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より便利にスムーズに 県交通バス釜石大槌路線に地域連携ICカード28日から導入

地域連携ICカード「Iwate Green Pass」をバス車内で試す小野共市長(右)=28日

地域連携ICカード「Iwate Green Pass」をバス車内で試す小野共市長(右)=28日

 
 岩手県交通(本田一彦社長)の釜石営業所管内で28日、地域連携ICカード「Iwate Green Pass(いわてグリーンパス)」の運用が始まった。管内6路線、バス19台に順次導入される。「Suica(スイカ)」など全国交通系ICカードとの相互利用が可能で、独自のポイントサービスもある。スムーズな乗降、利便性向上で地域公共交通の活性化に期待が寄せられる。
 
 28日は釜石市鈴子町の釜石駅前ロータリーで、関係者による運用開始式が行われた。同市の小野共市長は「市内の交通弱者、バス利用者の利便性が大きく向上するものと期待している」とあいさつ。本田社長は「国、県、市町の支援に感謝する。地域のインフラの一部としてご愛顧いただき、皆さまのお力で育てていただきたい」と述べた。初日はICカード対応車両2台が運行した。
 
地域連携ICカードの運用開始を祝う小野市長と県交通の本田一彦代表取締役会長兼社長(右)

地域連携ICカードの運用開始を祝う小野市長と県交通の本田一彦代表取締役会長兼社長(右)

 
運用開始式には県交通と市、釜石駅周辺の事業者、団体など関係者が集まった

運用開始式には県交通と市、釜石駅周辺の事業者、団体など関係者が集まった

 
 いわてグリーンパスはJR東日本の「Suica」をベースにした地域版交通系ICカード。同カードで県交通バスの運賃を支払うと、3%が交通ポイントとして付与される。たまったポイントが乗車運賃と同額以上になると、自動的にポイントで運賃が支払われる。交通ポイントは県交通の対象路線でのみ利用できる。
 
 カードは無記名と記名式の2種類があり、発行金額は2千円。野田町の釜石営業所で販売している。チャージ(入金)は導入路線のバス車内、コンビニエンスストアなどでできる。バス車内では千円単位で、最大2万円までチャージ可能。
 
乗車時は右側のカードリーダー(読み取り機)にICカードをしっかりタッチ

乗車時は右側のカードリーダー(読み取り機)にICカードをしっかりタッチ

 
降車時は運賃箱上部のカードリーダーにタッチ(音が鳴る)。カード残高から自動的に精算される

降車時は運賃箱上部のカードリーダーにタッチ(音が鳴る)。カード残高から自動的に精算される

 
 釜石営業所管内の導入路線は釜石市内線、上平田ニュータウン線、小川線、定内県立病院線、浪板線、赤浜線。ICカード対応機器の入れ替えは2月中旬ごろまでかかる見通し。切り替え期間中はICカード対応車両と旧来の磁気式バスカード対応車両が混在するため、利用者には両カードの所持を呼び掛ける。
 
 同営業所の鶴飼光裕所長は「スピーディーに乗車でき、カードの買い替えの必要もない。ポイントもたまってお得。ぜひ、お客様にご利用いただきたい」と話す。
 
ICカードが使える車両にはロゴマーク(赤丸)が掲示されている(写真右下は拡大)

ICカードが使える車両にはロゴマーク(赤丸)が掲示されている(写真右下は拡大)

 
 同カードは2021年の盛岡地区での運用を皮切りに、県内営業所に導入されてきた。釜石は13営業所中11カ所目の導入。現在、盛岡地区だけで運用される “IC定期券”も将来的には県内全域に拡大していきたいという。

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広がれ!防災の輪 釜石市民×外国人住民 災害の備え かるた、クイズで楽しく学ぶ

防災かるたを使って災害発生時の適切な行動を学ぶ参加者

防災かるたを使って災害発生時の適切な行動を学ぶ参加者

 
 災害時に役立つ防災知識を釜石市在住の外国人に知ってもらう催しが26日、同市鈴子町の市国際外語大学校で開かれた。「難しい」と思われがちな防災用語を、分かりやすく伝えるアイテムとして用意されたのは「かるた」。簡単な日本語とそれに合うイラストが入った札に手を伸ばし、楽しみながら防災意識を高めた。
 
 地域住民との交流促進を目指して実施している「釜石グローバルラウンジ」(市、市国際交流協会主催)の一環。技能実習や特定技能の在留資格を持ち、市内で働くベトナムやインドネシアなどの出身者、同校で学ぶネパール人留学生ら約40人に加え、同協会員や国際交流に関心のある中高生なども参加した。
 
 外国人、日本人が輪になって勝負。参加者の多くは絵札に入った頭文字の平仮名を理解しているようで、目当ての札を見つけると素早く手を出した。札をのぞき込む表情は真剣だったが、手が重なり合ったり、お手付きしたりすると、笑顔に一変。地域住民が本領を発揮し、「バンッ」と大きな音を出しながら札を取ると、実習生らは驚きつつも、「お~」と感動の声を上げたりした。
 
釜石で暮らす人たちが輪になって「防災かるた」に挑戦

釜石で暮らす人たちが輪になって「防災かるた」に挑戦

 
 「気を付けよう 地震は一回じゃ 終わらない」「戻らない 走って逃げよう 高いところへ」「明日かも 災害はいつ起きるか わかりません」「普段から(いつも)調べておこう 避難場所」。かるたの読み札は、同校外語観光学科の学生が既製の「防災かるた」を参考に、「やさしい日本語、想像しやすい言葉」を選んで作製。短い言葉をつなげるといった工夫も加えた。
 
簡単な日本語をつないで作られた読み札

簡単な日本語をつないで作られた読み札

 
読み手の声に聞き耳を立て、構える参加者

読み手の声に聞き耳を立て、構える参加者

 
 市国際交流課の職員による講話もあり、災害の種類や災害時に使われる日本語、避難場所と避難所の違いなどを確認。「家や、おみせにいます。地震がおきました。すぐ、外ににげますか?」といった問いかけ、クイズを通して普段から地域の人と関わりを持つことや、避難訓練に参加しておくことなど備えの大切さも学んだ。
 
防災用語などを解説する市職員の話を熱心に聞く参加者

防災用語などを解説する市職員の話を熱心に聞く参加者

 
話し合いをしながら防災に関するクイズにも挑戦した

話し合いをしながら防災に関するクイズにも挑戦した

 
 初めてのかるたで15枚の札を取ったネパール出身の学生パビトラ ネウパネさん(20)は日本の正月遊びを楽しみながら、災害発生時の行動を記憶。「揺れたとき 机やイスの下に はいりましょう」との読み札の言葉を頭に浮かべた。
 
 フィリピン出身のエルマー ダイダイさん(29)は「初めての経験だったが、説明してもらって少しわかった。いろんな人と会って話すことができたのも良かった」とうなずいた。「溶接」の特定技能を有し即戦力として造船会社で働いていて、日本での生活は5年になる。「日本語をしゃべれるし、平仮名、カタカナは分かるけど、漢字は難しい」と肩をすくめる。あと数年在留でき、釜石で仕事を継続する予定。「防災無線をしっかり聞くようにしたい」と、情報収集の必要性に認識を深めた。
 
防災を通じて交流を深めた外国人と地域住民

防災を通じて交流を深めた外国人と地域住民

 
 同課によると、現在釜石で暮らす外国人は約450人で、増加傾向にある。半数はベトナム人で、水産加工や機器製造に携わる技能実習生が多い。近年、大規模な地震や台風などの自然災害が頻発していることから、被災経験の少ない外国人にも防災に関する知識を学んでもらおうと企画。「災害はいつ起きるか分からない。準備が大切」と繰り返し強調し、今後もこうした取り組みを続けたい考えだ。

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水辺に集う野鳥に子どもら大喜び! 鵜住居川河口周辺で観察会 飛ぶ、泳ぐ、ついばむ-多彩な姿に感激

片岸公園内の沼地に着水するオオハクチョウ=25日

片岸公園内の沼地に着水するオオハクチョウ=25日

 
 釜石市の鵜住居川河口周辺で25日、冬季恒例の水辺の鳥観察会(市生活環境課主催)が開かれた。同所には今年も冬の使者・オオハクチョウが飛来。その優雅な姿で訪れる人を楽しませている。観察会の参加者は釜石野鳥の会(臼澤良一会長、7人)の会員に見つけた鳥の名前や特徴を教わりながら観察。色彩豊かな体色や羽を広げて滑空する姿に感動の声を上げた。
 
 同観察会は市民の環境保全意識の醸成などを目的に1977年から続けられる。今年はボーイスカウト釜石第2団が行う観察会との同時開催。子どもから大人まで45人が集まった。
 
 観察は東日本大震災後に整備された片岸公園からスタート。沼地を囲む遊歩道を進んでいくとオオハクチョウの群れが参加者を出迎えた。羽が灰色の幼鳥を含め20羽以上を確認。参加者は間近で見る体の大きさ、くちばしを含む顔の形状、羽の質感などをじっくりと観察した。野鳥の会の会員は「ハクチョウは冬の寒さをしのぐため日本より北の方からやってきます。ここには2月ごろまでいて、再び北に帰ります」などと説明。人の近くに寄って来るが、野生の鳥なので決して餌を与えないよう教えた。鵜住居川周辺では今季、約40羽の飛来が確認されているという。
 
片岸公園の遊歩道から野鳥を探す観察会の参加者

片岸公園の遊歩道から野鳥を探す観察会の参加者

 
オオハクチョウの群れを間近で観察。独特な鳴き声も聞こえる

オオハクチョウの群れを間近で観察。独特な鳴き声も聞こえる

 
幼鳥は灰色の羽が特徴。成鳥になるにつれ真っ白に…

幼鳥は灰色の羽が特徴。成鳥になるにつれ真っ白に…

 
公園内の広場で餌をついばむ姿も。水上では見られない足の形状も分かる

公園内の広場で餌をついばむ姿も。水上では見られない足の形状も分かる

 
 さらに進み、鵜片橋のたもとから川の中州に目をやるとアオサギの群れがいた。フィールドスコープや双眼鏡で見ると青っぽい羽の色や独特の立ち姿が確認できた。橋の上からはヒドリガモやマガモなど複数種のカモを確認。潜水が得意なカイツブリやオオハムも見られた。
 
写真左上から時計周りにオカヨシガモ(雄)、ホオジロガモ、ホシハジロ(雌)、オオバン

写真左上から時計周りにオカヨシガモ(雄)、ホオジロガモ、ホシハジロ(雌)、オオバン

 
ヒドリガモが群れで飛ぶ姿も圧巻。この日は人の頭上近くも通った。水辺でも多くの個体が確認された

ヒドリガモが群れで飛ぶ姿も圧巻。この日は人の頭上近くも通った。水辺でも多くの個体が確認された

 
 長内川と鵜住居川の合流地点、鎧坂橋付近では、鮮やかな体色で“飛ぶ宝石”と称されるカワセミが見られた。土手に横穴を掘って巣を作る習性があり、周辺ではふんで白くなった土が確認されている。営巣に適した環境があることで、ここ数年、毎年見られている。観察会では先行した人たちだけが運良く目にすることができた。
 
釜石鵜住居復興スタジアム前の鎧坂橋付近では毎年カワセミが見られる。左下のカワセミ写真は釜石野鳥の会の菊地利明さんが以前に撮影

釜石鵜住居復興スタジアム前の鎧坂橋付近では毎年カワセミが見られる。左下のカワセミ写真は釜石野鳥の会の菊地利明さんが以前に撮影

 
 約1時間の観察後、出発地点に戻り、見られた鳥の種類を集計した。結果は31種類。この日は風のない穏やかな天候だったためか、風に乗って滑空するオオワシやハヤブサなどの大型猛きん類は確認できなかったが、あまり見られないハシビロガモやシロエリオオハムを見ることができた。
 
ハシビロガモはくるくる回りながら採餌。個体の周りには水の渦ができる。平たいくちばしも特徴

ハシビロガモはくるくる回りながら採餌。個体の周りには水の渦ができる。平たいくちばしも特徴

 
観察会では確認できなかったベニマシコ(雄)を写真で紹介。顔や腹部の赤みが特徴。今の時期に見られる

観察会では確認できなかったベニマシコ(雄)を写真で紹介。顔や腹部の赤みが特徴。今の時期に見られる

 
 同市の麻生茜さん(33)、伊織ちゃん(5)親子は観察会に初めて参加。「いろいろな鳥をいっぱい見た。羽根も見つけたよ。青い鳥が好き」と伊織ちゃん。母茜さんは「今まで鳥は風景の一部として見るだけだったが、今日は雄と雌の模様の違いや生態などを詳しく知ることができてすごく面白かった」と大満足。昨春、同市に越してきた。「岩手釜石に来たからには自然のことをもっと知って、いろいろな気付きを得られれば」と子どもの成長の一助になることも期待する。
 
 ボーイスカウト団員の伊藤颯秀さん(小6)は車で同所を通りかかって鳥を見たことはあったが、じっくり観察したのは今回が初めて。「かわいい鳥もいたし、群れでいたオオハクチョウが印象に残った。釜石にこんなに鳥がいるのはすごい。今度は空を高く飛ぶワシとかタカを見てみたい」と声を弾ませた。
 
 2011年の震災による津波で同所一帯は大きな被害を受け、野鳥の隠れ家となるヨシ原など草木は全て流された。震災後の整備事業で沼地を設けた新たな自然公園が完成し、周辺の植生が徐々に戻るにつれ、激減した野鳥も少しずつ増えてきた。震災前の50種前後には及ばないものの、直近の過去3年は30種前後で推移している。昨年11月の野鳥の会による詳細調査では約40種が確認された。
 
震災後、水門が整備された鵜住居川河口周辺(写真上)、堤防内側の片岸公園(写真下)は草地が再生してきたが、鳥が営巣できる樹木はまだ少ない

震災後、水門が整備された鵜住居川河口周辺(写真上)、堤防内側の片岸公園(写真下)は草地が再生してきたが、鳥が営巣できる樹木はまだ少ない

 
 釜石野鳥の会の臼澤会長は「被災直後に比べ種類は多くなったが、個体数が減っている印象。身近だったスズメもあまり見かけなくなった。地球温暖化などさまざまな環境の変化が影響しているのかも」と懸念。被災から10年以上かけて復活してきた野鳥の生息環境を次世代につなぐため、「観察会をきっかけに自然保護に関心を持つ人が増えてくれるといい。私たちはそのお手伝いを続けていきたい」と話した。
 
参加した子どもたちは双眼鏡やフィールドスコープでさまざまな野鳥を観察。楽しい時間を過ごした

参加した子どもたちは双眼鏡やフィールドスコープでさまざまな野鳥を観察。楽しい時間を過ごした
 
「これは何の羽根?」釜石野鳥の会の臼澤会長(左)に質問も…

「これは何の羽根?」釜石野鳥の会の臼澤会長(左)に質問も…

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「地域の本屋を守りたい…」 釜石高生がお薦め本を紹介 足運ぶきっかけ作り、書店不況打開の一助に

トークイベントでお薦め本を紹介した釜石高2年(左から)小林桐真さんと澤舘慧斗さん。桑畑書店の桑畑眞一店主と

トークイベントでお薦め本を紹介した釜石高2年(左から)小林桐真さんと澤舘慧斗さん。桑畑書店の桑畑眞一店主と

 
 本屋に足を運ぶ楽しみを知ってほしい―。釜石高2年の小林桐真さんと澤舘慧斗さんは19日、釜石市大町の桑畑書店(桑畑眞一店主)で、お薦めの小説と漫画を紹介するイベントを開いた。文科省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定されている同校の教育プログラム「探究活動」の一環で取り組んだもの。「本屋の不況の打開策を考える」というテーマを掲げた2人は、誘客のための方策として、同書店にお薦め本8作品を並べた特設コーナーを開設中。イベントではその中から5作品を紹介し、熱いプレゼンで本や書店の魅力を伝えた。
 
 お薦め本は同校の全校生徒を対象に行った「好きな本、気になる本」のアンケート結果を基に選んだ。多くの支持があった小説「アルジャーノンに花束を」(ダニエル・キイス著、小尾芙佐訳)、漫画「カグラバチ」(外薗健作)と「ハイキュー!!」(古舘春一作)のほか、要望のあった恋愛漫画や小林さんと澤舘さんの“推し”本を集めた。
 
 19日の書店イベントでは小説2作と漫画3作を紹介。物語のあらすじ、文章や作画の特徴、自身が共感した部分などを語った。小林さんが取り上げた小説「四畳半神話大系」(森見登美彦著)は、京都に住む大学生の日常が4つの並行世界で描かれるSF的要素を含んだ作品。内容に反し、「凝った文章、特異な比喩が魅力。テンポよく、するすると読み進められる」と小林さん。主人公の大学生が持ち続ける「あの時、こうしていれば…」という誰にでもある「たら、れば」に共感し、「後悔から脱却するにはどうしたらいいのか?読んでのお楽しみ」と興味をそそった。
 
小林さんと澤舘さんが桑畑書店で開いた推薦本魅力発表会。写真右下は推薦した小説

小林さんと澤舘さんが桑畑書店で開いた推薦本魅力発表会。写真右下は推薦した小説

 
知的障害者が主人公の小説「アルジャーノンに花束を」を紹介する小林さん

知的障害者が主人公の小説「アルジャーノンに花束を」を紹介する小林さん

 
 2人が紹介した漫画3作はいずれも週刊少年ジャンプに連載され、単行本化されたもの。漫画「PPPPPP(ピピピピピピ)」(マポロ3号作)はピアニスト一家の物語。小林さんは「少年ジャンプとしては異質ながら、ピアノ勝負がバトル漫画チック。凡才、天才それぞれの葛藤、苦悩を両側面から描き出し、読者の心に刺さる」と分析。「音を“見せる”ために用いたファンタジーという演出がとにかく独特で面白い」とも話し、根強い人気をアピールした。
 
2人のトークに聞き入る大人たちも興味をそそられた

2人のトークに聞き入る大人たちも興味をそそられた

 
 刀匠の父を謎の妖術師組織に殺され、復讐のため戦うことを決意する少年が主人公の「カグラバチ」。澤舘さんは“刀剣”つながりで、一大ブームを巻き起こした漫画「鬼滅の刃」の主人公との違いを考察。「カグラバチの主人公チヒロは無表情で敵を倒していくが、要所要所で感情を表に出すシーンがあり、そのギャップが魅力。単行本は5巻まで出ているが、アニメ化もまだ。ぜひ、先取りで」とPR。高校バレーボールが題材の「ハイキュー!!」は現日本代表選手も影響を受けたという作品で、昨年映画化も。澤舘さんは身ぶりも交え、魅力的な登場人物を紹介。「作品は没入型。実際に1試合を見たような感覚を味わうことができる。バレーボール初心者も読みやすい」などと熱弁した。
 
人気急上昇の漫画「カグラバチ」を紹介する澤舘さん

人気急上昇の漫画「カグラバチ」を紹介する澤舘さん

 
 集まった人たちからは2人に対し質問や感想も。「読んでみたくなった」と、帰りに気になった本を買い求める人もいた。遠野市で書店を経営する内田正彦さん(46)は「高校生がどれほどできるのか見てみたくて」と来店。2人の大人顔負けのしゃべりに感心した様子で、「遠野でも中高生が書店に足を運ぶきっかけになるようなことをやってみたい」と話した。地域性を生かし、「遠野物語」の勉強会や怪談イベントも企画してきた内田さん。活字離れが進む若年世代の興味喚起につながる方策へ意欲を高めた。
 
イベント参加者からは「感情移入した登場人物は?」などさまざまな質問が…

イベント参加者からは「感情移入した登場人物は?」などさまざまな質問が…

 
 インターネットの普及や電子書籍の増加で、情報や知識を得る手段が多様化。「欲しい本はネットで」「雑誌はスマホで」―と読者の購買行動が変化する中、書店を取り巻く環境は年々厳しさを増している。小林さんと澤舘さんが、その打開策をゼミテーマに選んだのは「本屋がなくなると困る」という純粋な思いから。「気になる本があった時、本屋ではその両隣にも自然と目がいく。ネットでは得られない周辺情報が入ること、さらには紙の手触りを感じられるのが本屋の大きな魅力」と小林さん。
 
 2人は昨年5月にテーマを設定。「書店の売り上げ増になることを」と、推薦本の紹介コーナー設置を発案し、地元の老舗・桑畑書店の協力で実践の場を得た。校内アンケートを基に作品を選定。10月ごろから同書店内に特設コーナーを置かせてもらった。校内掲示用の宣伝ポスターも作成。桑畑店主から今回のトークイベントのアイデアももらい、約1カ月かけて準備を進めてきた。
 
写真左:身ぶりを交え、漫画「ハイキュー!!」について熱く語る澤舘さん 写真右:桑畑書店入り口正面に設けられているお薦め本コーナー

写真左:身ぶりを交え、漫画「ハイキュー!!」について熱く語る澤舘さん 写真右:桑畑書店入り口正面に設けられているお薦め本コーナー

 
イベントには2人の同級生らも駆け付け、楽しい時間を過ごした

イベントには2人の同級生らも駆け付け、楽しい時間を過ごした

 
 初めての経験に緊張しながらも、伝えたいことを精いっぱい発表した2人。澤舘さんは「汗をかきながらの発表だったが楽しかった。これからも自分の好きな本を紹介できる人でありたい」。小林さんは「1万字もの原稿を書き上げられたのはいい経験。今回の活動を通して外部の人たちとつながり、いろいろな考え方を聞く機会を作れたのは大きな収穫」と話した。残りの活動では、紹介コーナーのポップ作成にも取り組みたい考え。
 
 「面白かったぁー。私自身もいい刺激になった」。2人の発表に笑顔で聞き入った桑畑店主(71)。今回の高校生発の取り組みに「本屋という空間に興味を持ってくれてうれしい。こういう活動は大歓迎」と喜び、「若い人たちが本に親しむきっかけになれば」と願った。

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みんなで体験!多彩な岩手の芸術文化 釜石でフェスタ 伝統から現代まで「魅力、再発見」

見て、聴いて、触れてやってみる企画満載の芸術体験フェスタ

見て、聴いて、触れてやってみる企画満載の芸術体験フェスタ

 
 芸術体験フェスタin釜石・大槌は18、19の両日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。県内各地の文化芸術団体や個人が歌、踊りなど多彩なステージで観客を魅了した。見て、聴いて、触れて、やってみる―。さまざまな体験企画も用意され、来場者が思い思いに楽しんだ。
 
 フェスタは第77回岩手芸術祭の関連企画で、県が主催し、県芸術文化協会が運営を担当した。釜石、大槌の2市町と両市町芸術文化協会、TETTOとの共催。岩手芸術祭美術展と小中学校美術展で入賞した作品が17日から3日間展示された。
 
 18日は舞台公演が行われた。釜石市合唱協会による「岩手県民の歌」で幕開け。県央・沿岸地区で活動する小柳玲子バレエ教室の生徒ら8人による可憐でしなやかな舞、「チャグチャグ馬コ」や「わんこそば」といった岩手の風物を情緒豊かに舞踊化した県邦舞協会のステージと続いた。民謡を歌い継ぐ大槌一心会の若手3人は伸びやかな歌声を披露。盛岡市の団体によるスピード感あふれるチアダンス、切れ味のあるジャズダンス、心あたたまるフルート演奏などもあった。
 
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華麗な踊りを披露した小柳玲子バレエ教室の生徒

 
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岩手県邦舞協会は地域の魅力を詰め込んだ演目を見せた

 
 県内各地の郷土芸能を楽しめる機会に観客は興味津々。「浦浜念仏剣舞」(県指定無形民俗文化財)は大船渡市三陸町浦浜地区に伝えられている念仏踊りで、鎮魂を思わせる静かな舞に多くの視線が注がれた。岩泉高郷土芸能同好会の生徒約20人は岩泉町小本地区で五穀豊穣(ほうじょう)などを祈り舞われてきた「中野七頭舞」を披露。「先打ち」「薙刀(なぎなた)」など7種類の道具を手に、農民の営みを軽快なおはやし、躍動的な踊りで表現した。
 
 「杵(きね)」を持ち、収穫の喜びを体現した岩泉高2年の外舘愛美さん(同会副部長)は「笑顔で踊るので、その楽しさが伝わったらうれしい」と頬を緩めた。他の部活動との掛け持ちで参加する生徒が多く、練習は週3回。「知っている人がいなくなると歴史が途切れる。絶やさないよう、いろんな人に興味を持ってもらえるよう活動していきたい」と伝承への気持ちを強めた。
 
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息ぴったりな岩泉高郷土芸能同好会の「中野七頭舞」

 
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透き通った歌声を響かせたキッズコーラスあぐどまめ

 
 地元釜石からは鼓舞櫻会(桜舞太鼓)が出演。会所属の新舞踊グループ「桜華颶美(はなぐみ)」とにぎやかなステージを繰り広げ、会場を沸かせた。「うまく踊れた」と満足げな久保樹李さん(唐丹小6年)は、キッズコーラスあぐどまめ(大槌町)のメンバーとしてもステージに立った。「歌も踊りも楽しい。決めるところでしっかり動きを止める、かっこいい踊りができるようになりたい。聞いている人に気持ちが伝わるように歌いたい」と背筋をピンと伸ばした。
 
 19日は体験イベント。川柳や俳句、水墨画、脳活書道、茶道、パステル画、クラシックギター、鹿子踊(ししおどり)など20種類以上のプログラムがあった。マクラメ編みのブレスレットづくり、機織り機を使った「さをり織り」体験は女性たちに人気。和太鼓など伝統芸能は親子連れが楽しんだ。
 
機織り機を使った「さをり織り」体験に熱中する女性

機織り機を使った「さをり織り」体験に熱中する女性

 
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「好きな曲を自分で奏でたい」とギター演奏に挑戦

 
臼澤鹿子踊を体験する子ども。頭をつけて踊ってみた

臼澤鹿子踊を体験する子ども。頭をつけて踊ってみた

 
 生け花に触れた勝又愛さん(10)は、ハランやスイトピーなど花材をバランスよく配置し、「みんな仲良し」と出来栄えに大満足。大正琴や短歌などを体験した80代女性は「いろんなものを習得している人たちの活動を知ることができた。続けてやってみようかと思うものもあった。いくつになっても始められるし、やればできる。楽しい道を求めていきたい」と元気に笑った。
 
箏を弾く楽しさを伝えた岩手三曲協会釜石支部メンバー

箏を弾く楽しさを伝えた岩手三曲協会釜石支部メンバー

 
 箏(こと)に触れる機会を提供したのは、岩手三曲協会釜石支部。名取を含めた7人が遊びながら弾く、音を出す楽しさを伝えた。親子で連弾を楽しむ姿もあったといい、「いい宣伝になったと思う。音をつくる面白さを感じてもらえたかな」と事務局の紺野節子さん。敷居が高いと思われがちだとし、「時代に合わせて進化させていかなければ」と話した。最近は地域の小中学校などで出前授業を実施。「気軽に触れてもらえるようにしたい」と、仲間と継続への思いを共有した。
 
スポーツ雪合戦の体験会。子どもたちが熱戦を繰り広げた

スポーツ雪合戦の体験会。子どもたちが熱戦を繰り広げた

 
 TETTO前広場ではスポーツ雪合戦の体験会(18日)も開かれた。7人一組のチームに分かれ、相手チームに雪玉を当てて全滅させるか、チームフラッグを奪えば勝ちという競技。国際大会ジュニアの部で優勝経験を持つ小中学生チーム「ウル虎ジュニア釜石」のメンバーがデモンストレーション。市民が白熱する競技を興味深そうに見つめた。
 
ひょっこり顔出し⁉防護壁にはりついて接近戦に挑む子ども

ひょっこり顔出し⁉防護壁にはりついて接近戦に挑む子ども

 
 体験では、お手玉のような室内競技用の専用球を使った。初体験の菅原一慧君(釜石小1年)は「ボールを投げるのが楽しかった。またやってみたい」と面白さを体感。チームメンバーの髙木琉之介君(双葉小3年)は「試合で勝つのが楽しい。仲間が増えたらうれしい。一緒にやろう」と誘っていた。
 
 釜石芸文協の河東眞澄会長は「多様な体験をきっかけに興味、面白いものを発見してもらえたら。それが趣味になり、生きがい、仲間づくりにつながればいい」と期待した。

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賃上げ、組織拡大、平和実現へ共に歩もう 連合岩手釜石・遠野地域協議会新春旗開き

連合岩手釜石・遠野地域協議会 2025年新春旗開き=15日

連合岩手釜石・遠野地域協議会 2025年新春旗開き=15日

 
 連合岩手釜石・遠野地域協議会(小島安友議長)の2025年新春旗開きは15日、釜石市大町の釜石PITで開かれた。構成する各労組から75人が参加。「社会を新たなステージへ、ともに歩もう、ともに変えよう~仲間の輪を広げ、安心社会、賃上げが当たり前の社会をめざす~」をスローガンに掲げ、本年の活動へ意欲を高めた。
 
 主催者を代表し小島議長があいさつ。米国のトランプ新政権始動をはじめ世界情勢の変化が日本に及ぼす影響を懸念しながら、「国内では物価上昇が続くが、賃金上昇が追い付いていない状況。賃上げの流れを止めることなく、今度の春闘も頑張っていこう。地域の少子高齢化が厳しさを増す中、さまざまなレベルでの政策要請も必要」と組合員の奮起を促した。
 
小島安友議長(写真上)が主催者あいさつ

小島安友議長(写真上)が主催者あいさつ

 
 来賓の連合岩手、佐々木正人副事務局長は本年取り組むべき事項として、「戦後80年」「2025春闘」「参院選」の3つのキーワードを挙げた。先の大戦の悲惨な経験を次世代に伝える役割を若い世代が担っていく必要性を指摘。賃上げの新たなノルム(規範意識)を定着させ、本県最低賃金のさらなる引き上げを目指すこと、労働組合の組織強化、拡大を図ることなどを訴え、「互いに協力し合い、より良い職場や社会を作るため努力する1年に」と呼び掛けた。
 
協議会を構成する各労組から新年の決意表明

協議会を構成する各労組から新年の決意表明

 
 乾杯後、協議会を構成する15労組が紹介され、代表者が本年の活動へ決意表明。女性青年委員会によるお楽しみ抽選会で懇親を深めた。最後は“がんばろう”三唱で、団結を誓った。会場では発生から1年の能登半島地震被災者を支援するための募金活動も行われた。
 
お楽しみ抽選会で親睦を深めたほか、能登半島地震被災者支援の募金活動も…

お楽しみ抽選会で親睦を深めたほか、能登半島地震被災者支援の募金活動も…

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駅前施設のにぎわい創出へ「かまいし冬まつり」 子ども向けコンテンツ多彩に

出張おもちゃ美術館が人気を集めた「かまいし冬まつり」=11日、シープラザ釜石

出張おもちゃ美術館が人気を集めた「かまいし冬まつり」=11日、シープラザ釜石

 
 かまいし冬まつり(釜石観光物産協会主催)は11日から15日まで釜石市鈴子町の釜石駅周辺施設で開かれた。同市への誘客と地域のにぎわい創出などを目的に開催。花巻市の「花巻おもちゃ美術館」の出張開設をはじめ、子どもたちが喜ぶ各種コンテンツが用意され、家族連れなどが楽しんだ。11日は日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)の公式戦を応援するパブリックビューイングもあり、幅広い年代が足を運んだ。
 
 同駅周辺の冬のイベントは久しぶりの開催。メイン会場の釜石物産センター「シープラザ釜石」には、花巻市の体験型木育施設「花巻おもちゃ美術館」が出張開設した。2020年7月にオープンした同館は、地域の木材と歴史、文化を融合させた遊びの空間がコンセプト。館内にある豊富なおもちゃは、全国に3千人以上いるという“おもちゃコンサルタント”が投票で選んだ「グッド・トイ(優良なおもちゃ)」と呼ばれるもの。選考は毎年行われていて、今回の出張美術館にも歴代のグッド・トイ受賞作が持ち込まれた。
 
花巻おもちゃ美術館(マルカンビル2階)が釜石に出張。“あの”大食堂の名物を模したおもちゃも!(写真左上)

花巻おもちゃ美術館(マルカンビル2階)が釜石に出張。“あの”大食堂の名物を模したおもちゃも!(写真左上)

 
子どもたちはさまざまな木製おもちゃに興味津々

子どもたちはさまざまな木製おもちゃに興味津々

 
ユニークな五連のけん玉も(写真左)。ボールは遊び方も多彩に…

ユニークな五連のけん玉も(写真左)。ボールは遊び方も多彩に…

 
 釜石市の小学生久保夢空瑠さん(7)は「いっぱいおもちゃがあって楽しい。木の匂いがするところが好き」と時間を忘れて夢中に…。母康子さん(46)は「見た目のかわいらしさと触り心地の良さが魅力。木製のおもちゃには子どもの自由な発想で遊べるものが多い」と歓迎。乳幼児と小学生が同じ空間に集う機会も普段はあまりないことから、「互いに思いやりながら遊ぶ姿もほほ笑ましい」と目を細めた。花巻の同館では工作のワークショップも行っていて、「来週はそちらに…」と訪問を楽しみにした。
 
 “出張おもちゃ美術館”はこれまでに県内約10カ所で開催されてきたが、沿岸部での開設は今回の釜石が初めて。同館を運営する小友木材店(花巻市)営業部の平野裕幸部長は「心引かれるおもちゃがあると、子どもたちは自然と長く滞在する。気付いたら『木の空間は居心地がいい』というような感覚を味わってもらえれば」と期待。釜石道の開通で距離感が縮まった内陸と沿岸部相互の交流人口増も願い、「花巻の本館にもぜひ…」と来館を呼び掛けた。
 
シープラザ釜石西側駐車場に設けたコースで電動カートなどを走らせる子ども

シープラザ釜石西側駐車場に設けたコースで電動カートなどを走らせる子ども

 
ボーイスカウト釜石第2団は綿あめづくりやロープ結び体験コーナーを開設

ボーイスカウト釜石第2団は綿あめづくりやロープ結び体験コーナーを開設

 
 まつり期間中は電動カートなどを楽しむ乗り物広場、バルーンアート、ヨーヨー釣りなどの縁日コーナーも。JR釜石駅では釜石線の列車運転シミュレーター体験、駅前橋上市場「サン・フィッシュ釜石」では浜焼きコーナーの開設があった。11日にはシープラザ釜石内のラグビーカフェで、日本製鉄釜石シーウェイブスの今季第3戦、清水建設江東ブルーシャークスとの試合を観戦するパブリックビューイングが行われた。試合は35-24(前半14-21)で釜石SWが逆転勝利。今季初白星を挙げ、釜石は1勝2敗、勝ち点5となった。次戦は25日、福島県いわき市のハワイアンズスタジアムいわきで、花園近鉄ライナーズと対戦する。
 
東京で行われた日本製鉄釜石SWと清水建設江東ブルーシャークスの試合を観戦するパブリックビューイング=11日、シープラザ釜石

東京で行われた日本製鉄釜石SWと清水建設江東ブルーシャークスの試合を観戦するパブリックビューイング=11日、シープラザ釜石

 
釜石SWのトライに湧くファンら。地元釜石から選手らにエール!

釜石SWのトライに湧くファンら。地元釜石から選手らにエール!

 
ラグビーカフェではボールを使ったストラックアウトも。子どもたちが楽しんだ

ラグビーカフェではボールを使ったストラックアウトも。子どもたちが楽しんだ

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未来を切り開け!釜石の若者たち 「はたちのつどい」で踏み出す一歩 希望胸に

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釜石市の「はたちのつどい」は晴れやか笑顔がたくさん

 
 13日は「成人の日」。釜石市では12日に「はたちのつどい」(市、市教委主催)が開かれた。同市大町の市民ホールTETTOの式典には、対象者250人中201人が出席。友人と笑顔で再会し近況報告や思い出話、記念撮影などで盛り上がりつつ、節目を祝った。
 
 華やかな振り袖やスーツ姿の若者たちが式典に臨んだ。小野共市長は「20歳は大きな節目。さまざまな権利を持つ一方で、責任ある行動が求められる」と強調した上で、「若く柔軟な発想や活力に期待。可能性を信じて夢に挑戦し、未来を切り開いてほしい」と激励した。
 
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スーツでビシッと決めた出席者。大人としての意識を高める

 
 対象者を代表し、釜石東中出身で富士大に通う洞口優人さん(20)が決意を示した。小学生の頃から野球に熱中し、強豪の仙台育英高に進学。3年生の夏、第104回全国高校野球選手権大会で東北勢として初優勝を果たした。「すべては自分次第」「努力すれば必ず道は開ける」。経験から得た信念を胸に、「未来を決めるのは自分自身。困難や壁にぶつかったとしても、自分たちの力で乗り越え、明るい未来を切り開いていく」と前を向いた。
 
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未来への思いや抱負を発表する洞口優人さん

 
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有志が威勢のいい虎舞で式典を盛り上げた

 
 式典は、対象者から募った有志が進行。実行委7人で内容も決め、ビデオメッセージの作成・上映、市民憲章・防災市民憲章の唱和、市民歌斉唱が行われた。このほか、有志11人が虎舞を披露。支えてくれた家族や地域の人たちに感謝の気持ちを込め、若々しい舞、軽快なおはやしを響かせた。
 
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友人との再会を喜び、晴れ着姿で写真に納まる若者たち

 

二十歳、思うこと…

 
 はたちのつどいは市が催す「大きな同窓会」。数年ぶりに顔を合わせる仲間と会話を弾ませ、スマートフォンで記念写真を撮り合ったり、“ならでは”の光景が広がった。そんな中、新たな一歩を踏み出した若者たちに抱負や古里への思いを聞いた。
 
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スマホでパチリ。会場のあちこちで見られた光景

 
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同じ地区出身者で写真をパチリ。笑顔弾ける

 
 唐丹町出身者で輪をつくっていた川原凜乃さん(19)は「実感が湧かない」と笑いながら首をかしげる。富山大工学部で生物や化学の知識を深めていて、「将来につながるよう、しっかり勉強を頑張る」と気持ちを新たにした。矢内舞さん(20)は専門学校で身に付けたスキルを生かし、春からは関東でアパレル関係の仕事に就く予定。夢は雑誌系の「スタイリスト」だといい、接客業から経験を積み、人脈を広げていく。北海道で学生生活を送る三浦滉平さん(19)は、独り暮らしをする中で家族のありがたみを実感。「徐々に恩返ししたい」と力を蓄える。地域外に出た3人は「帰ってくると安心する」と口をそろえ、「変わらず、居心地のいいまちであってほしい」と願った。
 
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振り袖もネイルも華やかに、自分らしさをアピール

 
 釜石市内の薬品卸会社で働く熊谷紅那さん(20)は式を終え、「これまでは気分だったけど、大人になった」と確信を深めた。昨年12月に結婚。「幸せな家庭を、子だくさんで」と、夫の成織弥さん(21)と笑顔を重ねた。ネイルの制作にはまっていて、式に参加した友人がつけていたネイルは熊谷さん作。「いつかはネイルの店を開きたい」と胸に抱く。
 
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「格好いい大人に」。夢や希望を抱き、歩み続ける

 
 着流しスタイルで決めた会社員の篠原颯汰さん(20)は「格好いい大人に」と笑う。空気圧機器メーカーに勤め、今春には3年目に入る。「仕事を覚えて、職場を引っ張っていけるリーダー的な存在になれるよう頑張る」と背筋を伸ばした。前川泰一さん(20)は、自衛官を目指し勉強中。地域のために働く消防士の父に憧れ、「自分も」と後を追う。不安定な世界情勢に危機感を持ち、「国を守り、人のために貢献できるようになりたい。心も成長させ、恩返しを」と力を込めた。
 
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ネパール人留学生もつどいに参加し釜石での思い出を増やす

 
 昨年10月から釜石で日本語を学ぶネパール人留学生7人も、母国の民族衣装で参加。スーツ姿のムスカン バスネットさん(20)は、日本ならではの行事を楽しんだ。「起業」という夢に向かって、できることを増やしている最中。最近は飲食店でアルバイトも始め、「いろいろ習うから楽しい。みんな優しくて親切」と充実した表情を見せた。
 
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「20」。希望や夢を胸にそれぞれの道を歩んでいく

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地域防災の要 釜石市消防団、出初式で心意気示す きびきびと分列行進、まとい振り

釜石市消防出初式で防火の願いを込めてまとい振り

釜石市消防出初式で防火の願いを込めてまとい振り

 
 釜石市消防団(坂本晃団長、団員522人)の2025年消防出初式は13日に行われた。同市大町の市民ホールTETTOの式典では、災害現場で長年活動した功労者を表彰。市中心部で分列行進をし、地域防災の要として心意気を示した。
 
 団員約400人が参加。統監の小野共市長は式辞で、昨年の災害発生状況を振り返り、「8月の台風では床下浸水や土砂崩れなど被害があったが、人的被害はなかった。火災は7件あったが、前年より3件減った。消防団活動のたまもの」と労をねぎらった。また、今年秋には岩手県の総合防災訓練が釜石、大槌地域で実施される予定で、「消防力の充実、強化につながる」と強調。団員の確保など課題もあるが、「市民が安全に、安心して暮らせるまちの実現のため尽力を」と激励した。
 
永年勤続功労者などの表彰が行われた式典

永年勤続功労者などの表彰が行われた式典

 
地域を守る決意を新たにする消防団員ら

地域を守る決意を新たにする消防団員ら

 
 永年勤続功労、職務精励などで団員70人を表彰。坂本団長は「近年の災害はいつどこで発生するか分からない。すぐに対応できる体制を維持させなければ。一層、気を引き締めて活動を」と求めた。
 
 式典後は市中心部を分列行進。まとい振りが先陣を切り、ラッパ隊の演奏に合わせ分団ごとに8グループが統監台に立った小野市長に敬礼しながら進んだ。消防ポンプ自動車などの車両38台も続いた。
 
まとい振りを披露し防火への士気を高める団員たち

まとい振りを披露し防火への士気を高める団員たち

 
団旗を掲げ、表情を引き締めて市中心部を分列行進

団旗を掲げ、表情を引き締めて市中心部を分列行進

 
消防車両が一堂に見られるパレードは子どもたちに人気

消防車両が一堂に見られるパレードは子どもたちに人気

 
 沿道には多くの市民らが並び、姿勢を正して進む団員たちを頼もしそうに見守った。「じぃじ(祖父)ー」と、数人の子どもが団員に駆け寄って手紙を渡す光景も。「いつも守ってくれてありがとう。これからもよろしくって書いた」とはにかんだ。「すごい」「かっこいい」団員たちの姿に、「火遊びしない」と防火を心がける声も聞こえた。

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“鉄のまち釜石”の小中学生が挑む 「鉄の検定」1、2級認定者18人を表彰

第17回鉄の検定で1、2級を取得し表彰された小中学生(前列)

第17回鉄の検定で1、2級を取得し表彰された小中学生(前列)

 
 釜石市で昨年12月に行われた第17回鉄の検定(鉄のふるさと釜石創造事業実行委主催)の表彰式が11日、大平町の鉄の歴史館で行われた。本年度の検定は一般の部を休止。小学生、中学生の各部に市内3校の児童生徒106人が挑戦した。表彰対象は80点以上の成績優秀者18人。式には8人が出席し、同実行委会長の小野共市長から表彰状などを受け取った。
 
 同検定は“近代製鉄発祥の地”釜石市で、12月1日の「鉄の記念日」にちなんで行われているご当地検定。釜石の製鉄の歴史、関連する人物、地学・鉱物学など鉄に関わる幅広い知識が問われる。例年、小中学生は50問(解答時間30分)、一般は80問(同60分)の出題。80点以上は2級、90点以上は1級、100点満点はアイアンマスターに認定される。
 
11日に鉄の歴史館で行われた表彰式。賞状と副賞が贈られた。左は小学生1位の金野龍真さん(双葉小6年)

11日に鉄の歴史館で行われた表彰式。賞状と副賞が贈られた。左は小学生1位の金野龍真さん(双葉小6年)

 
 今回、1級に認定されたのは小学生、中学生ともに2人。2級は小学生2人、中学生12人が認定された。アイアンマスターはいなかった。小学生の最高得点は92点。同検定初挑戦で最高点をマークした平田小5年の中里陽(あきら)さんは「あまり自信はなかったけど、高い点数が取れてうれしい」と喜びの声。同小では5年生が社会科学習の一環で鉄の学習に取り組んでいて、座学のほか世界遺産「橋野鉄鉱山」、鉄の歴史館見学などで郷土の製鉄の歴史に理解を深めてきた。その成果を十二分に発揮した中里さんは「(鉄について)もっと勉強してみたい」と目を輝かせた。
 
小学生1位の平田小5年中里陽さん(写真左)、中学生1位の釜石中1年川端俐湖さん(同右)

小学生1位の平田小5年中里陽さん(写真左)、中学生1位の釜石中1年川端俐湖さん(同右)

 
 中学生の最高は、92点で単独1位となった釜石中1年の川端俐湖さん。中学時代に2度、アイアンマスターを獲得している兄海惺さん(高2)の影響で、小学生のころから同検定への挑戦を始めた。1級は小学生の時にも取っているが、中学生としては初。今回、弟虹河さん(双葉小6年)は2級認定を受けていて、姉弟ダブル受賞となった。「釜石という小さなまちにこのような素晴らしい歴史や文化があること、それを学んで知識として取り入れられることは釜石市民の誇り」と話し、「中学生のうちにアイアンマスターを取りたい」とさらなる意欲を見せた。
 
表彰式で鉄の検定の感想などを話す小中学生

表彰式で鉄の検定の感想などを話す小中学生

 
主催者からは「学んだ知識を生かし“鉄のまち釜石”を発信してほしい」との願いが伝えられた

主催者からは「学んだ知識を生かし“鉄のまち釜石”を発信してほしい」との願いが伝えられた

 
 同検定は近代製鉄発祥150周年となった2008年にスタート。小中学生は、総合的な学習などで“鉄のまち”の歴史学習や鉄づくり体験に取り組む学校が団体受検をするケースが多い。事業を担当する市文化振興課文化財係の加藤幹樹主査は「子どもたちが一生懸命勉強してくれるので、問題を作る側としてもやりがいを感じる。この勉強を生かして、世界に羽ばたけるような人間になってくれたら」と期待を込めた。

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障害を乗り越え社会とつながる 釜石市の小笠原さん、厚労大臣表彰 市長に報告

厚生労働大臣表彰を受けた小笠原拓生さん

厚生労働大臣表彰を受けた小笠原拓生さん

 
 身体などのハンディキャップを克服し社会活動を継続・活躍している人や、障害者の自立支援に貢献してきた人らを対象に国から贈られる「障害者自立更生等厚生労働大臣表彰」。2024年度の第74回表彰では、自立更生者として釜石市の小笠原拓生さん(57)が選ばれた。9日に小野共市長を訪ね、受賞を報告した。目に障害を抱えながらも経営者として力を発揮し、ボランティアや音楽活動などにも取り組む小笠原さん。「私でいいのかと思ったが、一生に一度…。周囲の支えあっての活動が認められたものだから、励みにしたい」と穏やかな笑みを浮かべた。
 
小野共市長(左から2人目)に受賞を報告した小笠原さん(同3人目)

小野共市長(左から2人目)に受賞を報告した小笠原さん(同3人目)

 
 今回の表彰では、全国から自立更生者12人、更生援護功労者32人、身体障害者等社会参加促進功労者1人が選ばれた。小笠原さんは、自らの障害を克服し自立更生をして他の障害者の模範と認められ選出。このほか、岩手県内から更生援護功労者として1人が選ばれた。東京會舘(東京都千代田区)で昨年12月12日に表彰式が開かれた。
 
 小笠原さんは、東京で働いていた20代前半の頃に難病のベーチェット病を患い、弱視の期間を経て20代後半に視力を失った。その後、30歳で古里・釜石にUターン、家業のビルメンテナンス会社「協立管理工業」で新たな生活を始めた。2011年の東日本大震災では只越町にあった社屋が被災し、会長や社長を務めていた親族らを亡くした。建物の清掃管理業務、公共施設の運営管理(指定管理者)などを担う中で、自らが代表取締役に就任し、事業を継続させた。施設の維持に努めると同時に、パートを含めた社員約100人の生活も保持。現在は野田町に拠点を移し、事業を続ける。
 
 本業の傍ら、“当事者目線”の社会活動にも力を注ぐ。2000年に点訳グループ「楽点舎(らくてんしゃ)」を立ち上げ、市広報の点字版作成に協力。視覚障害者に役立つ情報を届けている。釜石視覚障害者福祉協会の事務局も担い、障害がある人の社会参加活動を後押し。さらに、地元の音楽仲間とアコースティックバンド「ブラック★かまリンズ」を結成し、メインボーカル兼ベース担当として活動。イベント出演を通じて地域を盛り上げている。
 
福祉イベントで「楽点舎」の活動を紹介する小笠原さん(中)=2023年9月に撮影

福祉イベントで「楽点舎」の活動を紹介する小笠原さん(中)=2023年9月に撮影

 
ブラック★かまリンズのステージ(バンドのFacebookより)

ブラック★かまリンズのステージ(バンドのFacebookより)

 
 市役所を訪れた小笠原さんは「意図せず障害者となったが、克服しようと前を向いて進むことは、震災で被災したまちを復興させていく気持ちと通じるものがある」と振り返る。「自分にできることを増やすことが力になる」と強調。社会とつながり、人脈を築く中、「関わってくれた人たちの気持ちが一番の力になっている」と感謝の意を示した。
 
 この日は、ボランティアや音楽活動の仲間でもある市職員、岩鼻千代美さんのサポートを受けて市役所を訪問。小笠原さんは「手や肩を借りると、その人のあたたかい気持ちが伝わってくる。その気持ちが自分の中で種火のように残り、燃えているように感じる。そこから力を得て、できることを増やしてきた」と笑顔を見せた。
 
小野市長ら市関係者に表彰状や式の写真を披露した

小野市長ら市関係者に表彰状や式の写真を披露した

 
小笠原さん(手前)の人柄を伝えた岩鼻千代美さん

小笠原さん(手前)の人柄を伝えた岩鼻千代美さん

 
 表彰式の後、皇居にて天皇、皇后両陛下に拝謁した小笠原さん。「私にはないと思っていた表彰だが、こんな機会は一生に一回しかないと思う」と感激を語った。緊張の中でも、「両陛下がかがんで目線を合わせられ、親近感のある話し方で柔らかく笑っている印象を受けた」と思い起こし、目尻を下げた。
 
 受賞を「励みにしよう」と話す小笠原さん。「これからもできることを増やしていく」とポジティブな姿勢は変わらない。「なんでも楽しそう」という岩鼻さんの言葉にうなずきながら、「社会との関わりを広くしていきたい」と晴れやかに笑った。
 
 小野市長は「ぜひこれからも、いろんな分野でご活躍いただけたら」と期待を込めた。

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第12回 新春 韋駄天競争

第12回 新春韋駄天競争

 

東日本大震災の津波の記憶と千年先の未来に伝える

東日本大震災の記憶と津波発生時の教訓を込めた、12回目となる「新春 韋駄天競走(いだてんきょうそう)」を開催いたします。

 

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第12回 新春韋駄天競争 チラシ表

ファイル形式: JPGファイル
データ容量:246KB
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第12回 新春韋駄天競争 参加申込書

ファイル形式: JPGファイル
データ容量: 205KB
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開催日時

2025年2月2日(日)10:00集合 11:00開始

会場

日蓮宗 仙寿院(岩手県釜石市大只越町2-9-1)

参加資格

個人の部(男性34歳以下/男性35歳以上/女性/中高生/小学生)、親子の部
計6部門、各20名程度
※エントリー状況により、部門の構成が変更となる場合があります

参加方法

参加申込書をご覧ください

参加費

無料

参加申込受付

2025年1月6日(月)〜23日(水)

集合場所

釡石市只越町 消防団第一分団 第三部屯所(只越集会所)前に当日10:00までに集合してください。
※緊急時の避難行動を啓発する行事ですので、雨や雪の際も原則として決行します。
※仙寿院の駐車場はご利用になれません。

主催

日蓮宗仙寿院・釜石仏教会
協力:釜石応援団ARAMAGI Heart・釜石まちづくり(株)

お問い合わせ

メール:idatenkyoso@gmail.com(釜石応援団 ARAMAGI Heart)
TEL:0193-22-1166(日蓮宗 仙寿院)
※メールアドレスが昨年までとは異なりますのでご注意ください
※TELでのお申込みは受付しておりません。
 

昨年の模様

「津波だ、逃げろ」韋駄天競争112人が参加〜教訓胸に高台へ避難

「逃げろ!高台へ」津波避難の基本を体感 釜石・新春韋駄天競走11年目に 震災の教訓脈々と

「津波発生時は迷わず、近くの高台へ―」。釜石市の津波避難啓発行事「新春韋駄天競走」が4日、大只越町の日蓮宗仙寿院(芝﨑恵応住職)周辺で行われた。同寺、釜石仏教会が主催し11回目の開催。
リンク


 

フェリアス釜石

釜石まちづくり株式会社

釜石まちづくり株式会社(愛称 フェリアス釜石)による投稿記事です。

問い合わせ:0193-22-3607
〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内 公式サイト