は時計を見ながら正確に管理

米を洗って吸水させる。時間は時計を見ながら正確に管理

 
水を吸ってきれいな白色になった米に興味津々

水を吸ってきれいな白色になった米に興味津々

 
 釜石市の会社員千葉勝哉さん(24)は職場の同僚に誘われ初めて参加。「蒸し米掘りは暑いし重いし、汗をかいた。一般向けの体験会をやっているところはなかなかないと思うので貴重な機会。しぼり体験会にもぜひ参加したい」と声を弾ませた。普段は浜千鳥の梅酒をよく飲むということで、参加賞の“漬け梅詰め放題”にもうれしさをのぞかせた。
 
 大船渡市の女性会社員(49)は酒好きの友人と参加。作業の大変さを感じつつ、「酒造りの流れを知ることができて面白かった。櫂入れは甘酒の香りもして…」と大満足の様子。「浜千鳥のお酒は飲みやすい。(作業を体験したことで)次、飲む時、3割増しでおいしくいただけそう」と笑った。
 
 同社の仕込み作業は今季も10月から開始。奥村杜氏によると、今夏の猛暑の影響で原料の米が固く、酒造りには例年にない難しさがあるというが、「いいものを消費者に」と社員一丸となって取り組む。今月29日には新型コロナウイルス禍で中止が続いていた「新酒蔵出し祭り」を4年ぶりに開催予定。奥村杜氏は「対面で商品の感想を聞いたり情報交換したりできるのが楽しみ」と心待ちにする。
 
作業を終え充実感をにじませる参加者。おつかれさまでした!

作業を終え充実感をにじませる参加者。おつかれさまでした!

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震災復興…その先へ 小野共市長が初登庁 目指すは「力強い釜石」 16年ぶりリーダー交代

当選後初登庁し職員の出迎えを受ける小野共市長

当選後初登庁し職員の出迎えを受ける小野共市長

 
 11月12日投開票の釜石市長選で初当選した小野共氏(54)が20日、初登庁した。市政運営のスタートにあたり、職員を前に訓示。「釜石のためになると思うことを自由に思い切ってやってほしい。力強いまちを目指して市民と一致団結し、一直線に進んでいこう」と呼びかけた。
 
 小野氏は午前9時ごろ、職員らが迎えるなか登庁。拍手や花束を受けて本庁舎に入った。市長室のいすに座り、心境を尋ねられると、「市民の大きな負託にこたえる責任の重さが体の中から湧き上がる。身の引き締まる思い」と姿勢を正した。
 
市長室の執務机のいすに座った小野市長

市長室の執務机のいすに座った小野市長

 
 訓示は市役所議場で幹部職員ら約40人を前に行われた。東日本大震災後、これまでの12年間は復興事業の推進が行政の役割だったとした上で、「この先は自治体間の競争がし烈を極める。勝ち抜くための取り組みが必要だ」と指摘。さまざまな重圧の中で震災復興というまちづくりを進めた経験を持つ市職員らの力を高く評価し、「首長の役割は責任を取ること。細かいことは言わない。子どもや孫に最高の釜石を残すという自覚とプライドを持って仕事に臨んでほしい」と求めた。
 
市役所議場で幹部職員を前に初めての訓示

市役所議場で幹部職員を前に初めての訓示

 
 4期16年務めた前市長の任期満了に伴う市長選は5日告示され、小野氏は新人同士の一騎打ちを制して初当選を果たした。掲げた公約は▽地域医療の充実▽産業振興▽子育て支援▽教育の充実―の4つ。「各部署、幹部の声を聞きながら慎重に進めたい」とした。選挙戦となったのは20年ぶりだが、投票率は52.01%と過去最低だった。
 
 小野氏は釜石・唐丹町出身で、米サフォーク大学院修了。商社勤務などを経て2007年に釜石市議に初当選した。1期目途中の10年に県議補選で初当選し、連続4期。21~23年には副議長を務めた。市長の任期は18日から4年間。

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雪道へ早めの備えを! 釜石自動車道管理者ら冬タイヤ装着、安全運転などを呼び掛け

車両の冬への備えを呼び掛ける広報活動=16日

車両の冬への備えを呼び掛ける広報活動=16日

 
 高速道路の釜石自動車道(釜石―花巻間)を管理する国土交通省東北地方整備局南三陸沿岸国道事務所は、本格的な降雪シーズンを迎えるのを前に、冬タイヤ装着など早めの対策をドライバーに呼び掛ける。16日には、釜石市甲子町の「道の駅釜石仙人峠」駐車場で広報活動を行い、冬道への備えと事故防止への意識啓発を図った。
 
 県警高速道路交通警察隊釜石分駐隊が協力し、両機関の職員6人で活動。早めの冬タイヤ装着、積雪時のタイヤチェーン装着などを呼び掛けるチラシと、県内高速道路の冬の事故発生状況や走行時の注意点を記したチラシ(県警作成)をドライバーに配り、凍結や積雪対策、安全運転意識のさらなる高揚を促した。
 
広報活動は道の駅釜石仙人峠駐車場で行われた(一部画像処理)

広報活動は道の駅釜石仙人峠駐車場で行われた(一部画像処理)

 
 「タイヤ交換はお済みですか?」装着タイヤを確認する職員

「タイヤ交換はお済みですか?」装着タイヤを確認する職員

 
ドライバーにチラシを手渡し、早めの冬タイヤ装着、安全運転などを呼び掛けた

ドライバーにチラシを手渡し、早めの冬タイヤ装着、安全運転などを呼び掛けた

 
 チラシには県内の主な峠道で過去5年に最も早く初雪が観測された日を記載。釜石―花巻間では、釜石道花巻付近で11月19日、国道283号仙人峠では11月24日に観測されている。他にも、雪道での立ち往生対策としてスコップや携帯トイレ、毛布などの装備、大雪予想時は出控えや予定変更で危険を回避することも呼び掛けている。
 
 釜石道の冬季の事故は釜石仙人峠インターチェンジ(IC)―滝観洞IC間で多発。凍結路面でのスリップ(滑走)事故が多いという。同区間にはトンネルや橋が複数あり、日陰が多いため、路面が凍結すると解けにくい状況がある。特にも注意を促すのが洞泉橋。高い橋の下を風が通り抜け、路面が冷えるため、凍った状態が長く続くという。釜石分駐隊の菅原聖人隊長は「気温が低いと融雪剤も効きにくい。冬タイヤだからと過信せず、“ふんわりアクセル、ブレーキ”で安全運転を心がけてほしい」と話す。
 
雪道運転の注意点なども説明。お茶とティッシュも配った

雪道運転の注意点なども説明。お茶とティッシュも配った

 
 昨季(2022年11月~23年3月)の釜石道での交通事故は49件発生(釜石分駐隊調べ)。いずれも物損事故で負傷者はいなかったが、直近では22年2月に、樺トンネル(花巻市)内で滑走による死亡事故があり、1人が亡くなっている。
 
 同事務所によると、釜石道では昨季、仙人峠で最大29センチの積雪を観測。定められた基準に基づき除雪は行われるが、山間部では短時間で多量の降雪に見舞われる場合もあり、事前の道路情報の入手や十分に注意した走行が必要。また、同隊によると、釜石道では季節を問わず宮守IC―東和IC間での事故が多く、ドライバーにこまめな休憩も呼び掛けている。
 
「万全な冬道対策で交通事故回避を!」安全走行を呼び掛ける国、警察職員ら

「万全な冬道対策で交通事故回避を!」安全走行を呼び掛ける国、警察職員ら

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「キラめく文化のまち」未来へ 多種多様な表現活動、楽しさ 釜石から発信

芸術文化に親しむ釜石市民が交流した秋の祭典

芸術文化に親しむ釜石市民が交流した秋の祭典

  
 芸術の秋を彩る第53回釜石市民芸術文化祭(釜石市、市芸術文化協会主催)は4、5日に大町の市民ホールTETTOで開かれ、市内の表現者たちが力作を並べた。「子供たちの笑顔、未来に紡ぐ芸術の心」をテーマに掲げた今回は“小さな”表現者たちも活動を紹介。大人も子どもも互いに刺激し合い、芸術文化の力をつなぐ意欲を高めた。
 
 芸文協には26団体(約420人)が加盟する。4日のオープニングセレモニーで芸文協の河東眞澄会長は「芸術文化への熱意、関心が高いまち。築き上げたものを若い世代にどう結び付けるかが課題。鑑賞の機会を増やし、みんなの力できらめく文化のまちを発展させよう」と呼びかけた。
 
創作や表現活動を紹介し合う釜石市民芸術文化祭

創作や表現活動を紹介し合う釜石市民芸術文化祭

 
 展示部門では加盟団体、一般参加を合わせ19団体、5個人が作品を公開。書道、写真、絵画、生け花、水墨画、切り絵、ステンドグラス、郵趣品など多彩な分野の力作が並んだ。市内企業などが所蔵する美術品、市民が個人的に見せたい“宝物”を紹介する「まちかどミニ美術館・博物館」と題した展示コーナーも用意。県内外の各種コンクールで入賞した作品も特別展示され、訪れた市民らは感性豊かな作品にじっくりと見入った。
 
生け花、ステンドグラス、手芸など多彩な作品がずらり

生け花、ステンドグラス、手芸など多彩な作品がずらり

 
豊かな表現力をみせる書や絵画作品も並んだ

豊かな表現力をみせる書や絵画作品も並んだ

 
 釜石さつき愛好会(東梅英夫会長、会員10人)は、会員たちが手間をかけて手入れをした盆栽に添え草などを組み合わせた席飾り12点を展示した。春は白やピンクの花を咲かせるサツキだが、秋は枝ぶりや葉の付き方など木そのものの形や手入れ具合を楽しむことができる。「自然に生えている形を追求。すっと抵抗なく視界に入るようなら最高」と頬を緩める東梅会長(78)。月1回の例会でアドバイスし合うのも楽しみだが、会員の高齢化が課題で「若い人、女子に興味を持ってもらえたら」と期待した。
 
釜石さつき愛好会は丹精込めて作り上げた盆栽をお披露目

釜石さつき愛好会は丹精込めて作り上げた盆栽をお披露目

 
鑑賞者(右)の仲間入りを期待する愛好会のメンバーたち

鑑賞者(右)の仲間入りを期待する愛好会のメンバーたち

 
 ステージ発表は2日間で7団体が舞踊やバンド演奏などを繰り広げた。4日に登場した中で目を引いたのが、躍動感あふれる子どもたちの演技。エアロビックダンスチーム「キッズDA★DA」(阿部直美代表)は幼稚園年中児~高校1年生の9人が軽快な音楽に合わせリズミカルに体を動かした。佐々木稜君(甲子小5年)と唯桜さん(同2年)兄妹は緊張して少しミスが出たというが、「気持ちいいし、楽しかった」とにっこり。「きれいに見えるように腕を伸ばすとか基礎をしっかりやりたい」「とにかくもっと上手になりたい」とやる気を燃やした。
 
舞台では多種多様な踊りが披露された

舞台では多種多様な踊りが披露された

 
 小柳玲子バレエ教室(盛岡市)は釜石のほか、宮古、盛岡で練習に励む小中高生23人が「コッペリア」(ジュニア版)より11演目を披露。華やかな衣装を身にまとい、しなやかな舞や華麗なターン、美しいジャンプを繰り広げる子どもたちに客席から拍手が沸き上がった。
 
 バレエを頑張る友達に誘われて来場した双葉小4年の照井綾乃さん、同2年の合田帆花さんと井上千里さんは「すごくキラキラしていた」と感激した様子。芸文祭に足を運ぶのは今回が初めてで、「マネできない上手さがあるし、きれいなものがいっぱい」と発見を楽しんだ。「自分を輝かせたい」。友達の姿に感化されたようで、習い事や気になる表現活動に取り組んでみると意欲を高めた。
 
参加した各団体代表者がユーチューブ生配信で活動紹介

参加した各団体代表者がユーチューブ生配信で活動紹介

 
 今年も4日の舞台発表の様子などをYouTube(ユーチューブ)で生配信。「若い世代の仲間入り」に期待を込め、創作や表現活動を楽しむ姿を発信した。

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三遊亭楽大の「爆笑落語会 正座の限界60分&e-sports交流会」

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落語とe-sportsによる心の復興事業 三遊亭楽大の「爆笑落語会 正座の限界60分&e-sports交流会」

災害公営住宅にお住まいの皆様と、地域住民の交流等を目的に、方三遊亭楽大さんのよる落語会と交流会を開催します。生で落語を楽しめる貴重な機会です。近隣の皆様お誘いあわせの上、是非ご来場下さい。みんなで沢山笑いましょう!

 

日時

平田公民館
12月1日(金) 10時〜

入場料

無料

主催・お問い合わせ

釜石まちづくり株式会社
TEL 0193-22-3607

※落語とe-sportsによる心の復興事業は、令和5年度被災者の参画による心の復興事業費補助金を活用しています。

フェリアス釜石

釜石まちづくり株式会社

釜石まちづくり株式会社(愛称 フェリアス釜石)による投稿記事です。

問い合わせ:0193-22-3607
〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内 公式サイト

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「撓まず屈せず」合言葉に震災復興 釜石・野田武則市長が退任 4期16年…心残りなく

釜石市役所玄関前で退任のあいさつをする野田武則氏

釜石市役所玄関前で退任のあいさつをする野田武則氏

 
 釜石市の野田武則市長(70)は17日、4期目の任期を満了し、退任した。最後の登庁日となったこの日、市職員らを前に訓示。「撓(たわ)まず屈せず―を合言葉に職員、市民とともに歩んだ」と任期の大半を費やした東日本大震災後のまちづくりを振り返り、「多くの努力と思いが一つになったのが釜石の復興。たくさんある可能性に花を咲かせ続けて」と託した。退庁時には市役所本庁舎1階の玄関付近で花束を受け取り、一礼。多くの職員や市民から拍手で見送られ、晴れやかな表情で16年間通った庁舎を後にした。
 
 野田氏は甲東幼稚園(現・甲東こども園)の園長などを経て2003年に県議初当選。2期目だった07年、前市長の死去に伴う市長選に無所属で出馬し、無投票で初当選した。1期目途中に震災が起き、復旧・復興業務に尽力する中で11、15、19年と連続無投票で当選した。
 
 陣頭指揮を執った復興まちづくり事業は震災から12年を経て、今年3月に関連するハード事業が完了。三陸沿岸道路の整備や大型商業施設の誘致、岩手大釜石キャンパスの設置など、まちの再生に力を注いだ。「ピンチをチャンスに。震災前よりもいい街に」と“夢のようなこと”にも挑戦。15年に橋野鉄鉱山の世界遺産登録、19年には新設した釜石鵜住居復興スタジアムでのラグビーワールドカップ開催を実現させた。
 
市職員を前に最後の訓示。4期16年を振り返った

市職員を前に最後の訓示。4期16年を振り返った

 
 この日は庁内各課を回ったり、幹部職員と懇談した後、議場で最後の訓示に臨んだ。「釜石ならではの復興の形はできた」と総括した一方、人口の減少や地域経済の縮小など市民の生活環境は厳しく、「適切に対応できなかったことは反省点」とした。
  
 そして、「悔やんでも悔やみきれない」と無念さをにじませたのは、震災で多くの避難者が犠牲となった鵜住居防災センターでの出来事。「防災センターという名前は簡単につけてはいけない。避難場所ではない所を訓練で使ってはいけない。ハザードマップは100%安全とは言い切れない」と教訓を残した。命の大切さを痛切に実感し、「自分の命、人生を守ることは他人の命、人生も守ること。そんな姿勢であり続ける」のを目指し、つくり上げた防災市民憲章の継承を強く望んだ。
 
 「16年の長い間、ありがとうございます」と協力に感謝した野田氏。懸案となっていた新市庁舎の建設や専門学校の開校も将来の見通しが立ったといい、「心残りなく去ることができる」と肩の荷を下ろした。ただ、課題は残るとし、「次の市長とともに市勢の発展、市民一人一人の幸せのため力を尽くしてほしい」と求めた。
 
多くの市民らに見送られながら市役所を後にした

多くの市民らに見送られながら市役所を後にした

 
 本庁舎前では市民らが待ち構え、花束を渡して「お疲れさまでした」「ありがとう」などの声とともに見送った。

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釜石市の震災記録誌「撓まず屈せず」完成 復興の過程、教訓「未来の指針に」

復興の道のりをまとめた釜石市震災誌「撓まず屈せず」

復興の道のりをまとめた釜石市震災誌「撓まず屈せず」

 
 釜石市は、東日本大震災を後世に伝える震災誌「撓(たわ)まず屈せず」を発刊した。野田武則市長、編さん委員会委員長の齋藤徳美岩手大名誉教授(地域防災学)が10日、市役所で完成を報告。被害状況、復旧・復興の施策や事業、課題をまとめた震災誌を手に、「未来の子どもたちへのメッセージであり、これから災禍に遭うかもしれない地域への教訓。災害の備え、応急・復旧対応の指針として大いに生かしてほしい」と望む。
 
 震災誌はA4判カラーで332ページ。▽いのちをつなぐ▽まちづくり▽くらし▽なりわい▽安心と安全―などの9部構成で、発災当日からの市民らの行動や復旧・復興の過程を記す。さらに、「災害対策本部の初動対応」「復興まちづくり基本計画の策定」「心のケア」といった61の項目ごとに事実、市に求められた役割、具体的な活動と結果、教訓を記述。有識者のメッセージやトピックス、市民の声も盛り込み、より理解が深まるよう工夫した。
 
市民の証言も教訓として添えられている

市民の証言も教訓として添えられている

 
 編さん委員会は2021年11月に発足し、市の震災検証に関わった大学教授や被災地域の住民、発災時から対応にあたってきた元市職員らで構成。市の庁内検証委員会が年度ごとにまとめてきた記録誌を基にまとめ、22年度内の完成を目指していた。発災から復旧、復興の歩みを体系的に記録し、得られた教訓を今後に生かしてもらうべく内容を精査。会合での協議、各種作業に時間を要し発刊時期が遅れていたが、今年10月にようやく完成した。
 
 第9部「未来のいのちを守るために」には、市内で1000人を超える犠牲者を出した検証、震災前から続く小中学校の防災教育の結果・検証などを記載。「災禍を繰り返さないために検証が不可欠。減災と復興の在り方に議論を続けて進化を」と教訓を示す。野田市長は「事実関係に加え、教訓もしっかり精査されている。ただ、教訓に関してはまだまだ議論の余地がある。読んだ人が考え、得られるものをつけ足していってもらいたい」と委ねる。
 
完成を報告する野田市長(右)と齋藤委員長

完成を報告する野田市長(右)と齋藤委員長

 
 「12年という一つの区切りにまとめができたのは非常に価値があった」と齋藤委員長。「自然災害は必ず発生する。災禍を繰り返さないためには、とにかく逃げる」と訴え続ける。震災では避難という基本に対する認識に個人差があったのか、大きな被害につながったとも指摘。「普段から、非常時の体制づくりを」と求める。そして、この震災誌に願いを込める。「未来への指針としてほしい」。巻末資料に索引がついており、市民の振り返りだけでなく、他市町村も参考にしやすい形を取り入れた。
 
 300部を発行し、市内の学校や図書館、国や岩手県の関係機関、復興応援を受けた自治体などに配布する。市役所(震災検証室)や市の出先機関(釜石地区を除いた生活応援センター)で販売(1部2000円、税込み)も。市ホームページでも無料で公開する。