ホラニ 龍シオアペラトゥー選手(ほらに りゅうしおあぺらとぅー)選手 / 所属先:日本製鉄(株)釜石製鐵所 プロ契約 プロフィール
2018年加入/1982.12.29生(36歳)/187㎝/120㎏/トンガ出身/埼玉工業大学卒
●ラグビーを始めたきっかけ:15歳の時、伯父(ノフォムリ・タウモエフォラウさん)に誘われて。
●ポジションの遍歴:FL、LO、No8→PR
●ニックネーム:ソア
●趣味:BBQ、釣り、海で遊ぶ
●好きな食べ物:ラーメンとラム肉丼
●釜石のオススメ:釜石ラーメン、大自然
●出身地のオススメ:豚の丸焼き
●試合前のルーティン:音楽を聴く
●ストロングポイント:セットプレー
●サポーター、ファンへメッセージ:いつも応援していただきありがとうございます。皆さんの声援が大きな力になりますので、これからも応援よろしくお願いします。
インタビュー日:2019年7月29日(釜石シーウェイブスRFCクラブハウス)
企画・編集:釜石まちづくり株式会社
取材・文:市川 香織(釜石まちづくり株式会社)
写真:西条 佳泰(株式会社Grafica)
奥さんと二人で「釜石行きますか!」って、すぐに決めました
ーー加入の経緯を教えてください。
ホラニ選手:
NECが終わった後に、一番早くに声を掛けて下さったのが釜石だったんです。ある日エージェントから「釜石のGMさんが会いたいと言って下さっている」と連絡が来まして。それで、桜庭さんと直接会って話をさせて頂いて、奥さんと二人で「釜石行きますか!」って、すぐに決めました。
ーー過去にSWと対戦した事はありましたか?
ホラニ選手:
僕は無くて、当然、釜石に来た事も無かったです。でも、前にチームに居たトンガ出身の選手が、SNSに釜石の風景や写真をUPしていたので、それを見て「釜石っていい所だなぁ」って思っていました。
でも、僕が入ったらトンガ出身選手が皆いなくなってしまっていて・・・一緒に出来ると思っていたので、それがちょっと寂しかったですね。
ーーそうすると、入った当初はチームに知っている人はいましたか?
ホラニ選手:
マヘさん(トゥビさん:釜石SW 普及担当)が、高校(トンガの)は先輩です。他には知っている人はいませんでした。だから、トンガの選手たちがみんなSWが終わりって聞いた時、みんなにメールして「頼むから誰か残ってくれー」って(笑)。そしたら、マヘさんがスタッフとして残ってくれて、本当良かったです。
ーーチームに合流してどうでしたか?
ホラニ選手:
良いチームだなぁって感じました。ただ、練習時間が今までやって来たチームとは違って、夜暗い中でもやるので初めは戸惑いましたけど、今は慣れました。
ーー第4弾でインタビューをお届けした山田選手が、チームに合流してすぐはわからない事も多い中で、「NECで一緒だったソアさんが居てくれてとても助かりました」と言っていました。
ホラニ選手:
そうなんですか・・・ありがたいですね。確かに僕も最初の頃は同じで、練習の流れとか他にも色々と分からない事はマヘさんに聞いて、全部教えてもらいました。やっぱり、知っている人がいてくれるだけで全然違います。
ーーほとんど知り合いが居ない初めての土地ですもんね。
ホラニ選手:
そうですね。だから、こっち来る前に兄さん(ホラニ龍コリニアシさん:パナソニックワイルドナイツFWコーチ)に、「釜石って遠いけど大丈夫?東京のチームの方がいいんじゃない?」って心配されました(笑)。
でも僕は、「東京はもういいです。釜石の大自然の方が自分に合っていると思うんで」って言って、釜石に来ました。
ーーこのインタビューシリーズで、海外選手のオススメの場所によく登場する「荒神海岸」はマヘさんがチームのみんなに教えたそうですね。
ホラニ選手:
そうですね。去年も結構みんなで泳ぎに行きましたね。海も砂浜もとてもきれいで、BBQも出来るし、すごく良い所です。あとは、すぐそこの松倉の川にも、昨日も一昨日も連続で入りました(笑)。
ーー実際に釜石で暮らしてどうですか?
ホラニ選手:
イメージ通りでした!自然が好きなので、さっき言ったみたいに、海、川で遊んで、海で釣りをして、最高です。
日本に来た時点で、「もう僕にはこの道しかない」って思っていました
ーー日本へ来たのは、何歳の時にどんなきっかけだったんですか?
ホラニ選手:
16歳になったばかりの時、伯父さんに「日本でラグビーやってみないか?」と誘われて日本の高校(埼工大深谷高校)に来ました。それまでラグビーの経験は全くなかったんですけど。
ーーえ!そうだったんですか?
ホラニ選手:
僕の家は母と兄と僕の3人だけなんですけど、母はいつも「勉強、勉強、勉強しなさい!」という感じだったので、勉強ばかりしていました(笑)。
でも、僕たちが大きくなって来た頃に母が、「だんだん1人で育てて行くのが大変になってきた」という話を伯父さんにしていて。伯父さんは元々日本でラグビーをしていたんですけど(ノフォムリ・タウモエフォラウさん:三洋電機でプレー。日本代表キャップ15)、トンガに来てくれて「日本の高校でラグビーをさせたいから、僕に任せてくれないか?」と母に言ったんです。母は、相手が伯父さんじゃなかったら、僕たちを日本に行かせなかったと思います。
ーー高校はトンガからラグビー留学生をずっと受け入れていたんですか?
ホラニ選手:
僕の兄さんともう一人が1期生で、2期生が僕と、クボタでもチームメイトだったオツコロ カトニでした。当時は毎年2人ずつでした。
ーーそうすると、お兄さんが居たから、ちょっと安心でしたね。
ホラニ選手:
そうですね、すごく助かりました。言葉もわからない所に行って、いきなり学校に入って、普通のクラスで授業を受けて。当たり前ですけど、目の前で何が行われているのか全然理解出来なくて、“ぼーっ”としているしか無くって(笑)。
学校が終わって、兄さんの所に行って「なんで学校に通っているのはわからない・・・」って、よくこぼしていました。兄さんは日本に来て1年経って、少しだけ日本語が話せるようになっていたので、色々と教えてもらってなんとか過ごしていましたね。
だから、たぶん1期生の二人は本当に大変だったと思うんです。僕みたいに聞ける人がいなかったから。
ーーそして、ラグビーもそこで始めて・・・。やってみた時はどうでしたか?
ホラニ選手:
楽しかったです。厳しいラグビー部だったので、練習はきついし、休みもなかなか無かったですけど(笑)。
授業に出ていても、「早く部活にならないかな・・・」という日々でした。
ーー体はもう今くらい大きかったんですか?
ホラニ選手:
いや、高校の時はもっと細くて、80kgくらいでした。FWのポジションはHO以外全部やりましたね。
ーーじゃぁ、体を大きくする為に、食事も練習の一環だ!という感じで?
ホラニ選手:
そうですね。自分たちで「これはきちんとご飯を食べないとダメだな」って、すぐ思いましたから。
だけど、最初は日本の食事が合わなくて・・・。特に白いご飯が食べられなくて、パンばかり食べていたんですけど、だんだん時間が経つうちに、すごく美味しく感じるようになりました。
今は、白ご飯無しの食事は無理ですね(笑)。
ーー大学でもラグビー部に入って、そして、社会人になっても続けるというのは、いつ頃決めたんですか?
ホラニ選手:
日本に来た時点で、「もう僕にはこの道しかない」って思っていました。ダメだったら・・・とか、そういう事は考えないようにしていましたね。辛くて帰りたくても、「やるしかない!」と思って。
ーーさっき、休みもほとんどないという話でしたけど、1年に1回くらいはトンガに帰れたんですか?
ホラニ選手:
いえ、帰れなかったですね。高校3年間で帰ったのは、卒業した後に一回だけで、大学の時も卒業して社会人になる前に一度だけでした。
ーーお母さんが日本に来てくれたりとか?
ホラニ選手:
それもほとんどなくて、高校と大学の卒業式に来たくらいでしたね。
ーー社会人になって、ラグビー選手になった時は喜ばれたでしょうね。
ホラニ選手:
はい、喜んでいましたね。それで、社会人になったし、お母さんを「日本に遊びにおいで」って呼びたいねと兄さんと話したんですけど、クボタでの3年間はプロ選手ではなくて、工場で働きながらラグビーをする社員選手で、独身寮に住んでいたんです。だから、母さんが来ても独身寮に泊める事が出来ないので、プロ選手になって、寮を出て家を借りて、母さんを泊められる様にしたいと思っていました。それに、仕送りをしたくても、社員選手の給料だとあまりそれも出来ないので。
そうした事もあって、プロ選手への道を考えて、クボタで働いている時に日本のパスポートを申請して、日本に帰化しました。
ーー日本でラグビー選手として生きて行くと決心されたんですね。
ホラニ選手:
そうですね。帰化する前に母さんにも相談したんですけど、「どこの国籍になっても、あなたが私の息子である事に変わりはないから、自分で決めたのならお母さんはそれを尊重するわ」と言ってくれました。
あとは自分たちの気持ち、意識だけだと思います
ーー釜石に来て2シーズン目。昨シーズンを振り返っていかがですか?
ホラニ選手:
釜石に来てすぐの頃にケガをして、春夏はなかなか試合に出られなかったんですけど、リーグ戦(TCL)が始まった頃に復帰し、たくさん試合に出る事が出来て良かったです。でも、もっと勝ちたかったです。
ーー今、チームで最年長でいらっしゃるんですよね。そして、一番下の選手は19歳。
ホラニ選手:
そうです、19歳ですね(笑)。もう・・・思ってもいなかったですね、こんなに若い選手と一緒にラグビー出来るなんて!なんか恥ずかしいです、僕がダントツ年上で(笑)。去年までは同い年のメンバーもいたんですけどいなくなりましたし、そういう点でもほんと寂しいですね。
若い選手たちには、もっとチームを引っ張って行って欲しいなと思っています。
すごい、シャイなんですよ。シャイというか、自分のやりたい事、自分の意見を言わないんですよね。だけど、もっと積極的にコミュニケーションを取って欲しい、グラウンドの中に入ったら、先輩後輩は関係ないですから。そこがまだ遠慮気味になってしまっているんですよね。
ーーそういう若い選手を見ていて、「まだ理解してないな」と感じた時には、言ってあげる方ですか?
ホラニ選手:
はい、僕はみんなに今まで自分が経験して来た事を共有したいと思っているので、出来るだけ言うようにしています。
でも、SWは練習以外で一緒に過ごせる時間が少ないんですよね。働いている選手が多くて時間が合わないですし。でも、そういう中でも出来るだけ時間を見つけて、アドバイスしたり話をするようにしていますね
ーー今シーズンはコーチ陣が変わり、チーム作りをしている最中だと思うのですが、カップ戦で久しぶりに三菱重工相模原に勝利するなど、チームの力は上がって来ていると感じます。実際にここまでどうですか?
ホラニ選手:
はい、上がっています。あとは自分たちの気持ち、意識だけだと思います。集中して取り組む所、リラックスする所、そういう判断を一人一人が出来たら、もっと良いチームになるんじゃないかって思います。
ーーSWがTLに昇格する為に必要だと思うことは何ですか?
ホラニ選手:
それこそ、一人一人の意識だと思います。今のチームは若い選手が多いですし、年齢も経歴もバラバラなんですが、練習の時に「みんなでやろう!」と確認した事も、次の日になったら忘れていたりする選手がいるんですよね。そうすると、全体でまた一からやり直しになります。
今日の練習をどれだけ良いものに出来るか、そして、次の日は前の日に終わった所からスタートして、そこにさらに積み上げていく練習が出来るかどうかが重要です。そこを全員で意識して出来たら、良いチームになると思います。
みんながそうなるまで、一人一人が言い続けなきゃいけないですね!少しの事でも、「忘れているな!」と思ったら、すぐ声を掛けていかないと。“ワンチーム”なんで、キャプテンとかリーダーとか関係なく、気が付いた人が言ってあげる、そこも一人一人の意識ですね。
ーー良いチーム“ワンチーム”になる為に、“もっとこうして行きたい”という事はありますか?
ホラニ選手:
プロとか社員とか関係なく、もっと選手同士の交流に時間をかけた方が良いと思います。練習だけではなくて、それ以外の時間も一緒に過ごして、コミュニケーションを取って。そうしたら、もっとそれぞれが遠慮しないで出来るかなと。ラグビー以外の事を一緒に楽しんだりする事が良いかなと思いますね。
ーー最後に、今シーズンの抱負をお願いします。
ホラニ選手:
今年、TLから落ちて来た強い2チームと、TLに昇格出来なかったSWより上位のチームもいるので、そこをターゲットにして勝ちたいですね!特に、カップ戦で負けたコカ・コーラにはリベンジしたいです!
個人的には、コンディションも悪くないですし、昨年ケガした膝も大丈夫です。今年は良い感じなので、カップ戦よりもっと良いプレーが出来れば良いと思いますし、チームとしては、カップ戦で活かしきれなかった点、そういう所を全部修正して臨みたいですね。
今年は秋のラグビーワールドカップ開催後の11月からトップチャレンジリーグが開幕!第1節、第2節は鵜住居復興スタジアムで行われます。日程は以下の通りです。
2019 ジャパンラグビートップチャレンジリーグ
第1節 11月16日(土) 11:30 釜石鵜住居復興スタジアム
対 コカ・コーラレッドスパークス
第2節 11月23日(土) 11:30 釜石鵜住居復興スタジアム
対 九州電力キューデンヴォルテクス
第3節 12月07日(土) 11:30 秩父宮ラグビー場
対 栗田工業ウォーターガッシュ
第4節 12月14日(土) 14:00 秩父宮ラグビー場
対 豊田自動織機シャトルズ
第5節 12月21日(土) 13:00 コカ BJI ラグビー場
対 マツダブルーズーマーズ
第6節 01月11日(土) 14:00 ヤンマースタジアム長居
対 近鉄ライナーズ
第7節 01月19日(日) 11:30 秩父宮ラグビー場
対 清水建設ブルーシャークス
最新情報、詳細は釜石シーウィブスの公式サイトでご確認ください。
http://www.kamaishi-seawaves.com/