「銀河のウオール」の前で笑顔を見せる大谷剛志さん(右)と金田駿佑さん
釜石市甲子町洞泉、希望と笑顔のこすもす公園(藤井了代表)に夢あふれる遊具が、また一つ加わった。大人気の「クライミングウオール」の第3弾。2013年に大手出版社、NPOの支援で制作された1基目から連作に発展した。構想を進めてきた東京都の大谷剛志さん(34)は「3部作の集大成。(1、2基目と合わせ)どんどん遊んでもらえたら」と願う。
3基目のウオールは、今年4月に完成した「希望の鐘」に通じる入り口看板をはさみ、1、2基目に並ぶ形で配置。20日に同公園で開かれたイベント「第5回キャンドルナイト」で、お披露目された。木製で、これまで2作と同サイズの幅3・6メートル、高さ2・7メートル。制作費は45万円。インターネットサイトで支援を呼びかけ、賛同者からの寄付金を充てた。
「銀河のウオール」をテーマに掲げた今回は、宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」からヒントを得た。惑星や、無数の星が光り輝く天の川、宇宙を旅する銀河鉄道―。壁に描かれた絵には物語の世界観が広がる。「銀河鉄道は亡くなった人と今を生きる人をつなぐ。津波で逝ってしまった人たちと通じ合えるモチーフ(場所)を公園に置けたらと考えた」と大谷さん。
長年の友人で前作に協力した金田駿佑さん(24)=東京都=が絵のデザインから着色まで引き受け、3カ月かけて完成させた。一角にはピンク色のコスモスの花を描き、宇宙の濃紺色とのコントラストも目を引く。金田さんは「難しかったが、思いを込めて描いた。こうして遊び場を提供できるのは素敵なこと」と、子どもたちが楽しむ姿をうれしそうに見つめた。
こすもす(コスモス)は、英語で「宇宙」も意味する。壁をよじ登るための突起(ホールド)には、人気漫画「宇宙兄弟」のキャラクター、アポ(犬)とヒビット(うさぎ)も使われた。出版元の講談社、作者の小山宙哉さんが所属するエージェント会社コルクの了承、応援を受け、小山さんの原画プリントによる公園看板も設置できた。
甲子小1年の中村友紀君は「上まで登れたよ。手足をかけて登るのが面白い」と夢中。父・幸博さん(45)は「人の手で作られた感じが良い。息子3人とも体を動かすのが好き。思い切り遊べる場はありがたい」と家族で公園を楽しんだ。
1基目のウオール制作を皮切りに、希望の壁画プロジェクト、各種公園イベントへの協力などで同公園とつながり続けてきた大谷さん。「当初は思いもしなかったが、ここでの活動が広がっていく中でアイデアが生まれ、3部作が実現した」と感慨深げ。3年間所属したクライミングのNPO法人を離れ、9月からは夢だった自然栽培の農業の道に進む。「もちろん、こすもす公園とは末永く、つながり続けます」
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