中野 裕太(なかの ゆうた)選手(所属先:日鉄テックスエンジ株式会社)プロフィール
2016年加入/1989.11.16生(29歳)/180㎝/100㎏/福岡県北九州市出身/早稲田大学卒
●ラグビーを始めたきっかけ:親のすすめ(8歳から)
●ポジションの遍歴:CTB→No8、FL
●ニックネーム:キャノン
●趣味:車、おいしいおつまみ作り
●好きな食べ物:肉、魚
●釜石のオススメ:BBQ(がしやすい環境)
●出身地のオススメ:うどん等
●試合前のルーティン:前日の晩ご飯はパスタ
●ストロングポイント:アタック
●サポーター、ファンへメッセージ:いつもご声援ありがとうございます。皆様に喜んでもらえるよう、勝ちにこだわっていきます。これからもよろしくお願いします。
インタビュー:2019年5月11日(釜石シーウェイブスクラブハウス)
企画・編集:釜石まちづくり株式会社
取材・文:市川香織(釜石まちづくり株式会社)
写真:西条佳泰(Grafica/LiFESTYLE Lab.)
辛い状態の釜石を見ているという事が、今の自分にとっては良かったと思います。
ーー2016年に加入。SWとはどのようなご縁が繋がって?
中野選手:
昨年まで在籍していた松原(裕司)さんが、神戸製鋼でも先輩でお世話になっていたんですけど、僕が加入する1年前に松原さんがSWに入っていて、僕が神戸製鋼を終わるってなった時に、報告のため連絡をさせてもらったんです。その時に、「お前これからどうすんの?」っていう話になって、「今チームを探しているんですけど・・・」って答えたら、「桜庭さんに話してあげるよ」って言ってくれたのがきっかけでした。松原さんご自身は剛臣(伊藤)さんがいたからでしたし、そこから繋がってますね。
ーー神戸製鋼ラグビー部の皆さんにも、東日本大震災後はたくさん支援を頂きましたしね、やっぱりご縁がありますね。加入する前に釜石に来た事はありましたか?
中野選手:
僕が釜石に初めて来たのは、早稲田の4年生の時ですね。早稲田と明治とSWの三つ巴試合を北上でやったんですけど(2012年9月)、その前日に釜石に来て、確か新日鐵構内にあるグラウンドで練習しました。
あと、バスで鵜住居地区などにも行きました。(被災地への支援活動も兼ねた遠征でした)
鵜住居は、まだ瓦礫が色々な場所に高く積み上げられている状態で、鵜住居小学校、東中学校もほぼまだ被災当時のままの姿で・・・。校舎の窓に車が突き刺さっていましたよね。釜石の街の中もまだ何も無かったですね。
ーーその当時、チームや釜石についてはどういう印象をお持ちでしたか?
中野選手:
来る前は、チームについては正直あんまり分かっていなくて。釜石については、やっぱり震災の映像をみるじゃないですか、東京にいて。その時に「すごい状況だな・・・」とは思っていたんですけど、こっちに来て実際に見ると、テレビの映像とは全然違って、ショッキングというか・・・本当に衝撃を受けました。その時には、まさか自分が釜石に来てラグビーをする事になるとは全然思っていなかったですけど。
だから何て言うんですか、辛い状態の釜石を見ているという事が、こういう言い方は変かもしれないですけど、今の自分に繋がったかなと思います。
ーーじゃぁ、その頃からみたら、2016年にいらした時には、だいぶ変わったなぁという感じでしたか?
中野選手:
そうですね、街の中もだいぶ明るくなって、建物も増えていましたし。
2012年の時は、サンルート釜石だけは営業していてそこに泊まったんですよ。夜、チームメイト達で「何処か行こう」って外に出たんですけど、向かいのローソンが開いているだけで、営業している店は無くて。
残っている建物も、1階部分は歪んでいたりグシャグシャな状態でしたし・・・。今はもうそういう建物は無くなりましたよね。
ーー実際に釜石に来て、「ラグビーのまち釜石」でラグビー選手として暮らしてみて、市民の皆さんから受ける印象とか、その部分についてはいかがですか?
中野選手:
市民の皆さんは、やっぱり多くの方々が釜石SWの事を知っていてくれますし、応援して頂いてすごく暖かくてありがたいですし、そこが釜石の良い所だと思います。
僕は昔の釜石の事を知らないですけど、おそらく新日鐵釜石ラグビー部V7時代の方が、今のSWよりチームを誇りに思ってくれていたんじゃないかなって、何となくですけどそう思っていて。だから、皆さんがまた誇りをもってくれるようなチームになれたら、もっといいんじゃないかなと思います。
お前がチームを引っ張って行かないと
ーーそして、今シーズン、小野選手と共同キャプテンに。経緯は?
中野選手:
チームが始動する前に、オファーというか、佐伯さんとスコッティ(ピアースヘッドコーチ)から「リーダーをやって欲しい」という話があって。最初は「いやー、それは・・・」って言ってたんですけど(笑)。
いろんな人と話をしたら、「いや、お前がチームを引っ張って行かないとダメだぞ!」って言われたんで、それだけ必要としてもらえるんだったらやってみようと思い、引き受けました。
ーー2人体制になったのは、FW(中野選手)とBK(小野選手)にそれぞれという意味合いですか?
中野選手:
それもあると思います。小野はポジション的に、試合中にFWに何かあった時にレフリーから遠いという事がありますし。実際、FWのメンバーの方が分かる部分もあるので。
あと、キャプテン1人というのはけっこう負担が大きい・・・という事もあると思います。去年も、だいぶ小野が大変だった部分もあったようなんで。まぁ、小野はそういう面を見せなかったですけど。
ーーまだ5月なんですが、ここまでご自分で“キャプテン業”についてはどうですか?
中野選手:
(笑) いや、まだ全然わかんないですけど(笑)。そうですね、ここまでは、個人的にはコーチ陣とのミーティングが増えたなぁくらいの感じですね。チームをどうして行くかとか、スケジュールとかですね。そこで話して決まった事を、僕らが皆に伝えて行く感じです。
あとは、別にキャプテンになったから何かを変えるつもりもないですし。今までの僕を見て、今回リーダーに選んで頂いたと思うので、特別変えるような事はなく、思った事は言うようにしているくらいですね。
ただ、キャプテンになったからには一つ変えないといけないなと思ったのは、チームでやろうとしている事を若手選手とかにしっかり浸透させないと、というのはあります。
ーー本当に若い選手が増えましたね。
中野選手:
そうですね。平均年齢が25歳くらいなんで。普通の社会人チームだったら有り得ない年齢層ですよね。
僕、今年で30歳なんですけど、上から数えた方が早いですからね。
ーーそういった部分も踏まえて、ここを変えて行きたい、こんなチームにして行きたいという所はありますか?
中野選手:
ラグビーもそうですし、ラグビー以外の所でもそうなんですけど、チームとしての一体感が薄いというか・・・。
神戸製鋼にいてすごく良かったと思う所が、現キャプテンのアンドリュー・エリス(SH、元ニュージランド代表)が神戸に来た時に、色々なカルチャーを持って来てくれたんですね。オールブラックスでW杯優勝も経験している選手なんですが、彼が持ち込んでくれたカルチャーによって、チームに一体感が生まれました。
だけど、うちのチームはそういう所がまだちょっと。チームが若いというのもあるんですけど、一体感がもう少し欲しいと思いますね。
ーーそのカルチャーというのは、例えばどういうものですか?
中野選手:
言葉でいうのは難しいんですけど・・・。例えば、この間チームでバーベキューをしたんですけど、“乾杯する時に全員揃っていない”とか、“人の話を聞けていない選手が多い”とか、あと“チームの決まり事を守り切れない”とか・・・。
グラウンドの上でも、「ラインは絶対に踏まないでまたぎましょう」とか、そういうのも守れない選手がいたりして・・・。
そういう所っていうのは、グラウンドの中もそうですけど、結局はグラウンドの外から来ている所が多いと思うんで、そこをしっかり言っていかないといけないと思いますね。
ーーそういう部分を守るというのは、お互いやチームに対してのリスペクトに繋がりますよね。
中野選手:
そうですね。お互いの事と、チームの為、そして勝つ為にどうしたら良いのか?という事を常に考えていたら、人に関心を持つとか、もっと当事者意識を持つと思うんです。それが全員にあれば、さっき言ったような事も自然に出来るようになり、そこから一体感が生まれていくと思います。
これだけ色々な環境に身を置いて、そして色々な経歴を持った選手が居るチームなので、普通のチームよりもそういう所を大事にしないといけないはずなんですよ。クラブハウスでしか顔を合わせない事も多いので、そういう意識が乏しいと絶対チームは良くならない。一つにならないですよね。それは、若い、ベテラン、選手、スタッフとか関係なく、チームの全員です。
よくラグビーで、「みんなで一緒の方向を見る」って言うじゃないですか、「ワンチームになっていきましょう」とか。でも、グラウンドの外から出来ていないと、グラウンドの上だけ都合良く出来るわけがないと思うので。
そういう所をちゃんとして行かないと、強くはならないと思います。
バーベキューの件については、その後のミーティングで皆には言ったんですけど、そういう所を全員が気が付いてくれれば良いかなと思うんです。そこを変えたいですね。
ーー他にはどんな事が?
中野選手:
それ以外では、もちろんグラウンド上でどう結果を出すかという部分に繋がって行く所で、シーズンに入って行きながら、徐々にコーチ陣と自分達の考えを融合させていく事ですね。
今はどんどん新しい事をやっているので、選手からも疑問の声が上がる事も多く、そこら辺は僕と小野で上手く両方のバランスを取りながらやっていければいいなと思います。
“釜石のカルチャー”を作って一体感のあるチームに
ーー今年のFWについて。先日のピアースHCのインタビューで、「ケガ人が多かった」というお話もお聞きしていたんですが・・・。
中野選手:
ケガ人が多いのは確かで、スクラムが組めなかった時期もありました。4/27の秋田の試合で初めて組んだ感じだったんですよね、実は。
だから秋田戦は不安も多かったんですけど、そのチームの状態で臨んだ試合にしては良い内容だったと思います。
あとは、これから試合を重ねて行く中で競争する為にも、今ケガをしているメンバーが復帰して皆で切磋琢磨出来たらいいと思います。
ーー今シーズンはラグビーW杯もあって、イレギュラーなシーズン。まずは、トップリーグ(TL)、トップチャレンジリーグ(TCL)入り乱れてのジャパンラグビートップリーグ2019(仮称):カップ戦が6月からスタート。楽しみな部分が多いのか・・・どうでしょう?
中野選手:
楽しみですね!やっぱり、僕はTLでやりたいと思っているんで、TLレベルの試合が多いというのは素直に楽しみです。
ラグビーW杯にしても、釜石でW杯があるなんて本当に一生に一度だと思うので、その時にここ釜石でプレー出来ているという事も合わせて、すごく楽しみが多いです!
ーーそして、そこを越えて、ようやくTCLリーグの公式戦です。
中野選手:
そこはやっぱり、一つ一つの試合でしっかり結果を出して行きたいですね。
ーー今シーズンの目標。どんな一年にしたいですか?
中野選手:
個人としては、しっかり試合に出続けて、良いパフォーマンスを続けること。それをしっかりやっていけばチームを引っ張れると思いますし、チームの目標達成にも繋がると思います。
チームとしては、まずどんな相手でもしっかりと自分達のプレーをして勝つ事。しっかり勝って良い成績を残し、次のシーズンに繋げて行きたいですし、さっき言った“カルチャー”の部分、“釜石のカルチャー”を大事に積み上げていきながら、一体感のあるチームを作って行きたいです。
最後に今現在、発表されている春シーズンの試合日程は以下の通りです。
6月8日(土) 北上招待 14:00 対 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 北上総合運動公園
6月9日(日) 練習試合 調整中 対 香港ユニバーシティクラブ&北海道バーバリアンズ 釜石市球技場
7月7日(日) 練習試合 調整中 対 岩手ブレイズラガー 釜石市球技場
また、ジャパンラグビートップリーグカップ2019(仮称)は6月に開幕します。
第1節 6月23日(日) 14:00 対 キャノンイーグルス:いわぎんスタジアム
第2節 6月29日(土) 11:30 対 クボタスピアーズ:秩父宮ラグビー場
第3節 7月06日(土) 14:00 対 トヨタ自動車ヴェルブリッツ:釜石鵜住居復興スタジアム
第4節 7月13日(土) 16:30 対 三菱重工相模原ダイナボアーズ:秩父宮ラグビー場
第5節 7月20日(土) 18:30 対 コカ・コーラレッドスパークス:えがお健康スタジアム(熊本県)
最新情報、詳細は釜石シーウィブスの公式サイトでご確認ください。
http://www.kamaishi-seawaves.com/