タグ別アーカイブ: 防災・安全

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犯罪被害、事故防止へ気持ち新た 釜石市で防犯隊、交通指導隊が年頭の合同初点検

釜石市防犯協会防犯隊、市交通指導隊合同初点検

釜石市防犯協会防犯隊、市交通指導隊合同初点検

 
 釜石市防犯協会防犯隊(三浦栄太郎隊長、43人)と同市交通指導隊(佐藤鉄太郎隊長、27人)は6日、2023年のスタートにあたり、市民ホールTETTOで合同初点検を行った。各種犯罪被害、交通事故から地域住民を守るため活動する両隊員36人が装備品の点検を受け、今年1年間の活動に意欲を高めた。
 
 両隊の年頭初点検の合同実施は昨年に続き2回目。野田武則市長は「市民一人一人が自らの安全は自ら守るという意識を高め、地域ぐるみで安全安心なまちづくりを推進していく必要がある」とした上で、両隊員に対し「任務を再確認し、犯罪、交通事故防止活動に尽力してほしい」と訓示した。
 
年頭にあたり野田武則市長の訓示を受ける防犯隊員(左側)と交通指導隊員(右側)

年頭にあたり野田武則市長の訓示を受ける防犯隊員(左側)と交通指導隊員(右側)

 
 釜石警察署によると、管内の昨年の刑法犯認知件数は73件(前年比2件増)。窃盗犯が54件と最も多く、特に高齢者による万引が目立つという。手口が複雑、巧妙化する特殊詐欺で金銭をだまし取られる事案も発生している。交通死亡事故は3件(釜石市2件、大槌町1件)発生し、3人が犠牲になった。人身事故は37件(前年比2件増)。初点検に出席した前川剛署長は「特殊詐欺の予兆電話は後を絶たず、子どもや女性への声掛けなども断続的に発生。一昨年はなかった交通死亡事故も発生しており、予断を許さない状況」と話し、犯罪抑止、事故防止へ一層の協力を願った。
 
 野田市長らが整列した両隊員の服装、手帳を見て回り、隊員が警笛を一斉に吹き鳴らした。点検後、防犯隊はイオンタウン釜石で鍵かけなどを呼び掛ける防犯チラシの配布、交通指導隊は大町の交差点で事故防止の呼び掛けを行った。県内では昨年12月30日から本年1月5日までの7日間に4件の交通死亡事故が発生し、65歳以上の高齢者4人が犠牲となった。県警は5日から9日まで「交通死亡事故多発警報」を発令。釜石署管内でも取り締まりや街頭啓発活動を強化した。
 
号令とともに胸ポケットから手帳を取り出す隊員

号令とともに胸ポケットから手帳を取り出す隊員

 
野田市長らが隊員の服装や手帳を点検した

野田市長らが隊員の服装や手帳を点検した

 
一斉に警笛を吹き鳴らす両隊員

一斉に警笛を吹き鳴らす両隊員

 
 交通指導隊は街頭や交通安全教室での指導、各種行事での交通の安全確保などを担う。佐藤隊長(81)は日ごろの街頭指導で、子どもたちの交通マナーが向上していると実感。一方で、人口の4割を占める高齢者の事故防止が課題とし、「日没後の外出は明るい色の服装や夜光反射材の着用などで身を守る対策をしてほしい。三陸道や釜石道の開通で市内の車の往来も増えている。家庭から事故防止意識を高めることが重要」と話す。
 
交通指導隊による事故防止を呼び掛ける啓発活動

交通指導隊による事故防止を呼び掛ける啓発活動

 
 防犯隊は防犯パトロール、青少年の非行防止、高齢者の安全対策などを任務とする。三浦隊長(72)は「今年もパトロールを数多くやって、防犯の啓蒙(もう)をしていく。小さい犯罪の芽を摘むことが大きな犯罪の抑止にもつながる。地域の状況をしっかり把握しながら、住民の安全確保に努めていきたい」と意を強くする。
 
 同市では人口減、少子高齢化に伴い、地域安全活動の担い手不足が生じており、特に中心市街地の隊員確保が課題となっている。

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釜石市消防団・第1分団3部(只越地区) 消防ポンプ車を更新 団員、機能を確認

新しい消防ポンプ車が配備された消防団第1分団第3部の団員 

新しい消防ポンプ車が配備された消防団第1分団第3部の団員

  
 釜石市消防団(川﨑喜久治団長、団員547人)の第1分団第3部(只越地区、佐々木毅部長、12人)に20日、新しい消防ポンプ車1台が配備された。同部の車両更新は20年ぶり。新車両の操作説明会が鈴子町の釜石大槌地区行政事務組合消防本部庁舎であり、部員が新たな機能や性能を確認した。
  
 新車両はディーゼルエンジン(排気量4009cc)を搭載、4WD、5速マニュアル車。ダブルキャブ型(2列座席)で、乗車定員は5人。カーナビとバックモニター連動装置、ドライブレコーダーを装備するなど安全性能を向上させた。毎分2000リットルの放水能力を持つポンプを搭載。無給油式真空ポンプで吸水時間も大幅に短縮できるという。購入金額は2640万円。
  
 説明会には佐々木部長(67)ら3人が参加。納入業者らから車両の運転特性、消防車独自の無線やアナウンスなど付帯装置の説明を受けた。甲子川の対岸、千鳥町の河川敷に移動し、放水試験。ポンプ操作の手ほどきを受けながら能力を確かめた。
   
甲子川河川敷で新車両の放水能力を確認した

甲子川河川敷で新車両の放水能力を確認した

  
新車両の装備や操作法など説明を受ける団員ら

新車両の装備や操作法など説明を受ける団員ら

   
 旧車両は2002年に配備され、20年が経過した。この後廃車となる予定。佐々木部長は「震災時、このポンプ車1台を守ったことで、外部との連絡手段を確保することができた。火災が発生した時にも無線で消防署に応援を要請し消火活動に取り組み、まちを救った」と振り返った。新車両は操作が簡単になった様子で、迅速な消火活動につながると実感。「さまざまな災害に対して機能をうまく使いこなせるよう、団員みんなでよく勉強し対応したい」と力を込めた。
 

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震災十三回忌前に 毛越寺(平泉)の僧侶ら 釜石・鵜住居観音堂で「復光」祈り法要

震災の犠牲者供養と被災地復興を願って手を合わせる人たち

震災の犠牲者供養と被災地復興を願って手を合わせる人たち

  
 東日本大震災から来年で十三回忌を迎えるのを前に、釜石市鵜住居町の「鵜住居観音堂」で11月30日、犠牲者供養と復興を祈る法要が営まれた。観音堂再建の歩みを知る平泉町・毛越寺の藤里明久貫主(72)が協力。「復興は進んでも心の中には震災の爪痕が残っていると思う。観音堂が気持ちの落ち着く場所になってほしい」と願いを込めた。
   
 同寺の従業員研修旅行の一環。震災後、毎年3月11日に平泉でも震災物故者の法要を行っており、被災地の現状に理解を深め、「忘れない」「伝える」との思いを共有して、その日を迎えようと、約20人が来釜した。
  
藤里貫主(手前)の話に耳を傾ける毛越寺の従業員ら

藤里貫主(手前)の話に耳を傾ける毛越寺の従業員ら

  
 観音堂は震災の津波で流失。本尊「十一面観音立像」(県指定文化財)は破損したものの流失を免れ、故大矢邦宣さん(震災当時、盛岡大教授)らが見つけて修復した。修復作業の間、本尊の代わりに地域を見守ってもらおうと模刻「身代わり観音像」も制作。本尊とともに今年3月に再建された観音堂に安置する。
   
 大矢さんの遺志を継ぎ、被災地に心を寄せてきた藤里貫主が、その歩みを従業員らに紹介。「光が差し込んで、心豊かに暮らせるよう『復光』を願う」と、身代わり観音像を前に般若心経を唱え、従業員らが手を合わせた。
  
震災十三回忌を前に鵜住居観音堂で営まれた法要

震災十三回忌を前に鵜住居観音堂で営まれた法要

  
 地域住民も足を運び、思いをはせる機会にした。齋藤清子さん(78)は「もうすぐ12年。あっという間、早いね。観音堂は気持ちのよりどころ。子どもたちの声が聞こえるまちになってほしい」と目を細めた。
  
 観音堂を管理する別当の小山士(つかさ)さん(79)は「毛越寺からは毎年のように法要に来ていただきありがたい。先祖代々、500年守ってきた観音様をしっかりお守りしていかなければ」と言葉をかみしめた。
  
研修旅行で来釜した毛越寺の従業員、出迎えた鵜住居町の住民

研修旅行で来釜した毛越寺の従業員、出迎えた鵜住居町の住民

  
 「3月11日に平泉を訪れる方々にも被災地を忘れず、思いを寄せてもらいたい。そのためにもわれわれが現状を知り、伝える役目を果たしたい」と藤里貫主。一行は、陸前高田市の高田松原津波復興記念公園や宮城県南三陸町なども訪ねた。

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第3期「大震災かまいしの伝承者」に15人認定/市震災誌編さん委 進捗状況確認

基礎研修を修了し、「大震災かまいしの伝承者」になった15人と講師陣ら

基礎研修を修了し、「大震災かまいしの伝承者」になった15人と講師陣ら

 
 東日本大震災の体験や教訓を後世に語り継ぐため、釜石市が養成する「大震災かまいしの伝承者」の基礎研修会が3日、上中島町の中妻公民館で開かれた。3期目となる本年度は市内外から応募した15人が、研修を経て伝承者に認定された。今後、家族ら身近な人のほか、非体験者などに震災の事実を伝え、防災意識の向上や確実な避難につなげる一翼を担う。
 
 同制度は2019年にスタート。第1、2期合わせ69人が伝承者に認定されている。今期は小学3年生から75歳までの意欲ある人たちが研修に臨んだ。岩手大の教授陣が講師となり、地震のメカニズムと津波被害の特質、同震災の被害概要、同市が震災後に定めた防災市民憲章について解説。1期の認定者瀬戸元さん(釜石観光ガイド会員)が、自身の伝承活動で伝えている内容などを紹介した。
 
3グループで将来に伝えたい教訓、取り組みを話し合ったワークショップ

3グループで将来に伝えたい教訓、取り組みを話し合ったワークショップ

 
 「将来に伝えたい教訓」をテーマにグループワークも行われた。参加者が実体験や震災伝承への思いを語り合い、今後必要と思われる取り組みや課題を出し合った。共通していたのは「命を守る行動をとってほしい」ということ。避難意識を高めるには訓練や防災教育の充実、日ごろからの地域のつながりが重要との声が上がった。効果的な教訓の伝え方も話題に。市内で行われている「新春韋駄天競走」、鵜住居小の「津波てんでんこマラソン」など行事に絡めた伝承、災害シミュレーションゲームのような防災を身近にする方法を例に、今後増えていく非体験者への伝承の在り方も考えた。
 
震災時の自分の体験などを話す研修参加者

震災時の自分の体験などを話す研修参加者

 
経験者の思いを共有し、何を伝えるべきか考えた

経験者の思いを共有し、何を伝えるべきか考えた

 
各グループで活発な意見交換が行われた

各グループで活発な意見交換が行われた

 
 岩手大地域防災研究センターの越野修三客員教授は「伝承は語るだけでなく、いろいろな手段がある。伝承者が協力し合い、何ができるか、どうしたら伝えていけるかを考え実践していってほしい」と期待した。
 
 最年少伝承者となった佐々木智桜さん(鵜住居小3年)は2014年3月11日生まれ。3年前の同じ日、祖母と伯母が津波の犠牲になった。「二度と死亡者を出してほしくない―」。震災伝承施設「いのちをつなぐ未来館」で働く母智恵さん(40)にお願いして研修に臨んだ。「困っている人の避難の準備をお手伝いして、1秒でも早く津波から逃げられるようにしたい。今日聞いたことは海の近くにいる人に伝えたい」と智桜さん。
 
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母智恵さんと参加者の話に聞き入る佐々木智桜さん(左)

 
 大槌町地域おこし協力隊の北浦知幸さん(35、京都出身)は震災伝承の仕事を担当中。13年から2年間、応援職員として釜石市に派遣された経歴を持つ。「震災経験者が伝えたい思いをきちんと理解し、次につなぐことが大切。震災直後と今では伝えたい内容も同じではないと思う。年数がたって出てきた課題など、12年の流れを踏まえて伝えられたら」。教訓を生かしてもらうためには「伝承のゴールはない」と、末永い活動に意欲を示した。
 
 基礎研修を修了した15人には伝承者証と名札が交付された。来年度、伝承手法などを学べるステップアップ研修(任意)も行われる予定。
 

釜石市震災誌 2022年度内の素案完成へ全力 第2回編さん委で作業の進捗状況確認

 
第2回釜石市震災誌編さん委員会=5日、市役所

第2回釜石市震災誌編さん委員会=5日、市役所

 
 東日本大震災の記憶を後世に伝える釜石市震災誌(仮称)の作成に取り組む同市は5日、2回目の編さん委員会(委員長=齋藤徳美岩手大名誉教授、委員15人)を市役所で開いた。当初予定より作業が遅れていることが説明され、今後の進め方などについて委員の意見を聞いた。市は本年度内の素案の完成を目指す。
 
 同震災誌は庁内検証委員会が年度ごとにまとめてきた記録誌を基に作る。9つの項目を柱に58のテーマで構成。発災から復興に向けた取り組み、避難行動の検証、防災の課題など、多様な視点で未来に生かされる内容を目指す。各項目冒頭の特集ページに事実やデータの記載だけでは分からない教訓や証言、トピックスを盛り込み、ストーリーが見える誌面にする。日本海溝北部での地震による津波対応についても記載する。
 
 委員からは、先人の教訓や防災教育先進地としての取り組み、復興過程の課題など次世代に求められる内容を盛り込む必要性が指摘された。齋藤委員長は「本年度内にたたき台を出してもらい、来年度早々には意見交換に着手したい。委員会でしっかり議論を重ね、中身のあるものにしたい」と話した。

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冬に向け準備万端! 釜石で除雪機械出動式 作業員ら「安全安心な交通確保を」

除雪機械の出動に「虎舞」でエールを送る子どもたち

除雪機械の出動に「虎舞」でエールを送る子どもたち

 
 本格的な雪のシーズンに備え、国道45号や三陸沿岸道路などの安全を確保する除雪機械の安全祈願祭と出動式が24日、釜石市平田の南三陸沿岸国道事務所釜石除雪ステーションで行われた。除雪作業を請け負う同市松原町の小澤組(小澤勤社長)の社員、同事務所大船渡維持出張所の関係者ら約30人が参加。平田こども園(小松美香園長)の年長児21人が「へいたっこ虎舞」を披露し、作業の無事故を願った。
 
 大船渡維持出張所が管理するのは、国道45号が陸前高田市から大槌町の延長81キロ、三陸沿岸道路は陸前高田長部インターチェンジ(IC)―山田南IC間の72キロ。2カ所にステーションを置き、除雪トラック、グレーダー、凍結抑制剤散布車など17台の機械で除雪に当たる。
  
除雪車両をおはらいして作業の無事故を祈願した

除雪車両をおはらいして作業の無事故を祈願した

  
 安全祈願祭は小澤組が主催。業務を担う作業員、ずらりと並んだ除雪車両を神職がおはらいし、代表者らが祭壇に玉串をささげた。
 
 出動式では、主催する同事務所の五十嵐俊一所長があいさつ。「比較的降雪は少ないが、気温低下による路面凍結が発生する地域。凍結に強い対策を重点に実施し、安全に走行できる路面状況を確保したい。天候などにより昼夜問わず作業することもあるが、安心安全を心がけ、無事故で春を迎えられるようにしてほしい」と呼びかけた。
 
出動式を終え、釜石除雪ステーションを出発する除雪車

出動式を終え、釜石除雪ステーションを出発する除雪車

 
 「おしごと、がんばってください」。園児たちは、かわいらしい演舞で作業員らを激励した。同出張所の小野和栄所長から除雪機械の鍵を手渡されると、作業員らは車両を点検。子どもたちの元気な号令に合わせ、車両が出動した。
 
 小澤組の小澤二郎専務取締役は「常に気象状況を把握し、地域住民に信頼される作業を心がけ、安全な交通確保に努める」と力を込めた。
 
 同出張所では本格的な降雪シーズンに向け、スタッドレスタイヤの早期装着、チェーンの準備などの備え、滑り止め対策の徹底を呼びかけている。

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伝えたい!災害の怖さ、備えや避難の大切さ 釜石東中3年生、栗林小で防災交流会

釜石東中と栗林小の防災交流会ですごろくを楽しむ児童生徒

釜石東中と栗林小の防災交流会ですごろくを楽しむ児童生徒

 
 主体的、実践的な防災学習に力を入れる釜石市鵜住居町の釜石東中(佃拓生校長、生徒102人)の3年生41人は22日、3年間の学びの成果を伝える防災交流会を栗林町の栗林小(八木澤江利子校長、児童33人)で開いた。津波の怖さ、避難の大切さを伝えようと、手作りの紙芝居やかるた、クイズなど8つの体験プログラムを用意し、小学生に挑戦してもらった。
  
すごろくのマスに書かれたお題に沿って机の下に潜る児童ら

すごろくのマスに書かれたお題に沿って机の下に潜る児童ら

  
 小学生は用意されたプログラムから、4つを選んで体験。すごろくでは、サイコロを振り、防災や災害時対応の問いなどが書かれたマスにコマを進めた。「一人で家にいる時に地震が起こったら?」との質問には、「まず身を守る」と答え、近くにあった机の下に潜ってじっとした。実験チームは、災害時に水道が使えなくなった場合の代替策を紹介。2〜3ミリほどの穴を開けたペットボトルを水道の蛇口のように使う方法で、キャップを緩めると穴から適量の水が出て、キャップを閉めれば水が止まる様子に児童は驚いていた。
  
ペットボトルを「簡易蛇口」として使う方法を伝える実験

ペットボトルを「簡易蛇口」として使う方法を伝える実験

 
かるたチームは伝えたい思いを読み札に詰め込んだ

かるたチームは伝えたい思いを読み札に詰め込んだ

  
 「想定にとらわれるな」「確かめよう 避難経路」「軽い気持ちでのぞむな 避難訓練」。地震や津波、日常の災害への備えを分かりやすく伝えようと作られた、かるたの読み札には3年生が伝えたい思いを詰め込んだ。三陸に伝わる「てんでんこ」を題材にした紙芝居では、「津波からそれぞれが身を守って逃げなければならないが、避難する場所を決めておけば、大切な人や家族と会うことができる」と訴えた。防災バックや非常食など事前の準備を強調するプレゼンテーション、避難所生活で気を付けることなどを示したパンフレットを配布するチームもあった。
 
「避難場所を決めて家族で共有して」。紙芝居で教訓を伝える

「避難場所を決めて家族で共有して」。紙芝居で教訓を伝える

 
プレゼンチームは防災バックの重さを体験してもらった

プレゼンチームは防災バックの重さを体験してもらった

 
地震発生時や避難所での行動をまとめた防災パンフレット

地震発生時や避難所での行動をまとめた防災パンフレット

 
 5人組の戦隊ヒーロー「てんでんこレンジャー」も登場。防災について学びを深めた児童たちに「大きくなった時に周りの人を助けられるようになってほしい。一緒に未来につなげていこう」と呼び掛けた。
 
 栗林小の小笠原虹南(にいな)さん(6年)は「クイズが印象に残った。エレベーターに乗っていて地震が起きた時に全部の階のボタンを押せば、最寄りの階で停止すると初めて知った。防災についてもっと勉強して、てんでんこレンジャーのような活動に関わってみたい」と刺激を受けた。
 
地震発生時の行動などを問いかけるクイズに挑戦する児童

地震発生時の行動などを問いかけるクイズに挑戦する児童

 
笑顔で交流した小学生と「てんでんこレンジャー」

笑顔で交流した小学生と「てんでんこレンジャー」

 
 釜石東中3年生は総合的な学習の一環で、防災に関する活動を積み重ねてきた。1年生では東日本大震災時の体験を地元住民らから聞き取り、「防災だより」としてまとめ「いのちをつなぐ未来館」で展示。2年生の時には避難困難者(障害者や高齢者、乳児のいる母親など)の行動の大変さを体験したり、地域住民との意見交換会で災害時に中学生ができることを発表し、助言をもらったりした。3年生では避難所運営訓練を実施。こうした活動をまとめた集大成が交流会で、震災を知らない子が増える中で、学びを次代につなぐため実践した。
  
「逃げれば、助かる!」。写真と映像で分かりやすく伝えた

「逃げれば、助かる!」。写真と映像で分かりやすく伝えた

  
 写真・映像チームは、震災時の鵜住居小児童の避難行動を描いたアニメ動画や同校校舎3階に車が突き刺さる写真などを見せ、「津波の威力はすごいし、とても怖い。でも、しっかり逃げれば命は助かる。津波が来ると分かったら、すぐに逃げよう」と児童に語りかけた。
 
 中学3年生は震災当時、2、3歳。佐々木和哉君は揺れの怖さを記憶するが、伝えられる側の小学生はほとんどがまだ生まれていなかった。知らない世代に分かりやすく伝えられるようリアルな映像やスライドを使うなど工夫。「災害の怖さと避難の大切さを伝えられた。自分の身を守る行動、防災について考えてもらう時間にしてもらえた」と手応えを感じた。花輪祐輔君は「もう守られる立場ではない。伝える立場なので、行動に移していきたい」と背筋を伸ばした。
  
 同様の交流会は、鵜住居小でも行った。
 
 

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甲子川河川敷(上中島~五の橋間)散乱のごみ回収 釜石の環境団体 現状に心痛める

岩井町沿いの甲子川河川敷でごみを拾い集める市民ら=13日

岩井町沿いの甲子川河川敷でごみを拾い集める市民ら=13日

 
 釜石市の市民グループ「かまいし環境ネットワーク」(加藤直子代表)は13日、同市上中島町から五の橋までの区間の甲子川河川敷で、ごみの回収作業を行った。「秋の海ごみゼロウィーク2022」(環境省、日本財団主催)の全国一斉清掃キャンペーンの活動として実施。同グループが同所で清掃活動を行うのは初めてで、参加者らは多種、多量のごみが散乱する現状に心を痛めた。
 
 同グループの呼び掛けで市内外から約40人が参加。上中島2期復興公営住宅裏手から続く河川敷を歩き、五の橋までの間でごみを拾い集めた。「前から気になっていた場所」と話す加藤代表。川沿いは工場などが立ち並ぶエリアだが、歩行者は散歩する人が行き来する程度、車両の通行も多くはない。にもかかわらず、参加者を驚かせたのが土手や河川敷に散乱する多量のごみ。五の橋に近づくにつれて目に余る光景が広がった。
 
土手から河川敷一帯にさまざまなごみが散乱していた

土手から河川敷一帯にさまざまなごみが散乱していた

 
斜面の草地をかき分けてごみを拾う参加者

斜面の草地をかき分けてごみを拾う参加者

 
五の橋のたもと付近にもたくさんのごみが散乱

五の橋のたもと付近にもたくさんのごみが散乱

 
 空き缶、瓶、ペットボトル、包装ビニール、発砲スチロール、トタン片…。大型のものでは掃除機、事務機器、自転車なども。ポイ捨てをはじめ、明らかに不法投棄されたと思われるごみの数々が見つかった。小型のごみは大雨による増水で流されてきたとも考えられるが、いずれにしても人間が適切にごみ処理をしなかった結果であることは間違いない。
 
 約1時間の活動で回収されたごみは約160キロ。参加者が手にした大型ごみ袋はすぐにいっぱいになり、追加の袋に拾い集める人もいた。この日は時間の都合で全ては回収しきれず、次回に持ち越しとなった。
 
回収されたごみは材質もいろいろ

回収されたごみは材質もいろいろ

 
上中島復興住宅裏の河川敷から運び出されるごみ

上中島復興住宅裏の河川敷から運び出されるごみ

 
 「なぜ、こんな物まで」モラルを疑う大型ごみも

「なぜ、こんな物まで」モラルを疑う大型ごみも

 
 同グループの清掃活動に初めて参加した唐丹町の鈴木ひろ子さん(72)は「思った以上のごみの量。びっくりしました。宴会をやったような酒類の缶がまとまって袋に入っていたり」。心無い行為を残念がり、「まずは(自然環境に)捨てないこと。そしてごみに気が付いたら拾ってほしい」と一人一人のマナーアップを願った。
 
 地元中妻町の埜木隆司さん(79)は五の橋付近の河川敷について「対岸は山でクマも出る場所。歩く人も少ないので人目につきにくい」と説明。自身も久しぶりに歩いたが、「すごいごみだった。『自分一人ぐらいならいいや』と思って捨ててしまっているのか…」。現場は車両進入が可能で、ごみの種類によっては狙って捨てた可能性もある。「基本は自分の信念だと思うが、自然を汚す行為は絶対にやめてほしい」と話した。
 
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 川のごみは海に流れ出て、海洋環境へも影響を及ぼす。同グループは今後も川や海での清掃活動を続けていく考えで、広く市民の参加を呼び掛ける。

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発信!「十分な備えあり」 釜石港でテロ対策訓練 関係機関が連携確認

船上で行われたテロ対策訓練で、テロリスト役(右)と対峙する海上保安官

船上で行われたテロ対策訓練で、テロリスト役(右)と対峙する海上保安官

 
 テロの脅威に備える保安訓練は10月19日、釜石市の釜石港公共ふ頭周辺で行われた。岩手県警釜石署や釜石海上保安部など19機関の約90人が参加。情報共有、海陸での制圧、負傷者救助などの訓練を行い、有事の際の連携や水際対策の手順を確認した。
 
 訓練の想定は「釜石港にテロリストが潜伏している情報が届いた」。警戒措置を取り、ふ頭など制限区域にいる人を避難させた。岸壁では停泊中の船舶に潜伏したテロリストが車を奪って逃走。パトカーが追跡、包囲して身柄を確保した。船内に残る不審者の身柄を海上保安官が確保。負傷した船員を釜石消防署の救急隊員が処置し、病院に搬送した。港内では小型ボートで逃走する3人のテロリストを発見し、海上保安部の巡視艇「きじかぜ」が追跡。銃撃を受けながら警告射撃をし、容疑者を制圧した。
  
ナイフを持ったテロリスト役(左)に向かう釜石警察署員

ナイフを持ったテロリスト役(左)に向かう釜石警察署員

  
テロリスト役(前から2人目)を制圧した海上保安官

テロリスト役(前から2人目)を制圧した海上保安官

  
洋上で逃げるテロリストの小型ボート(手前)を追跡する釜石海上保安部の巡視艇

洋上で逃げるテロリストの小型ボート(手前)を追跡する釜石海上保安部の巡視艇

  
 この訓練は、「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安確保等に関する法律」に基づき、釜石港保安委員会(委員長・白旗牧人沿岸広域振興局土木部長)が毎年行う。白旗部長は「釜石港はガントリークレーンの供用開始以来、外航定期航路の開設、三陸沿岸道路などの開通と合わせ、コンテナ取扱量が増加傾向にあり、物流拠点としての需要が大きくなっている。国際交易が盛んになるほどテロリスクの高まりが懸念され、関係機関の連携を密にし保安体制に万全を期したい。『われわれには十分な備えがある』と外部に発信する機会にもなる」と意義を強調した。
  
コンテナ定期航路の開設により保安体制の強化が求められる釜石港

コンテナ定期航路の開設により保安体制の強化が求められる釜石港

  
 釜石港の危機管理担当者、釜石海上保安部の虻川浩介部長は「世界的に不安定な情勢が続く中、社会の混乱に乗じたテロの可能性も懸念される。日頃から地道に水際の対策を講じていくことが重要だ。今後も関係機関で連携し関連情報の収集、テロ警戒対象施設の警戒監視の強化を図り、港湾の保安向上に努めていく」と力を込めた。

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防災意識の地域格差を埋めたい! 釜石高生有志「クロスロード」作成 災害時に迫られる選択を追体験

「釜石版クロスロード」を作成した釜石高生

「釜石版クロスロード」を作成した釜石高生

  
 災害時にどのような行動を取るべきかをいくつかの選択肢から選ぶ防災ゲーム「クロスロード」。釜石高の生徒有志で結成する防災・震災伝承グループ「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」のメンバー4人がこのほど、釜石版を作成した。「イオンタウン釜石で買い物中に大地震が起こったら、あなたならイオン内で垂直避難する?より高台の避難場所の薬師公園に逃げる?」。東日本大震災時に釜石市民が置かれた状況や実際の避難行動、実在する場所を盛り込んで選択を迫る。18日、三陸探究実習で釜石市を訪れた盛岡三高1年生40人に体験してもらった。
  
 体験会は鵜住居町の鵜住居公民館で開催。盛岡三高生は5、6人のグループに分かれ、釜石高生の進行に従ってクロスロードに挑んだ。用意された問いは、「避難しないと言い張る祖父母を置いて逃げるか、説得するか、一緒に逃げるか」「車いすの人を自分一人で助けに行ったが、15分たってしまった。諦めて逃げるか、ほかの案を考えるか」「ペットを連れて避難所に入るか」など六つ。「Yes(はい)」「No(いいえ)」の2択、あるいは想定される行動などの3択から「自分ならどうするか」を考えた。
  
クロスロードに挑戦する盛岡三高の生徒。いざという時の判断を考えた

クロスロードに挑戦する盛岡三高の生徒。いざという時の判断を考えた

  
 「海で遊んでいると大地震が発生。『これほど大きな揺れでは避難先の宝来館も危険』と言われ、宝来館の裏山まで逃げた。このことを知らない多くの人が宝来館に集まっている。波が見えるほど迫っていることを知らせに行くか」との問題は、「Yes」「No」で判断。「たくさんの命を助けられる」「走れば間に合う」という理由で「Yes」を選ぶ生徒もいれば、「叫べばいい。戻ってはいけない」と「No」を強調する声もあった。どの問題にも正解はなく、ほかの人の意見を聞きながら多様な視点を共有した。
  
選んだ答えとその理由を発表する盛岡三高生

選んだ答えとその理由を発表する盛岡三高生

  
 命を左右する選択が続き、盛岡三高の奥玉悠花さんは「判断が難しい。もっとたくさんの選択肢があると感じたが、沿岸で暮らしたことがなく、その時にならないと分からないことが多い。沿岸で暮らす人の声をもっと聞いてみたら、よりよい選択ができ、考えが深まる。自分の地域の災害に当てはめて考えてみるのもいい」とうなずいた。
  
ほかのグループの活動を見て回り、多様な考えに触れた

ほかのグループの活動を見て回り、多様な考えに触れた

  
 釜石版は、出身中学校によって防災意識の差があることに着目し、その差を埋めようと作成された。発案者は、震災時に津波から避難した経験のある中居林優心(こころ)さん(2年)。1年生の探究活動で、津波に関する防災意識や避難訓練参加の有無などを同級生らから聞き取ったところ、市内の内陸部と沿岸部の学校では格差があることを発見した。同じまちに暮らす全員が同じレベルの防災意識を持ってほしい―。津波からの避難を経験した小笠原桜さんや佐々木太一君、大瀧沙來(さら)さん(ともに2年)とチームを組んで、実在する場所での実体験を交えた設問を考えた。
 
「防災意識が頭の中に長く残るように」。発案者の中居林さん(画面左上)は期待する 

「防災意識が頭の中に長く残るように」。発案者の中居林さん(画面左上)は期待する

  
 盛岡三高生が真剣に取り組む姿に、「想像以上にちゃんと考え、話し合ってくれた。自分の選択とは異なる人の意見を聞くことができて新鮮だった」と4人。「その人」の考えに共感も反対もできる時間、互いの意見が見える機会に手応えを感じ、「市内の小中学校でも活用できたら」と思いを巡らせる。中居林さんは「防災の意識が少しでも長く頭の中に残っていれば。自分の命を守るのは自分しかいない」と言葉に力を込めた。

 

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金融機関の強盗事件想定 釜石郵便局で模擬訓練 関係者も見学し対応学ぶ

釜石郵便局で行われた強盗対応模擬訓練=18日

釜石郵便局で行われた強盗対応模擬訓練=18日

 
 釜石地区金融機関防犯協会(会長:佐藤清文岩手銀行釜石支店長、30機関)は18日、強盗を想定した模擬訓練を釜石市只越町の釜石郵便局(伴幸治局長)で行った。釜石警察署(前川剛署長)の協力を得て実施。参加した窓口営業部の9人は通報、犯人とのやりとり、現場の状況把握など、いざという時の対応の仕方を経験し、課題を確認した。
 
 訓練は同協会会員機関から14人が見学する中で行われた。釜石署員2人が扮(ふん)した強盗が拳銃を持って押し入り、女性客(署員)1人を人質に取って、持ってきたかばんに現金を入れるよう要求。犯人は大声で局員を脅し続けた。窓口の責任者が金庫から出した金を差し出すが、犯人は再度要求。金を奪うと発砲して威嚇し、車で逃走した。
 
 男性局員2人が「強盗だー」と声を上げながら犯人を追いかけ、走り去る逃走車両にカラーボール(訓練用)を投げつけた。局内ではけがをした人質の客を保護し応急手当て。犯人が行き来した場所をテープで仕切り、現場保存(証拠保全)に努めた。通報で署員が駆けつけるまでの間、犯人の体格、服装、凶器などを確認し合い情報を集約した。到着した署員は犯人の特徴や逃走手段を聞き取り、現場の状況とともに本署に無線連絡。防犯カメラ映像に映る犯人の特徴などを撮影し伝送した。
 
犯人が脅し続ける中、責任者は現金の入ったかばんを差し出す(左下写真)

犯人が脅し続ける中、責任者は現金の入ったかばんを差し出す(左下写真) 

 
カラーボールを手に逃走した犯人を追う男性局員

カラーボールを手に逃走した犯人を追う男性局員

 
テープを張って現場保存。犯人の足跡や指紋検出につながる

テープを張って現場保存。犯人の足跡や指紋検出につながる

 
 訓練後、釜石署生活安全課の小田島徹課長は「犯人逃走後にやるべきことを責任者が明確に指示できるといい。犯人の迅速手配につなげるため、防犯カメラ映像の再生に日ごろから慣れておくことも大切」と助言。犯人役の署員からは「追跡する際は犯人が持っている凶器を考慮し、より安全な方法で。拳銃は発砲の危険があるので、離れた所から犯人の特徴を見るのも一つの手」との話も。110番非常通報装置の普及活動などを行う日本防災通信協会岩手県支部の山田剛支部長は、警察からの逆信電話の対応について説明。犯人とのやりとりについて「1人が交渉役になることで、犯人の目や意識が他の人に向かなくなる」とした。
 
記憶した犯人の特徴を出し合い、情報をまとめる

記憶した犯人の特徴を出し合い、情報をまとめる

 
現場に到着した署員に、人質になった客のけがの状況を伝える

現場に到着した署員に、人質になった客のけがの状況を伝える

 
警察の聞き取りに応じる窓口業務の責任者(右)

警察の聞き取りに応じる窓口業務の責任者(右)

 
 初めて訓練に臨んだ入社1年目の新屋遥香さん(21)は「犯人の特徴を見る役割だったが、怖くてなかなか目を向けられなかった。訓練で実際の場面を少しイメージできた。落ち着いて見ることを心がけ、少しでも記憶に残るようにしたい」。窓口営業部の佐々木健部長(53)は、責任者として名乗り出て犯人役と対峙(たいじ)した。「ある程度、自分の中で想定して臨んだが、半分出せたかどうか」。実際の場面での対応の難しさを実感し、「これがスタート。訓練で良かった点、悪かった点を再度洗い出し、防犯体制強化に努めていきたい」と気を引き締めた。
 
訓練後、釜石署員から改善点などのアドバイスがあった

訓練後、釜石署員から改善点などのアドバイスがあった

 
 同協会では地区内の金融機関での強盗訓練を毎年実施。新型コロナウイルス感染症の影響で2年間は実施を見送ったが、本年から再開した。

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宇宙を旅した復興横断幕 いのちをつなぐ未来館(釜石・鵜住居町)で展示公開

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いのちをつなぐ未来館で展示中の「東北復興宇宙ミッション2021」横断幕

  
 東日本大震災発生から10年の節目に被災地の復興を発信する「東北復興宇宙ミッション2021」で、国際宇宙ステーション(ISS)から帰還した横断幕が、釜石市鵜住居町の「いのちをつなぐ未来館」で展示公開されている。同館を指定管理する「かまいしDMC」の社員有志でつくる天文部が市内各所で撮った星空の写真も紹介。「宇宙を身近に感じながら震災を考え、知るきっかけに」と期待する。11月4日までを予定する。
 
 宇宙ミッションは震災の記憶と教訓、復興支援への感謝を伝えるメッセージや写真、植物の種などを宇宙に送り、被災地の現状を発信するもの。一般財団法人ワンアース(茨城県龍ケ崎市)が企画し、東北被災3県の約50自治体が参加した。
 
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被災自治体が復興の姿や支援への感謝を伝える画像とメッセージを寄せた

 
 横断幕は2021年3月11日にISSで感謝のメッセージを読み上げた野口聡一宇宙飛行士のバックに掲示されていたもの。福島県川俣町特産の川俣シルクで制作され、ミッションに参画した各自治体が復興への思いなどを画像とともに記している。縦1・2メートル、横7メートル。同年2月20日にロケットで打ち上げられ、4カ月余り宇宙を〝旅〟し、7月10日に地球に帰還した。参加した各自治体で巡回展示されている。
 
 釜石が発信した画像は、市内小中学生が中心となって世界中に感謝を伝える活動「#Thank You From KAMAISHI 」を紹介。2019年に地元で開催されたラグビーワールドカップ(W杯)を盛り上げるための準備や試合会場での応援の様子、復活した三陸鉄道などを散りばめている。この横断幕のほか、市の花ハマユリの種もISSに〝滞在〟し、無事帰還した。
 
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釜石の子どもたちの笑顔で感謝を伝える。「ありがとう」

 
 同館職員の佐々学さん(43)は「宇宙を旅した特別な旗を見に来てほしい。震災を知らない子どもたちが増えているので、次世代への伝承にもつながれば」と期待する。
 
 天文部の活動で、市内の星空を収めた写真約20点も掲示。昨年の冬から今年の夏にかけて世界遺産・橋野鉄鉱山、根浜海岸などで見られたオリオン座や「天の川」を写した。「星」をテーマに、三陸ジオパークの箱崎半島を紹介するパンフレットも作成、同館で配布する。「釜石は星がきれい。そんな星空を楽しむことができる素晴らしい環境がある。宇宙を身近に感じることで地元の魅力を知ってほしい」と佐々さん。きらめく夜空を楽しみ続けるため環境を守っていこうと思いを強めている。
  
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宇宙ミッションのメッセージ集と星空ガイドブックを紹介する佐々さん

 
 

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特殊詐欺被害を未然防止 釜石警察署、ローソン釜石大町二丁目店に感謝状

詐欺被害防止の功労で感謝状を受けた廣澤店長(右)

詐欺被害防止の功労で感謝状を受けた廣澤店長(右)

  
 釜石警察署(前川剛署長)は10月12日、特殊詐欺被害を未然に防止した釜石市大町のコンビニ、ローソン釜石大町二丁目店(廣澤祐太店長)に署長感謝状を贈った。電子マネーギフト券の購入金額が高額だったことから、「詐欺だ」と確信したという。
   
 贈呈式は中妻町の同署であり、廣澤店長に感謝状を手渡した前川署長は「適切な声掛けと親身な対応が間一髪、水際の被害防止につながった。地域の安全安心のため連携は不可欠。より一層の協力を」と期待した。
   
前川署長(中)から感謝状を受け取る廣澤店長(右)

前川署長(中)から感謝状を受け取る廣澤店長(右)

   
 同署によると、9月27日に市内在住の50代男性が来店し、総額20万円分の電子マネーを購入しようとした。応対した店員は購入金額が高額だったことから不審に思い、詐欺を疑って通報。同店に急行した署員が男性から購入理由などを聞き出し、捜査する中でサイト利用名目の架空請求と判断した。男性も納得して購入をやめ、被害を免れた。
  
 応対した店員は「一度に購入するには、なかなかない金額で、変だと思った。(男性は)会話をしたことがある人で、スムーズに声がけができた。未然に防ぐことができてよかった」と話す。廣澤店長は「釜石署から詐欺防止のチェックシートが配布され、スタッフ全員で注意している。防犯意識が伝わっていたと実感した。声がけの大切さを改めて認識。普段からお客様とのコミュニケーションを大事にしていきたい」と気持ちを新たにした。今回の声がけ対応や通報の流れを店内で共有する考えだ。
  
 釜石署管内では今年、特殊詐欺被害は確認されていない。県内の特殊詐欺認知件数は9月末現在で29件(前年同期比6件増)、被害額は8376万円(同比4823万円増)。架空料金請求、還付金詐欺が増えているという。詐欺の手口は巧妙化し、被害が潜在化している恐れがあり、同署は「心配な時は警察に相談を」と呼び掛けている。