釜石情報交流センターの多目的集会施設としてオープンした「チームスマイル・釜石PIT」
音楽や演劇などエンターテインメントを通して東日本大震災の復興支援活動を展開している一般社団法人チームスマイル(東京都渋谷区、矢内廣代表理事)が本県での活動拠点とするライブシアター「釜石PIT」が9日、釜石市大町にオープンした。同法人が運営に協力。さまざまなジャンルのコンサートや映画上映、首都圏でのライブビューイングなどを行い、被災地の「心の復興」を支援する。市内では釜石市民ホール(仮称)が完成する2年先まで発表の場の不足が懸念され、市民が利用できる貴重なステージとしても幅広い活用が期待される。
釜石PITは東京と被災3県に開設する4カ所の活動拠点のうち、豊洲(東京)、いわき(福島県)に続く3番目のオープン。チームスマイルが2014年9月に釜石市と結んだ支援協定に基づき、釜石情報交流センターの多目的集会施設として併設された。息の長い活動ができるよう、豊洲PITの事業収益を釜石など被災3県の施設運営や支援活動に充てる。
約200平方メートル、収容客数(着席)約150人のホールにステージや255インチの大型スクリーンなどを設置。外壁は、チームスマイルの制作委員で震災後から釜石の復興支援活動を続けているアーティスト日比野克彦さん(東京芸術大教授)がハートマークのコラージュを施し彩った。
落成披露式には関係者約150人が出席。主催者を代表して矢内代表は「復興とは地元の人たちが自分の足で立つことだと思う。釜石PITは心の復興を支援する。復興のシンボルとして地元の人たちに愛される施設になってほしい」とあいさつ。野田武則市長は「釜石PITを拠点に、市民が自分の力で新しい展開ができるようサポートしていきたい」と決意を述べた。来賓として出席した遠藤利明五輪担当相は「東京オリンピックはスポーツの祭典であるとともに文化の祭典でもある。文化の力は大きい。釜石PITを中心に大きなうねりにしてほしい」と期待を述べた。
釜石PITのオープンを祝うチームスマイルの矢内廣代表、遠藤利明五輪相、野田武則市長(右から)
落成式に続き、釜石市民によるオープニングイベントが開かれた。かまいしこども園の園児らによる「虎舞」で開幕し、地元のダンスチーム「いがったんたら」の子どもらがレゲエのリズムに乗せて躍動感あふれるダンスをステージいっぱいに披露。釜石高校の音楽部員らはステージから降り、客席を埋めた市民とともに復興支援ソング「花は咲く」などを歌った。最後に尺八やギター、ベース、太鼓と和洋の楽器が融合したグループ「和(なごみ)」の演奏で締めくくった。
釜石PITのオープニングイベントは、かまいしこども園の園児らによる「虎舞」で開幕
釜石PITの落成を記念し、ダンスを披露する「いがったんたら」の子どもたち
震災後からダンスを習い始めたという中村美咲さん(釜石中2年)は「客席がとても近く感じ、みんなの笑顔で気持ちよく踊れた。これから、このステージでいろんなイベントが開かれるのが楽しみ」と期待。釜石高音楽部の萬海果部長(2年)は「お客さんもたくさんいて、とても楽しかった。震災後は老人ホームなどで歌ってきましたが、今後はこのステージでもコンサートを開きたい」と声を弾ませた。
釜石高音楽部はステージから降り、客席の市民と声を合わせる
和洋融合の音楽で締めくくったグループ「和」のステージ
釜石PITではチームスマイルが企画する映画上映やライブビューイングなど年間20回余りのイベントを開くほか、各界の著名人有志88人でつくる「チームスマイル東北応援団」による講演会なども予定。市内の各種団体や一般市民にも有料で貸し出す。
施設は釜石情報交流センター指定管理者の釜石まちづくり会社が運営し、一般向けの予約は半年前から受け付ける。すでに土日を中心に予約が入り始めており、今月30日には長唄三味線の発表会を予定する。
(復興釜石新聞 2016年1月13日発行 第452号より)
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