釜石市震災誌 9月末の発刊目指し作業続行 名称は「撓(たわ)まず屈せず」に決定
第3回釜石市震災誌編さん委員会=17日
釜石市震災誌編さん委員会(委員長=齋藤徳美岩手大名誉教授、委員15人)は17日、3回目の会合を市役所で開き、本年9月末の発刊を目指し作業を継続していくことを確認した。当初目標の2022年度内完成を延ばし、さらに内容を詰める。名称は、釜石市震災誌「撓(たわ)まず屈(くっ)せず」に決まった。
同震災誌は東日本大震災の事実と教訓を後世に伝えるため、発災から復旧、復興に至る同市の10年の取り組みを体系的に記す。庁内検証委員会が年度ごとにまとめてきた記録誌を基に、9つの部、61のテーマごとに事実・背景、指示事項、具体的活動・結果、教訓を記述。各部の冒頭に有識者のメッセージ、市民の声、トピックスも盛り込む。未来の減災につながる内容、他自治体も参考となるような震災誌を目指す。
発刊時期が23年度にずれこむため、委員を再委嘱(14人再任)。新たに元釜石小校長の加藤孔子さん(いのちをつなぐ未来館館長)が委嘱された。
この日は、編さん委内の作業部会が中心となり作成した原稿案について協議。具体的事例などに関し意見が出された。委員からは「多くの犠牲者が出た鵜住居地区防災センターの記述はもっと詳しく」「生々しさが出ていない。他市町村で教訓が生かされるか疑問」「多数の尊い命が奪われた反省をきちんと伝えるための震災誌に」「詳しく掘り下げたい人向けに参考文献を紹介しては」―といった声が上がった。
市震災誌の原稿案について意見を交わす委員
震災誌の名称「撓まず屈せず」は、震災発生から1カ月後、野田武則市長が市民に伝えたメッセージを基にした。明治、昭和の大津波や艦砲射撃の被災から立ち上がってきた歴史、困難を乗り越え成功させた鉄づくりなど、市民に受け継がれてきた「不撓不屈(ふとうふくつ)」の精神を表した言葉。震災復興において市民と共有した思いをタイトルに込めた。市事務局が提案し、委員が承認した。
編さん委は今後、9月末の発刊を目指し、意見交換会などを重ねながら編集作業を進める。震災誌は300部作成し、市内の公共施設や学校、国・県の関係機関、支援した自治体などに配布する計画。個人の入手希望には有料で対応する。
発災から復興に至るまでを丁寧に検証し、次に災禍を繰り返さないための視点を盛り込んだ震災誌は例がなく、齋藤委員長は「他地域でも必ず役に立つ。時間がかかってもいいものにしたい。委員から出た具体化の指摘と公的記録の兼ね合いの部分も作業部会で検討していく」と述べた。
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