酒米の収穫を喜ぶ参加者=大槌町の水田
釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は9月26日、本年度の「酒造り体験塾」の稲刈り体験会を大槌町の契約農家の田んぼで開いた。5月に植えた酒米「吟ぎんが」を鎌で刈り取り、束にしてはせ掛け。老若男女が収穫の喜びを味わい、来年の仕込み体験に期待を膨らませた。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、参加者を県内在住者に限定。団体参加のボーイスカウト隊員約20人が先に作業し、終了後、一般参加の約40人が集まった。鎌での刈り方を教わった後、作業開始。同体験塾は親子での参加も多く、協力し合って作業に精を出すほほ笑ましい姿が見られた。
浜千鳥酒造り体験塾で稲刈りに挑戦する親子
稲を束ねる子ども。うまくできるかな?
釜石市千鳥町の大澤賢一さん(41)、七奈さん(6)親子は体験塾初参加。田植えも経験した七奈さんは「楽しい。稲がこんなに大きくなるなんて」と成長に目を見張った。賢一さんは「こういう体験を通して、ご飯を残さず食べてくれるようになれば」と食育面にも期待。「コロナ禍で外でお酒を飲む機会が減った。自分たちが関わったお酒を家でじっくり味わいたい。体験塾完全制覇を目指します」と笑った。
大槌町の小澤光子さん(69)は夫婦で参加し、「酒造りの一連の過程を体験できて面白い。次は仕込みで頑張りたい」と意欲満々。釜石市嬉石町で東日本大震災の津波に遭い、市内の復興住宅から大槌町に移住して5年目。「娘も孫も白山小に通い、学校の水田で米作りを行った。やっぱり収穫の喜びは格別」と大切な思い出と重ね合わせた。
この日は体験塾参加者が春に手植えした約3・5アール分の稲を刈った
稲の束ね方のこつを教える佐々木重吾さん(青の作業着)
田植え、稲刈り体験会場を提供する佐々木重吾さん(64)は、同社に原料米を供給する「大槌酒米研究会」(5個人1法人)の会長。今年は全体で昨年並みの約20ヘクタールを作付けした。「天候にも恵まれ、順調に育った。作柄はすごくいい。品質、量ともに満足」と一安心。稲刈りは例年より1週間以上早い9月14日から始まった。後半は10月中旬から下旬にかけて行う。
同会は試験研究、指導機関と連携し、米の品質向上のための研究も続ける。今年は肥料試験や地球温暖化による夏の高温時期対策の試験を行った。
同社の大槌産酒米「吟ぎんが」での酒造りは2003年から開始。今では同社が使う米の約40%を占めるまでになった。今期から、これまで県外産米「美山錦」を使っていた特別純米酒を吟ぎんがで仕込む予定だという。「地域のお酒というものをより意識しながら進んでいきたい」と新里社長。