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八回裏、決勝点に在校生も歓喜の笑顔(

「甲子園に連れてきてくれてありがとう」スタンドに歓声と涙、「鋼鐵の意志」アルプスに響く

三回裏、待望の先制点に沸き立つ家族応援団

三回裏、待望の先制点に沸き立つ家族応援団

 

 釜石ナインが甲子園で躍動した。20年前の釜石南時代を含め、センバツ2度目の挑戦でつかんだ悲願の初勝利。「連れてきてくれてありがとう」。一塁側アルプススタンドの応援団は力の限り声を上げ、ナインの奮闘を後押し。スクールカラーの紫一色に染め、歓喜に沸いた。

 

 最後の打者を打ち取って勝利が決まると、応援団は互いにハイタッチして喜びを爆発させた。「岩手の山川 太平洋の…」。選手とともに校歌を歌い、春の甲子園初勝利をかみしめた。

 

 一塁側アルプス席は生徒や保護者、卒業生などで埋め尽くされた。「頑張れ」「勝つぞ」。プレーボールのサイレンが鳴る前から声援が途切れない。釜高応援団とともにブラスバンド演奏で後押しする吹奏楽部の黒沢美咲さん(3年)は「甲子園まで連れてきてもらった感謝を込め、勝ってもらえるよう盛り上げる」と笑顔を見せた。

 

 駆け付けたOBの中には20年前の甲子園メンバーの姿も。野球部OB会長の小国晃也さん(37)=大槌町職員=は「震災でつらい思いをしてきた中で、つかみ取った甲子園。頑張ってほしい。被災地ということで背負うものもあると思うが、伸び伸び楽しんで。笑顔でやることが被災地に元気を届けることにつながる」と激励した。その隣には「KAMAISHI MINAMI」と校名が入った白い上着が。震災で犠牲になった宮田豊さん(享年32)の遺品だ。「一緒に校歌を歌えればいいな」と亡き友に語りかけた。

 

 姉妹都市の東海市からもバス2台で80人が応援に駆け付けた。佐々木有三さん(68)は「公立校、釜石のような地方校が甲子園に出るのはめったにないこと」、大槌町生まれの後藤順次さん(64)は「つながりがあるから、この場で応援したい」と試合を見守った。

 

 三回に1番・佐々木航選手の中前打で先制点をあげると、「ヨッシャー」などと喜ぶ声が上がった。「ハガネノココロ GO!カマイシ!」と声援を送るのは、関東を中心に全国の釜石出身者でつくる釜石応援団のメンバー15人。及川健智副団長(40)=東京都江東区=は「震災時は小学生。制約の中、頑張ってきた。悔いのないように」と願った。

 

 その後、八回にも佐々木航選手の安打を足掛かりに、3番・奥村颯吾選手の中越え二塁打で追加点をあげた。メガホンを突き上げて割れんばかりの大歓声に包まれるアルプス。奥村選手、5番・新沼康大選手が小学時代に在籍していた双葉野球スポーツ少年団でエース投手の金澤俊輔君(12)が「生で見ることができてうれしい。ぼくも甲子園に出たい。(先輩たちは)かっこいい」と笑顔をはじけさせた。

 

 応援団が祈るように見つめたのは九回表。一球一打に息をのむ。奥村選手の前に白球が転がる。丁寧にさばき、一塁へ。新沼選手ががっちりと受け止めると、紫色に染まったスタンドは、ようやく大きく揺れた。

 

八回裏、決勝点に在校生も歓喜の笑顔(

八回裏、決勝点に在校生も歓喜の笑顔

 

 笑顔で声援を送り続けていた同校の佐々木春菜さん(2年)は「ドキドキした。勝ってくれると信じていた。甲子園は一生に一度、行けるかどうか分からない。来ることができただけでもいいのに、いい試合して勝って本当にうれしい。ありがとう」と目を潤ませた。

 

 一塁コーチャーを務めた中村翔斗選手の祖母、絢子さん(78)=小佐野町=は「勝利と孫の頑張る姿を見ることができて良かった。最高」と、一緒に訪れた親戚の佐野ミサ子さん(77)=定内町=と顔を見合わせ笑った。

 

 東京都江東区から駆け付けた高杉知明さん(49)は、おいの9番・石崎仁鵬(のりたか)選手の活躍を見つめた。「感無量。涙が出た」と感激。息子の太基君(11)は「(石崎選手は)かっこいい。ぼくも何かに挑戦したい気になった」と目を輝かせた。親子で声を合わせ、「もう一つ勝って」と期待した。

 

(復興釜石新聞 2016年3月23日発行 第472号より)

 

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一塁側の応援スタンドに駆け寄る釜石高ナイン

センバツ初勝利 復興の光に〜21世紀対決 小豆島に2-1、釜石高 歴史つくった

一塁側の応援スタンドに駆け寄る釜石高ナイン

悲願の甲子園初勝利。「校歌」を歌った後、一塁側の応援スタンドに駆け寄る釜石高ナイン

 

 「鋼鐵(はがね)の意志(こころ)」甲子園に響く――。第88回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)は20日、西宮市の阪神甲子園球場で開幕。釜石(岩手)は第2日の第1試合で同じ21世紀枠の小豆島(香川)と対戦し、2―1で競り勝った。不利と予想された下馬評を覆し、20年ぶり2回目のセンバツで手にする悲願の甲子園初勝利。一塁側のアルプススタンドには釜石から、あるいは釜石ゆかりの各地から約2千人が応援に駆け付け、被災地に届ける1勝に沸いた。

 

 釜石が接戦を制し、悲願の甲子園初勝利を手にした。三回1死三塁で1番佐々木航が中前に弾き返して先制。佐々木航は八回にも中前打で出塁し、3番奥村の中越え二塁打で生還。結局、これが決勝点となった。主戦の岩間は立ち上がりこそ制球が定まらなかったが、尻上がりに調子を上げ、直球とスライダーにチェンジアップを効果的に混ぜて打ち取り、完投した。

 

被災地に届ける勇気の1勝

 

スコアボード

 

 20年前、釜石南高として初めて甲子園の土を踏んだ、米子東とのあの初戦が思わず頭をよぎった。2―0とリードして迎えた最終回の守り。1死二塁から左前安打にエラーが絡み、1点差に迫られる。20年前はここから逆転され、無念の涙をのんだが、今度は違った。落ち着いて後続を内野ゴロに打ち取り、ゲームセット。「釜石高の歴史をつくった」。九回を投げ抜いた岩間大投手は、4万2千人の大観衆の中で飛び上がって喜んだ。

 

 「ここまでが長かった。たくさんの期待を背負い、子どもたちにはつらい時期もあったと思うが、本当におめでとうと言ってやりたい」。佐々木偉彦監督は選手とともに、晴れやかな表情で母校の校歌を甲子園に響かせた。

 

 21世紀枠でつかんだ2度目のセンバツ切符。しかも震災を乗り越えての出場で全国から注目を集めることになったが、のしかかる重圧も大きかった。技術よりメンタル面を重視してきた佐々木監督。時には「(被災地ということで)ひいきにされることに甘えるな」と選手に厳しく諭すこともあったという。「野球と震災は分けて考えています。野球をやるのは生徒。せっかく出るのであれば、シンプルに野球に集中し楽しんでほしかった」。32歳の青年監督は、この信念を貫き通した。

 

 大舞台に向かって選手の気持ちを盛り上げていく心配りも見事だった。試合直前の室内練習の場面では、各部員宛てのメッセージをパソコンの画面に映し出して見せた。「ここで、それが出るか」。岩間投手は感極まり、思わず泣いたという。

 

 「うちは弱いです」と佐々木監督はよく口にする。甲子園本番までの練習試合は8連敗。最後に予定していた練習試合は、雨もあったが取りやめたほど。うまくいかなかった時期を乗り越え、監督のタイムリーなメッセージがナインの気持ちを切り替え、奮い立たせた。

 

 ベンチでは「一丸」を心がけ、親指と小指を突き上げる共通ポーズで盛り上げた。「どんな状況の時でも気持ちを落とさず、『いいね』。これが勝利のルーティーン」と佐々木監督は笑った。

 

 震災後、21世紀枠での東北勢の勝利は初めて。大会前に目標に掲げていた「ベスト4」へ一歩近づいた。次戦の相手は滋賀学園(滋賀県)。岩間投手は「次もガンガン強気で攻めたい」と力を込める。粘りに粘ってセンバツ出場につなげた、昨秋のムードに似てきた。

 

(復興釜石新聞 2016年3月23日発行 第472号より)

 

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組み合わせ抽選会

センバツ初戦は小豆島と〜釜石高 菊池主将「被災地の声援に応えたい」

 20日に開幕する第88回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)の組み合わせ抽選会は11日、大阪市の毎日新聞大阪本社で行われ、20年ぶりに甲子園の土を踏む釜石(岩手)の初戦の相手は、同じ21世紀枠で出場する小豆島(香川)に決まった。大会2日目の第1試合(21日午前9時開始予定)で対戦する。この日は東日本大震災から丸5年。抽選会場では、被災地から出場する釜石に関心が集まった。しかも、史上2度目という”21世紀枠対決”が実現。注目度はさらに高まったが、菊池智哉主将(3年)は「いつもの自分たちの野球をやるだけ。最後まで粘り強く」と落ち着いて言った。

 

健闘を誓い合う釜石の菊池智哉主将(左)と小豆島の樋本尚也主将

史上2度目の「21世紀枠対決」が実現。健闘を誓い合う釜石の菊池智哉主将(左)と小豆島の樋本尚也主将=11日、毎日新聞大阪本社

 

 組み合わせはまず、同地区対戦を避けるための振り分けを行い、抽選の順番が最後になった東北地区の釜石に残されたのは開幕試合の「1番」か「7番」。菊池主将は後者を引き当て、小豆島との対戦が決まった。

 

 小豆島は、少子化、野球人口減の困難を克服し、来春の統合を前に甲子園初出場を決めた注目校。話題の2校の対戦が決まると、会場からどよめきが湧いた。菊池主将は「甲子園の雰囲気をつかんでから試合をしたかったので、開幕日だけは避けたかった」と胸をなでおろした。

 

 「うちのチームは強い相手ほど燃える」と大阪桐蔭など強豪校との対戦を望んでいたが、小豆島との対戦もどこかで予感していた。ビデオ映像でプレースタイルを確認したこともあるという。ステージに上がり、小豆島の樋本尚也主将と握手を交わした菊池主将は「野球を考え、楽しむスタイルのチームと聞いている。自分たちも見習う部分はある」と謙虚に話した。

 

 小豆島は17人の部員全員が島出身。21世紀枠とはいえ、昨秋の神宮大会を制した高松商を香川県大会で破っている実力校だ。しかし、気持ちでは釜石も負けてはいない。菊池主将は「最後まで粘り抜く自分たちのスタイルを貫き、勝って釜石高の歴史をつくりたい」と力を込めた。

 

 抽選前には会場の全員で黙とうもささげられた。松原町で被災し甲子町の仮設住宅で暮らす菊池主将は、多くの記者に囲まれ、「この日に抽選会場にいることがありがたい。被災地の声援に応えたい」と、あらためて誓った。

 

 鵜住居町の実家が津波で全壊した佐々木偉彦監督(32)も「大切な日に、この場にいられることがうれしい」と組み合わせ抽選会に臨んだ高揚感をかみしめた。

 

釜石の佐々木偉彦監督(右)と小豆島の杉吉勇輝監督も握手

釜石の佐々木偉彦監督(右)と小豆島の杉吉勇輝監督も握手

 

 小豆島の杉吉勇輝監督は同じ32歳で、青年監督対決としても注目を集める。握手を交わした佐々木監督は「(小豆島は)対戦したい学校だった。投手が良く、守備が堅い印象が強い。ミスを減らし、最少得点に抑えて粘り強く戦いたい」とゲームプランを描く。試合巧者との評判も高い杉吉監督は「投手を中心に守り勝つ野球をしたい」と笑顔で応えた。

 

(復興釜石新聞 2016年3月16日発行 第470号より)

 

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野球部OBらが贈呈した「鋼鐵の意志」の横断幕を

「鋼鐡(はがね)の意志(こころ)」アルプススタンドへ〜選抜出場OB 横断幕贈呈

野球部OBらが贈呈した「鋼鐵の意志」の横断幕を

野球部OBらが贈呈した「鋼鐵の意志」の横断幕を手に決意を新たにする釜石高ナイン=6日

 

 20日開幕する第88回選抜高校野球大会に21世紀枠で出場する釜石高野球部に6日、20年前の釜石南高時代にセンバツに出場したOBらから横断幕が贈られた。横断幕には、校歌の一節にある「鋼鐵(はがね)の意志(こころ)」と大きく記された。甲子園のアルプススタンドに掲げられ、釜石から駆け付ける応援団と共に釜高ナインに熱いエールを送る。

 

 贈られた横断幕は縦1.2メートル、横12メートル。スクールカラーの紫紺の生地に「鋼鐵の意志」の文字が鮮やかな深紅で染め抜かれた。20年前の甲子園出場メンバーで釜石高野球部OB会長の小国晃也さん(37)=大槌町職員=らが、当時監督を務めた佐藤隆衛さん(74)=大船渡市在住=に依頼。これを快諾した佐藤さんは気合を込めて筆を走らせ、勢いのある文字に仕上げた。

 

 この日は小国さんのほか、20年前に投手の二本柱としてセンバツ出場に貢献した萬(よろず)大輔さん(37)=釜石市職員=、県立釜石病院の理学療法士として活躍する小国忍さん(37)らOB6人が母校のグラウンドに足を運び、センバツまで10日余りと迫った後輩に横断幕を手渡した。

 

 OB会長の小国さんは「OB一同の気持ちが入っている。甲子園は特別なところ。緊張したら、この横断幕を見て伸び伸びプレーしてほしい」とナインを激励。大槌町で塗装工芸店を営み、横断幕の製作を担当した倉本武樹さん(35)は「優勝を目指し、精いっぱいがんばってほしい」とエールを送った。

 

 菊池智哉主将は「『鋼鐵の意志』はみんなの生活にも生きている。目標は21世紀枠で最高のベスト4だが、決勝でも横断幕を掲げたい」と決意を新たに。佐々木偉彦監督(32)は「佐藤先生(隆衛さん)からは『思うようにやれ』とアドバイスもいただいた。横断幕は甲子園でアレだと思える目標になる」と喜んだ。

 

 釜石での最後の練習日となったこの日は、推薦で釜石高への入学を決めた三浦友聖君(大平中3年)、栗沢宏輔君(釜石東中3年)も見学に訪れ、熱い視線を送った。

 

 釜高ナインはOBらの熱い思いを胸に、11日に甲子園へ向けて出発する。これを前に、7日から9日にかけて茨城県へ遠征、土浦日大などと練習試合をする。奇しくも東日本大震災から5年となる11日には、大阪市の毎日新聞大阪本社で組み合わせ抽選会があり、初戦の相手が決定。翌12日には天理などと練習試合をする。その後、京都外語大西、東洋大姫路などの強豪校と練習試合を重ね、甲子園の大舞台に臨む。

 

(復興釜石新聞 2016年3月9日発行 第468号より)

 

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被災地代表としての決意を新たにした釜石高野球部

被災地代表 決意新たに、待ち遠しい入場行進〜釜石高に輝く選抜旗、初戦相手は11日に決定

被災地代表としての決意を新たにした釜石高野球部

選抜旗授与式で、被災地代表としての決意を新たにした釜石高野球部=2月29日、釜石高で

 

 今月20日に開幕する選抜高校野球大会に21世紀枠で出場する釜石高(互野恭治校長、全日制530人)野球部に2月29日、選抜旗が贈られた。輝く校章が入った選抜旗は、開会式で菊池智哉主将が掲げ、堂々の入場行進をする。甲子園出場のシンボルを手にした部員らは「被災地の代表として恥じない試合を」と決意を新たにした。

 

 大会を主催する毎日新聞社から贈られた選抜旗は、スクールカラーの紫紺を地に、石楠花をデザインした校章がくっきりと浮かび上がる。授与式は同校体育館で行われ、全校生徒が見守る中、毎日新聞盛岡支局の柿沼秀行支局長から互野校長へ、さらに菊池主将へしっかりと手渡された。

 

 壇上に整列した24人の部員を前に、柿沼支局長は「岩手だけではなく被災地の代表としてがんばってきてほしい」、県高野連の真岩一夫会長は「甲子園で全国のみなさんに感動と感謝の気持ちを伝えてほしい」と激励した。

 

 互野校長は「センバツ出場は文武両道で努力する全校生徒へのご褒美。甲子園では伸び伸びと試合をし、校歌を歌おう」とエール。菊池主将は「全国各地から応援されていると実感する。釜石高の歴史をつくる甲子園初勝利を挙げ、ベスト4を超えて21世紀枠の歴史を塗り替えたい」と決意を表明した。

 

 このあと壮行会が行われ、生徒会長の佐々木希さん(2年)が「堂々と、感謝の気持ちを忘れずプレーしてほしい」とエール。佐々木偉彦監督は「一緒に甲子園に行こう。応援をよろしくお願いします」と生徒に呼びかけた。

 

 選抜旗が授与される模様は、翌日に卒業式を控えた3年生も見守った。3年間サッカー部で活動し、野球部と同じグラウンドで汗を流した菊池要君は「震災で祖父を亡くした。センバツ出場が少しでも復興への希望の光になってくれれば」と期待を込めた。

 

 釜石高ナインは21日から1週間にわたる愛知県東海市での合宿を終え、28日にバスで13時間をかけ釜石に帰ってきたばかり。佐々木監督は「体、心、頭づくりと、すべての面で成果があったが、走攻守どれを取っても力不足。甲子園で勝てるようになるにはまだまだ、これから」と気を引き締める。

 

 組み合わせ抽選は東日本大震災からちょうど5年となる3月11日に行われるが、菊池主将は「東北大会がそうだったように、相手が強ければ強いほど燃えるのが、うちのチーム。大阪桐蔭とか、できれば強いところと当たり、夏の大会にもつなげたい」と意気込む。

 

 釜石高ナインは組み合わせ抽選が行われる11日に甲子園に向けて出発する予定だ。

 

(復興釜石新聞 2016年3月2日発行 第466号より)

 

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東海市の鈴木淳雄市長(左)を表敬訪問した釜石高野球部の佐々木偉彦監督と菊池智哉主将

釜石高ナイン 東海市長を訪問〜センバツ勝利を誓う

東海市の鈴木淳雄市長(左)を表敬訪問した釜石高野球部の佐々木偉彦監督と菊池智哉主将

東海市の鈴木淳雄市長(左)を表敬訪問した釜石高野球部の佐々木偉彦監督と菊池智哉主将=東海市提供

 

 第88回選抜高校野球大会に向けて愛知県東海市で合宿している釜石高野球部の佐々木偉彦監督(32)と菊池智哉主将(2年)、釜石市教委の沖裕之スポーツ推進課長が23日、東海市役所に鈴木淳雄市長を訪ね、同市を挙げた支援に感謝するとともに、センバツでの勝利を誓った。

 

 佐々木監督は「合宿を受け入れていただき、ありがたい。とても暖かく、選手が生き生きとプレーできる環境を提供していただいた。ここで力を付け、センバツで躍動できるよう頑張りたい」と感謝。菊池主将は「まだ甲子園で勝てる力はない。釜石では1日2時間程度しか練習できなかったが、ここでもっと力を付けたい。メンタルや技術面を鍛え、甲子園では勝負強さを発揮して一つずつ勝ち上がっていきたい」と決意を語った。

 

 鈴木市長は「地元の高校が甲子園に出場したように、うれしく思う。この1週間で技術やチームワークを磨き、1勝と言わず優勝を目指してほしい」とエールを送った。

 

 東海市には、東海製鉄所(現新日鉄住金名古屋製鉄所)の立地に伴い多くの釜石市民が移住し、2007年に姉妹都市を締結。中学生の相互訪問などで交流を深めてきた。釜石市が開催地に決まった2019年ラグビーワールドカップ(W杯)に向けても、ラグビー基金にいち早く3千万円を寄付するなど絆を強めてきた。

 

 釜石高のセンバツ出場を受け、合宿受け入れを快諾。選手らは21日から28日まで、新日鉄住金東海REXグラウンドなどで打撃や守備練習に汗を流している。東海市は釜石高の試合に向け、市民応援バスも繰り出す予定だ。

 

(復興釜石新聞 2016年2月27日発行 第465号より)

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「ラグビーカフェ」で使用する什器を寄贈した岡村製作所東日本支社の山本支社長

「ラグビーカフェ」(4月本格オープン)に什器贈る、岡村製作所 エヌエスオカムラ〜W杯釜石開催、成功を後押し

「ラグビーカフェ」で使用する什器を寄贈した岡村製作所東日本支社の山本支社長

「ラグビーカフェ」で使用する什器を寄贈した岡村製作所東日本支社の山本支社長(中央)

 

 スチール家具など製造大手の岡村製作所(本社・神奈川県横浜市)と、関連会社で釜石市に本社・工場を置くエヌエスオカムラ(佐藤省一社長)は18日、釜石市鈴子町のシープラザ釜石内に今年4月中に本格オープンする「ラグビーカフェ」で使用するスチール家具など什器(じゅうき)を寄贈した。

 

 2019年に釜石で開催されるラグビーワールドカップ(W杯)の成功を後押しするもので、贈ったのはロッカー、テーブル、書庫、イスなど20点(390万円相当)。岡村製作所東日本支社の山本兼司支社長とエヌエスオカムラの佐藤社長らが市長室を訪れ、野田武則市長に目録を贈呈した。

 

 野田市長は「被災地や東北代表としての大きな責任の中で取り組まねばならない。”ラグビーのまち”としてのレガシー(遺産)をさらに高め、課題を一つ一つ乗り越え、市民や関係者の期待に応えたい」と支援に感謝。山本支社長は「W杯を機会に釜石の文化や伝統が世界に発信される。地元に生産拠点がある当社としても大変喜ばしく思う。ラグビーカフェに多くの人が集まり、当社の家具を使いながら釜石の未来を語り合ってもらえれば」と期待を述べた。

 

 岡村製作所は1945年に創業。建設業の付帯工事なども手掛け、全国に92支店を展開する。エヌエスオカムラは91年、岡村製作所と新日鉄(当時)が共同出資して設立。通称「中番庫」にあった事務所・工場は震災の津波で被災したものの、新日鉄釜石構内に新工場を設置し、震災から1年後の2012年5月に操業を再開した。

 

 佐藤社長によると、従業員は現在、臨時を含め122人。震災前より10人ほど減ったものの、作業効率の改善などで生産高は震災前の水準まで回復しているという。

 

(復興釜石新聞 2016年2月20日発行 第463号より)

関連情報 by 縁とらんす
株式会社 岡村製作所
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「工夫する力も必要では」と問いかける佐々木監督の言葉に耳を傾ける釜石高ナイン

釜石高校センバツへ 東海市で合宿、甲子園で勝てるチーム力へ底上げ〜「大歓迎」姉妹都市も盛り上がる

愛知県東海市で1週間にわたる合宿を行う釜石高野球部

21日から愛知県東海市で1週間にわたる合宿を行う釜石高野球部。東海市までバスで往復するという

 

 20年ぶり2度目の春の選抜高校野球大会出場を決めた釜石高野球部は期末試験で休んでいた練習を15日から再開、甲子園に向けて本格的に始動した。この21日から28日まで温暖な愛知県東海市で合宿を行い、甲子園で勝てるチーム力に底上げを図る。釜石と同じ「鉄のまち」で、釜石出身者も多く姉妹都市関係にある東海市はこれを大歓迎。受け入れを担当する同市教委には「いつ来るの?」などと市民の問い合わせが相次いでいるという。

 

 「祝 姉妹都市・釜石市 釜石高校選抜出場決定」――東海市役所の庁舎玄関には大きな横断幕が掲げられ、釜石高の合宿を歓迎、市民にPRしている。15日付の市の広報紙でも大きなスペースを割き、釜石高のセンバツ出場を紹介。合宿の受け入れを担当する市教委スポーツ課主事の近藤芳彦さん(29)は「ほんとにうれしい悲鳴」と対応に追われている。

 

釜石高の合宿を歓迎する東海市。市役所庁舎には横断幕も掲げられた

釜石高の合宿を歓迎する東海市。市役所庁舎には横断幕も掲げられた

 

 両市は毎年、野球やサッカーなどのスポーツで中学生が交互に訪問、交流を深めている。近藤さんも震災後に2度、釜石を訪れたことがあり、「鵜住居などの惨状を目にしたときは言葉もなかった。あの厳しい環境を乗り越えて甲子園出場を決めたと思うと、バックアップにも力が入ります」と思いを込める。

 

 釜石高の練習用として地元の新日鉄住金東海REX、大同大、横須賀高の各グラウンドを確保。東海REXは宿泊用の合宿所も快く提供してくれるという。「市民からの問い合わせも相次いでいる。甲子園への応援バスも検討したい」と近藤さん。

 

 先週、甲子園を事前視察した後、東海市まで足を運んだという釜石高野球部の佐々木偉彦監督(31)は「打ち合わせには東海REXのメンバーにも参加していただいた。心強い援軍です」と感激する。

 

 「文武両道」を掲げる釜石高ナインは2週間に及ぶ試験休みを終えてやっと本格始動したものの、連日の厳しい冷え込みもあり、打撃、守備の練習は、質、量ともにまだまだ。大会まであと1カ月と迫るが、佐々木監督は「まだまだ、全然弱い」と力不足を認める。

 

 東海市での合宿では、実戦形式の練習やバットの振り込みに時間をかける方針。「スポーツライターに甲子園の話を聞くなどメンタル面も鍛え、心と体をしっかりと準備したい」と佐々木監督は策を練る。

 

「工夫する力も必要では」と問いかける佐々木監督の言葉に耳を傾ける釜石高ナイン

「工夫する力も必要では」と問いかける佐々木監督の言葉に耳を傾ける釜石高ナイン

 

 菊池智哉主将(2年)は「全員が危機感を持って練習に取り組んでいる。甲子園で全力プレーを披露できるよう、東海市で鍛えてきたい」と決意。主将を支える奥村颯吾副主将(2年)は「甲子園で勝てるレベルにはまだ遠い。もっと意識を高く、上げていかないと」と気を引き締める。

 

 釜石高ナインはあす21日、バスで東海市に向かう。

 

(復興釜石新聞 2016年2月20日発行 第463号より)

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夢舞台での勝利へ決意、センバツ出場の釜石高野球部

夢舞台での勝利へ決意、センバツ出場の釜石高野球部〜「全力プレーで支援に感謝」誓う

センバツ出場決定を野田市長に報告する釜石高野球部の菊池主将、岩間投手ら

センバツ出場決定を野田市長に報告する釜石高野球部の菊池主将、岩間投手ら

 

 兵庫県西宮市の甲子園球場で3月20日から行われる第88回選抜高校野球大会に21世紀枠で出場が決まった釜石高野球部の菊池智哉主将(2年)、エースの岩間大投手(2年)らが3日、釜石市役所に野田武則市長を訪ね、出場を報告。夢舞台での健闘を誓った。

 

 佐々木偉彦監督、小谷地太郎部長、互野恭治校長が同行。菊池主将は「大会まで期間は短いが、意識を高めて全体の力を上げ、甲子園で勝ち上がれるチームをつくりたい」と意気込みを示した。昨年秋の県大会、東北大会を一人で投げ抜いた岩間投手は「甲子園ではたくさんの人が見てくれる。全力プレーで感謝の気持ちを伝えたい」と誓った。

 

 釜石のセンバツ出場は、釜石南時代の1996年以来ちょうど20年ぶり2度目。同校OBでもある野田市長は「市民の総力を挙げて応援したい。21世紀枠の意味を考え、甲子園では全力を尽くし、震災で全国から寄せられた支援への感謝の気持ちを発信してほしい」とエールを送った。

 

 これまで4回、甲子園を訪れたことがあるという佐々木監督はセンバツ出場決定を受け、近く甲子園を下見に訪れる予定。「今回は21世紀枠で選ばれ、自分たちの力で出られるわけではない。甲子園で勝てる力をつけて大会に臨めるよう、しっかりと準備したい」と気を引き締める。

 

 試験期間中の2日から14日までは部活動ができないため、練習を休み勉学に集中。15日から練習を再開する。今月21日から28日まで、釜石市の姉妹都市である愛知県東海市で合宿。さらに3月上旬には関西で2次合宿を行い、3月11日に大阪で行われる組み合わせ抽選会に臨む。

 

 釜石高の20年ぶりセンバツ出場決定を受け、甲子園出場後援会が1月30日、設立された。遠征や応援費などとして5千万円を目標に、同窓生などに募金を呼びかける。

 

甲子園出場後援会

 

 設立総会で、互野恭治校長は「学校の力だけではどうすることもできない。みなさんの力を借り、万全の態勢で甲子園に送り出したい」と協力を求めた。

 

 ともに同校OBの野田武則市長が名誉会長、大槌町の平野公三町長が名誉副会長に就任。会長には同窓会の神林知明会長を選び、PTA会長、野球部後援会長、同OB会長ら9人が副会長として支える。野田市長は「市民挙げた応援に全力を尽くしたい」と述べた。

 

 募金は、全国に約3万人がいる同窓生を中心に文書で呼びかけ、生徒の保護者については希望者に限って受け付ける。日本高野連の規定があり、「広告や寄付については地元商店街やOBなどが商業目的で便乗しないよう注意してほしい」としている。

 

 センバツ大会では、1、2年生が応援バスで甲子園に向かう。卒業式を終えている3年生は自由応援とする。

 

 募金について問い合わせは釜石高の事務局(電話 0193-23-5317 / FAX 0193-23-8611 )へ。

 

(復興釜石新聞 2016年2月6日発行 第459号より)

 

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問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

釜石ラグビータウンミーティング

釜石ラグビータウンミーティング

釜石ラグビータウンミーティング

 

Rugby World Cup 2019 in KAMAISHi

この度、2019年に向けた釜石ラグビータウンミーティング“日本代表の進化と未来”~2015年と2019年~を開催します。

 

日程及び会場

平成28年2月20日(土)
15:00~17:00  ~ゲスト講演会&トークセッション~
会場:チームスマイル・釜石PIT (釜石情報交流センター)

ゲスト

稲垣 純一(いながき じゅんいち)氏
東京都出身 慶応義塾大卒。慶応義塾大ラグビー部コーチ、サントリーラグビー部副部長、チームディレクター、GMを歴任、2007年にトップリーグCOD、日本ラグビー協会理事に就任。日本代表チームディレクターとしてRWC2015でチームを指揮。

 

松瀬 学(まつせ まなぶ)氏
長崎県出身 修猷館高校、早稲田大学でラグビー部に所属。卒業後は共同通信社に入社、一貫してスポーツ畑を歩む。2002年1月退社し、ノンフィクションライターに。著書に「汚れた金メダル」(文芸春秋)など多数。

 

豊原 謙二郎(とよはら けんじろう)氏
神奈川県出身 湘南高校から早稲田大学へ。卒業後、NHKに入社。おはよう日本のスポーツコーナーを担当。大リーグ、北京オリンピックのキャスターを経て仙台局勤務。RWC2015イングランド大会では日本代表対南アフリカ戦を実況。

入場料

無 料(どなたでもご参加いただけます。)

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 ラグビーワールドカップ推進室
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話 0193-22-2111(105) / FAX 0193-22-6040 / メールでの問い合わせ
元記事:
https://www.city.kamaishi.iwate.jp/shisei_joho/shokai/rugby_city/detail/1199442_3208.html
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センバツ出場を決めた後輩をたたえる

前回出場 20年前のOB「存分に楽しんで」〜エース前田直樹さんら後輩にエール、10年前に「釜甲会」結成 絆深める

センバツ出場を決めた後輩をたたえる

センバツ出場を決めた後輩をたたえる前田直樹さん(左)。さらに右へ菊池智哉主将、岩間大投手、小國晃也さん、君ケ洞剛一さん、佐々木昌彦さん=1月30日

 

 釜石高のセンバツ出場が決まった翌30日、甲子園に向け練習を開始した釜高ナインを20年前の前回出場のエース前田直樹さん(37)=宮城県石巻市=らOB4人が訪ね、激励した。前田さんは後輩の健闘を祈り、練習球5ダースをプレゼント。「20年前の自分は地に足がつかないまま甲子園のマウンドを踏んだ。後輩には伸び伸びと夢の舞台を楽しんでほしい」と願った。

 

 前田さんと同学年で活動した当時のチームメートは23人。この日は前田さんのほか、小國晃也さん(37)=釜石市小川町=、君ケ洞剛一さん(37)=同平田=、佐々木昌彦さん(36)=盛岡市=がグラウンドに足を運んだ。

 

菊池主将に練習球を贈る前田さん

菊池主将に練習球を贈る前田さん(右)。「落ち着いてプレーを」とアドバイスした

 

 甲子園出場から10年を記念し、当時の1、2年生部員で「釜甲会」を結成してちょうど10年。以来、毎年1回集まって親睦を深めている。2月20日にセンバツ出場20周年を記念して盛大に釜甲会を開く予定だが、それより一足早く届いた吉報。4人は「良かった」「おめでとう」と後輩の快挙をたたえた。

 

 4人はこのあと、震災の津波で、松原町で命を落としたチームメートの宮田豊さん(当時32)の墓がある石応禅寺を訪ね、吉報を報告したという。

 

■前田直樹さん
 前田さんは20年前、釜石南(当時)を初の甲子園に導いた主戦投手。しかし、秋の県大会、東北大会と連投で肩を痛め、センバツ初戦の米子東戦では初回に5点を奪われ無念の降板。その後追いつき一時は逆転したものの、最終回に逆転され涙をのんだ。慶応大に進んで外野手に転じ、東京6大学野球で活躍。卒業後は日本製紙石巻(宮城県)でプレーし、現在はコーチを務める。震災で石巻の工場も被災し、復旧に奔走した。

 

 「甲子園で入場行進をしたときの、あの感触、景色が忘れられない。悔しい思いはしたが、その後も野球を続ける原点となった」と振り返る。初戦は先制するも無情の雨でノーゲーム。仕切り直しの試合は「地に足がつかず、内容は半分も覚えていない」。この経験を教訓に、「プレッシャーはあると思うが、事前のイメージをしっかりと持ち、落ち着いてプレーしてほしい」と後輩の菊池主将や岩間投手にアドバイスした。

 

■君ケ洞剛一さん
 君ケ洞さんは当時、控え投手。公式練習で甲子園のマウンドを踏むことはできたが、本番ではベンチ(16人)に入れなかった。「でも精いっぱいやったし、甲子園の雰囲気は十分に味わえた。悔いはない」と言い切る。

 

 ホタテを中心とする海産物通販会社の専務。震災の津波で平田の工場が全壊したものの、いち早く復旧させた。若者が集うまちづくり団体ネクスト釜石の主要メンバーとして活動し、地域の産業再生に力を尽くす。

 

 「当時のチームメートは本当に仲が良く、それが何よりの宝物になった」。後輩には「被災地のためとかあまり考えず、心ゆくまで甲子園の雰囲気を楽しんでほしい」と言葉を贈る。

 

■小國晃也さん
 20年前は三塁手で、大槌町復興推進課に勤める小國さんは、釜石高野球部OB会長に就任したばかり。釜石高の岩間投手は、小國さんの父峰男さんが監督として指導するスポーツ少年団の教え子で、震災で行方不明になったままの岩間投手の母成子さん(当時44)は職場の同僚だった。「つらい思いを乗り越えてきた分、甲子園に行かせてあげたかった。OB会としても精いっぱいバックアップし、存分に楽しんできてほしい」と応援する。

 

■佐々木昌彦さん
 高校時代は遠野市上郷から列車で通学した佐々木さんは練習で打球を目に当て、本番では一塁コーチに回った。

 

 岩手大に進み、10年ほど前、仲間とテレビCMなど広告映像の制作会社を設立。震災後は釜石や大槌など被災地のスポーツ少年団を回り、グラブなど道具を贈って支援した。

 

 「あの困難な状況に置かれた子どもたちが甲子園に行けると思うと、涙も出ますよ」と感激を隠せない。「甲子園は夢のまた夢。期待を背負うことなく、楽しんできてほしい」と願う。

 

(復興釜石新聞 2016年2月3日発行 第458号より)

 

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夢に見た甲子園出場が現実となり、とび上がって喜ぶ岩間投手

チーム一丸「被災地に元気を」〜釜石 20年ぶり夢舞台、21世紀枠でセンバツ滑り込み

喜びを爆発させる釜石高の選手ら

「ヨッシャー、甲子園だ」。20年ぶり2度目のセンバツ出場を決め、喜びを爆発させる釜石高の選手ら=1月29日午後3時20分

 

 兵庫県西宮市の甲子園球場で3月20日から行われる第88回選抜高校野球大会に出場する32校が1月29日に決まり、21世紀枠(3校)で釜石が選ばれた。釜石南時代の96年に初出場して以来、20年ぶり2度目の「春」。夢に見た甲子園出場がホンモノとなり、佐々木偉彦監督(31)を胴上げする釜石ナインは喜びを爆発させた。東日本大震災から間もなく5年。今回は震災で大きな痛手を負った地域の期待を背負い、晴れの舞台に臨む。

 

 この日、校舎1階の校長室には約50人の報道陣と10台ほどのテレビカメラが詰めかけ満杯となった。張りつめた空気の中、午後3時過ぎ、選考委員会本部から電話が入り、互野恭治校長が受話器を取った。「被災地釜石にとって願ってもない朗報。ありがたくお受けします」。緊張の面持ちが笑顔に変わった。

 

釜石高校 互野恭治校長

吉報が届き、笑顔で電話に応える釜石高の互野恭治校長

 

 正面玄関前で待機していた野球部員のもとへ互野校長が駆け付け、吉報を報告。「津波から避難し、『釜石の奇跡』と言われた。そこから成長した姿を全国のみなさんに見せてほしい」と激励した。ユニホームを着たナインがとび上がり、喜びを爆発させた。校内にも放送が流れ、授業中の生徒たちから歓声が湧いた。

 

 歓喜の胴上げが始まる。互野校長に続き、佐々木監督が2度、3度と宙を舞った。ベンチから大きな声を出し続け、センバツ出場の原動力となった菊池智哉主将(2年)の重い体も持ち上げられた。校舎の屋上からはセンバツ出場を祝う垂れ幕がスルスルと下りた。

 

 震災に負けず練習に工夫を重ね、昨秋の県大会で準優勝。東北大会では初戦で敗れたが、甲子園常連校の東北(宮城県)と延長戦にもつれ込み、互角に戦った。そのひたむきな姿勢が高く評価され、20年ぶりにめぐってきた夢舞台。就任1年目で甲子園に導いた佐々木監督は「被災地の復興はまだ道半ば。全国の人たちに被災地を、目標に向かって力を発揮する子どもたちの姿を見てほしい」と力を込める。

 

就任1年目で悲願を達成した佐々木偉彦監督を歓喜の胴上げ

就任1年目で悲願を達成した佐々木偉彦監督を歓喜の胴上げ

 

 大槌町赤浜で被災し母親を亡くしながらも、県大会、東北大会を一人で投げ抜いた岩間大投手(2年)は「甲子園に出るだけでは意味がない。全力プレーで被災地の人たちに元気を与えたい」と誓う。松原町で被災し、甲子町の仮設住宅で暮らす菊池主将も「お世話になった方々に恩返しをしたい」と口をそろえる。

 

夢に見た甲子園出場が現実となり、とび上がって喜ぶ岩間投手

夢に見た甲子園出場が現実となり、とび上がって喜ぶ岩間投手(右から6人目)ら

 

 昨秋の沿岸南地区予選1回戦でコールド負け。危機的状況からチームが生まれ変わり、奇跡的な快進撃が始まった。佐々木監督は「当初は岩間が中心だったが、他の選手も力をつけ、粘って勝てるチームになった」と成長に目を見張る。

 

 目標は「トータルベースボール」。打撃の基本を見直すだけでなく、走攻守全体の底上げを図る。野球についてさまざまな視点から考える意識改革も徹底。選手には日々の課題をチェックする「野球ノート」の提出を義務付け、そこには必ず両親や仲間、震災後に支えてくれた周囲の人々への感謝の言葉を記すことにしている。

 

 昨秋の公式戦終了後からウエートトレーニングなど基礎体力の強化にも取り組んできた。11月には、選手1人が1泊2日で10合の米を食べ尽くす「釜めし合宿」を敢行。57キロと、投手としては華奢(きゃしゃ)な体つきだった岩間投手は「体重が6キロも増え、課題の球速アップにつながる」と喜ぶ。

 

 初出場の20年前は初戦で米子東に敗れ、勝利の校歌を響かせることはできなかった。当時はまだ小学生で、テレビでその姿を見ていたという佐々木監督は「まず1勝し校歌を歌いたい」としながらも、「21世紀枠の最高はベスト4。その歴史を塗り替えたい」と目標を高く掲げる。菊池主将も「釜石の歴史をつくりたい」。岩間投手は「どこと当たっても絶対に負けない」と強豪校との対戦を待ち望む。

 

 釜石高野球部は2月下旬から愛知県東海市で合宿に入る。3月上旬には関西で2次合宿を行い、3月11日に大阪で行われる組み合わせ抽選会に臨む。

 

■釜石高野球部の歩み
 1914年に釜石女子職業補修学校として創立。釜石高等女学校などを経て49年に釜石高となったが、63年に釜石南、釜石北に分離。2008年に両校が統合し釜石高となった。硬式野球部は46年に創部。62年に秋の県大会で優勝し東北大会に進んだが、準決勝で敗れ選抜出場を逃した。釜石南時代の95年秋にも東北大会に進み準優勝。96年の第68回選抜大会に初出場したが、初戦で米子東(鳥取県)に7-9と惜しくも逆転負けした。現部員は女子マネジャー1人を含む24人。

 

(復興釜石新聞 2016年2月3日発行 第458号より)

 

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