ずらりと並んだパッチワークキルトの力作に見入る来場者
釜石市でパッチワークキルトを楽しんでいる「キルトハウスドリームパッチワークキルト教室」(植田貴美子代表)の作品展示会が21~23日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。一針一針にさまざまな思いを込めて丁寧に作り上げたタペストリーや、バッグといった日用使いができる小物など約100点を展示。カラフルでバラエティー豊かな力作で来場者の目を楽しませた。
同教室は、市働く婦人の家(小川町)の自主グループとして活動し、10年ほどになる。現在の会員は60代から80代までの14人。月2回(第1、3土曜日)、市内で教室を主宰する関政子さん=公益財団法人日本手芸普及協会パッチワークキルト講師・指導員=の指導を受けながら、作品づくりに取り組んでいる。
作品展示は年に1回、同家の発表会で行ってきたが、新型コロナウイルス禍の影響でここ数年は開催できない状態が続く。「みんな頑張っている。すてきな作品が目に触れないのは寂しい」と感じていた関さんが、展示会を提案。5年ぶりとなる発表の機会に会員たちのやる気も高まり、活動拠点を飛び出し、より多くの人に手仕事の様子を知ってもらうことにした。
展示会を開いたキルトハウスドリームパッチワークキルト教室のメンバーら
会員の作品を中心に約2メートル四方のベッドカバーや大小さまざまなタペストリーを展示。バッグ、ポーチ、立つペンケースなどの小物作品も並び、手作りのぬくもりを感じさせた。関さんは、自宅の庭をモチーフにしたタペストリー「MY flower garden」(キルト時間フェスティバル2020入賞作品)など大作3点を含めた十数点を紹介。来場者は迫力と細やかな技、大胆な色彩に足を止めてじっくりと見入っていた。
デザインや色合いが華やかな作品が並んだキルト展
小さな作品も丁寧な手仕事の様子を感じながら鑑賞
「かわいい孫ちゃんへ楽しい夢、そして、幸せな未来へ」。そんな作品説明文が添えられていたのは、日よけ帽をかぶり、ワンピースにエプロンという姿をしたキャラクターをモチーフにしたかわいらしいベッドカバー。3人きょうだいの末っ子の女児を思いながら、坂元恵子さん(75)が一針一針縫い進めた作品だ。「東日本大震災で家族や親族を亡くしたが、乗り越えて今がある。これからは楽しく暮らし、平凡に、何事もなく育ってほしい」。離れて暮らす、その子に手渡せる日を待っている。
坂元恵子さんの出品作。一針に込めた思いを伝えた
キルトは、表布にキルト綿を挟み、裏布を重ねた状態で縫う手法。そして、パッチワークとは、さまざまな布切れを縫い合わせて一枚の布に仕上げる手芸のこと。カットした布(ピース)をつないで四角形にまとめた「ピースワーク」、さまざまな形にカットした布を土台となる布にのせて縫い付ける「アップリケ」という2つのスタイルがあり、同教室ではそれを応用する。同じ布を使っても組み合わせによって仕上がりは千差万別。展示会でもデザインが同じものがあったが、色合いが違っていて作り手の個性がにじみ出た“一点もの”になっていた。
デザインは同じでも色合いの違いで作品に個性が出る
植物とキルト。一風変わった組み合わせが新鮮
植田代表(72)は「小さいものがつながって大きな作品になっていくのが楽しみ」と笑顔を見せる。一辺1.5センチの六角形を丹念に縫い合わせた大作「フラワー」(縦約1.9メートル、横約1.5メートル)などを出品。「魅力に取りつかれた仲間」との交流も継続の力になっているという。「失敗はあっても、出来栄えはみんな素晴らしい」と、久々の発表の機会に満足げ。「別のデザイン、大きな作品を作りたい」と刺激ももらった。
植田貴美子代表が出品した「フラワー」(手前)
六角形はいくつある?…植田代表「分からない」
関さんは「好きなものを好きなように好きなだけ作ってもらう」よう指導する。そうしてつくり上げた作品をたくさんの人に「すてきだなと思ってもらえたらうれしい」と見守る。見てもらうことは「自分のためになる」と強調。気づきを得たり、意欲を高める会員らをこれからも後押しし続ける考えだ。