都築住職らによってお披露目されたシンボルキャラクター

釜石大観音 建立50周年、まちを見守るシンボル〜「かのっち」お披露目

記念法要の参列者ら=8日

記念法要の参列者ら=8日

 

 釜石市大平町の釜石大観音は建立から50周年を迎え、7、8の両日、記念行事を行った。住民の信仰の対象、釜石を代表する観光名所として親しまれてきた大観音。両日は拝観が無料となり、訪れた人たちは、慈愛に満ちた姿でまちを見守り続ける観音像を見上げ、50年の歳月に思いをはせた。

 

魚彩王国協賛の屋台村が出店し、にぎわいを見せた釜石大観音境内=7日

魚彩王国協賛の屋台村が出店し、にぎわいを見せた釜石大観音境内=7日

 

 7日の式典では、運営する明峰山石応禅寺(大只越町)の都築利昭住職があいさつ。50周年記念で制作した同観音の新キャラクター「かのっち」がお披露目された。本県のPRキャラ「わんこきょうだい」を手がけた盛岡市のデザイナー、オガサワラユウダイさんがデザイン。「幅広い年代に愛されるように」との思いが込められた。境内には高さ150センチの「かのっち」像が設置され、グッズとしてクリアファイルなどが発売された。

 

都築住職らによってお披露目されたシンボルキャラクター

都築住職らによってお披露目されたシンボルキャラクター

 

 市内の詩吟、太鼓、鹿踊りの3団体が芸能奉納。仙台市在住の釜石ゆかりの書家・支部蘭蹊さんはオカリナ演奏の中、書のパフォーマンスを披露した。兄弟ピアノデュオ「レ・フレール」、女性音楽家4人による「スプラング・リズム」のコンサートもあった。

 

 ツアーで訪れた盛岡市の小泉ケイさん(83)は建立間もないころに来た記憶があるといい、「観音様はどんな気持ちで津波を見ていただろう。海岸部の状況も見せてもらったが、工事中の所が多い。一日も早い復興を祈るばかり」と手を合わせた。

 

 釜石大観音は明治、昭和の大津波、第2次大戦の2度にわたる艦砲射撃の犠牲者を弔い、世界平和を祈願しようと、1970年、同寺17世・雲汀晴朗氏の発願で、釜石湾を一望する鎌崎半島の高台に建立。東日本大震災では、地震で観音像の一部にひびが入るなどしたが、津波被害は免れた。震災後は市民結婚式の会場になり、2016年には「恋人の聖地」に選定された。

 

「桜舞太鼓」などが50周年を祝った芸能奉納

「桜舞太鼓」などが50周年を祝った芸能奉納

 

 都築住職(49)は「全国からのお力添えで震災も乗り越えてこられた。観音様は人々の救済が本願。今まで以上に皆さんの心のよりどころになっていければ」と願った。

 

 境内には、スリランカ国ケラニア寺院から分骨されたお釈迦様の遺骨をまつる仏舎利塔がある。8日は、仏舎利奉迎45周年と合わせた記念法要が営まれ、95人が参列。降誕会でお釈迦様の徳をたたえた後、雲汀大和尚、建立・運営尽力者を供養した。

 

 像の修繕などを請け負う元持の元持成人社長(70)は「大観音は釜石に人の流れを生み、まちにも貢献してきた」と実感。梅花講の菊地恵美子さん(88)は「釜石のシンボル。何かの時にはここにお参りする人も多い」と愛着を示した。

 

(復興釜石新聞 2019年4月10日発行 第781号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

借り受けた建物を民泊向けに貸し出す地域おこし協力隊の吉野さん(左)と神脇さん

ルームシェアと民泊で空き家活用、釜石市平田運用開始〜「協力隊」居住 受け入れに一役

借り受けた建物を民泊向けに貸し出す地域おこし協力隊の吉野さん(左)と神脇さん

借り受けた建物を民泊向けに貸し出す地域おこし協力隊の吉野さん(左)と神脇さん

 

 釜石市内に数多くある空き家を活用して地域活性化につなげようと、ルームシェアと民泊を組み合わせた取り組みが始まり、3日、モデルケースとして運用される建物が公開された。上平田ニュータウン内にある空き家に地域おこし協力隊の単身者2人が住み、普段は利用しない2部屋を民泊向けに貸し出す仕組み。市は、深刻な社会問題となっている空き家解消策の一つとして可能性を探るほか、今秋開催されるラグビーワールドカップ(W杯)の宿泊施設不足を補う方策としても期待する。

 

ヘイタハウス

 

 「ヘイタハウス」と名付けられた木造平屋の建物(104平方メートル)は築25年で、この10年間は空き家となっていた。この建物を借り受けた同隊員の吉野和也さん(38)、神脇隼人さん(30)が改修した上で、5部屋のうち定員3人と4人の2部屋を民泊用に貸し出す。料金は素泊まり1泊3500円(税別)に設定する。

 

 釜石市、不動産・住宅情報サイト「LIFULLHOMES」などの住生活情報サービスを提供するLIFULL(井上高志社長)、楽天LIFULLSTAY(太田宗克社長)が17年に締結した「空き家利活用を通じた地域活性化連携協定」の事業の一つ。17年に成立した「民泊新法」により可能となった。

 

民泊向けに貸し出す部屋で

民泊向けに貸し出す部屋で

 

 空き家所有者は賃貸で家賃収入を得ることができ、民泊用に部屋を貸し出す居住者は副業として月々の家賃を補てんする仕組み。市とLIFULLは空き家の選定や入居者の募集、物件の管理・利活用に関するコーディネートを行い、楽天LIFULLSTAYは民泊事業を始めるための物件改修の監修、民泊施設運営のノウハウを提供する。

 

 市によると、16年調査で市内には約830件の空き家があるが、単身者向けの手頃な家賃の物件が少なく、移住や定住を促進する上で課題となっている。

 

 地域おこし協力隊の2人はいずれも千葉県出身。まちづくり分野を担当する吉野さんは「地域の人たちと、市外からやって来た人などとの交流の場としても活用できれば」と可能性を探る。釜石に来る前は不動産業に携わっていた神脇さんは「釜石は家賃がすごく高いと感じた。低額の空き家利用として認知されれば」と期待する。

 

 宿泊は民泊予約サイト「Vacation STAY」で予約できる。

 

(復興釜石新聞 2019年4月6日発行 第780号より)

 

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釜石初の女性消防士に〜震災機に防災意識高める、いずれは救急救命士へ

釜石初の女性消防士に〜震災機に防災意識高める、いずれは救急救命士へ

「優しい職場。配慮もうれしい」と意欲を高める多田さん

「優しい職場。配慮もうれしい」と意欲を高める多田さん

 

 釜石大槌地区行政事務組合消防本部(金野裕之消防長)に初の女性消防士が誕生した。遠野市宮守町出身の多田和佳菜さん(19)が採用試験に合格。1日、同期の男性3人と共に辞令を受け、「女性の視点で、震災で被災した地域住民に役立つ仕事をしたい」と意気込みを語った。

 

 多田さんが消防職員を志した背景には、小学生の時に起こった震災が大きく影響したという。中学時代は大槌中と交流があり、合唱でエールを交換。住民からも震災や復興の話を聞き、防災意識を高めた。

 

 小学生の時には野球に取り組み、中学から陸上、駅伝、空手と幅を広げた。花巻南高から専門学校に進み、消防職員の採用試験に挑んで見事合格。「いずれは救急救命士になりたい。火災予防でも、女性の視点で役に立てればうれしい」と思いを膨らませる。

 

 男性ばかりの職場に飛び込むことになるが、「性格は負けず嫌い。自分が(釜石広域消防の)女性消防士第1号になる」と前向きに考える。

 

 釜石広域消防では、女性職員の加入による住民サービスの向上、組織の活性化、優秀な人材の確保を期待してきた。2015年に成立した「女性の職業生活における活躍の推進に関する支援対策推進法」を追い風に、受け入れ準備を強化した。

 

 ハード面では、釜石、大槌の両消防署庁舎にそれぞれ、女性職員に対応した設備やスペースを確保。ソフト面では、中学校や高校での消防訓練でアピールするほか、職場説明会などで呼び掛けている。

 

 女性職員を受け入れる意識向上も強化。ハラスメント(パワー、性別など)に関する職員研修などを重ね、理解を深めていた。同本部の岩間英治総務課長は「多田さんを迎え、ハラスメントの考え方を再確認、共有する」と今後の姿勢を示す。

 

 多田さんら4人は、今月3日に県消防学校に入校。10月に卒業し、新たな配属先で現場業務をスタートする。

 

 多田さんの配属と勤務体制については、10月までに検討を重ねる。また、20年度までに2人目の女性を採用し、複数体制を目指す。

 

 県内の12消防本部では17年度末で36人の女性消防士が勤務。未採用は釜石大槌広域など3本部となっていた。

 

(復興釜石新聞 2019年4月6日発行 第780号より)

 

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「鬼軍曹」の異名を思い出させる突進を見せる小林一郎さん

「聖地釜石」で不惑ラグビー〜全国から300人集結、交流試合

「鬼軍曹」の異名を思い出させる突進を見せる小林一郎さん

「鬼軍曹」の異名を思い出させる突進を見せる小林一郎さん

 

 ラグビーワールドカップ(W杯)2019日本大会開催まで約半年―。東日本大震災被災地で、東北唯一の試合会場となる釜石市を盛り上げようと、3月30、31の両日、ラグビーマスターズ交流会(同釜石実行委主催)が市内で開かれた。全国から“不惑ラグビー”の仲間約300人が集結。試合や懇親会を通じて、釜石復興と大会成功を祈念した。

 

 交流戦はW杯会場の釜石鵜住居復興スタジアムと、釜石ラグビーの“聖地”甲子町松倉の市球技場で開催。関東圏と岩手県内で活動する40歳以上のクラブ、奈良、秋田両県の高校ラグビー強豪校OB、日本一7連覇に輝いた新日鉄釜石OBなど全15チームが参加した。

 

 30日午後から行われた試合はあいにくの雪模様。芝生のグラウンドを白く染めるほどの降雪だったが、参加者は悪天候を吹き飛ばす熱戦を繰り広げ、W杯イヤーの釜石に元気を届けた。

 

 新日鉄チームは同スタジアムの第一試合で、天理高OBと対戦。W杯釜石誘致活動をけん引してきた石山次郎さんをはじめ、坂下功正さん、谷藤尚之さん、瀬川清さんら7連覇時代の主軸選手、自身もW杯出場経験者で日本大会アンバサダーを務める桜庭吉彦さんなど、そうそうたるメンバーが顔をそろえた。

 

ラグビー仲間の絆を結ぶ新日鉄釜石と天理高のOB

ラグビー仲間の絆を結ぶ新日鉄釜石と天理高のOB

 

 “鬼軍曹”の異名で知られた小林一郎さん(69)=釜石市平田=は、慣れない芝グラウンドに苦戦しながらも果敢に前へ。試合後は両膝のあざが奮闘ぶりを物語った。半年後に迫ったW杯。「すごく盛り上がると思う」と満席のスタジアムを思い描く小林さん。復興と両輪で進められてきた釜石開催への取り組みに大きな意義を感じながら、「挑戦しないことには次のステージは開けない。これを契機に、スタジアムの有効活用を含め、何らかの形で次につなげていくことが必要」と気を引き締めた。

 

 現役時代、華麗なゴールキックで観衆を魅了した金野年明さん(62)=仙台市=は「思うように体が動けばいいけど、だめだねー。でも昔の仲間とやるのは最高に楽しい」と笑顔。W杯釜石開催について「賛否両論あったと思うが、石山が先頭に立ち頑張ってくれた。たいしたもの」とたたえた。願うは釜石シーウェイブス(SW)RFCの勝利。「トップリーグに上がり観客を呼べるようにならないと、このスタジアムも生かされない」と一層の奮起を望んだ。

 

 釜石同様、W杯開催都市である埼玉県熊谷市からは熊谷不惑クラブの2チーム64人が駆け付けた。60歳以上のキャプテン、大室誠さん(60)は「素晴らしいスタジアム。震災からここまで立ち上がってきたと思うと感慨深い。この場所で試合ができて光栄」と大喜び。「熊谷も対戦チームを迎え入れるにあたり、盛り上がってきている。同じ〝ラグビーのまち〟として、大会成功に向け頑張っていきましょう」と思いを込めた。

 

 釜石実行委の小笠原順一委員長(市ラグビー協会会長)は「今でも釜石の名を忘れず、こうして集まってくれるのは本当にうれしく、ありがたい。今後も続けたい」と、W杯後のつながり継続に期待を寄せた。

 

(復興釜石新聞 2019年4月3日発行 第779号より)

 

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チーム貢献を誓う(左から)阿部裕太、牛窪心希、美﨑正次、菊地諒輔、ファンデンボルト、畠中豪士=3月28日、情報交流センター釜石PIT

釜石シーウェイブス 、8人新加入〜若手の育成を重視、チームの土台作りへ

チーム貢献を誓う(左から)阿部裕太、牛窪心希、美﨑正次、菊地諒輔、ファンデンボルト、畠中豪士=3月28日、情報交流センター釜石PIT

チーム貢献を誓う(左から)阿部裕太、牛窪心希、美﨑正次、菊地諒輔、ファンデンボルト、畠中豪士=3月28日、情報交流センター釜石PIT

 

 釜石シーウェイブス(SW)RFCは3月28日、3季目を迎えるトップチャレンジ(TC)リーグに向けて補強した新陣容を発表した。新加入選手は8人で、6月には外国人選手を含む2人を加え、50人でトップリーグ(TL)昇格を目指す。新加入選手は高校、大学を卒業したばかりの若手が半数を占める。桜庭吉彦ゼネラルマネジャー(GM)は「将来の中核となる人材を長い目で育てていきたい」とチームの土台作りに力を入れる姿勢を示した。

 

 新戦力8人のうち7人が10代、20代前半の若手。平均年齢は25歳と、2歳ほど若返る。弱点のスクラム強化を狙いに、FW第1、2列が6人を占める。桜庭GMは「一人前になるには時間がかかるが、若い選手をしっかり育てたい」と強調した。

 

 ただ一人、県内校(黒沢尻工高)を卒業して加入したロック菊地諒輔(18)は昨年度の花園にも出場した。桜庭GMは「FWの中心選手に」と大きな期待を寄せる。

 

 釜石と同リーグで競ってきた三菱重工相模原から移籍するプロップ阿部裕太(21)は「いつも釜石の声援の方が大きかった。こういう応援をされたかった。プロップらしくないプレーをお見せしたい」とアピール。

 

 トライアウトを経て近畿大から加入したロック美﨑正次(22)は「諦めない気持ちを前面に」と前向き。

 

 2年前まで釜石でプレーした村田賢治さんの紹介で大阪国際大から加わるフッカー牛窪心希(22)は「レベルの高いチームでやりたかった。強い気持ちで臨みたい」と抱負。

 

 CTB畠中豪士(22)は昨季、大学選手権まで進んだ大東大のレギュラーとして活躍。大学に籍を残したまま退部し、釜石の門をたたいた。「誰もが知っている、伝統のある釜石でやりたかった」と心境を明かす。

 

 南アフリカ出身でTLのヤマハ発動機から移籍するCTBヘルダス・ファンデンボルト(23)は「少しでも長く釜石でプレーし、貢献したい」と意気込む。

 

 スコット・ピアース新ヘッドコーチは「まずは個人のスキルを上げることに集中し、若手に多くのチャンスを与えたい」と強化方針を説明した。目標は、TLとの入れ替え戦に出場できるTCリーグ4位以内。初参戦する6月からのトップリーグ・カップについては「1次リーグ5戦のうち2つは勝ちたい」と期待する。

 

(復興釜石新聞 2019年4月3日発行 第779号より)

 

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初めてのヘアカットを家族が見守った

笑顔で「病気の子にあげる」〜生まれて初めて髪を切る

初めてのヘアカットを家族が見守った

初めてのヘアカットを家族が見守った

 

 病気やけがなどで頭髪を失った18歳未満の子どもに髪を提供する活動「ヘアドネーション」のため、釜石市大只越町の和田起太朗ちゃん(6)が26日、市内の美容室で「断髪式」に臨んだ。生まれてから一度も髪の毛を切ったことがなく、美容室も初体験。母美穂さん(44)ら家族が見守る中、膝下まであった長い髪をばっさり。未経験の短髪姿をはにかみながら鏡で見た起太朗ちゃんは「かっこよくなった。うれしい。切った髪は病気の子にあげる」と明るい笑顔を見せた。

 

 起太朗ちゃんは3人兄弟の末っ子。美穂さんの「お腹のなかにいた時からのつながりを残しておきたい」との思いから髪を伸ばし続けてきた。そのつながりは美穂さんにとって普段の家事をこなす意欲になり、5年ほど前に乳がんが見つかった時の治療への力にもなっていたという。

 

 4月から小学校に入学するのを機にそろそろ切ろうかと、昨年秋ごろから考えてきた美穂さん。その際、インターネットでたまたまヘアドネーションを知り、「どうせ切るなら人のためになるものがいい」と提案した。

 

 起太朗ちゃんには動画などで取り組みを伝えた。「病気のお友達にあげたらどう思う?」と問い掛けると、「この子にあげる。喜ぶと思う」と答えが返ってきて納得した様子。美穂さんも「やってみよう」と心を決めた。

 

ばっさり切った髪の毛を手にする和田起太朗ちゃん

ばっさり切った髪の毛を手にする和田起太朗ちゃん

 

 断髪式は、これまでもヘアドネーションを手掛けている大町の美容室「VIVA」で行った。初めての体験にもかかわらず、起太朗ちゃんには緊張した様子は一切なし。自身もヘアドネーションを行った経験がある片桐浩一代表(49)がカットを担当した。

 

 6年間、毎日長い髪を結んだり、洗ったりしてケアしてきた美穂さんは「普段と同じことをやってもらっている感覚だね」と成長に頼もしさを感じるとともに、伸びた髪が短くなる様子を感慨深げに見守った。約60センチ切って短髪になった起太朗ちゃんは、美穂さんら家族の「かっこいいねー」との声にはにかみつつ、晴れやかな表情だった。

 

 片桐代表はこれまで協力者のカットを10件ほど手掛けたが、就学前の子どもは初めて。「小さな子どもの髪は貴重。取り組みが少しずつ広がってくれるとうれしい」と話す。髪は大阪市の会社に送られ、医療用のかつらとして活用される。

 

 美穂さんは「これまでの日常がなくなるという寂しさもあるが、新しいスタートだと実感。今は理解できないかもしれないが、直接手を貸さなくても誰かを助けられることを覚えていてほしい」と目を細めた。

 

(復興釜石新聞 2019年3月30日発行 第778号より)

 

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鵜住居の商業施設着工、まちなか再生の中核に〜9月上旬のオープン目指す

鵜住居地区商業施設の建設地

鵜住居地区商業施設の建設地

 

 釜石まちづくり会社(谷澤栄一社長)が釜石市鵜住居町に整備する商業施設の建設工事安全祈願祭が22日、現地で行われた。東日本大震災で大きな被害を受けた鵜住居地区のまちなか再生に向けた中核施設の一つで、最後の着工。周辺の公共施設とともに、地域のにぎわい創出の拠点となる。8月中の完成、9月上旬のオープンを目指す。

 

 商業施設は鵜住居小・釜石東中に近い、国道45号沿いに建設される。敷地面積3535平方メートル、鉄骨平屋で延べ床面積は1506平方メートル。盛岡市に本社があるスーパーマーケット、マルイチを核店舗に、小売業、サービス業、建築・リフォーム業、金融業の5店舗が入居する。事業費は約4億円。国の津波立地補助金を活用する。

 

スーパーが核店舗となった商業施設の外観イメージ

スーパーが核店舗となった商業施設の外観イメージ

 

 安全祈願祭には関係者約50人が出席。神事を行った後、谷澤社長が「近くには鵜住居駅や公共施設が完成し、ポテンシャルの高い場所と考えている。地域に愛され、絶対なくてはならない施設に育てていきたい」とあいさつした。

 

建設工事安全祈願祭でくわ入れする谷澤社長

建設工事安全祈願祭でくわ入れする谷澤社長

 

 同地区のまちなか再生に向け、同社や市、住民らで土地利用や公共施設の配置などを話し合う中で、商業施設整備も検討。当初は1月の着工を予定していたが、補助金申請に関する国とのやりとり、工事業者が部材の確保などに時間を要し、2カ月遅れの着手となった。

 

 商業施設の建設地そばには鵜住居駅が新設され、駅周辺には震災犠牲者の追悼施設や津波伝承施設、観光交流施設が完成。市民体育館も建設中で、中心市街地の再生が進められている。

 

(復興釜石新聞 2019年3月30日発行 第778号より)

 

復興釜石新聞

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釜石駅長とともに「出発進行」と手を上げる双子の園児

三陸鉄道リアス線全線開通、被災地の希望をつなぐ鉄路〜国内最長(163キロ)の三セク路線に

テープカットした三鉄の中村一郎社長(左)や達増拓也知事(右)ら

テープカットした三鉄の中村一郎社長(左)や達増拓也知事(右)ら

 

 東日本大震災の津波で不通となったJR山田線釜石―宮古間(55・4キロ)は23日、第三セクターの三陸鉄道(本社宮古市、中村一郎社長)に移管され、8年ぶりに運行を再開した。三陸鉄道はこれにより大船渡・盛―久慈間163キロが一本のレールでつながり、「リアス線」と改称。第三セクターとしては国内最長路線として再出発した。

 

 この日は釜石駅で出発式が行われ、三陸鉄道の中村社長が「交流人口の拡大、沿線地域の振興に役割を果たしたい」とあいさつした。渡辺博道復興大臣は「三鉄の復活は復興のシンボルとなる」と期待。釜石市の野田武則市長は「復興の象徴として三鉄を大事にしながら地域振興につなげたい」と決意を述べた。

 

 全線開通を祝うテープカットに続き、一日駅長となった双子の園児、山﨑蒼依(あおい)ちゃん、蒼空(そら)ちゃんが右手を上げ、釜石駅の山蔭康明駅長とともに「出発進行」の合図。関係者のほか、公募で選ばれた一般乗客40人を乗せた4両編成の列車がホームから滑り出した。

 

釜石駅長とともに「出発進行」と手を上げる双子の園児

釜石駅長とともに「出発進行」と手を上げる双子の園児

 

 釜石駅のホームが望めるシープラザ釜石周辺は、一番列車を見届けようと大勢の市民が鈴なりに。列車が走り出すと大きな歓声がわき起こり、「復興の汽笛をありがとう」と記した横断幕を掲げて列車を見送る人もあった。甲子川の鉄橋周辺でも大勢の人が手を振り、三鉄の再出発にエールを送った。

 

 友人3人と乗車した釜石市大平町の太田フジ江さん(71)は「沿線のみなさんに元気な生活が戻る第一歩になる」と期待。甲子町の前川ケイ子さん(77)は「紅葉の時期になったら久慈まで乗っていきたい」と胸を弾ませた。鉄道ファンで、震災後何度も三陸を訪れている埼玉県鴻巣市の会社員木村健さん(58)は「開通を喜ぶ沿線住民の笑顔に復興を感じる」と話した。

 

小旗を振り、記念の一番列車を見送る人たち=23日午前11時40分、釜石駅

小旗を振り、記念の一番列車を見送る人たち=23日午前11時40分、釜石駅

 

 三陸鉄道は1984年、国内初の第三セクター路線として開業。震災前は山田線を挟み、北リアス線(宮古―久慈)、南リアス線(盛―釜石)に分かれて運行していた。釜石―宮古間は震災の津波で鉄路が流され、7駅が被災。路線存続が危ぶまれたが、県や沿線自治体の強い要望を受け、JR東日本が鉄道を復旧。三鉄に移管する形で全線復旧にこぎ着けた。宮古市には新たに払川、八木沢・宮古短大の2駅が開設された。

 

 24日からは通常運行が始まった。

 

「復興の汽笛をありがとう」横断幕で見送り 釜石駅

 

「復興の汽笛をありがとう」と記した横断幕も

「復興の汽笛をありがとう」と記した横断幕も

 

 久慈(久慈市)―盛(大船渡市)163キロを一貫運行する三陸鉄道リアス線が誕生した23日、釜石市内は歓迎ムードに包まれた。鈴子町のJR釜石駅前広場では開業記念イベントが開催され、食や音楽ライブなどのステージで盛り上げ。線路が見えるシープラザ釜石付近では小旗を持った大勢の人が記念列車を出迎えた。

 

 イベントには県内20の飲食、物販団体が出店。肌寒い日でラーメンやちゃんこ鍋などが人気だった。ステージは釜石東中生8人による「つながった鉄路をみんなで盛り上げましょう」とのあいさつで開幕。釜石小の児童27人は元気いっぱい虎舞を披露した。東方飛龍君(釜石小6年)は「移動手段が増えるので良いと思う。お祝いを盛り上げられた」と充実感をにじませた。

 

 線路が見える場所では住民や鉄道ファンが待ち構えた。11時40分、記念一番列車が出発すると、「祝・リアス線誕生」の小旗を振って見送った。

 

 「かっこいい。乗りたい」と目を輝かせていたのは東京都から足を運んだ小学1年の田嶋俊輝君(7)。電車が大好きで、記念列車の乗車に応募したが、抽選で外れてしまった。母智子さん(45)は大槌町吉里吉里出身で、高校時代に利用した鉄路復活の喜びを味わおうと里帰り。滞在中に乗車を予定し、「田舎だから景色良さそう」と話す俊輝君との列車の旅を楽しみにしている。

 

 大渡町の畑山佐津子さん(81)は試運転の様子に、わくわく感を高めていた。「汽車が走るのはやっぱりいいね」とにっこり。来訪者の増加を願い、現在取り組んでいる地域を花で彩る活動への意欲も強めた。

 

 カメラ2台を持った盛岡市の斎藤収さん(68)は「開通をきっかけに、地元の活気や経済効果が高まるだろう。ブームで終わらせないことが大事。人にあふれる三陸のまちになってほしい」と期待した。

 

「待ってたよー」 両石駅

 

大漁旗や小旗を振り、記念列車を迎える住民=両石駅

大漁旗や小旗を振り、記念列車を迎える住民=両石駅

 

 「待ってたよ」―。三陸鉄道両石駅にも“生活の足”の復活を待ち望んでいた大勢の住民らが足を運んだ。午後1時19分ごろ、宮古駅を出発した記念列車が汽笛を鳴らしながら姿を見せると、小旗を持って迎え入れ。大漁旗がたなびくホームに笑顔が広がった。

 

 震災の影響で車を手放した70代の女性は「列車が通るのは当たり前の風景。再開してもらって助かる」と実感。戸建ての復興住宅で暮らし、周りには新築の住宅も増えてきた。三鉄新路線の出発が復興と地域の力になると確信。「これからもっとよくなる。みんなと助け合いながら過ごしたい」と目を細めた。

 

新ホームに揺れる歓迎の小旗 鵜住居駅

 

釜石発の一番列車を大勢の人たちが歓迎した鵜住居駅

釜石発の一番列車を大勢の人たちが歓迎した鵜住居駅

 

 釜石発の1番列車は午前11時52分、津波で被災し再建された鵜住居駅に到着。8年ぶりの鉄路再開を心待ちにしていた地元住民や市外から駆け付けた鉄道ファンが、小旗を振って熱く出迎えた。

 

 ホームでは横断幕や大漁旗、鵜住居虎舞で歓迎。釜石シーウェイブスRFCの選手らは、秋に同駅近くの釜石鵜住居復興スタジアムで開催されるラグビーワールドカップ(W杯)を「三鉄に乗って見に来て」とアピールした。

 

列車がホームに入ってくると周辺はお祝いムードに包まれた

列車がホームに入ってくると周辺はお祝いムードに包まれた

 

 盛岡市の高田桐以君(羽場小3年)は、この日のために旗を手作り。列車到着を前に「あと30分…。楽しみ」と胸を躍らせた。桐以君の祖父賢一さん(68)は震災以前に、妻の実家があった鵜住居に10年ほど暮らした。「被災直後の光景を思うと、みんな頑張ってくれて、ここまで来たんだなと実感する」と感無量。

 

 大船渡市の盛駅近くに住む坂井美代さん(37)は、三鉄が大好きな2歳の息子、夫と鵜住居駅に。「列車が入ってくる姿にうるっときた。鉄道の復旧は気持ちが明るくなる話題。ぜひ久慈まで行ってみたい」と目を輝かせた。

 

 震災前、同駅近くに自宅があった岩鼻新一郎さん(83)は「どこに家があったか分からないほど」と変貌を遂げた一帯を見渡し、「地域にとって鉄道は絶対必要。W杯後のフォローも住民自ら考えていかねば」と課題を見据えた。

 

 国鉄に36年間勤務した鵜住居町日向の小笠原盛さん(90)は、山田線復活を強く望んできた一人。「8年も待った。乗客、乗員の喜ぶ顔、町民の歓迎ぶりを見ると本当に良かったと思う」としみじみ。世界遺産・橋野鉄鉱山と復興が進む根浜海岸を結びつけた観光振興を提言し、「鵜住居駅は拠点となる場所。『おらが三鉄』という意識で、沿線自治体が協力し合い盛り上げなければ」と話した。

 

(復興釜石新聞 2019年3月27日発行 第777号より)

 

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広報かまいし2019年4月1日号(No.1709)

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