避難先の鵜住居小に続く階段を駆け上がる訓練参加者=3日
「防災の日」の9月1日~7日は、地震・津波避難訓練週間-。新型コロナウイルスの影響で人が集まる避難訓練が難しい中、釜石市が設定し、自主的な訓練実施を市民に呼び掛けた。例年、1日に実施する避難訓練は感染症予防のため、昨年に続いて中止とした。
市民と市内勤務者が対象。日本海溝沿いでマグニチュード(M)9・1の巨大地震が発生して釜石で震度6弱の揺れを観測、気象庁から大津波警報が発表されたとの想定。内閣府が公表した日本海溝(三陸・日高沖)モデルなどを踏まえ、津波到達予想は東日本大震災時より早い地震発生の15分後と設定した。
うのすまい・トモスで避難訓練 周辺施設と連携確認
三陸鉄道鵜住居駅前の公共施設職員による避難訓練。高台の鵜住居小を目指す
三陸鉄道鵜住居駅前の公共施設「うのすまい・トモス」の職員らは3日、市の想定を踏まえた避難訓練を行った。震災伝承施設「いのちをつなぐ未来館」が主導し、隣接する観光交流拠点「鵜の郷交流館」、周辺にある市民体育館、地区生活応援センターと合同で初めて実施した。各施設から職員計約20人が参加。非常時の情報共有や避難開始までの手順、経路などを確認した。
未来館では机の下に潜って身を守った後、施設内を点検。入り口に「避難しました」「あなたも逃げて」などと記した「安否札」を張り出し、緊急避難場所の鵜住居小に向かった。
避難したことを伝える「安否札」を施設入り口に掲示した=3日
鵜小の校舎に続く階段の一部にオレンジ色の線が引かれていて、参加者はその線より上の地点を目指し、階段を駆け上がった。“オレンジライン”は震災の津波高約11メートルを示すもので、参加した全員が約10分で避難を完了した。
約10分で避難完了。安全確認を行って訓練を終えた=3日
未来館職員らは「二度と悲劇を繰り返してはいけない。コロナ禍で思うような伝承活動ができない状況だが、災害はいつ起こるかわからず、備えるためにも周囲を巻き込み定期的に訓練していきたい」と意識を高める。今回の訓練には一般の利用者らの参加はなかったが、施設の見学中や買い物中に地震が起きることもあり得ることから、避難誘導などの課題を洗い出し、周辺施設と情報共有していく考えだ。
水門の自動閉鎖訓練も 操作を確認
県沿岸広域振興局は7日、釜石市内の水門、堤防の切れ目に設置された「陸閘(りっこう)」を閉める訓練を行った。震災の際、水門を閉めに行った多くの消防団員が犠牲になった教訓から、県は津波注意報、警報の発令時、遠隔操作によって自動で水門などを閉鎖するシステムの導入を進めている。
鵜住居川河口に整備された水門は遠隔操作で約4分で閉じた=7日
この日は市役所内にある制御機材から遠隔操作で、稼働している15カ所の一斉閉鎖訓練を実施。鵜住居川河口に整備された鵜住居川水門では、上部にある機械室の回転灯が点灯し、警告音がなる中、ゲートが約4分で閉まった。県の担当職員が現場に張り付き、自動閉鎖システムが正常に稼働し、解除の手動操作にも間違いなく動くかを確認した。
水門が閉まる様子を見守った地元の男性(73)は「震災で被災した。水門ができたことで安心感はある。津波はまたいつか来るかもしれない。いざという時に逃げる場所を家族で確認している」と備えの必要性を感じていた。
水門の閉鎖訓練を見守った住民は防災意識を高める機会にした=7日
災害時に安全、迅速、確実に水門などを閉める目的で自動閉鎖システムを導入する沿岸振興局では、関係機関と連携し同様の訓練を定期的に実施する考えだ。