震災後初の大舞台となった「中村さんさ踊」。一時、休んでいた笛もおはやしに復活し、躍動の舞を見せた
明治日本の産業革命遺産「橋野鉄鉱山・高炉跡」の世界文化遺産登録を記念して11日、「釜石うみやま郷土芸能大競演祭」が釜石市橋野町青ノ木の橋野鉄鉱山インフォメーションセンター特設会場で開かれた。釜石うみやま連携交流推進協議会(柏﨑龍太郎会長)が主催。鵜住居川流域の郷土芸能5団体が約500人の観客を楽しませ、世界遺産登録に沸く現地を一層盛り上げた。
片岸町から片岸虎舞、栗林町から砂子畑鹿踊、澤田鹿踊、砂子畑丹内神楽、橋野町から中村さんさ踊が出演。総勢約160人が伝統の演舞を披露し、観客から盛んな拍手を受けた。
中村さんさ踊を継承する中村青年会の及川春男代表(43)は「今後も記念行事への参加が続くので、メンバーを増やして盛り上げていきたい。(世界遺産になったからには)地元として応援していかなければ」と気持ちを新たにした。
栗林町砂子畑の70代女性2人は「まさか世界遺産になるとは。最高です。砂子畑には関連する銭座跡もある。共に大事にしていきたい。これを機に地域も元気になれば」と期待を込めた。
会場内には橋野、栗林、鵜住居の産直や商店などが出店を並べ、おこわ、だんごなど郷土色豊かな各種メニューを販売。同協議会が開発した「やまのバーガー」にはタケノコを使うなど地元食材をアピールした。
地場産の原材料を活用した菓子などを販売し人気を集めたご当地グルメコーナー
橋野どんぐり広場を運営する橋野地区直売組合の藤原英彦組合長(62)は「登録が決まってから来店客は2、3割増加。人の流れは確実に変わってきている。生産者の高齢化など課題は多いが、世界遺産を追い風に好転させていきたい」と地元の拠点施設として責任を再認識する。
この日は晴天に恵まれ、周辺の山々の緑と抜けるような青空が目にも鮮やかな美しい景色を生み出した。遺跡の価値、自然、芸能、食が地域全体の魅力を高め、来訪者に印象づけた同祭。柏﨑会長は「従来の地域資源に世界遺産が加わった。いかに有効に活用し、客を呼び込めるかが鍵。一過性で終わらないよう行政と協働し、手立てを考えていきたい」と今後の事業展開を見据えた。
橋野鉄鉱山インフォメーションセンターによると、登録決定前の平日は来訪者が100人に満たない日が多かったが、5日日曜夜の登録決定発表後、6日には329人と跳ね上がり、7~10日も連日、160~260人台で推移。登録の効果は如実に表れている。5月の登録勧告後、県外の観光客も増え、最近は東京や熊本など遠方から訪れる人も目立つ。先日は、構成資産全23資産を回っている人が最後に橋野に足を延ばしたケースもあったという。
(復興釜石新聞 2015年7月15日発行 第402号より)
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