岩手県水産技術センターの施設内探検ツアーを楽しむ参加者
釜石市平田の岩手県水産技術センター(神康俊所長)で22日、公開デーとしてイベントが催され、家族連れらが施設見学や研究の紹介、体験活動を通して身近な海や水産について理解を深めた。
公開デーは「海の日」に合わせて行ってきたが、ここ数年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止したり、入場などを制限する形の実施が続いた。制約のない開催は4年ぶり。同センターの研究に触れてもらう新企画を用意した。
その一つが、探検ツアー。神所長らが環境化学実験室など普段は入ることができない施設内部を案内した。種苗棟ではアサリや海藻の養殖試験の様子を見学。地元企業などと協力し開発・商品化を進めた、ワカメを高速で塩漬けする機械「しおまる」について、神所長は「洗濯機に似ている。500キロを均質に効率よく作ることができる。三陸地域で約500台が使われ、広島や島根、北海道など全国で活躍している」と説明した。
二枚貝や海藻類の養殖研究の様子を見学。施設内には震災の爪痕も残る(右下写真)
この日くみ取った海水を顕微鏡で観察するコーナーも初企画。「アメフラシのたまご」などプランクトンが生息する小さな世界に大人も子どもも夢中になった。海の生き物に関するクイズを楽しむ、かるたも好評。「オタマジャクシじゃありません。口に4本のひげ。地震の前に暴れます」などと読み上げられると、子どもたちは元気よく「ナマズ」の絵札に手を伸ばした。
海のプランクトンを顕微鏡で観察。小さな世界に子どもたちは夢中
魚にまつわるクイズを解きながら挑むかるたも白熱した
ヒトデやウニなどの生き物に触れるタッチプール、塩蔵ワカメの芯抜き作業体験は恒例の催しながら、変わらず人気。60センチほどもあるタチウオの魚拓づくりに挑戦した大船渡市の中井幹太君(大船渡北小2年)は「うまくできた。うちに飾りたい。いろんな体験ができて楽しい」と満足げだった。
カラフルな魚拓づくりに挑んだ中井幹太君(左)。出来栄えに満足げ
さまざまな海の生き物と触れ合えるタッチプールは子どもたちに人気
漁業指導調査船・岩手丸(154トン)も公開。海洋の水温調査や底引き網漁での魚種調査などで使われる観測・漁労装置が並ぶ船内を興味深そうに巡った地元釜石の菊池結衣さん(甲子小2年)は夏休みに入ったばかりで、「船がかっこいい。絵日記に書ける」とにっこり。父・正利さん(53)も「こんな船は見る機会がないから楽しい。海が身近にある地域に住んでいるので、泳ぎに行ったり思い出をつくりたい」と目を細めた。
漁業指導調査船・岩手丸の船内巡りを楽しむ家族連れ
ずらりと並んだ調査用装置に大人も子どもも興味津々だった
海況変動に関する研究や貝毒に関する調査、県内水産物のブランド化を支える加工技術の開発など同センターの取り組みもパネルで紹介。神所長や研究員らは来場者と触れ合いながら、やりがいなども伝えていて、「何でもいいから興味を持ってもらえたら。そして将来、海や水産業に関わる人が増えたら」と期待した。