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世代超え つながる笑顔 釜石・平田地区の地域交流カフェ 30回目、中学生が盛り上げる

30回目の「平田つながるカフェ」で紙飛行機飛ばしを楽しむ参加者

30回目の「平田つながるカフェ」で紙飛行機飛ばしを楽しむ参加者

 
 住民同士の交流を促す「平田つながるカフェ」は6月30日、釜石市平田の上平田ニュータウン集会所で開かれた。30回目の今回、福祉学習に取り組んでいる大平中(髙橋信昌校長、生徒75人)の3年生18人が企画・運営に挑戦。軽運動や歌、遊びなどを通じて高齢の住民と未就学児の触れ合いをサポートし、世代を超えた「顔の見える関係性」のつなぎ役として力を発揮した。
 
 つながるカフェは市、平田地区で特別養護老人ホーム「あいぜんの里」を運営する社会福祉法人清風会が主催し、市社会福祉協議会が協力する。高齢者らの孤立予防や心身の健康維持などにつなげようと2021年11月に始まり、月1回の開催を継続中。地区の住民もサポーターとして関わり、地域が一体となり「住み慣れた場所で安心して生活できるまちづくり」を進めている。
 
 同校の福祉学習は総合的な学習の一環で、同法人が支援。3年間の連続した学び(座学・実技)で、世代や障害の有無を超えた福祉の視点を身に付ける。現3年生は、学習初年の1年生の時に“お客さま”としてカフェに参加し高齢者と交流。地域社会の一員として積極的に関わる意識を高め、これまでの学びの成果を確かめる機会にと今回、企画運営に挑んだ。
 
受付や案内など役割を決めて参加者をもてなす大平中3年生

受付や案内など役割を決めて参加者をもてなす大平中3年生

 
 この日は、地域住民ら約40人が参加した。平田こども園の年長児(17人)が招かれ、「ちゃちゃつぼちゃつぼ」など手遊び歌を披露。さらに、一緒に歌えるようにと練習してきた「川の流れのように」を元気いっぱいに響かせ、大人たちを驚かせた。
 
園児、中学生、地域住民が歌声を合わせて「あ~あ~、かわの…」

園児、中学生、地域住民が歌声を合わせて「あ~あ~、かわの…」

 
 園児のかわいらしさにほっこりした後、大平中生が用意したプログラムを楽しむ時間がスタート。子どもから大人まで手軽に遊べる紙飛行機飛ばしでは、中学生のアドバイスを取り入れて作った紙飛行機を「せーの」の掛け声で放った。スピードはあっても滞空時間が短い機体や、ゆっくりと旋回しながら飛距離を伸ばす機体など、それぞれが個性を発揮。大人は童心に帰り、子どもたちと笑顔を重ねた。
 
紙飛行機を作りながら地域住民や園児と交流する中学生

紙飛行機を作りながら地域住民や園児と交流する中学生

 
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手作り紙飛行機を思い思いに放つ。子どもも大人も笑顔

 
 カフェタイムをはさみ、高齢者と中学生は健康体操を行った。「涙そうそう」など聞きなじみのある曲に生徒が考えた簡単な動きを付けたオリジナルの体操で、高齢者は見よう見まねでチャレンジ。「北酒場」ではマイクを手にした生徒が“こぶし”を回しながら気持ちよさげに歌う姿に会場から笑いが沸き起こり、体とともに心もほぐした参加者の表情にはすがすがしさが共通していた。
 
笑顔が弾ける健康体操。心身ともにリフレッシュ

笑顔が弾ける健康体操。心身ともにリフレッシュ

 
大盛り上がり!本気モードで歌う生徒につられ笑顔が連鎖

大盛り上がり!本気モードで歌う生徒につられ笑顔が連鎖

 
 終始笑顔の女性(94)は「小さい時に遊んだ紙飛行機が、今の子どもたちにも遊びとしてつながっているのがうれしい。若い人たちとのつながりが地域づくりには必要で、小さくてもこうした触れ合いがずっと続いてほしい」と期待。カフェは初参加だったが、「差別なく、みんな優しく接してくれた。地域のつながり、大切さを身にしみて感じた。人はひとりでは生きていけないから、皆さんに目配り、気配りをしてもらい、居場所をつくってもらってありがたい気持ちでいっぱい」と感激していた。
 
目線を合わせて笑顔で「はい、どうぞ」。学びを生かす生徒

目線を合わせて笑顔で「はい、どうぞ」。学びを生かす生徒

 
 3年生は6月から、市出先機関の平田地区生活応援センターや同法人の職員らの力を借りながらプログラムや担当する係を決め、参加者の名札づくり、茶菓の購入など準備を進めてきた。当日は会場設営の後、▽受付▽案内▽おもてなし▽進行▽イベント▽体操―の6つの係に分かれ活動。カフェの終わり、進行係の中嶋真帆さんが「来てくれてありがとうございます。運営、進行は難しく、スムーズに進められないこともあったけど、さまざまな支えで成功させることができました」と感謝の言葉を伝えた。
 
中学生が企画運営に携わったつながるカフェの参加者

中学生が企画運営に携わったつながるカフェの参加者

 
 生徒らは会場の片付けも手際よく進めた。「それぞれの係が自分の仕事をてきぱきとやって、イベントが盛り上がった」とうれしそうに話したのは、進行係の庭璃美亜(りびあ)さん。カフェでは、高齢者や幼児など対面する相手と「同じ目線」で、そして「はきはきと、口を開けて」話すことを意識したという。住民との積極的な関わり合いは刺激になったようで、「周りの人とコミュニケーションを取って互いに助け合うことは学校生活や社会に出た時にも役立つはず」とうなずいた。
 
 今後、3年生は認知症サポーター養成講座やステップアップ講座を受講。3年間の学習の集大成として演劇にも取り組み、10月に学校文化祭や市内の認知症サポーターらの研修会で発信する予定だ。

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野菜作りの基礎を学ぼう 釜石・市民農園で「農業入門塾ミニ」開催中 単発参加OK

釜石市市民農園で開催している「農業入門塾ミニ」=7月2日、甲子町第8地割

釜石市市民農園で開催している「農業入門塾ミニ」=7月2日、甲子町第8地割

 
 野菜作りの基礎を専門家から学べる「農業入門塾ミニ」が、6月から釜石市甲子町の市民農園で開かれている。釜石・大槌地域農業振興協議会(事務局・県沿岸広域振興局農林部)が、就農者の増加や遊休農地の活用促進を目的に開催。種や苗から野菜を育て収穫するまでの作業工程、病害虫防除の方法などを教えている。この後10月まで計3回の開催を予定している。
 
 同振興局農林部は2021年度から3年間、釜石、大槌2市町で農業入門塾を開講。参加者が指導を受けながら、割り当てられた区画で野菜栽培に挑戦してきた。24年度からは同市の協力で、市民農園を会場にミニ講座を開設。農園を借りて野菜栽培を楽しむ人などが学びを深めている。本年度は6月から10月まで月1回の講座が組まれる。園内の3区画分(約36平方メートル)を同塾専用ほ場とし、夏から秋に収穫する野菜の栽培法を中心に実習を交えて指導している。
 
 7月2日の2回目の講座には9人が参加。県大船渡農業改良普及センター産地育成課の伊藤沙南技師、同振興局農林部地域農業活性化グループの山口貴之主任主査が講師となり、病害虫防除の方法、育苗、せん定の仕方などを教えた。
 
船渡農業改良普及センターの伊藤さん(右上)、沿岸広域振興局農林部の山口さん(左上)が講師を務める。この日は2回目の講座

大船渡農業改良普及センターの伊藤さん(右上)、沿岸広域振興局農林部の山口さん(左上)が講師を務める。この日は2回目の講座

 
 農作物の成長過程では、菌やウイルスの侵入で正常な生育が出来なくなり、収量の低下や品質の悪化を招く病気があるほか、葉や果実を食べられる害虫被害があるという。発病には温度や湿度などの気象条件も関係する。伊藤技師はピーマンを例に病気の種類や症状、発生時期などを説明。「植える時にどういう病気が発生しやすいかを事前に調べておくことで、早めの対応が可能。6~9月はいろいろな害虫が発生しやすい時期でもある」と注意を促した。
 
 山口主任は病害虫防除の基本的考え方として「病気は予防的に殺菌剤を使用、虫は出始めたら手で取り除くか殺虫剤を散布する」と説明。本来、植物には病害虫から身を守る能力が備わっているが、「水や肥料のやりすぎで弱ると、病気にかかりやすかったり虫が付きやすくなったりする。植物を健全に保つことも大切」とアドバイスした。
 
1回目の講座(6月4日)で植えたピーマン、ナス、トマトは約1カ月を経て、実をつけるまでに成長。丈は約20センチから約60センチに

1回目の講座(6月4日)で植えたピーマン、ナス、トマトは約1カ月を経て、実をつけるまでに成長。丈は約20センチから約60センチに

 
 実習では栽培管理を学んだ。1回目の講座で植えたピーマン、ナス、トマト(市栽培推奨品種:すずこま)を教材に、参加者がせん定の仕方を教わった。より多くの質の良い実を収穫するには、栄養を集中させるために不要な枝葉や花芽を切り落とす作業が必須。参加者は講師に判断基準を聞き、「どこを切ってどこを伸ばすか」考えながら挑戦した。枝葉の密集は風通しを悪くし、病害虫発生の要因にもなることから、この作業は特にも重要だという。
 
ピーマンのせん定にチャレンジする参加者。どれを残すか考えながら…

ピーマンのせん定にチャレンジする参加者。どれを残すか考えながら…

 
 この日は秋野菜の育苗実習として、セルトレイにブロッコリーの種をまいたほか、農園内の畑にニンジンの種をまいた。ニンジンは「点播(てんぱ)」と「すじ播(ま)き」という2方法を試す。セルトレイは参加者が分担して持ち帰り、自宅で育苗。次回の講座に持ち寄り、畑に定植させる予定。
 
ブロッコリーは「セルトレイ」という容器に土を入れ、1セルに1粒ずつ種をまいて育苗。1カ月後に畑に植える

ブロッコリーは「セルトレイ」という容器に土を入れ、1セルに1粒ずつ種をまいて育苗。1カ月後に畑に植える

 
ニンジンも種から育てる。すじ播き(写真右下)は後で間引きする

ニンジンも種から育てる。すじ播き(写真右下)は後で間引きする

 
 同市の佐藤里美さん(42)は夫と一緒に昨年から市民農園を利用。野菜を育ててみるも、なかなかうまくいかず、基本を学ぼうと同入門塾に参加中。「専門家から教えてもらえるのはありがたい。すごく助かります」と講師の話に熱心に耳を傾ける。「せん定が一番難しい。(これでいいのか)切るのはドキドキで…」と初心者ならではの苦労はあるが、「将来的には“すずこま”トマトや“ラグビーカボチャ”(ロロン種)も育ててみたい」と夢を描く。
 
 事業を担当する同農林部の伊東菜々子技師は「参加者は積極的で、興味を持って質問もしてくれる。技術的なことを教えつつも、あまり堅苦しくなく、講師と参加者が互いに意見を交わしながら進んでいる」と講座の雰囲気を紹介。「ここでの学びをきっかけに遊休農地などを借りて農業を始める人が増えてくれたらうれしい」と願う。
 
くわで畝作りも体験(左)。野菜作りの面白さを味わえる入門塾ミニ。今後の講座も単発参加OK

くわで畝作りも体験(左)。野菜作りの面白さを味わえる入門塾ミニ。今後の講座も単発参加OK

 
 今後の日程は次の通り。時間はいずれも午前9時~同11時。
第3回:8月6日(農業用機械の使い方、夏野菜の収穫) 第4回:9月3日(電気柵の使い方、秋・越冬野菜の作り方) 第5回:10月1日(秋野菜の収穫、農地を借りるには?)
 
 参加希望者は開催日の2日前までに電話かメールでの申し込みが必要。問い合わせ、申し込みは同振興局農林部(電話0193・25・2704、E-mail:bi0003@pref.iwate.jp)へ。

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5日で世界遺産登録10周年の「橋野鉄鉱山」 高炉場跡で見学路整備に伴う発掘調査実施中

橋野高炉跡で行われている発掘調査の成果を公開=6月28日午後、現地説明会

橋野高炉跡で行われている発掘調査の成果を公開=6月28日午後、現地説明会

 
 釜石市橋野町青ノ木の「橋野鉄鉱山」は、明治日本の産業革命遺産(8県11市23資産)の構成資産の一つとして世界文化遺産に登録されてから、明日5日で10周年を迎える。資産範囲となっている採掘場、運搬路、高炉場の3遺跡のうち、一般公開されている高炉場跡には国内現存最古の洋式高炉の石組みが残る。現地では今、見学路の整備に伴う発掘調査を実施中。6月28日、その成果を紹介する説明会が開かれ、午前と午後合わせて計30人が足を運んだ。
 
 5月21日から始まった発掘調査は、大門跡から三番高炉跡に向かう途中の砂利道部分で行われている。昭和初期に国有林に向かう道路を盛り土整備した場所にあたり、調査は4つのポイントで実施されている。担当する市世界遺産室、髙橋岳係長が説明した。
 
調査箇所① 大門礎石周辺 黄丸の部分を深く掘ってみると、ノロかすや炭の層を含む盛り土造成の跡が確認された(写真右下)

調査箇所① 大門礎石周辺 黄丸の部分を深く掘ってみると、ノロかすや炭の層を含む盛り土造成の跡が確認された(写真右下)

 
 見学路整備のルート上には、南北に走る水路跡と交差する部分がある。一帯はこれまで土砂に覆われ、水路跡を分断する形になっていた。新たな整備では水路石垣内の埋没土砂を撤去。石垣が見える状態にし、新たに水路をまたぐ橋をかける計画。発掘調査では埋没していた石垣を検出。幅約1.4メートルの水路跡を確認できた。埋没土の上層からは鉄鉱石や茶碗、ガラス製の薬瓶、短いタイプのきせるなどが見つかった。昭和初期のものと考えられ、下層からは明治、大正期の遺物も出てきた。
 
調査箇所② 埋没していた水路跡 南(一番高炉側)から北(三番同)に流れる水路(黄線ルート)の石垣が掘削で検出された

調査箇所② 埋没していた水路跡 南(一番高炉側)から北(三番同)に流れる水路(黄線ルート)の石垣が掘削で検出された

 
水路跡の埋没土層からは(写真左上から時計回りに)カッチャ?、ガラス製薬瓶、きせる、花巻「臺(だい)焼」の陶磁器片…などが見つかった

水路跡の埋没土層からは(写真左上から時計回りに)カッチャ?、ガラス製薬瓶、きせる、花巻「臺(だい)焼」の陶磁器片…などが見つかった

 
 見学路ルートにかかる別の調査箇所からは、建物遺構が検出された。直線上に掘立柱の柱穴が見つかり、クリ材と推定される柱根も一つあった。2017年度に行われた台風被害復旧に伴う発掘調査で、鍛冶場の存在が想定されていたが、検出面に鋳物砂が多く、鋳型を成形する工房の可能性も考えられる。江戸末期(1860年代初頭)に描かれた高炉絵巻には該当箇所に建物は見当たらないことから、それ以降に建てられたものとみられる。遺構の規模は精査中。
 
調査箇所③ 建物遺構を示す柱穴(黄丸)を検出。柱根が残る穴も(写真左下)

調査箇所③ 建物遺構を示す柱穴(黄丸)を検出。柱根が残る穴も(写真左下)

 
 三番高炉周辺の区画が分かる石垣も見つかった。2023年度に実施した三番高炉南側の石垣調査で、土砂埋没箇所に石垣の東隅が埋蔵されているのを確認していたが、今回の調査では、長さ約3.8メートルの東面石垣を検出した。切石と丸石で構築され、斜面を利用した積み方もしているという。蹄鉄が出土していることから、橋野鉄鉱山廃業後に埋没したとみられる。石垣から現在の地表までは約80~90センチあり、昭和初期の道路整備時にかなりの量の土砂を盛ったとみられる。
 
調査箇所④ 三番高炉南側の石垣 東隅から東面の石垣を検出。黄丸部分を上から見ると写真右下に

調査箇所④ 三番高炉南側の石垣 東隅から東面の石垣を検出。黄丸部分を上から見ると写真右下に

 
石垣よりも80~90センチほど高く盛り土されているのが分かる

石垣よりも80~90センチほど高く盛り土されているのが分かる

 
 髙橋係長は「鉄鉱山稼働時と比べ、だいぶ地形が変わっている。埋没箇所の発掘で、当時の雰囲気が分かってきた」と話す。橋野高炉跡は1957(昭和32)年に国史跡に指定されているが、発掘調査自体はそれほど多くは行われていない。「回数を重ねていけば、もっといろいろなことが分かってくる。これからの調査で明らかにしていきたい」と髙橋係長。現調査は8月上旬まで行われる。終了後、2018年から計画的に進められている範囲内容確認調査に着手する予定。

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養殖5季目・釜石はまゆりサクラマス 水揚げ開始 試食会も「サイズ上々、脂のり良し」

釜石湾で養殖され水揚げされたサクラマス

釜石湾で養殖され水揚げされたサクラマス

 
 釜石市で養殖サクラマスの水揚げが始まった。今季初の水揚げとなった6月30日は、釜石湾に設置したいけすから体長約50~60センチ、重さ2~2.5キロほどに育った約23トンが同市魚河岸の市魚市場に入荷した。2020年に試験養殖が始まり、22年に地元の水産会社・泉澤水産(泉澤宏代表取締役)が事業化。5季目の今年は7月中旬ごろまでの予定で、昨季比40%増しの240トンが見込まれる。
 
今季初めて水揚げされた釜石はまゆりサクラマス

今季初めて水揚げされた釜石はまゆりサクラマス

 
 秋サケの不漁が続く三陸沿岸では、その穴を埋めようとサーモン養殖が広がっている。ギンザケやトラウトサーモンが多いが、釜石では「ママス」の名で親しまれるサクラマスに着目。養殖事業を手がける同社は市や岩手大などの協力を得て「釜石はまゆりサクラマス」としてブランド化に取り組んでいる。
 
 “初もの”を積み込んだ漁船は午前5時ごろ魚市場に入港。同社の社員16人が水揚げや選別作業に当たった。作業の効率化に向け、今季から魚を重量ごとに自動選別する機械を導入。サイズをそろえ、ばらつきなく出荷できる体制につなげている。この日は、1キロ当たり950円ほどで取引。主に地元加工場を経て県内外のスーパーやすし店に流通する。
 
水揚げ、選別作業を進める泉澤水産の社員

水揚げ、選別作業を進める泉澤水産の社員

 
自動重量選別機を使って仕分けは効率的に

自動重量選別機を使って仕分けは効率的に

 
規格(重量)をそろえ、ばらつきをなくし出荷へ

規格(重量)をそろえ、ばらつきをなくし出荷へ

 
 今季は、水温などを考慮しながら15回の水揚げを予定。同社によると、餌やりなどのノウハウが定着し、魚の大きさが安定。種苗に占める生産量の割合「歩留まり」もこれまでの5割から7割ほどになっているという。また、環境負荷の小さい養殖業に与えられる国際認証(ASC)を取得しており、水産物の付加価値を高める取り組みにも力を入れる。
 
 30日は試食会も開かれ、関係者らが刺し身や塩焼きで味を確かめた。泉澤代表取締役は「脂のりが良く、期待通りの出来に仕上がった」とアピール。将来的に年間300トンを目指すとし、「地元に魚を安定供給するのが我々の仕事。地元での消費を多くし、加工品づくりにつながる形が望ましい。日本固有の種として全国に売り出すため、販路の幅も拡大したい」と意気込む。
 
水揚げ後に開かれた養殖サクラマスを使った刺し身の試食会

水揚げ後に開かれた養殖サクラマスを使った刺し身の試食会

 
 ブランド化に向けたプロモーション活動も産学官一体で進める。地元の味としての定着やファンづくりを狙いに、市内飲食店でサクラマスを味わえるフェアを開催したり、学校給食でも提供したり。他の養殖サーモンとの差別化を図り、希少性を生かし認知度向上や商品開発などを続けていく。

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不審者発見、適切な通報…夫婦で協力、窃盗犯逮捕に貢献 釜石警察署が感謝状

松本一夫署長から感謝状を受けた洞口忠さん(右)

松本一夫署長から感謝状を受けた洞口忠さん(右)

 
 夫婦の連携プレーが窃盗事件の容疑者逮捕につながったとして、釜石警察署(松本一夫署長)は6月25日、釜石市浜町の自営業・洞口忠さん(56)、陽子さん(50)夫妻に感謝状を贈った。贈呈式は同市中妻町の釜石署であり、松本署長から感謝状を受け取った洞口さんは「犯人が捕まって良かった。これからも協力して見守っていければ」と、淡々と話した。
 
「夫婦で協力し適切な通報で被疑者逮捕に貢献した」と謝意を伝える

「夫婦で協力し適切な通報で被疑者逮捕に貢献した」と謝意を伝える

 
 窃盗事件は5月21日深夜に発生した。洞口さんは同日午前0時頃、暑さから自宅2階の窓を開けた際に、道路向かいの工事現場事務所付近に人影を発見。「こんな時間帯に歩くなんて、不思議な人がいるな」と目を凝らすと高齢の男性のようで「徘徊(はいかい)」とも思ったが、同じところを行ったり来たりする不審な動きに「おかしい…迷い込んだのではない。怪しい」と感じた。
 
 そんな様子を陽子さんに伝えると、自発的に「近所に不審者がいる」と署に通報した。その間も洞口さんは男性を目で追い、10分ほど経った頃、男性が移動し始めたため、「見失わないように」と家の外に出て追跡。その約5分後に駆け付けた署員が、通報の際に伝えられた服装などの情報をもとに容疑者を見つけて緊急逮捕した。
 
 釜石署によると、男性(80代)は窓ガラスを割って事務所に侵入し、ノートパソコンなど数点(計十数万円相当)を盗んだ、建造物侵入と窃盗の疑いで逮捕された。
 
状況を振り返る洞口さん。「地域で協力し見守りを」との思いを強くする

状況を振り返る洞口さん。「地域で協力し見守りを」との思いを強くする

 
 発見後に追跡という行動もとった洞口さんは「怖さは感じず、『何とかなるさ』と体が動いた」と振り返った。全国的に「治安が悪くなってきている」と感じる事件を耳にすることもあり、「地域には高齢者や子どももいるので、今まで通り、地域のみんなで協力しながら見守っていきたい」と背筋を伸ばした。
 
 今回の窃盗事件の早期解決に対して松本署長は「見て、気づいて通報。夫妻の素晴らしい連携があったからこそ」と強調し、「通報がなければ、被害が拡大する恐れもあった」とあらためて感謝の言葉を伝えた。そして、「今回は泥棒だったが、徘徊する高齢者などの場合もある。怪しい人、気になる人を見かけたら迷わず通報してほしい」と呼びかける。

釜石PIT 2025年7月のスケジュール

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釜石PITの7月のスケジュールです。
太字で表示されているイベントは一般の方も参加できます。イベントに関するお問い合わせは、各主催者までお願いいたします。
 
施設に関する詳細はこちらのページをご覧ください。

フェリアス釜石

釜石まちづくり株式会社

釜石まちづくり株式会社(愛称 フェリアス釜石)による投稿記事です。

問い合わせ:0193-22-3607
〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内 公式サイト

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ラグビー好き、うのスタに集合! 3年目の「おとラグ」 釜石ラグビーを知り、SW選手とプレー体験

大人ラグビーコミュニティー「おとラグ」の釜石ツアー参加者ら

大人ラグビーコミュニティー「おとラグ」の釜石ツアー参加者ら

 
 「大人だってラグビーしたい!」。競技性の高いラグビーを交流のツールとし、選手が感じている魅力を仲間と体感できるコミュニティー「おとラグ」が6月21、22の両日、釜石市でイベントを行った。一般社団法人Joynt(喜連航平代表理事、東京都)が企画、運営する体験プログラムの一環で、釜石開催は3回目。参加者は2019年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の会場となった釜石鵜住居復興スタジアム(うのスタ)などで楕円(だえん)のボールに親しみ、“ラグビー好き”の輪を広げた。
 
 関東、東北圏から男女18人が参加。初日は、うのスタと釜石ラグビーの歴史を学ぶプログラムが組まれた。スタジアムの成り立ちを説明したのは、日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)の現役選手で同市文化スポーツ課職員の青柳魁さん(24)。東日本大震災津波にのまれた小中学校跡地にW杯誘致のために建設されたこと、建物には尾崎半島林野火災の被災木が使われ、災害への備えとして貯水槽が整備されていることなどを紹介した。市職員としてスタジアムの案内、利用受付などの業務にあたる青柳さんに、参加者からはさまざまな質問が…。選手として「復興の象徴」の場所で戦う意義、誇りも示した。
 
釜石鵜住居復興スタジアムの成り立ち、施設の特徴などについて青柳魁さん(写真右上)が説明=6月21日午後

釜石鵜住居復興スタジアムの成り立ち、施設の特徴などについて青柳魁さん(写真右上)が説明=6月21日午後

 
 同市地域おこし協力隊でラグビー普及コーディネーターとして活動、SW事務局の総務も担当する竹中伸明さん(36)は、“24216(日)”という数字をもとに独自の視点で釜石ラグビーの歴史を紹介。日本選手権7連覇の偉業を成し遂げた新日鉄釜石ラグビー部の活躍、地域密着型クラブチーム「釜石シーウェイブスRFC(現日本製鉄釜石SW)」の誕生、震災後のSWの活動などを説明した。先の日数の起点は1959(昭和34)年3月4日。市内で初めて本県高校ラグビー強豪校の招待試合が行われた日で、翌60年4月、富士鉄釜石ラグビー同好会(後の新日鉄釜石同部)が発足した。竹中さんは「SWの誕生がラグビーを使った地域づくりにつながった。“ラグビーのまち”が過去形にならなかったのは、さまざまな人々が寄せてきた釜石への思いのおかげ。それによって今日(24216日目)がある」とした。
 
竹中伸明さん(写真右上)による釜石ラグビーの歴史解説は面白い視点で参加者の興味を引いた

竹中伸明さん(写真右上)による釜石ラグビーの歴史解説は面白い視点で参加者の興味を引いた

 
 貴重な学びの後は、根浜海岸でのビーチラグビー。砂に足を取られながらも、ボールを使った遊びやパス回しを楽しんだ。数人は受けたボールを手に海中ダイブ。今季の海開きを先取りした。
 
夕方の根浜海岸でビーチラグビー交流。たくさんの笑顔が弾ける

夕方の根浜海岸でビーチラグビー交流。たくさんの笑顔が弾ける

 
絶好のロケーションの中で体を動かすのは最高!海へダイビング“トライ”も

絶好のロケーションの中で体を動かすのは最高!海へダイビング“トライ”も

 
最後はやっぱりこうなる!? 喜連代表(中央)を海にいざなう参加者。遊びも全力で!

最後はやっぱりこうなる!? 喜連代表(中央)を海にいざなう参加者。遊びも全力で!

 
 2日目は、うのスタでプレー体験が行われた。SWからロック山田龍之介(33)、フルバック今大輝(23)、プロップ青柳魁の3選手が協力した。ボールを使ったゲームで参加者同士が親睦を深めた後、タックル、キック、スクラムを実体験。3選手からコツを教わりながら、試合観戦で見るだけだったプレーの一部を自分の体で味わった。パスをつないでトライまで持ち込む実戦形式の体験も。参加者は攻防も楽しんだ。
 
o選手入場を疑似体験する参加者。でんぐり返しも!=6月22日午前

選手入場を疑似体験する参加者。でんぐり返しも!=6月22日午前

 
釜石SWの山田龍之介選手とボール回しを楽しむ

釜石SWの山田龍之介選手とボール回しを楽しむ

 
青柳魁選手(左)を相手にスクラム体験。観戦では分からなかったことに目からうろこ

青柳魁選手(左)を相手にスクラム体験。観戦では分からなかったことに目からうろこ

 
山田選手が持つ練習用具に体を当て、タックルの感覚をつかむ

山田選手が持つ練習用具に体を当て、タックルの感覚をつかむ

 
 宮城県仙台市から参加した岩間千帆美さん(26)は父親がラグビー経験者。「自分もやってみたい」との思いはあったが、これまで機会がなかった。「すごく楽しい。新鮮味もあって」と目を輝かせ、「ラグビーは仲間を大切にする。観戦の時も感じたが、相手選手へのリスペクトの気持ちが他のスポーツ以上」と実感。出身は釜石市。他の参加者が「うのスタをラグビーの聖地みたいに言ってくれたり、『釜石、いい所だね』と言ってくれるのがうれしい」と声を弾ませた。
 
 青森県八戸市の田口佳稔さん(62)は大学以来40年ぶりのラグビー。「今のボールを初めて触った。皮のボールしか知らないので」と笑い、「みんな上手でびっくり。知り合いも増えた」と収穫を口にした。震災の翌年から来釜。仙人峠マラソン大会の“常連”で、うのスタには建設段階から足を運んでいた。「ここまで復興したのは本当にすごい。自然豊かで、魅力が詰まった場所」と特別感を表した。
 
楕円のボールキャッチは難しい?? 両手のひらをしっかり広げてつかむ

楕円のボールキャッチは難しい?? 両手のひらをしっかり広げてつかむ

 
最後は実戦形式で。相手をかわしトライを取る喜びは格別

最後は実戦形式で。相手をかわしトライを取る喜びは格別

 
 「人に教えることが好き。貴重な機会をいただき光栄」と感謝したのはSWの今選手。キック指導で力を発揮した。「コアな質問も出たりし、みんなラグビーが本当に好きなんだと感じた」。ファンと試合後に話す機会はあるが、ラグビーを一緒にするという経験はめったにない。「選手ができることを地道にやっていけば、ファンも増えると思う。これからも互いに協力し合っていけたら」と未来を描いた。
 
今大輝選手はキックの際のボールの落とし方を伝授(写真右)。参加者はコツをつかむと上手に蹴り出していた

今大輝選手はキックの際のボールの落とし方を伝授(写真右)。参加者はコツをつかむと上手に蹴り出していた

 
 運営母体の同法人は、現九州電力キューデンヴォルテクス所属選手の喜連航平さん(30、SO)が中心となり、2023年2月に設立。19年のW杯でファンが増えたのを好機に、ラグビー精神の奥深さを選手目線で感じてほしいと、交流スポーツとしての体験プログラムの提供を始めた。釜石など地方へのツアーを兼ねたもののほか、首都圏で定期開催するビーチラグビー交流会、今回のうのスタ2日目のような体験メニューなど各種コースがあり、年間実施回数は約50回にも及ぶ。「おとラグ」参加者が各地で「エリアコミュニティー」を立ち上げ、自主的に活動するケースも。
 
ラグビーW杯2019のレガシーが残る最上階の部屋で記念の一枚

ラグビーW杯2019のレガシーが残る最上階の部屋で記念の一枚

 
一般社団法人Joynt代表理事の喜連航平さん(右)。今後の釜石開催にも意欲を見せる

一般社団法人Joynt代表理事の喜連航平さん(右)。今後の釜石開催にも意欲を見せる

 
 釜石市は「おとラグ」ツアーの東北唯一の開催地。今年は釜石ラグビーをより深く知る内容で行われた。喜連さんは「鵜住居のスタジアム、地域クラブチームのSWなど釜石には独特の資源がたくさん。ここでやることは震災を風化させないという意味でも大きな意義がある」と強調。参加者同士がコミュニケーションを取りながらワンチームになっていく姿も「ラグビーの助け合いの精神の表れ」と喜ぶ。釜石開催は今後も継続していきたい考え。