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選び抜く言葉 紡ぐ短歌と物語 クリエイターたておきちはる(大槌) 釜石でギャラリー展

釜石市民ホールギャラリーで開催中の「たておきちはる展」

釜石市民ホールギャラリーで開催中の「たておきちはる展」

 
 「大丈夫 今日の私は幸せよ 昨日と明日を抱きしめ囁く」。“今”感じた思いを伝える言葉を選び抜いてつないだ短歌や文章、紡ぎ出したその世界をイメージさせるような写真などを並べたギャラリー展「昨日、今日、明日」が釜石市大町の市民ホールTETTOで、12日まで開かれている。
 
 釜石・大槌地域で活動する作家を紹介する同ホール自主事業の「art at TETTO(アート・アット・テット)」。12番目として今回ピックアップしているのは、大槌町を拠点に活動するクリエイターたておきちはるさん(34)。短編小説、エッセイ、絵本などを執筆する傍ら、町内の情報を伝えるフリーランスのライターとしても活動する。
 
たておきちはるさんと、銀河鉄道をモチーフにしたデザイン「車窓」

たておきちはるさんと、銀河鉄道をモチーフにしたデザイン「車窓」

 
 自身の活動はインターネット上の「Instagram(インスタグラム)」や「note(ノート)」で紹介するが、地域でじかに見てもらうのは初めて。会場には、ギャラリー展のために書き下ろした「軽い読み物 5月の空を泳ぐヤツ。」のほか、短編小説やエッセーなど4点を並べる。
 
書き下ろの短編小説などが並び、自由に読むことができる

書き下ろしの短編小説などが並び、自由に読むことができる

 
 子どもの頃から文章を書くのが得意だと感じていたが、進学先に選んだのは演技や脚本を学ぶことができる京都造形芸術大(現京都芸術大)。在学中から映画や舞台の現場に立ち、自主制作・公演を行い、卒業後は東京で活動した。東日本大震災後に仮設住宅で暮らす母親を心配しUターン。町役場や観光協会で働く傍ら、「演劇を通じた心の復興」を目指す町民活動にも関わり、脚本担当や演者としての活動は続いた。
 
 休職中だった昨年、町外の職業訓練校でグラフィックデザインを学んでいる時に、講師や同期生から刺激や助言を受け、さらっと読めて不思議な世界が味わえる「ショートショート作品」を執筆。4000字以内との規定がある「第20回坊っちゃん文学賞」(愛媛県松山市主催)に初めて応募し、最終審査に残った「純愛の繭」が佳作を受賞した。
 
 執筆に取り組む中で、より短い文学「短歌」の世界に興味を持つようになった。理由は「思いを表現するのに効果的な言葉を勉強したかったから」。何か言葉が思いつくたびメモに残していたら、日常を切り取る短歌が自然と紡がれた。
 
作品を瓶やケースに入れたり貼ったり、見せ方を工夫する

作品を瓶やケースに入れたり貼ったり、見せ方を工夫する

 
 会場の至る所に散りばめているのは、そんな日々を切り取った言葉たち。「君のこと深く知らない 君が持つ光度と照度と輝度は知ってる」は、職訓校での学びと仲間への思いをつづった作品。湧き出た言葉を表現するような写真を添えて見せる。古里の風景が多いが、旅先で印象に残った光景も写す。ギャラリー展のチラシで使ったデザイン画「車窓-iwate-」(ポスター3連作)も展示。「銀河鉄道の夜」をモチーフにした作品で、「車両を書かずに伝えられる最少の表現」を模索した。
 
充実した学びの時間を表現した作品は「まぶしさ」をうたう

充実した学びの時間を表現した作品は「まぶしさ」をうたう

 
たておきさんが吐き出した思いを来場者がのぞき込む

たておきさんが吐き出した思いを来場者がのぞき込む

 
正方形の原稿用紙(9マス×6行)に収められた超短編小説「54字」

正方形の原稿用紙(9マス×6行)に収められた超短編小説「54字」

 
 「つらい時でも短歌にすれば作品になる。そうすると、つらさも無意味じゃなくなる」とたておきさん。自身の心の平穏にもつながる作品を見た人たちが、「しっくりくる何かを持ち帰ってもらえたら。受け取ったような気がするものが何かは分からずとも、ちょっとうれしい拾い物ができるような時間を思い思いに過ごしてほしい」と期待する。
 
会期中には「物語のたね」を探すワークショップもあった

会期中には「物語のたね」を探すワークショップもあった

 
訪れた人との交流も楽しんだたておきさん(中)

訪れた人との交流も楽しんだたておきさん(中)

 
 受賞作は「癖になる文章で、何度も読み返したくなる。危うさの中に官能的、幻想的な表現があり、純文学のような品もある」といった評価を得た。そうした言葉は、自身の作風を振り返る機会になった。「より等身大で、気負わず書いていこう」。こぎれいな文章にしがちだったが、思い返すと「あやしい話が好き」だった。そんな“好き”を表に出すべく、短歌と文章、写真、デザイン、イラストを組み合わせた作品づくりをこれからも続ける。

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大型連休 久しぶりのにぎわい 釜石駅前の春まつり 観光客ら海の幸、市内外の味覚堪能

天候にも恵まれ、市内外から客が訪れた「かまいし春まつり」=4日

天候にも恵まれ、市内外から客が訪れた「かまいし春まつり」=4日

 
 新型コロナウイルス感染症の5類移行後、初めて迎えた春の大型連休。釜石市内は連休後半、晴天が続き、絶好の行楽日和となった。鈴子町の釜石駅前が会場となる恒例の「かまいし春まつり」は4日、シープラザ釜石、サン・フィッシュ釜石の両施設で行われた。来場者は市内外の出店者によるさまざまな味覚やステージイベントを楽しみ、釜石の春を満喫した。
 
 同まつりはこれまで駅前広場を主会場としていたが、今回初めて、駅に隣接する観光物産施設シープラザ釜石の西側駐車場に出店ブースを設けた。市内外からキッチンカーを含む19店舗が出店。地元釜石からは各事業者がホタテ焼きやジェラート、海宝漬、ラスクなどを販売。釜石湾漁協釜石女性部はワカメやメカブの加工品を販売し、地元ならではの味をアピールした。
 
釜石湾漁協釜石女性部はワカメやメカブの加工品を販売。ご飯のお供、おつまみに…

釜石湾漁協釜石女性部はワカメやメカブの加工品を販売。ご飯のお供、おつまみに…

 
釜石の春を盛り上げようと市外からの出店も多数

釜石の春を盛り上げようと市外からの出店も多数

 
 ラグビー「日本製鉄釜石シーウェイブス」の試合会場となる釜石鵜住居復興スタジアムでの出店が縁で、本まつりに出店した市外の事業者も。宮城県気仙沼市の大島から来たのは、飲食店&ゲストハウス「大漁丸」を経営する菊地幸江さん(63)。別店舗「GO-HEI」を構える娘夫婦と菓子などを販売した。三陸沿岸道路の開通で釜石までは車で約1時間。「つながりができてうれしい。地元以外の出店は新たな出会いがあって楽しい」と喜ぶ。13年前の震災津波、直近のコロナ禍で大島の観光、飲食業者も大きな打撃を受けた。「釜石も気仙沼も素晴らしい海が魅力。再び多くの人が訪れるようになるといい」と今夏に期待を寄せた。
 
気仙沼市・大島から出店した菊地幸江さん(左)家族。釜石との縁を喜ぶ

気仙沼市・大島から出店した菊地幸江さん(左)家族。釜石との縁を喜ぶ

 
塩蔵ワカメの詰め放題企画。子どもたちは丸めて入れたり工夫も

塩蔵ワカメの詰め放題企画。子どもたちは丸めて入れたり工夫も

 
正午のメカブ汁のお振る舞いには長い列ができた

正午のメカブ汁のお振る舞いには長い列ができた

 
 会場内では塩蔵ワカメの詰め放題企画、昼には先着200人限定のメカブ汁のお振る舞いもあり、人気を集めた。シープラザの建物内ではステージイベントも。釜石市出身の民謡歌手佐野よりこさんや同市の柳家細川流舞踊などが出演し、来場者を楽しませた。
 
 宮城県石巻市から親族4人で訪れた佐藤美智子さん(65)は新聞広告で同まつりを知り、初めて釜石市に足を延ばした。「ホタテやツブ、途中の道の駅ではホヤもいただき、海鮮づくしの一日。どれもおいしかった」と満足そう。今の三陸沿岸の景色に「(被災後の整備で)まちそのものはきれいになったが、家屋が少なくなったのはちょっと寂しい」。新型コロナの制限がない久しぶりの大型連休に「明日は孫、子どもたちとバーベキューです」と声を弾ませた。
 
シープラザ釜石では民謡や舞踊のステージイベントも

シープラザ釜石では民謡や舞踊のステージイベントも

 
肉の串焼きやかき氷はボリューム満点(左)。好みのものを買い求め飲食を楽しんだ

肉の串焼きやかき氷はボリューム満点(左)。好みのものを買い求め飲食を楽しんだ

 
 駅前橋上市場サン・フィッシュ釜石は3~5日まで、三陸の海産物を堪能できる企画を用意。各店で購入した好みの魚介の刺し身でオリジナル丼を楽しめる「のっけ丼」、貝類やエビ、イカなどをその場で焼いて食べられる「浜焼き」を提供した。隣のシープラザでイベントがあった4日は午前10時ごろをピークに大勢の客が訪れた。
 
 神奈川県横浜市の高橋広也さん(49)は家族3人で花巻市の実家に帰省。めい2人、母と連れ立って同まつりに足を運んだ。「新鮮な海産物のおいしさは格別」とのっけ丼、浜焼きを堪能。時間も場所もゆったりと食事を楽しんだ。三陸名物の“牛乳瓶入り”ウニを目当てに来たが、この日はあいにく水揚げがなく「後日、注文します」と楽しみは先延ばしに。コロナ禍でかなわなかった帰省は昨年から解禁。「子どもの顔を見せられるし、親族で集まれるのはすごく幸せ」と笑顔を輝かせた。
 
サン・フィッシュ釜石でのっけ丼や浜焼きを楽しむ家族ら

サン・フィッシュ釜石でのっけ丼や浜焼きを楽しむ家族ら

 
 サン・フィッシュ会場では、かまいしDMCが開発した「うにしゃぶ」鍋スープをお試しサイズ(2~3人前)で味わえる企画も。スープ、ワカメ、ご飯をセットにして、3日間限定20食を販売した。

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賃上げ拡充、職場環境改善、平和実現…へ 5/1「メーデー」 釜石地区の労働者ら2集会で訴え

釜石市内で開かれたメーデー集会(写真上:連合岩手系、写真下:いわて労連系)

釜石市内で開かれたメーデー集会(写真上:連合岩手系、写真下:いわて労連系)

 
 メーデーの1日、釜石市内ではいわて労連系と連合岩手系の第95回地区集会がそれぞれ開かれた。円安、物価上昇、平和を脅かす世界情勢で暮らしの不安が増大する中、非正規を含む労働者の賃上げ、長時間勤務やハラスメントのない労働環境の実現などを目指し、声を上げた。集会後は中心市街地でデモ行進も行い、要求実現への強い思いをアピールした。
 
釜石地方労働組合連合会 第95回メーデー釜石地区集会=1日午前

釜石地方労働組合連合会 第95回メーデー釜石地区集会=1日午前

 
 釜石地方労働組合連合会のメーデー集会は1日午前、大町の市民ホールTETTO前広場で行われた。釜石、大槌、遠野3市町の医療、自治体の職員労組、年金者組合など8団体から約40人が参加した。
 
 木下大輝実行委員長(全医労釜石支部書記長)は「働く人たちを取り巻く状況は悪化の一途をたどっている。物価高、終わりの見えない戦争…。今日集まった全員で、より良い社会をつくるために声を上げていきたい」とあいさつ。来賓の日本共産党岩手県東部地区委員会の深澤寿郎委員長は昨年、県内外で行われた医療労組のストライキについて「戦ってこそ権利が守られる」、釜石市平和委員会の岩鼻美奈子会長は2015年から釜石駅前で継続する反戦行動、市内の医療機能低下などに触れ、「現役労働者が力をつけていかないと時代は変わらない」と述べた。
 
 県医労釜石病院支部、釜石市職労など4団体が連帯の決意表明。物価上昇を上回る大幅賃上げと全国最下位の本県最低賃金の抜本的な引き上げ、長時間労働や格差の是正、軍事費増額や殺傷兵器輸出解禁など軍拡への反対―を求め、団結するメーデー宣言を採択した。参加者は横断幕やプラカードを掲げ、大町から大渡町をデモ行進した。
 
集会ではプラカードコンテストも実施。3団体に賞が贈られた

集会ではプラカードコンテストも実施。3団体に賞が贈られた

 
デモ行進し、生活改善や平和実現を訴える釜石地方労連集会の参加者

デモ行進し、生活改善や平和実現を訴える釜石地方労連集会の参加者

 
 木下実行委員長は「賃上げも物価高には追い付いていない状況。このまま労働者の負担が増え続けると子育て世代はさらに厳しい。本県では医療現場の人手不足も深刻。働く現役世代の訴えをしっかり届けなければ」と話した。
 
連合岩手釜石・遠野地域協議会 第95回釜石地区メーデー集会=1日夕

連合岩手釜石・遠野地域協議会 第95回釜石地区メーデー集会=1日夕

 
 連合岩手釜石・遠野地域協議会のメーデー集会は1日夕、大町の釜石PITで開かれ、県職労、岩教組、民間企業各労組など15組合から約90人が参加した。小島安友実行委員長(日本製鉄釜石労組)は「今年の春闘では、連合の中間集計で5.77%の賃上げがあったとされる。加えて、(4月から)医師や建設、運送業従事者に対しても残業(時間外労働)規制が始まった。深刻な人手不足で事業継続さえ危ぶまれる中で、人が辞めないような働き方を進める必要がある。より良い暮らしを求めるため、われわれは声を上げ続けていかねばならない」とあいさつした。
 
 来賓が紹介され、代表して大久保隆規県議(釜石選挙区)があいさつ。「自治権の7割は国が握っているのが実態。地域だけの努力では大きな課題解決に向かわないのではないか」と、政治を動かす必要性を示した。
 
 今春闘の賃上げの勢いを中小企業の組合などに波及させること、働く者・生活者の立場に立った政治勢力の結集・拡大を目指すこと、石川県能登半島地震の早期復旧・復興への被災地支援活動―などを盛り込んだメーデー宣言を採択。団結「ガンバロウ」を三唱し結束を図った。会場ではお楽しみ抽選会、被災地支援の募金も行われた。
 
決起集会では参加15組合が決意表明を行った

決起集会では参加15組合が決意表明を行った

 
組合旗や風船を手に大町周辺をパレードする連合釜石・遠野地域協集会の参加者

組合旗や風船を手に大町周辺をパレードする連合釜石・遠野地域協集会の参加者

 
 決起集会で各労組が決意表明を行い、約7年ぶりにパレード(デモ行進)も実施。全ての労働者の処遇改善、ジェンダー平等の実現、暮らしの底上げ強化など安心社会の実現へシュプレヒコールを繰り返した。

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唐丹の誇り「大名行列」6年ぶりに 天照御祖神社式年大祭(釜石さくら祭り)で活気付く地域

天照御祖神社式年大祭(釜石さくら祭り)=4月28日、唐丹町

天照御祖神社式年大祭(釜石さくら祭り)=4月28日、唐丹町

 
 釜石市唐丹町の春を彩る、天照御祖神社(河東直江宮司)の式年大祭「釜石さくら祭り」は4月28日に行われた。3年に一度の祭りは新型コロナウイルス感染症の影響で、前回2021年の渡御は見送られており、今回は18年以来6年ぶりの開催。町内3神社のみこしが江戸時代から受け継がれる“大名行列”とともに地域を練り歩き、震災や戦災を乗り越え、まちを守る住民らにさらなる力を与えた。郷土芸能団体も随行する祭り行列には、町内7地区から約600人が参加。沿道では地域住民のほか、市内外から訪れた見物客が行列を出迎えた。
 
 同町片岸の高台にある天照御祖神社で神事を行った後、行列が繰り出した。神社下の一帯は13年前の震災津波で被害を受けた場所。住宅はないが、近隣の住民や観光客などが沿道に集まり行列を見守った。
 
神社からみこし渡御の行列が出発。子どもから大人までさまざまな役割を担う

神社からみこし渡御の行列が出発。子どもから大人までさまざまな役割を担う

 
東日本大震災の津波で被災した片岸地区を行列が進む

東日本大震災の津波で被災した片岸地区を行列が進む

 
 みこしを先導する大名行列は江戸時代の参勤交代の行列に由来するもので、同神社の氏子がみこしに無礼な行いをさせないように刀、鉄砲、やり、弓などを持ち、警護しながらお供したことが始まり。当時の伊達藩唐丹村本郷の番所に駐屯していた伊達藩士に行列の仕方を教わり、みこし渡御に取り入れたとされる。地区ごとに8つの役割を担い、今に受け継ぐ。今回は本郷の「御徒組」「杖供組」「杖引組」に続き、小白浜の「御道具組」、荒川の「御並槍組」がお供。伝統の所作でゆっくりと歩みを進める各組に、沿道で迎える人たちが盛んな拍手を送った。
 
 柏直樹さん(45)、壮太さん(12)親子は「御徒組」「杖供組」にそれぞれ初参加。唯一の中学生、壮太さんは「振り付けを覚えるのに苦労したが、伝統の祭りに参加できて楽しい。また出たい」。直樹さんは「無事に務められて何より。いい思い出になった。若い子に参画してもらい、伝統がつながっていけば」と期待を込めた。
 
写真上:伝統の所作で進むやっこ姿の「御徒組」。同左下:「杖供組」に初めて参加した柏壮太さん。同右下:「御徒組」に参加した父直樹さん(右)と

写真上:伝統の所作で進むやっこ姿の「御徒組」。同左下:「杖供組」に初めて参加した柏壮太さん。同右下:「御徒組」に参加した父直樹さん(右)と

 
 「いよぉー。いよぉー」「あれはよいとこなー」。独特の掛け声と口上で進む「御道具組」には17人が参加。前回から先導の声を担当する長助澤正也さん(42)は「決まり文句は2種類だが、その他にも祭りを盛り上げるようなセリフが伝統。殿様の道具持ちながら、祭りでは花形」と胸を張る。子どものころ、地元唐丹小の120周年記念行事でこれをやった。「大人になったらやってみたいと思っていた。念願かなった」と心弾ませ、見物客に精いっぱいサービスした。
 
さまざまな文句で見物客の期待に応える「御道具組」の長助澤正也さん(右上)。見守る人たちは笑顔と拍手で応援(右下)

さまざまな文句で見物客の期待に応える「御道具組」の長助澤正也さん(右上)。見守る人たちは笑顔と拍手で応援(右下)

 
公民館などが建つ小白浜地区の通りを進む「杖引組」

公民館などが建つ小白浜地区の通りを進む「杖引組」

 
荒川地区の住民が担当する「御並槍組」。江戸時代の大名行列の風情を醸す

荒川地区の住民が担当する「御並槍組」。江戸時代の大名行列の風情を醸す

 
 行列は片岸から小白浜へ。住宅や商店、公民館などが建ち並ぶ町中心エリアをにぎやかに進んだ。大杉神社(本郷)、西宮神社(小白浜)のみこしが天照御祖神社のみこしを各地区に案内する形で渡御。大杉、西宮両社のみこしは住民の前を勢いよく回り、威勢を放った。大杉神社のみこしを担ぐ倉又一平さん(35)は6年ぶりの祭りに「地元の血が騒ぐ。ここで育ち、今は離れて暮らす人たちも祭りには帰ってくる。若い世代が頑張って受け継いでいかなければ」と思いを強くする。
 
 行列を見守る人たちは青空の下で繰り広げられる華やかな行列に大興奮。小白浜の千田律子さん(76)は「自分も若いころ祭りに出た。やっぱり思い出しますね。踊りたくなる」と高揚し、「地元以外にも大勢の人たちが見にきてくれて感謝です」と顔をほころばせた。
 
地元小白浜地区で威勢を放つ西宮神社のみこし

地元小白浜地区で威勢を放つ西宮神社のみこし

 
大杉、西宮両神社みこしに続いて唐丹公民館前に到着した天照御祖神社のみこし

大杉、西宮両神社みこしに続いて唐丹公民館前に到着した天照御祖神社のみこし

 
 行列は唐丹の名所“本郷の桜並木”へ。かつては祭りと桜の咲く時期が重なっていたが、近年は地球温暖化の影響で開花は4月上旬に早まっている。この日は葉桜に変わった並木の下で行列が繰り広げられた。御道具組の長助澤さんは「葉桜がきれいだなー」などと言葉を発し行列を鼓舞。唐丹の大名行列“発祥の地”を盛り上げた。
 
地元本郷の桜並木の下を勢いよく駆ける大杉神社のみこし。迫力満点!

地元本郷の桜並木の下を勢いよく駆ける大杉神社のみこし。迫力満点!

 
伝統の舞を披露する荒川熊野権現御神楽。子どもたちも練習の成果を発揮

伝統の舞を披露する荒川熊野権現御神楽。子どもたちも練習の成果を発揮

 
市指定文化財の常龍山御神楽。天照御祖神社と共に歴史を重ねる

市指定文化財の常龍山御神楽。天照御祖神社と共に歴史を重ねる

 
 約4キロの往路の最終地点、本郷海岸ふかさ広場の御旅所では、3基のみこしの前で神事が行われた後、参加した郷土芸能全団体が演舞を披露した。唐丹町の各地区には神楽、虎舞、太鼓が継承され、同祭りには手踊りも加わる。各団体は久しぶりの祭りに躍動し、地域の元気を発信した。
 
 大石虎舞の小踊で同祭りに初めて参加した川村向葵さん(12)は「みんなで踊るのは楽しい。今日はお客さんがいっぱいで少し緊張した。今後は太鼓もやってみたい」と意欲をかきたてられた様子。同虎舞は震災後、郷土芸能をやりたいという唐丹中生の要望を受け、継続的に教えている。成果は文化祭で披露。大石町内会の畠山一信会長(76)は「指導が縁で、祭りの時には習った生徒らが応援メンバーとして駆け付けてくれる」と、地域を越えたつながりを喜ぶ。
 
気仙地方の系統をくむ大石虎舞。大きな頭と長い尾が特徴

気仙地方の系統をくむ大石虎舞。大きな頭と長い尾が特徴

 
 花露辺手踊り連は地元の花露辺海頭荒神太鼓とともに35人で参加。太鼓ばやしに合わせ2曲を踊った。今回は小学1年、幼児の参加が増えた。佐々木宏実代表(32)は「今の小学生は前回の祭りを知らない。一から教えるのが大変だったが、みんな頑張ってくれた」と喜ぶ。自身は結婚で移住。「学校も全面協力し、地域みんなでつくり上げる祭りはなかなかない。今日は唐丹町民全員がいるんじゃないかと思うぐらいの人出」と驚いた。
 
花露辺の手踊りは「花露辺海頭荒神太鼓」と一緒に参加。音楽にお囃子を乗せて2曲を踊った

花露辺の手踊りは「花露辺海頭荒神太鼓」と一緒に参加。音楽にお囃子を乗せて2曲を踊った

 
小白浜地区に伝わる「伊勢太神楽」。おかめの面を付けた女舞も

小白浜地区に伝わる「伊勢太神楽」。おかめの面を付けた女舞も

 
本郷の手踊りは内外にその名を知られる「桜舞太鼓」と。桜模様の長ばんてんで春満開

本郷の手踊りは内外にその名を知られる「桜舞太鼓」と。桜模様の長ばんてんで春満開

 
 川原清文大祭執行委員長(80)は「いざやろうとなれば、みんな一生懸命協力してくれる。祭りや伝統芸能は住民の絆、明日への希望にもつながっている」と意義を実感。一方で、少子高齢化、人口減少などで人員確保が難しくなっている側面もある。今回は、大名行列の2組、郷土芸能3団体が参加を見送った。「時代が変化する中、同じようにやろうとしても無理がある。多少、変化しながらでも継続していければ」と末永い継承を願った。
 
老若男女、幅広い世代が6年ぶりの祭りを楽しんだ

老若男女、幅広い世代が6年ぶりの祭りを楽しんだ

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足慣らし、行こうよ! 岩手・三陸沿岸最高峰「五葉山」山開き 春の芽吹き、爽やか

五葉山が山開き。シーズン到来に笑顔を見せる登山者

五葉山が山開き。シーズン到来に笑顔を見せる登山者

 
 釜石、大船渡、住田の3市町にまたがる三陸沿岸最高峰・五葉山(標高1351メートル)は4月29日、山開きした。リアス海岸や奥州山系の山並みなど山頂から望む雄大な景色、原生林や花々の群落など標高によって異なる表情を見せる豊かな自然が魅力。待ちわびた登山者はこの時期ならではの眺望や芽吹きを楽しみながら爽やかな汗を流している。
 
 両市境の赤坂峠登山口で安全祈願祭があり、五葉山神社の奥山行正宮司が登山道を清めて無事故を祈った。3市町村で組織する五葉山自然保護協議会長の渕上清大船渡市長が「皆さんに快適に登山してもらえるよう、登山道の適切な維持管理や自然の保全保護などを行っていく」とあいさつ。山頂を目指して歩き出した登山客に「安全第一で楽しんでください」と声をかけた。
 
多くの登山者が待つ赤坂峠登山口で安全祈願祭が行われた

多くの登山者が待つ赤坂峠登山口で安全祈願祭が行われた

 
五葉山神社の宮司が登山道を清めて無事故を願った

五葉山神社の宮司が登山道を清めて無事故を願った

 
 間隔を確保しながら列を作って、思い思いのペースで山歩き。ツツジやシャクナゲの新芽、新緑を眺めたり、自然を楽しむ姿も見られた。登山仲間と訪れた釜石市の青柳あや子さん(73)は「水場や避難小屋があって安心で、登りやすい山。花はまだだろうから、風や空気、おしゃべりを楽しみながらゆっくり行く」とにっこり。山田町の佐々木千恵さん(73)、宮古市の畠山亮子さん(69)と顔を合わせ、「そちこちの山に遠征するから、きょうは足慣らしだね」と元気だった。
 
ぐんぐん力強い足取りで頂上を目指す登山者

ぐんぐん力強い足取りで頂上を目指す登山者

 
「きょうは足慣らしです」。元気な“山レディー”たち

「きょうは足慣らしです」。元気な“山レディー”たち

 
「山、登りたい!」と宮城県から足を運んだ小学生グループ

「山、登りたい!」と宮城県から足を運んだ小学生グループ

 
 五葉山は山頂まで比較的緩やかな道が続き、家族連れや年配者、初心者でも登りやすい。山開き前に楽しんだ人もいて、「上の方に雪が残っていた」「雪はないけど、ぬかるんでいた」と情報交換したり。近年は雪が少ない傾向で、季節の進み具合も感覚的に早まっている。
 
 この日も例年の服装では汗ばむ陽気に。暑さを感じて袖をまくったり、半袖姿の人もいた。そうは言っても、天気の急変など何が起こるか分からないのが自然。山岳関係者は「装備はしっかりと。自分の体力に合わせて登ってほしい。山のマナーも忘れずに」と呼びかける。
 
半袖や袖をまくったりする姿も。そんな暖かさにツツジも反応?

半袖や袖をまくったりする姿も。そんな暖かさにツツジも反応?

 
春の行楽シーズン到来に登山客の顔も自然とほころぶ

春の行楽シーズン到来に登山客の顔も自然とほころぶ

 
山頂へ向かう登山者。新緑の中をゆっくり進んでいく

山頂へ向かう登山者。新緑の中をゆっくり進んでいく

 
 5月のゴールデンウィーク(GW)期間のほか、ツツジやシャクナゲが咲く5~7月にかけてもにぎわいが予想される。

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はしの四季まつり -春満開- 「橋野鉄鉱山八重桜まつり」

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八重桜、新緑に包まれた野山、野鳥のさえずり。春を楽しみながら、橋野鉄鉱山や鵜住居川源流でリフレッシュしてみませんか。

 

当日は、観光ガイドによる橋野鉄鉱山ガイドツアー(無料)のほか、どんぐり広場産直商品券付きの餅まきや豚汁のお振る舞いが行われます。また、出前産直やキッチンカーによる販売、ZENBEY絆と尚玉泉さんによるステージイベントも予定しています。

 

【昨年のイベントの様子】
4年ぶりのにぎわい!橋野鉄鉱山八重桜まつり 餅まき、豚汁ふるまいに市民ら笑顔 – 釜石新聞NewS

日時

2024年5月12日(日) 10時~13時
※八重桜は、GW期間中に見頃を迎えると予想されます。

場所

橋野鉄鉱山インフォメーションセンター周辺

内容

10:00 移動産直、キッチンカーによる販売
10:30 橋野鉄鉱山ガイドツアー
11:30 餅まき(どんぐり広場産直商品券付き)
11:45 豚汁のお振る舞い(300杯)
12:00 ステージイベント

無料バスの運行について

会場まで黄色の無料バスを運行します。無料バスを利用する人は㈱岩手旅行社(TEL 0193-31-1300)へ直接お申し込みください。
バス利用申込期限 5月10日(金)17時
 
《無料バス運行表(行き)》
9:00 ビレッジハウス洞泉前
9:05 松倉駅前
9:10 小佐野駅前
9:15 昭和園前
9:20 釜石駅前
9:25 釜石中央
9:35 鵜住居
9:45 砂子畑
9:50 上栗林
※表に記載されたバス停以外からも乗車できます。
※帰りは、会場を12時30分過ぎに出発しどんぐり広場産直に立ち寄ります。

問い合わせ

栗橋地区まちづくり会議事務局 TEL 0193-57-2111

 

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橋野町振興協議会

橋野町振興協議会

問い合わせ:TEL 090-4639-3225 / FAX 0193-57-2212 / 〒026-0041 岩手県釜石市橋野町34-13-12

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広報かまいし2024年5月1日号(No.1831)

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【P1】
表紙

【P2-3】
犬の登録と狂犬病予防注射 他

【P4-5】
新たな障がい福祉サービス事業所 他

【P6-7】
まちのお知らせ

【P8】
スターダスト☆レビューうのすた☆スペシャルライブ 他

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書道で脳活 いきいき、ひらめき…生み出す キーワードは「発想の転換」 釜石で体験講座

釜石で開かれた「脳活書道」体験講座の参加者ら

釜石で開かれた「脳活書道」体験講座の参加者ら

 
 文字を書くこと、創ることを楽しむ「脳活書道」の体験講座が4月28日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。講師は、宮城県仙台市在住の書家で「釜石応援ふるさと大使」の支部蘭蹊(はせべらんけい=本名・一郎)さん(73)。トメ、ハネ、ハライといったルールを取り払い、書き順にもこだわらず、伸び伸び自由に文字を書いていく、ひと味違った書の楽しみ方を紹介した。
 
 脳活書道?…聞きなれない言葉だが、支部さんが主宰する仙台の教室ではすでに実践する試みだという。楽しみながら脳の認知機能低下を予防するのが“脳活”。特に、何かを創造したり、ひらめきが生まれたりする時に働くが、普段あまり使われていないともいわれる「右脳」を活性化させ、生き生きとした生活につなげてもらおうと取り入れている。「ものの考え方が変わった」などと参加する生徒らの反応は上々。高齢化が進む社会で「より元気に、楽しく過ごしてもらうように」と激励を込め、同じ手法を古里に持ち込んだ。
 
脳活書道のポイントなどを説明する支部蘭蹊さん(右)

脳活書道のポイントなどを説明する支部蘭蹊さん(右)

 
 キーワードは「発想の転換」。支部さんいわく「右脳への切り替えスイッチを入れること」で、いくつかのポイントがある。1つ目は文字の書き順を意識的に変えてみることで、「第1画目から書かない」のが前提。例えば「山」という字は、本来は2画目として書く「L」のような縦横の線から始め、3画目となるはずの右側の縦線を書いた後に、1画目だったはずの縦線をまん中に引いて仕上げるといった感じ。書き方は他に2パターンある。さらに、逆転のルールとして▽下→上▽右→左▽縦画から先に書く―という設定も。実際に書いてみると、整っているとは言えないが、個性的で味のある文字になっていた。
 
絵を描くような筆運びを習得中。思いのままに手を動かす

絵を描くような筆運びを習得中。思いのままに手を動かす

 
 書き順を変えて書いて「バラバラ」に仕上がった文字を、普通の書き順に戻してなぞるのが2つ目のポイント。筆の穂先を使った“ひと筆書き”で数回なぞって、柔らかい筆遣いのコツをつかんでもらう。他にも、▽縦長、横長に書いてみたり形を変化させる▽書くリズム、呼吸をつかむ▽立てたり寝かせたり筆先を変え、360度使う-といったものもあった。
 
支部さん(左)の指導を受けながら書道を体験する参加者

支部さん(左)の指導を受けながら書道を体験する参加者

 
 体験講座に参加した大只越町の芳賀憲一さん(76)は「書道は難しいと先入観があり、できるか不安だった。逆から書くのが面白く、入り込めた」と充実した表情。写真が趣味で、プリントしたものに支部さんが書をしたためてくれたことがあったというが、「今度は自分で気持ちを書き込みたい」とやる気になった。「筆を持つのは久しぶり。楽しかった」という声も聞かれた。
 
 硬い、敷居が高いとのイメージがあるのか書道人口は減少傾向で、最近はパソコンなどで文章を仕上げることから文字を書く回数も減っていると、支部さんは残念がる。ただ、人には言葉の文化があり、「素直に書いたら面白い世界がある。脳を生き生きさせるイメージで書道に親しんでほしい」と考えてきた。
 
書き順にこだわらない「発想の転換」を実演

書き順にこだわらない「発想の転換」を実演

 
自由で味わい深い文字を躍らせる支部さん(右)

自由で味わい深い文字を躍らせる支部さん(右)

 
 支部さんは「戸惑いもあったと思うが、一つの世界に決めるのではなく、いろいろな切り口があることに気づいてもらえたら」と期待する。文字の形や意味を知る基本(知力)を確認しながら、逆転の発想(ひらめき)で応用(創造)し、つづられた言葉は「感性がにじむ普段着の文字」と力説。脳活書道で「自分にしか書けない線を楽しみましょう」と呼びかけた。
 
 体験講座(参加費あり)は、7月まで月1回実施する予定。次回は5月26日(日)。会場は同じくTETTOで、午前10時半~2時間程度。筆や墨、半紙など道具は準備しており、手ぶらでの参加にも対応する。