タグ別アーカイブ: 地域

sw7_1

釜石SW第7節 雪の影響で中止の試合を17日に/3日はSMCブース、釜石高震災語り部が地元発信に力

釜石SW対GR東葛の試合開催に向け行われた雪かき作業=3日、釜石鵜住居復興スタジアム

釜石SW対GR東葛の試合開催に向け行われた雪かき作業=3日、釜石鵜住居復興スタジアム

 
 NTTジャパンラグビーリーグワン2部の日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)は3日、釜石鵜住居復興スタジアムで第7節NECグリーンロケッツ東葛との対戦が予定されていたが、降雪の影響によるグラウンドコンディション不良のため中止となった。この日の試合は、SWのチームスポンサーで釜石市に工場があるSMC(髙田芳樹代表取締役社長、本社:東京都千代田区)のプレゼンツマッチ。試合はできなかったが、会場内に設けられた同社の出展ブースは大勢の来場者でにぎわった。SWホーム戦で継続される釜石高生の震災語り部活動もあった。チームは地元ゲームを支える全ての人々への感謝を胸に10日、同スタジアムで東日本大震災復興祈念試合(対九州電力キューデンヴォルテクス)に挑む。3日に中止された試合は17日に行われることが決まった(7日発表)。
 
 釜石SWのホームの同スタジアムは1日朝までに降り積もった雪が解けず、試合前日の2日は選手、スタッフらが夕方まで雪かき。当日は、前日夕方のSNSでの協力呼びかけに応えた一般ボランティアや相手チーム関係者らが加わり、早朝から雪かき作業に追われた。キックオフの時間を1時間遅らせ開催への準備を進めたが、午前11時時点の判断で安全が確保できないとして、試合中止が発表された。
 
両チームの選手、スタッフ、ボランティアらが雪かきに協力

両チームの選手、スタッフ、ボランティアらが雪かきに協力

 
試合開催を願い、懸命に除雪作業にあたる釜石SWの選手ら

試合開催を願い、懸命に除雪作業にあたる釜石SWの選手ら

 
100人以上の協力で芝生が見える状態にまでなったが…

100人以上の協力で芝生が見える状態にまでなったが…

 
 今季ホーム2戦目。連敗中のSWは地元での勝利を目指し練習を積んできただけに残念な結果となったが、選手らはグラウンド周辺のフードコーナーに出向き来場者と交流。新たに作成された選手個人のプロフィールなどが書かれたカード(数量限定)を自ら配り、記念撮影などでファンとの絆を深めた。
 
試合中止発表後、来場者と交流を深める釜石SWの選手ら。SWのマスコット「フライキー」も活躍(写真右下)

試合中止発表後、来場者と交流を深める釜石SWの選手ら。SWのマスコット「フライキー」も活躍(写真右下)

 
会場では選手との記念撮影も行われた

会場では選手との記念撮影も行われた

 
 SO中村良真選手は100人以上のボランティアが雪かきに協力してくれたことに「ありがたい。本当にいろいろな人に支えられているのを再認識した」と感謝の言葉。「最善の準備をしてきたので、それを発揮できなかったもどかしさはあるが、支えてくれる皆さんの気持ち、今日できなかった分の思いをしっかり背負って次戦に臨みたい」と1週間後を見据えた。チームを率いるWTB小野航大主将も「結果的に試合はできなかったが、地元の皆さんをはじめ多くの人たちのラグビーに対する熱い思いを感じる機会になった。今季はまだ勝てていないが、悪いことばかりではない。ポジティブな部分をつなぎ、次は応援してくれる皆さんに恩返しできるようにしっかり勝利する姿を見せたい」と誓った。
 
両チームの選手が並ぶと多くのファンがカメラを向けた

両チームの選手が並ぶと多くのファンがカメラを向けた

 
マッチスポンサー「SMC」の社員らも加わり記念撮影

マッチスポンサー「SMC」の社員らも加わり記念撮影

 
 ひな祭りでもあるこの日は、試合後の「ラグビーのまち釜石教室」で女性向けの体験コーナーも企画され、県内唯一の高校女子チームである花巻東高女子ラグビー部が、試合や体験教室のサポートをする予定だった。後藤渚菜主将は「やっぱり試合は見たかったですが…(仕方ない)。(地元岩手の)SWの活躍は自分たちの励みにもなっているので頑張ってほしい」とエールを送った。
 

空気圧制御機器 世界首位「SMC」が初のマッチスポンサーに うのスタ出展のブース大にぎわい

 
会社の業務や製品が紹介された「SMC」のブース

会社の業務や製品が紹介された「SMC」のブース

 
 3日の試合は、釜石SWのチームスポンサーでもあるSMCがマッチスポンサーとなった。会場内には大型の仮設ハウスが設置され、同社と遠野市のサプライヤー4社が出展。普段、一般の人は見られない業務内容を写真パネルや動画、製品などで紹介した。
 
 SMCは空気圧制御機器製造では世界首位の実績を誇り、国内6カ所の生産拠点のほか海外にも工場を持つ。本県には釜石、遠野両市に工場があり、外国人を含む約2500人が就労。釜石市では5工場が稼働する。
 
 空気圧制御機器は工場の生産ラインなどの自動化に欠かせないもので、あらゆる産業で使われるが、一般の人が目にする機会はほとんどない。今回の出展では同社の使用機材や製品を応用した体験型ブースも展開。子どもから大人まで幅広い年代が、楽しみながらその技術に触れた。
 
空気の力でペットボトルカーを走らせピンを倒すボーリングゲーム

空気の力でペットボトルカーを走らせピンを倒すボーリングゲーム

 
sw7_11

真空パットを操作しボールやチョコレートをゲット!

 
SMCとサプライヤー4社のブースは終始、大勢の来場者でにぎわった

SMCとサプライヤー4社のブースは終始、大勢の来場者でにぎわった

 
 新年度、同社に入社予定の大槌高3年の生徒2人は「仕事内容を見て4月から頑張ろうという気持ちが高まった。具体的な説明が聞けたので来て良かった」と目を輝かせた。陸前高田市の平野真綾さん(28)は「日本を支えていただいてありがたい。母も働いているので、どんな仕事なのか分かって感慨深い」と喜んだ。
 
 浦島勝樹釜石工場長は「皆さん、興味を持って見てくださった。これを機に弊社の製品、会社自体の認知度も高まれば」と期待。メインの試合はできなかったが、「少しでも地域貢献につながったならうれしい」と話した。
 

釜石高「夢団」は祈念碑前で震災伝承活動 新たに4人が語り部デビュー

 
釜石高「夢団」のメンバーによる東日本大震災の伝承活動

釜石高「夢団」のメンバーによる東日本大震災の伝承活動

 
 釜石高の生徒有志による防災・震災伝承グループ「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」(60人)は3日、釜石SWのホーム戦に合わせ、同スタジアムで東日本大震災の経験や教訓を伝える語り部活動を行った。1~3年生9人が活動。生徒たちの呼び掛けに応え、来場者73人が話を聞いた。
 
 スタジアム内に建立されている震災犠牲者の鎮魂、教訓伝承のための祈念碑前で1、2年生の語り部5人が話をした。うち4人はこの日が語り部デビュー。生徒らは2月に経験者から話を聞く研修などを行い、それぞれに語り伝えたい内容をまとめて当日を迎えた。時折、雪が吹き付ける中、生徒らは自分の言葉で「命を守る大切さ」などを伝えた。
 
避難時に利用する「オリジナル安否札」も配布しながら「語り部活動」をPR

避難時に利用する「オリジナル安否札」も配布しながら「語り部活動」をPR

 
スタジアム内に建てられた祈念碑の前で震災の経験や教訓を伝えた

スタジアム内に建てられた祈念碑の前で震災の経験や教訓を伝えた

 
 震災時3歳だった政屋璃緒さん(1年)は宮古市のショッピングモールにいた時に地震に見舞われた。大きな揺れの感覚や周囲のざわつきを覚えているという。伝承活動では「いつどこで被害に遭うか分からない。常に(防災)意識を持っていてほしい」と訴える。宮古からの通学で最初に感じたのは「津波の時、どこに逃げればいいか分からなかった」こと。「普段から初めての場所に行く時は近くの高い所を探しておくといい。いざという時、心の余裕につながると思う」と話した。
 
 双子の妹とともに語り部デビューとなった佐々有寿さん(2年)は祖父の家が津波で流された。がれきの中、祖父宅に置いていたぬいぐるみを探した記憶があるという。自身の唯一の記憶と祈念碑に刻まれた「あなたも逃げて」という言葉を使い、自分の思いを伝えた佐々さん。「命を守る最善の方法は逃げること」と言葉に力を込める。この日は「お客さんの反応が見え、ちゃんと思いが伝わっているのを感じた」。
 
立ち寄った来場者(右側)は生徒らの話に熱心に耳を傾けた

立ち寄った来場者(右側)は生徒らの話に熱心に耳を傾けた

 
 同震災から11日で13年-。夢団の語り部活動はSWの次戦10日にも同スタジアムで行われる予定。生徒たちの思いを現地でじかに聞いてみては?

piano1

ピアノで全国へ 釜石・吉田真唯さん(甲子中) 初切符に「悔い残さず楽しむ」

ピアノ・オーディション全国大会に挑む吉田真唯さん

ピアノ・オーディション全国大会に挑む吉田真唯さん

 
 今月下旬に東京で開かれる「第40回JPTAピアノ・オーディション」(日本ピアノ教育連盟主催)の全国大会に、釜石市から吉田真唯(まい)さん(甲子中3年)が出場する。「ピアノは中学校まで」と考えていたところ、思いがけず手にした全国への切符。「周りのレベルに負けないよう、楽しみながら演奏したい」と練習を重ねている。
 
 同オーディションは、子どもの豊かな音楽性を培うことなどを目的に開かれている。吉田さんは昨年11月に仙台市であった東北地区大会の中学生部門(約30人出場)に挑み、ハイドンの「ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI-28 第1楽章」で優秀賞を受けた。同賞の9人が全国大会へ進み、岩手県からは吉田さんを含め2人が参加するという。
 
 吉田さんがピアノを習い始めたのは3歳の頃。市内でピアノ教室を主宰する髙橋伊緒さんに師事する。「手が小さいのがハンデ」と思っていたこともあり、中学生で区切りをつけるため「悔いが残らないように」と練習に励み、自信を持って地区大会に臨んだ。
 
 「実はハプニングが…」と吉田さん。審査結果はエントリー番号を発表する形だったが、呼ばれず落ち込んで帰路についた。すると、髙橋さんから「おめでとう」と祝いの言葉が届き、びっくり。主催者のホームページ上には吉田さんの番号があり、問い合わせてみると、会場では手違いがあって「本当は全国行きを手にしていた」と確認できた。
 
全国大会への出場を決め、練習を重ねる吉田さん

全国大会への出場を決め、練習を重ねる吉田さん

 
 全国大会への出場は今回が初めてで、素直にうれしさをにじませる。より高いレベルへの挑戦となり、緊張感も上昇。そんな中でも、「楽しみながら自分らしい演奏を」と鍵盤に向かう。学校の応援もあり、放課後に2時間ほど音楽室のグランドピアノを触り、さらに自宅のアップライトピアノで音出し。週末など休みにはグランドピアノが設置された市内や隣町の公共施設を借り、音が響く環境で指を動かす。
 
 合間を縫って、1日は釜石市役所を訪れ、小野共市長に意気込みを伝えた。同行した父の智さん(55)は「釜石からピアノで全国へいくのは久々と聞く。同じように頑張る子どもたちの励みになれば」と期待を込め、練習や事前準備、体調管理に気を配りつつサポートしていると説明。小野市長は「まず自分をほめてほしい。本番を楽しんで、いい思い出、経験を積んできて」と激励した。
 
小野共市長(手前)に抱負を伝えた吉田さん

小野共市長(手前)に抱負を伝えた吉田さん

 
 2日は市民ホールTETTOのピアノ練習室で鍵盤をはじいた。本番で奏でるのはリストの「3つの演奏会用練習曲第3番ため息」。吉田さんによると、「水が流れるようなきれいな曲だけど、タッチが早い。高い音から低い音を駆け上がって下りてくるような感じで難しい。手が小さいから、指を目いっぱい広げても大変」という。それでも、挑戦できる喜びが上回り、「会場にいる人が居心地よく聴けるよう演奏したい」と心を弾ませる。
 
TETTOピアノ練習室で笑顔を見せる吉田さん

TETTOピアノ練習室で笑顔を見せる吉田さん

 
愛娘の頑張りを智さんが優しく見守っている

愛娘の頑張りを智さんが優しく見守っている

 
 本番は26日。そばで見守る智さんは「今までで一番練習している。全国では肩の力を抜いて自信を持ってやってほしい」と、晴れの舞台に挑む娘にエールを送る。

junior-meister1

新たな魅力発信!釜石商工高 資格取得で快挙 「ジュニアマイスター」特別表彰3人

ジュニアマイスターに認定された釜石商工高電気電子科の3年生

ジュニアマイスターに認定された釜石商工高電気電子科の3年生

 
 釜石商工高(今野晋校長、生徒175人)の電気電子科3年生8人が、資格取得などを点数化して顕彰する「ジュニアマイスター」に認定され、そのうち3人が高度な資格取得で高得点を獲得し「特別表彰者」に輝いた。特別表彰者の誕生は同科では初めてで、生徒や教員らは喜びをかみ締めている。互いに励まし合って技術を磨いてきた3人は4月から、行政機関や電力会社などで社会インフラを支える技術者として働き始める。
 
 顕彰制度は全国工業高校長協会(東京)が実施。全国の工業系高校の生徒を対象に、在学中の活躍や身に付けた知識、技術、技能を評価する。取得資格や検定、競技会などの成績、難易度に応じた得点が加算され、上からゴールド(45点以上)、シルバー(44~30点)、ブロンズ(29~20点)の3種類があるほか、高難易度の資格を持ち、合計点数が60点以上の場合に特別表彰が贈られる。
 
 特別表彰を受けたのは、小野寺雄磨さん(72点、11資格)、久保琉唯さん(72点、10資格)、佐藤輝河さん(64点、8資格)。同科では資格取得に力を入れており、3人は難易度が高い電気工事士(1種)、電気工事施工監理技術検定(2級技師補)、電子機器組立て技能士(3級)などを取得した。
 
特別表彰を受けた(左から)佐藤輝河さん、小野寺雄磨さん、久保琉唯さん

特別表彰を受けた(左から)佐藤輝河さん、小野寺雄磨さん、久保琉唯さん

 
 小野寺さんは「持っておいて損はない」と1年時から積極的に資格取得に挑戦。「勉強は大変だった」が、指導する教員らが高度な技術、知識を教え、「背中を押し続けてくれたから」と感謝する。「応援の恩返しを」と選んだ道は岩手県職員。技術職(電気)での採用で、「電気の安全安心を守れるよう、日々の仕事を頑張る」と背筋を伸ばす。
 
 久保さんは、原子力発電の危険性や仕組みが気になり独自に調べているうちに電気に興味を持ち、同科に入学。資格をとるための勉強は苦にならなかった。ただ、実技が得意ではなく、図面通りの回路づくりなどは「かなり頑張って練習した」という。ものづくりにも関心があり、日本製鉄北日本製鉄所釜石地区への就職を決めた。
 
 佐藤さんも「不器用」だといい、細かな作業が多い実技では失敗することも。そんな時、励まし合える仲間の存在が力になり、「達成感がすごい」学校生活につながった。就職先は学びや資格を生かせると東北電力ネットワークを選択。「安定した送電で住民生活を支える」のを目標に、さらに資格取得にも励みたいと先を見据えた。
  
 学校統合により2009年に発足した同校は少子化で定員割れが続き、同科もその影響を受ける。普段の学びの成果を把握したり、就職活動に役立ててもらおうと、資格取得に力を入れ始めたのは2017年度から。2年後にジュニアマイスターの称号を得る生徒が生まれ、その後も在籍数は伸び悩んでいるが、資格取得率は上がっている。今年度、3年生は13人。初の快挙となった特別表彰獲得(3人も)のほか、ゴールドとシルバーが各2人、ブロンズに1人が認定された。1年ごとに認定の機会があり、13人全員が一度は何らかの称号を獲得している。
 
3年間学業に励んだ生徒と見守った小野寺一也教諭(後列右)

3年間学業に励んだ生徒と見守った小野寺一也教諭(後列右)

 
 生徒たちの努力が実ったことを喜ぶのは、同科長の小野寺一也教諭(55)。分野の異なる試験が同時期に重なり、並行して勉強する生徒もいた中で、「信じられないくらい頑張った。期待以上」と目を細める。「国家資格は一生もの。持つことで、できる仕事の幅も広がる」とした上で、卒業する13人に「これからも資格を取り続けるだろう。高い目標を持ち、勉強する癖を身に付けてほしい」とエール。残る下級生には「快挙」ではなく「継続」を望んでハッパをかける。指導教員や学校関係者は「釜石商工の新たな魅力になる。一人でも多くの中学生に興味を持ってもらえたら」と期待する。

osakana1

バリアフリーな環境で心豊かな体験を 子どもたちが旬の魚マダラをさばいて食す 生態にも興味津々

インクルーシブおさかな体験教室=根浜海岸レストハウス

インクルーシブおさかな体験教室=根浜海岸レストハウス

 
 障害の有無や性別、人種などに関係なく、互いを認め合い共生していく「インクルーシブ」社会。その理念を基にした各種取り組みが釜石市でも行われている。2月25日、鵜住居町の根浜海岸レストハウスでは「インクルーシブおさかな体験教室」が開かれた。バリアフリーでつくる釜石自然遊びの会(佐々木江利代表)が主催。市内外から13家族37人が参加し、旬のマダラをさばいて調理。食事も楽しんだ。
 
 講師は同市地域おこし協力隊員で、魚食普及活動を行っている清原拓磨さん(26)。この日は地元の定置網で漁獲された体長60~80センチのマダラ3匹が用意された。はじめに生態を説明。水深約200メートルの深海に住み、口元のひげでにおいなどを感知して餌を探すこと、雄は白子に価値があり、雌の倍の値段で取引されることなどを教えた。子どもたちは体を触ったりしながら観察。疑問に思ったことを次々に質問した。
 
osakana2

体のまだら模様が特徴の魚「マダラ」。触ってみると?

 
osakana3

マダラの生態について教える清原拓磨さん(左)

 
 観察後はさばき方。子どもたちが最初に体験したのはうろこ取り。専用の道具や金たわしを使って、きれいにうろこを取り除いた後、清原さんが腹を切り開き、身と内臓を分けた。子どもたちは初めて見る腹の中に興味津々。驚きの声を上げながら見入った。切り分けた身から細かい骨を取り除く作業も体験した。切り身はタラフライに。衣をつける調理にも挑戦した。
 
osakana4

うろこ取りを体験。清原さんいわく、残っていると食感が悪くなったり、においが出てしまうそう

 
osakana5

目を凝らして細かい骨抜きにも挑戦した

 
osakana6

清原さんが丁寧にさばき、体の中の各部位も観察した=写真提供:主催者

 
osakana7

切り身はタラフライに。衣をつける作業も子どもたちで

 
 盛岡市の菅原蓮君(10)は「タラの体は思ったよりやわらかい。胃袋は大きくてイワシが入っていたのにはびっくり」と目を丸くした。友人の冨澤えみりさん(7)は「ちょっと魚がかわいそうだけど、人は魚を食べて生きているので感謝しないと。自分で調理したのを食べるのは楽しみ」と声を弾ませた。2人の母親は、切り身になる前の魚の姿を見る貴重な機会を歓迎。「魚への興味、調理への関心も高まれば」と期待した。
 
 同教室を企画した「バリアフリーでつくる釜石自然遊びの会」は昨年発足。医療的ケア児の母である佐々木代表(44)が根浜でのバリアフリービーチ実現への第一歩として、インクルーシブを理念とした交流の場を持ちたいと立ち上げた。これまでに海辺でのお茶会、たき火やカレー調理、ピザ作りなどのキャンプ体験を観光施設・根浜シーサイドの協力で実施。当事者家族だけでなく同年代の子を持つ家族を含めた活動の機会を通じて、互いに助け合える関係づくりの構築を進めてきた。
 
osakana8

タラフライは手作りパンにはさんでバーガー風に(写真上段)。楽しい体験を終え笑顔を輝かせる参加者(同下段)=写真提供:主催者

 
 今回の教室には障害などで支援が必要な親子4組が参加した。親の一人は「これまで海に行くのはすごくハードルが高かった。今回、室内ではあるが、魚と触れ合えたことで、海にも一歩近づけた気がする」と話した。
 
 医療的ケアや支援が必要な子どもたちの親は、助けが必要な場面でも「自分たち家族の問題」と我慢してしまいがちだという。しかし、家族だけが頼りでは限界がきてしまう。佐々木代表は「本人にとっても家族以外の人に甘えられる環境は必要。まずは顔見知りになり、お互いを理解するところから」と小さな一歩の積み重ねを願う。未来に生きる同様の家族のためにも「『これが大変だから手伝ってほしい』と声をあげられる環境をみんなで作っていきたい」と思いを込めた。

koho1827thum

広報かまいし2024年3月1日号(No.1827)

広報かまいし2024年3月1日号(No.1827)
 

広報かまいし2024年3月1日号(No.1827)

広報かまいし2024年3月1日号(No.1827)

ファイル形式: PDFファイル
データ容量: 3.73MB
ダウンロード


 

【P1】
日本製鉄釜石シーウェイブスホストゲーム 他

【P2-3】
市内の主な東日本大震災追悼行事
イベント案内

【P4-5】
まちのお知らせ

【P6】
スマートフォンから転出届の提出ができます
戸籍の証明書の請求が便利になります
国民健康保険高額療養費の案内が変わります

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2024030100019/
釜石市

釜石市

釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
2024taiikusho1

打って、泳いで、走って栄誉つかむ スポーツで活躍!釜石市民 努力、健闘たたえる

釜石市民体育賞の受賞者、市体育協会関係者ら

釜石市民体育賞の受賞者、市体育協会関係者ら

 
 スポーツ界で活躍した人をたたえる釜石市体育協会(小泉嘉明会長)の2023年度市民体育賞表彰状授与式は23日、大町のホテルクラウンヒルズ釜石で開かれた。岩手県や東北大会の優勝者ら17人、3団体に「奨励賞」を贈呈。長年にわたり競技の普及、発展に貢献してきた2人には「功労賞」が贈られた。そして、釜石高ボクシング部で3年間部活動に励んだ3年生部員に贈られる「小泉賞」。市ボクシング協会(小泉会長)主催の贈呈式が26日に中妻町の昭和園クラブハウスであり、選手7人、マネジャー1人の計8人が努力の証しとなるトロフィーを手にした。
 

若手もベテランも輝く 市民体育賞

 
 今年度の体育賞受賞者は小学1年生~75歳までと幅広い顔ぶれ。あいさつに立った小泉会長は「小さい頃から本気になり、互いに鍛え合いながら目標に進む人たちのいい顔を見られてうれしい。元気に頑張れば、次の扉が開くはず。スポーツで前向きなまち釜石をつくっていこう」と期待した。
 
市民体育賞の表彰式。受賞者はさらなる飛躍を誓う

市民体育賞の表彰式。受賞者はさらなる飛躍を誓う

 
 奨励賞は空手道の活躍が目立つ。個人では藤原凪さん(鵜住居小3年)、川崎煌聖君(同5年)、木村元軌君(平田小1年)、照井陽己君(同)、三浦陽翔君(同)、阿部琉芯君(白山小4年)、佐野葵泰君(釜石中2年)、佐野泰盛君(甲子中3年)、小川結暖さん(同)、坂本嘉之さん(釜石高3年)。団体で釜石高の男子空手道部(松田郷佑主将)、女子空手道部(佐々木來愛主将)が受賞していて、層の厚さを感じさせた。
 
 水泳からは白岩優一朗君(甲子中3年)、ボクシングでは佐々木夏さんと菊池麗さん(いずれも釜石高3年)、陸上競技は小澤詩乃さん(釜石中2年)、未瑚さん(同1年)姉妹がそれぞれ選ばれた。若手が健闘を見せる中、ベテランで実力を発揮したのはバウンドテニスの田村彬紘さん(38)と阿部なみ子さん(75)。小泉会長は受賞者一人一人に声をかけながら賞状とトロフィーなどを贈った。
 
受賞者を代表して謝辞を述べる藤井豊さん

受賞者を代表して謝辞を述べる藤井豊さん

 
 陸上競技協会役員、駅伝部で選手兼監督として20年以上競技に打ち込む藤井豊さん(75)は功労賞を受賞。代表して謝辞に立ち、「自らの競技力の向上、選手の育成など仲間と取り組んできたことが評価された。今後も健康で丈夫な体と精神を鍛え、スポーツに親しみたい」と情熱は衰えない。同じく表彰された澤修一さん(66)は水泳協会理事として各種大会運営、若手育成などに40年近く携わり、競技の普及に尽力する。
 
 注目は、奨励賞を受けた釜石中特設ラグビーフットボール部。普段、別々のスポーツに取り組んでいる生徒有志23人が集まり、約4カ月という短期集中で練習に励み、県中総体で優勝した。主将の八幡玲翔君(3年)は陸上部で短距離を頑張ってきたが、実は地元ラグビーチーム日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)が小中学生を育成するアカデミーにも所属。団体競技の楽しさ、仲間を信じる大切さを教えてくれるラグビーに魅力を感じ、仙台市の高校へ進学後も続ける。夢は「SWで活躍すること」。スポーツで地域に恩返しする気持ちを強めていた。
 
奨励賞を受けた釜石中特設ラグビーフットボール部

奨励賞を受けた釜石中特設ラグビーフットボール部

 
 5年間、指導にあたった同校の梅津孝昭教諭は初優勝に感慨深げ。自身も高校、大学とラグビーに親しんだが、SWや地域の人の支えがあって成し遂げられたと感謝も忘れない。体協関係者も「ラグビーのまち釜石から素晴らしい成績が出た」と沸いた。
 
 今年度は各競技団体や学校から推薦された26件を審査。理事会の承認を得て受賞者を決定した。全国レベルの大会で優勝(または優勝に準ずる成績)した個人、団体に贈られる「栄光賞」は該当がなかった。式では、県体育協会功労賞を受けた市剣道協会の細川親雄会長に表彰の伝達もあった。
 

勉強も部活もやり切った高校生へ 小泉賞

 
 今年度、小泉賞を受けたのは8人。選手として活躍した平野優羽さん、今野拓翔さん、茂木大希さん、立花素生さん、東舘耀大さん、市民体育賞も受けた佐々木さん、菊池さんの7人と、マネジャーの藤井まどかさん。近年では仲間が多い学年で、「釜石に大きな波を起こそう」と鍛錬し合った。結果はそれぞれだったが楽しみながら、そして真剣に向き合って「悔いはない」と、多くの生徒が晴れやかな表情を見せた。
 
3年間努力し続けた釜石高ボクシング部の3年生、小泉会長(前列中)

3年間努力し続けた釜石高ボクシング部の3年生、小泉会長(前列中)

 
 県内外への進学が決まっている生徒たちに、小泉会長は「コロナというハードパンチをよけながら3年間頑張った。競技を通じて学んだことを思い出し、価値を高めながら生き、社会に出て活躍してほしい」とエールを送った。
 
学校生活の振り返りと進学先での抱負を伝える佐々木夏さん

学校生活の振り返りと進学先での抱負を伝える佐々木夏さん

 
 県、東北、全国大会で健闘した佐々木さんは、父でコーチの彰さん(50)と同じ専修大に進み、ボクシングを続ける。「学生日本一になる」。同様の目標を掲げる菊池さんは日本体育大に進学。彰さんとともにコーチを務めていた亡父・拓さん(享年49)が成し遂げられなかった夢をつかむために。父と同じ高校生チャンピオンになるという目標は達成できなかったが、「もっと強くなり、(父を)超えたい」と高みを目指す。
 
菊池麗さん(中列右から2人目)は仲間や後輩と記念にパチリ

菊池麗さん(中列右から2人目)は仲間や後輩と記念にパチリ

 
すがすがしい笑顔を見せる高校生、ボクシング協会関係者

すがすがしい笑顔を見せる高校生、ボクシング協会関係者

 
 同校ボクシング部は3年生が卒業した今春、部員9人(選手6、マネジャー3)でスタート。部員獲得に力を入れつつ、「先輩たちのかっこいい姿を追いかける」「練習につき合ってくれた成果を高総体で発揮したい」と伝統を受け継ぐ構えだ。

kanji1

漢字のでき方に「へぇ~、ほぉ~」 釜石初「漢字成り立ち講座」鵜住居公民館で開催

鵜住居公民館で開かれた「漢字成り立ち講座」。講師は漢字教育士の川﨑悠嗣さん(右)

鵜住居公民館で開かれた「漢字成り立ち講座」。講師は漢字教育士の川﨑悠嗣さん(右)

 
 釜石市の鵜住居公民館(松下隆一館長)で22日、漢字の成り立ちを学ぶ講座が開かれた。同館のコミュニティー支援事業・ひまわり会(月2回実施)が、市の生涯学習まちづくり出前講座の新メニューを活用して初開催。参加者は漢字の基となった象形文字などについて学び、造字の面白さを味わった。問題にも答え、脳を活性化させながら楽しい学びの時間を過ごした。
 
 地域住民ら13人が参加した。講師を務めたのは市職員で、漢字教育士(立命館大白川静記念東洋文字文化研究所認定)、漢字教育サポーター(公益財団法人日本漢字能力検定協会)の資格を持つ川﨑悠嗣さん(37)。本年度、同出前講座に登録されてから、自身にとっても初めての講座となった。
 
 川﨑さんは、漢字の起源が約3300年前の中国・殷王朝後期(紀元前1300~同1000年ごろ)の遺跡から出土した甲骨文字(亀甲や獣骨に刻まれた文字)であることを紹介。最古の本格的漢字字典は西暦100年(後漢)に作られた「説文解字」で、字の成り立ちや意味が解説されているという。日本では江戸時代に出土した「漢委奴国王」と刻まれた金印が最古の漢字資料。後に日本語を漢字で表したとみられるものも見つかり、5世紀ごろには漢字で日本語を書き表す習慣ができていたと考えられているという。
 
市の出前講座としても初開催。参加者は熱心に話を聞いた

市の出前講座としても初開催。参加者は熱心に話を聞いた

 
 川﨑さんは漢字の造られ方として、象形文字(物の形をかたどって造られた文字)、形声文字(形=意味や領域、声=発音を表す要素を組み合わせた文字)、仮借(かしゃ=ある物事を表す適当な漢字がない場合、関係のない同音の他字を借りてあてたもの)など6つの方法を説明。金文や篆書(てんしょ)、隷書(れいしょ)など書体の変化についても触れた。
 
 講座では事前に申し込んだ参加者の名前の漢字について、古代の文字と由来を記した資料で解説した。例えば「石」という字は、厂(山の崖の形)と口(神への祈りの文書を入れる箱=サイの形)を組み合わせたもの。大きな石は神が宿るとされ、サイを供えて祈りをささげるという意味があり、会意文字(2つ以上の漢字を組み合わせ、意味を複合して別の意味、発音を持たせた文字)にあたる。口(サイ)は他の漢字でも同様の意味で使われ、「吉」の字は士(神聖なまさかりの刃を下に向けた形)をサイの上に置くことで祈りの効果を守ることを示しているという。
 
象形文字などについて解説。漢字の成り立ちに参加者も興味津々

象形文字などについて解説。漢字の成り立ちに参加者も興味津々 

 
 「母」の象形文字は、ひざをついて座っている女性の姿を表していて、2つの「丶(点)」を取ると「女」という字になる。点は乳房を表すという。「二」「三」は数を数える時に使う算木を2本、3本と重ねた形。「四」も元々は「亖(し)」だったが、仮借(かしゃ)で今の「四」になった。
 
 参加者は、象形文字が表す漢字を選ぶ問題や9つの漢字から三字熟語を作る問題にも挑戦。楽しみながら漢字にまつわる知識を得た。柏崎美佐子さん(85)は「はんこに使われている篆刻(てんこく)や書道の隷書などを見ていて、興味があって参加した。自分の名前の漢字の成り立ちも分かり、ありがたい。面白いので講座をシリーズ化してほしい」と期待した。
 
象形文字が表す漢字を選ぶ問題に挑戦。じっくりと見比べて… 

象形文字が表す漢字を選ぶ問題に挑戦。じっくりと見比べて…

 
「あめかんむり」の漢字を書いてみよう!

「あめかんむり」の漢字を書いてみよう!

 
 講師の川﨑さんは鵜住居町出身。東日本大震災で被災し、移住した遠野市で図書館に通っていた時、たまたま手にとったのが漢字の本。興味をそそられて勉強を始め、検定にも挑戦した。今は準1級の腕前で、最高位の1級取得を目指して奮闘中。初の出前講座に「緊張したが、喜んでもらえたようでうれしかった」と一安心。講座で使ったイラストなどの教材は自身の手作りで、「もっと分かりやすく教えられるように内容を考えたい」と次の機会を見据える。「漢字は奥深い。成り立ちが分かると覚えやすかったり、楽しく学べる。子どもたち向けに学校での出前講座もできれば」と望んだ。
 
手製のイラスト教材で漢字の成り立ちを説明する川﨑さん

手製のイラスト教材で漢字の成り立ちを説明する川﨑さん

 
鵜住居公民館の「ひまわり会」では座学や健康づくりなど多彩な活動で住民交流、孤立防止などに努める

鵜住居公民館の「ひまわり会」では座学や健康づくりなど多彩な活動で住民交流、孤立防止などに努める

shintyosha1

釜石市の新庁舎建設 3月、いよいよ着工へ 住民説明会「積極的に…けど心配」

着工間近となった釜石市役所新庁舎建設の住民説明会

着工間近となった釜石市役所新庁舎建設の住民説明会

 
 巨大地震による津波想定(国・県公表)を受けた計画の見直し、建築工事落札事業者の辞退による再入札などで着工が遅れていた釜石市新庁舎の建設が3月、いよいよ本格化する。新たな工事業者が決定し、着工間近となった2月17日、市は大町の市民ホールTETTOで住民説明会を開催。建設予定地の天神町やその周辺地区の住民を中心にした市民約30人に庁舎建設の概要、スケジュール、工事の安全対策などを伝えた。
 
 小野共市長が新庁舎建設の検討経過などを紹介した後、市新庁舎建設推進室の洞博室長が建設計画の概要を説明。新庁舎は鉄骨鉄筋コンクリート造り4階建てで、車庫棟なども含めた延べ床面積は計約8800平方メートル。敷地を1~2メートル程度かさ上げするが、県の想定では浸水域とされ、ピロティ方式を採用し、1階フロアには機材や書類などの配置を最小限する。一時避難場所として活用を想定し非常用発電設備、受水槽などの防災機能も備える。
 
新庁舎の建物外観イメージ図。市は26年春の開庁を目指す

新庁舎の建物外観イメージ図。市は26年春の開庁を目指す

 
 現庁舎からの移転費用などを含む総事業費は約82億円。うち、建設費は7億5500万円増え、76億6300万円になる見通しだ。財源は庁舎建設基金、市債発行など。防災・減災事業を対象とする国庫補助の活用も見込む。
 
 施工者の戸田・山﨑特定建設工事共同企業体(JV)の現場代理人堀川俊永さんが工事に伴う交通規制、騒音や振動など安全対策について話した。工期は3月1日から25年12月下旬までの約24カ月間。周辺にこども園や復興住宅などがあることから、昼休憩の時間をずらしたり、高性能防音壁などを設置し、「安全確保を最優先する。周辺への影響の少ない方策を講じる」と強調した。
 
新しい釜石市役所の建設予定地

新しい釜石市役所の建設予定地

 
 参加者から、「積極的に進めてほしい」との声があったほか、「かさ上げした土地が災害時に沈下することはないのか」「建物が高くなることで日当たりが悪くなるのでは」といった不安をのぞかせる人もいた。防災機能についての質問も上がった。質疑の後も、生活環境の変化を心配する声は残り、市関係者は「長く使ってもらえるような庁舎をつくるため、引き続き意見を寄せてほしい」と求めた。
 
説明会後、個別により詳しい解説を聞く住民もいた

説明会後、個別により詳しい解説を聞く住民もいた

 
老朽化が進む釜石市役所の現庁舎(築70年)

老朽化が進む釜石市役所の現庁舎(築70年)

 
 只越町にある現庁舎は老朽化が著しく、行政機能が分散していることや耐震性の問題もあって、1986年に新庁舎建設の検討がスタート。2011年の東日本大震災を受け、復興まちづくり基本計画のフロントプロジェクト2に位置づけ、都市機能の融合や拠点性の向上などを視点に議論を深めてきた。19年に新市庁舎の建設基本計画の策定や基本設計業務が完了。津波新想定の公表によって計画の見直しなどの対応が幾たびか必要となった。見直しを重ね、いざ発注手続の段階になると、社会情勢の変化に伴う資材の高騰の影響もあって予定より時間を要する結果に。再入札の結果、昨年12月に請負業者を決定し、やっと本格的な着工にたどり着いた。

happice1

温かさ上乗せ!釜石の思い、能登へ 1杯のコーヒーに添えるメッセージ キッチンカーでお届け

能登を応援するメッセージを書く客を見守る岩鼻伸介さん

能登を応援するメッセージを書く客を見守る岩鼻伸介さん

 
 あの日のお礼です―。釜石市を中心にキッチンカーで営業するコミュニティーカフェ「HAPPIECE COFFEE(ハピスコーヒー)」店主の岩鼻伸介さん(46)は、能登半島地震の被災地へ温かい飲み物を届けている。東日本大震災で大きな被害を受けた釜石・鵜住居町出身で、支援の恩返しのため。そして、懸命に前を向こうとしている人たちに“ホッと”ひと息つける時間をつくってほしいからだ。同じように思いを寄せる市民は多く、その気持ちも届けようと「寄せ書き」集めを開始。託された応援メッセージをコーヒーに添えて能登の人たちに手渡す。
 
1月に訪れた石川県七尾市の避難所での様子(岩鼻さん提供)

1月に訪れた石川県七尾市の避難所での様子(岩鼻さん提供)

 
 「コーヒーを無料で提供中。岩手県釜石市より、あの日のお礼です。2011.3.11→2024.1.1」。1月中旬に約1週間かけて石川県七尾市の避難所3カ所を回り、延べ約900人に無料で振る舞った。「ひと息つけるタイミングなかったね、そういえば…」「こんなおいしいコーヒー、初めて飲んだ」。手渡された一杯のあたたかさに緊張がほぐれたのか、涙する人もいた。「あの時の自分たちにコーヒーを入れている感じだった」と岩鼻さん。
 
 あの日の僕たちがいた―。震災当時、東京でIT関係の経営コンサルタントとして働いていた岩鼻さん。発災から1週間後に釜石入りすると、実家は全壊していた。片付けのため週末に地元に戻る生活をしながら、古里に恩返しできることを思案。もともとコーヒーを介したボランティア活動に取り組んでいて、2011年秋から移動図書館を運営する団体に同行する形で沿岸の仮設住宅などを回ってコーヒーを提供した。キッチンカーでの活動は12年春から。その時に受けた言葉や人々の姿が、能登の今に重なった。
 
キッチンカーの窓越しに撮影した被災地(岩鼻さん提供)

キッチンカーの窓越しに撮影した被災地(岩鼻さん提供)

 
 震災の時は意識していなかったけど、被災して、人や応援のありがたみが分かった―。七尾市での活動時に多かった言葉。喜んでもらっていると感じた岩鼻さんは、活動の継続を決めた。何度も来てくれる支援者の存在に「忘れられていない」と実感できた自身の経験もあるから。交流サイト(SNS)で活動の様子や思いを発信すると、市民や客から「現地に行けないけど、何か協力したい」と声が寄せられた。
 
店先でメッセージを書く人も。岩鼻さんの活動を後押しする

店先でメッセージを書く人も。岩鼻さんの活動を後押しする

 
 「いわて・釜石から想っています」「あせらず一歩」。大町のTETTO周辺で営業する水曜日、店先で客が思いをつづる。1杯に相当する1口500円のカンパを募り、協力した客が紙製カバー「スリーブ」にメッセージを書き込むという支援の仕組みを用意した。寄せ書きには「頑張れ」と書かないのがルール。「頑張れって言うけど、今もすごい頑張っている。これ以上どう頑張れば…」。被災地のつぶやきは「分かりすぎるくらい分かる」からだ。
 
 無理しないで―。大町で石材店を営む清水麻美絵さん(47)は、13年前の津波で被災しつらかった時期に言われてうれしかった言葉を記した。それと、大量の菓子も差し入れ。「コーヒーと甘いもので一服してもらえたら」と願う。
 
釜石高生の協力に笑顔を見せる岩鼻さん(左から2人目)

釜石高生の協力に笑顔を見せる岩鼻さん(左から2人目)

 
 「ちょっとあったまるべ」「コーヒー飲んでひと休み」。釜石高校では寄せ書き会(2月15日)があり、生徒たちはカラフルなペンでメッセージやイラストを書き込んだ。板谷美空(みく)さん(2年)は「苦しさやつらさに寄り添えられたら。少しでもほっと心が楽になるといいな」と思いやる。
 
色とりどりのペンでメッセージを書き込む生徒

色とりどりのペンでメッセージを書き込む生徒

 
被災地を思い釜石市民や客が寄せ書きしたスリーブ

被災地を思い釜石市民や客が寄せ書きしたスリーブ

 
 一瞬でも安らぐ時間を届けたい―。岩鼻さんは寄せ書きを能登半島へ持ち込み、2度目の活動中。今回も、被災者支援団体のメンバーとして七尾市を中心に回っている。思いが詰まったスリーブをカップに巻いて「はい、どうぞ」。人とのつながりが見えた時、より気持ちが伝わると感じていて、「優しい心が伝播(でんぱ)していくといい」と笑顔を添える。
 
こだわりのコーヒーを提供する岩鼻さん

こだわりのコーヒーを提供する岩鼻さん

 
おいしさアップ!会話を楽しむことが隠し味

おいしさアップ!会話を楽しむことが隠し味

 
 幸せのひとかけらを―。「Happy」と「Piece」を組み合わせた造語を店名にし、岩鼻さんはコーヒーという「人に安らぎを与えるもの」を届け続ける。カップからあふれるのは深い香りと味わい。豆は公正な取引を通じ原産国の生産者を支援するフェアトレードで仕入れ、自家焙煎(ばいせん)する。お湯を注いで丁寧に抽出する間が、客との触れ合いタイム。気さくな岩鼻さんの人柄に引かれ、会話目当ての人も多い。コーヒーを通じて人が集える場は釜石から能登へ。カンパ、寄せ書きへの協力を募って活動を継続する考えだ。

gakkotekiseika1

小中学校規模、配置の適正化へ 釜石市教委 基本方針策定に向けた地域説明会開始 22日まで

小中学校の規模、配置の適正化基本方針へ住民の意見を聞いた地域説明会=中妻地区生活応援センター、15日

小中学校の規模、配置の適正化基本方針へ住民の意見を聞いた地域説明会=中妻地区生活応援センター、15日

 
 少子化の進行や人口減で、今後さらに児童生徒数の減少が見込まれる釜石市。市教育委員会(髙橋勝教育長)は子どもたちにとって望ましい教育環境を整備するため、小中学校の規模、配置の適正化を図る基本方針案をまとめた。15日から5中学校区の生活応援センターで、同案に対する住民の意見を聞く地域説明会が開かれている。市教委はパブリックコメントや保護者アンケートを含めた意見を参考に、本年度内の基本方針策定を目指す。
 
 市教委は児童生徒数の減少で学校の小規模校化が進む状況を踏まえ、2021年3月、釜石市学校規模適正化検討委員会(14人)を設置。学校、保護者、民間団体などから委嘱された委員が小中学生の教育環境をどう整えるべきか議論を重ね、22年11月、市教委に提言。これを受け、市立小・中の学校規模適正化、適正配置に向けた基本方針(案)が作成された。
 
 同市には9小学校、5中学校があるが、いずれも児童生徒数は年々減少。本年度、小学校全学年でクラス替えが可能なのは2校(小佐野、甲子)だけ。複式学級となっているのは3校(白山、栗林、唐丹)。出生数、居住区を基にした今後の推計で22年度と29年度の児童数を比較すると、釜石、双葉でほぼ半減、小佐野で約100人減が見込まれ、釜石、双葉では複式学級の必要性が出てくる。中学校では今後、双葉、釜石両小の児童数減に伴って釜石中の生徒数が大幅に減少する見込みで、34年度には現在の半数以下になることが予測される。釜石以外の4中学校は同年度には全学年1学級となる見込みで、小規模校化が顕著になっていく。
 
 小規模校化に伴う課題としては、小学校では▽同学年で切磋琢磨する環境を作りにくい▽音楽や体育での学習活動の制限▽複式学級担当教員の負担増、中学校では▽専門教科の免許を有する教員が配置されない▽部活動の選択肢が限られる-などが挙げられる。このため市教委は、子どもたちの望ましい教育環境の実現には「学校規模の適正化、適正配置が必要」とし、「全市的な観点からの学校統合」と「小中一貫教育導入の可能性」について検討したい考え。
 
児童生徒数の減少、学校規模確保への方策などが示された基本方針案について説明

児童生徒数の減少、学校規模確保への方策などが示された基本方針案について説明

 
 検討にあたり、学校は地域コミュニティーの中核的な役割も担っていることから、「当面は現在の5中学校区から学校がなくならないよう配慮し、各区内で1小学校は存続させることを基本」とする。いずれの場合も既存校舎を活用する予定。複式学級の措置は可能な限り行わず、小学校の規模は6学級以上(各学年1学級以上)を基準とする。中学校は9学級以上(各学年3学級以上)が望ましいが、学区が広範囲になるなどの課題があることから8学級以下もやむを得ないものとし、小中一貫教育の導入についても検討する。1学級は15~35人とする。配置は通学条件を考慮。通学時間は小学校45分以内、中学校1時間以内を目安とし、通学距離が小学校でおおむね2.6キロ、中学校で同4キロ以上の場合はスクールバスの運行など通学手段の確保に努める。小規模校を存続させる場合の教育の充実、保護者、地域、市民の理解を得ることも方針に盛り込む。
 
釜石中学校区の子どもを持つ親など地域住民(写真下)が市教委(同上)の説明に耳を傾けた

釜石中学校区の子どもを持つ親など地域住民(写真下)が市教委(同上)の説明に耳を傾けた

 
 基本方針案について意見を聞く地域説明会は15日の中妻地区生活応援センター(釜石中学区)を皮切りに始まった。市教委から髙橋教育長、藤井充彦教育部長(兼学校規模適正化推進室長)ら9人が出席。保護者を含む地域住民約20人が参加した。藤井教育部長が方針の概要を説明後、質疑応答が行われた。参加者からは今後のスケジュールの見通し、スクールバスの稼働状況などについて質問が出されたほか、魅力ある学校、育成の仕方、地域説明会の学校開催などに関し意見が出た。
 
 髙橋教育長は「教委としては、当面は複式学級の解消に力点を置きながら進めていきたい。小規模校も大規模校もそれぞれに良さがある。釜石の現状を踏まえ、子どもたちにとって何を大事にすべきか、皆さんと一緒に考えたい」と話した。
 
参加者からはさまざまな質問、意見が出された

参加者からはさまざまな質問、意見が出された

 
 市教委は策定した基本方針を具現化するため、24年度は推進計画の策定に取り組む。推進計画策定委を設け検討してもらうほか、保護者、地域住民との懇談を行いながら計画案を取りまとめていく予定。
 
 基本方針案の地域説明会は19日(月)に松倉地区コミュニティ消防センター、20日(火)に唐丹地区生活応援センター、22日(木)に平田地区生活応援センターで開催する。時間はいずれも午後6時30分から。事前申し込みは不要。

bokin1

助け合いの心のせ 釜石野球団、募金活動 能登半島地震の被災地へ「生きる力に」

募金活動を行う釜石野球団のメンバーら

募金活動を行う釜石野球団のメンバーら

 
 釜石市の社会人野球チーム「釜石野球団」(佐藤貴之監督、約30人)とその弟分・小学生を中心とした少年野球チーム「釜石野球団Jr.(ジュニア)」(大瀬優輝監督、23人)は10日、能登半島地震の被災地を支援しようと、大町の商業施設イオンタウン釜石で募金活動を行った。ジュニアメンバーは東日本大震災後に生まれたが、家族ら身近な人の話や学校生活の中で学び、記憶をつなぐ世代。「助けてもらったから、今度は…」。能登の状況を古里の記録に重ね、買い物客に元気いっぱい協力を呼びかけた。
 
 募金は、いち早く応援の取り組みをスタートさせた釜石市赤十字奉仕団(中川カヨ子団長、15人)の主催。野球団は大人、ジュニア合わせて約30人が集まり、奉仕団メンバーら約10人とともに活動した。呼びかけには市社会福祉協議会も協力した。
 
能登半島地震の被災地を思って寄付を呼びかけ

能登半島地震の被災地を思って寄付を呼びかけ

 
「協力を」。奉仕団とともに活動する野球少年ら

「協力を」。奉仕団とともに活動する野球少年ら

 
 参加者は施設入り口3カ所に並び、買い物客に「能登応援の活動をしています」「よろしくお願いします」などと約2時間アピール。ジュニアチーム主将の小林大空(かなた)君(11)は「震災の時は生まれていなかったけど、たくさん助けてもらった(と聞く)。この募金が被災した人たちの生きる力になればうれしい」と思いを寄せた。
 
子どもらの呼びかけに応え、買い物客らが善意を寄せた

子どもらの呼びかけに応え、買い物客らが善意を寄せた

 
 ジュニアは2022年春に発足し、保育園年長から小学生までの男女が野球などの運動に親しむ。能登地震を受け、子どもたちから「何かやらないの?」と声が上がり、応援活動を思案。野球道具の支援や子どもの遊び場確保に役立つことを―とも考えたが、大人たちの経験から「生活再建が最優先」と義援金を送る取り組みに決めた。チーム立ち上げ時に地元企業から運営費の協賛が寄せられたこともあり、地域貢献として施設周辺の美化活動も展開。ごみ袋を手に菓子の空き袋やたばこの吸い殻などを拾い集めた。
 
ごみ拾いで地域の美化活動に協力する子どもたち

ごみ拾いで地域の美化活動に協力する子どもたち

 
 佐藤監督(54)は「震災で助けられた経験を伝え聞いている子どもたちは『今度は自分たちが』という意識がある」と見守る。「やるか!」と実行した今回の活動で、「震災の記憶をつなぎ、助け合いの心を養ってもらえたら」と望むのは大瀬監督(34)。野球は助け合いのスポーツでもあり、「プレーに生きてくる」と信じる。
 
 この日、奉仕団は5時間にわたって呼びかけを展開した。託された義援金は28万9353円。他の活動で集まった思いと合わせて日本赤十字社に送り、被災地の人たちの生活支援に役立ててもらう。中川団長(76)は「息の長い活動になる」と、これからも「恩返し」の支援を続ける構えだ。

neuhof1

一緒に楽しく~♪合唱ワークショップ ノイホフ・クワィアー 3月に釜石で演奏会

ノイホフ・クワィアーによる合唱ワークショップ

ノイホフ・クワィアーによる合唱ワークショップ

 
 釜石市の「親と子の合唱団ノイホフ・クワィアー」(小澤一郎代表)による歌のワークショップが3日、小佐野町の小佐野コミュニティ会館で開かれた。今後4回ほど練習日を設けた上で、参加者は3月中旬に予定する演奏会で発表する。
 
 「合唱をしてみたいが敷居が高い…」と感じている人や、「趣味を見つけたい」などと考えている人に、声を出すことの楽しさ、それが重なり合った時の奥深さを体感してもらおうと企画した。ワークショップには小学6年生から50代までの4人が参加。事務局の菊池恵美さん(41)が講師を務めた。
 
 同団は46年の歴史を誇る。入団条件は「楽譜が読めなくてもいい。歌が下手でもいい。0~100歳まで」。みんなで歌う楽しさを感じられるようにと、創立者の故渡辺顕麿さんが設けた。その中にある「楽譜」が特徴の一つ。平行な5本の線に音符が記された五線譜ではなく、ローマ字で「d(ド)/r(レ)/m(ミ)…」とつづった独自の楽譜を使う。
 
音符の代わりにローマ字が並ぶ楽譜がノイホフ流

音符の代わりにローマ字が並ぶ楽譜がノイホフ流

 
ペンを持って文字を追いながら声を出してみる

ペンを持って文字を追いながら声を出してみる

 
 まず、その楽譜の読み方からスタート。例えば、「so(ソ)」という文字の下に黒い点が付いているのは「低いso」、上に付いていれば「高いso」となる。音の長さを示す4分音符(1拍)をノイホフ方式にすると、文字だけの表記に。字の下に線が引かれているものは8分音符(2分の1拍)という感じで、参加者から「頭の体操だ」と声が聞かれた。
 
 演奏会への参加は任意だが出番は決まっていて、歌うのは「涙そうそう」「栄光の架橋」「世界に一つだけの花」の3曲。楽譜に慣れたら、早速声を合わせた。どの曲も耳なじみがあり、小学生の2人は「楽しかった。I like music(音楽が好き)だから」と笑顔を重ねた。
 
みんなで声を合わせる楽しさを体感する参加者

みんなで声を合わせる楽しさを体感する参加者

 
 大槌町の会社員阿部千夏さん(25)は、昨年末の「かまいしの第九」最終公演に感動し、「歌いたい」と刺激を受けた。そんな時に合唱ワークショップを知り、参加を即決。ローマ字表記、手書きの楽譜の珍しさに少し戸惑ったが、「音楽をゼロから感じる楽しさがある」と心を躍らせる。団員の練習風景も見学し、その歌声に背筋が伸びた様子。「一緒に歌えるのが楽しみ。スーッと声が出せるよう調子を整えたい。練習あるのみ」と気合を入れた。
 
ノイホフ団員たちも演奏会に向け練習を重ねる

ノイホフ団員たちも演奏会に向け練習を重ねる

 
 団員は現在、高校3年生から70代まで10人。年に2回程度の定期演奏会を開いている。ワークショップは「入団につながれば」との期待もあるが、体験だけでも歓迎。指揮も務める小澤代表は「楽しく一緒に歌いましょう」と控えめに見守る。
 
 本番となる同団の第145回ファミリーコンサートは3月17日(日)、釜石市民ホールTETTOのホールBで開催される。午後2時開演。